若さに不釣り合いなくらいタフなロックンロールを鳴らす、climbgrowの進化が止まらない
-
ポスト -
シェア - 送る
climbgrow 後列左から時計回りに:谷口宗夢(Dr)/近藤和嗣(Gt)/田中仁太(Ba)/杉野泰誠(Vo,Gt) 撮影=山内洋枝
THE BAWDIESらを擁するGetting Better Recordsが新たに始めたインディーズレーベル・Narisome Recordsから、昨年7月、全6曲を収録した『EL-DORADO』をリリースした滋賀県出身21歳の4人組、climbgrow(クライムグロー)。前回のインタビューで言っていた「いいアルバムができたんだから、あとはライブでぶちかますだけ」という言葉どおり、彼らはその後に行ったツアーやライブを通して、じわじわとファンを増やしていったという。そんな追い風を感じながら完成させた3rdミニアルバム『FREEDOM』。今回も全6曲が収録されている。若さに不釣り合いなくらいタフなロックンロールという意味では、前作の延長上にあると言えるものの、 胸の奥底から溢れる様々な感情を言葉にした歌詞、バンドの演奏ともに、さらに研ぎ澄まされてきた。まだ若いバンドだ。成長も含め、これからもどんどん変わっていくに違いない。そんな中、今回は愛犬を題材にしたり、自分達なりにブルースを歌ったり、安らぎを求めたり、前作以上に人間味に溢れているようなところがいい。この連中、ただ単に血の気が多いだけじゃない。
死んでるって言う奴もいるじゃないですか、ロックンロールが。早く聴かせたいです、そんなしょうもない奴らに(笑)。ロックンロールは生きてるって。
――昨年は、climbgrowにとってどんな1年でしたか?
谷口宗夢(Dr):なかなか出せなかったCD(『EL-DORADO』)が出せました。その前の『Enter Here』からけっこう時間が空いたんですよ。
――1年8か月ぐらいでしたっけ。
杉野泰誠(Vo/G):CDを出せたことがうれしかったし、それをひっさげて、ツアーという形でいろいろなところでライブもできて。
――前回の取材で、「(作品を)聴いてもらったらわかる。あとはライブでぶちかますだけ」とおっしゃっていましたよね。
田中仁太(B):そのスタンスは変わってないです。
杉野:むしろ、もっともっとライブをガツガツと尖らしていかなきゃと思いました。
――新作の『FREEDOM』、かっこ良かったです。やっぱりロックンロールってかっこいいって改めて思えるような作品になっていました。
杉野:ありがとうございます。うれしいかぎりです(笑)。
――『EL-DORADO』をリリースしたあと、自分達の音楽が以前よりも多くの人に届いているという実感はあったんですか?
杉野:ああ、ありましたね。(ライブに)来てくれへんかった人らも見るようになって“やっぱCDを出して良かったな”って思いますね。
田中:ツアーでも、前回、行った時よりも多くの人が来てくれたんで、そこで、“あ、届いているんだ”って感じました。
――お客さんの層も変わってきましたか?
杉野:いや、人数は増えたんですけど。
谷口:お客さんの層はあまり変わってない(笑)。
――climbgrowのお客さんって、どんな人達が多いんですか?
杉野:ほんま僕らと同い年とか。
谷口:高校生とか、大学生とか。
杉野:そんなに話すわけじゃないから本当の年齢はわからないんですけど、たぶん、そんな感じだと思います。
谷口:たまに40代の方もいますけど(笑)。泰誠のファンなんですよ。
――え、40代の女性ってこと?
谷口:女の人。
田中:お母さん世代。
杉野:お母さん世代からウケがいいんですよ(笑)。
――へぇ。全体の割合としては……。
近藤和嗣(G):女性のほうが多いです。
杉野:でも、男性も来てくれるようになりましたね。
近藤:男性も増えてきて、それはうれしいことです。
杉野:最初から、これを言えば良かったな(笑)。
谷口:でも、同じ感じで増えているから。
杉野:そうだな、とんとんやな(笑)。
――ともあれ、バンドの状況は確実に良くなっているという実感はあるわけですね?
杉野:そうですね。着々と。でも、全然足りないですけどね。
――そんな中で、今回の『FREEDOM』という作品は、どんなところから作っていったんですか?
杉野:敢えてコンセプトみたいなものは決めずに。元々、ミニアルバムだと聞いていたので、“最高にかっこいい6曲を持ってきて、ぶちこんだろ”って、何も考えずに作りました。だから、考え抜きで自由に作ろうと思ってたから、タイトルも『FREEDOM』でいいやって(笑)。
――今回の6曲は『EL-DORADO』をリリースして以降に作ったものなんですか?
杉野:そうやな。
近藤:作ろうってなってから作り始めました。いつからやろ? 『EL-DORADO』をリリースして……。
田中:ツアー中にはもう。
谷口:ツアーでやってた曲もあるんじゃない?
近藤:何やってた?
谷口:「SCARLET」。
――じゃあ、今回の6曲の中では最初に「SCARLET」ができた、と?
杉野:そうですね。そこから順々に作っていって。
――結果、何曲ぐらいできたんですか?
田中:ぴったりぐらいでしたね。
近藤:流れるように6曲できました。
――今回、『FREEDOM』を聴きながら、若干の変化を感じました。だから、何曲か作った中から1枚にまとめるならというところで、方向性を絞ったうえで選曲したのかなって思ったんですけど、そうではないんですね?
杉野:大体の色味というか、もうちょいテンポが遅いほうがいいかみたいなことは、曲ごとにあったんですけど、割と自然にこの6曲ができて。「これがいい」「あれがいい」じゃなくて、「これとこれとこれやな」みたいに、みんなですんなりと、さっと決めて。
――今はこんな感じの曲をやりたいというのが頭の中にあって、それを曲にしていったという感じですか?
杉野:いつも通りと言えば、いつも通りなんですけど(笑)。いつも通りだと、俺ら、速い曲が多いんですけど、4曲目の「ROCK'N'ROLL IS NOT DEAD」みたいな遅いテンポの曲を作ってみたり、いろいろしましたね。初の試みを。
田中:ノレるようなね。
杉野:そうそう。テンポはゆったりしているんだけど、ノレるような曲というか、大ぶりな曲というか。そういう曲をやりたいから作った、みたいなところはありますね。
――ライブでそういう曲があってもいいかな、みたいなことですか?
田中:ライブを意識して……。
杉野:作った曲が多いですね。
――大ぶりの曲ももちろん、若干の変化を感じたとさっき言いましたけど、ご自分達では変化したという意識はありますか?
杉野:多少なりとも、どしっと構えられるようにはなってきましたね。
近藤:洗練された感は……。
杉野:自分で言うのはあれだけど、それはありますね(笑)。
谷口:前のアルバムよりもまとまりは良くなったと思います。でも、その中でも1曲1曲、僕らとしては、だいぶ違うんですけど、どの曲も個性があるというか、個性はあるけど、まとまっているというか。そういうアルバムになりました。
――かなりシュッとしたという印象がありました。近藤さんは「洗練された」とおっしゃっていましたけど、どんなところがどんなふうに洗練されたと?
近藤:ジャンル感というところでは、前のアルバムはもうちょっと広かったと思うんですけど。それが今回、方向性はclimbgrowとしてかなり絞れてきたんじゃないかな。それでも曲に広がりがあるのは、メンバーそれぞれに違う音楽の趣味がうまい具合にまとまってきたからだと思います。
――では、僕が変化を感じたところを聞いていきたいんですけど、今回、歌詞は明らかに言葉の数が少なくなりましたよね。前作は、1曲に収まりきらないんじゃないかっていうくらい思いが溢れていた印象があったんですけど。
杉野:それは自分でも思いました。“短か!”って(笑)。なんですかね。短くしてやろうって意識したわけではないんですよ。
谷口:曲に合わせたんじゃないの?
田中:曲自体がシンプルなロックンロールだから。
谷口:でも、(シンプルなロックンロールとは言えない)「LAVENDER」も短いからな。
――3人はどう思いましたか?
田中:いや、改めて、歌詞カードを見なきゃわからなかったです。「SCARLET」がこんなに短かったって。
杉野:8行ですからね。
田中:でも、気にはならなかったです。
――いやいや、短いから良くないってことではなくて。
杉野:わかります、わかります(笑)。
――言いたいことがなくなったとは思わなかったんですよ。ただ、その言い方を変えたのかなって。
近藤:そのうち俳句みたいになるかも(笑)。
谷口:五七五で?(笑)
杉野:でも、言いたいことが入りきらなかったってことはなかったですね。
――「ROCK'NROLL IS NOT DEAD」「SCARLET」の2曲は特に歌詞が短いんですけど、それでも言いたいことは全部、言えていると?
杉野:言えてますね。
――今回、曲のタイトルが全曲、英語ですよね?
近藤:かっこええからやろ?
谷口:見た目ですね、完全に(笑)。
杉野:ずっと大文字が使いたくて。全部、大文字のアルバムを作りたいと思ってたんで、前から。それで、“ここだ!”って。
田中:アルバムタイトルの『FREEDOM』もな。
杉野:全部、大文字にしてやったろって。出来たとき、“大文字かっこええ~”と思いました(笑)。
谷口:そういう意味では、まとまりがあっていいと思うんですよ。