クラシックを身近に感じさせる、益子侑(ヴァイオリン)&小瀧俊治(ピアノ)が紡ぎ出す楽しさ弾ける音楽世界

レポート
クラシック
2018.2.19
益子侑(ヴァイオリン)、小瀧俊治(ピアノ)

益子侑(ヴァイオリン)、小瀧俊治(ピアノ)

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“サンデー・ブランチ・クラシック” 2018.2.4 ライブレポート

クラッシック音楽をもっと身近に、気負わずに楽しもう! 小さい子供も大丈夫、お食事の音も気にしなくてOK! そんなコンセプトで続けられている、日曜日の渋谷のランチタイムコンサート『サンデー・ブランチ・クラシック』。2月4日に登場したのは、ヴァイオリニストの益子侑と、ピアニストの小瀧俊治だ。

3歳よりヴァイオリンを始め、東京音楽大学で研鑽を積んだ益子侑は、クラシック音楽に留まらず、「音を楽しむ」をテーマに掲げ、有名テーマパークで演奏実績を積む他、ライブ・TV・PVにて、エンヤ、SMAP、福山雅治、松田聖子、サザンオールスターズ、平井堅、KONISHIKI他、様々なアーティストと多数共演。2016年2月には、デビューアルバム『益子侑ヴァイオリン・リサイタル』を発表。このアルバムは、音楽之友社『レコード芸術』にて準特選盤に輝いた。

そんな益子侑ならではの、あらゆる世代に贈る新しいヴァイオリンの世界を共に創り出すのは、同じく東京音楽大学ピアノ演奏家コース卒業後、同大学大学院修士課程を修了し、音楽コンクールでの輝かしい入賞歴を持ち、ソロ活動と共にアンサンブルピアニストとして多くのアーティストと共演を重ねる他、近年はX JAPANボーカルToshlのライブサポートメンバーとしての活動など、ジャンルの垣根を越えた活動を展開しているピアニスト小瀧俊治

共にクロスオーバーな音楽活動を続けている二人が、『サンデー・ブランチ・クラシック』で夢の初共演を果たすことになった。

益子侑(ヴァイオリン)、小瀧俊治(ピアノ)

益子侑(ヴァイオリン)、小瀧俊治(ピアノ)

クラシックの名曲が、ポップなアレンジで華やいで

冒頭、ヴァイオリンリサイタルの、アンコールピースとしても親しまれているエルガーの「愛の挨拶」を、クラシックの正統的な美しい旋律で小瀧が奏ではじめる。そこに、ヴァイオリンが加わるか?と思わせた刹那、演奏はリズミカルに弾け、 益子侑ならではの軽快な「愛の挨拶スペシャル」へ。馴染み深いメロディーだからこそ、益子自身による編曲の軽やかさが生き、リビングルームカフェは、一気に益子ワールドに染め上げられる。

益子侑

益子侑

温かな拍手が広がる中、二人は同じ大学の出身で、互いの活動への関心をずっと持ち続けていたが、今日が初めての共演になりますと挨拶。益子が小瀧を「小瀧王子」と呼びかけるなど、微笑ましい会話が交わされた。

続いて、益子のオリジナル曲「門出」が演奏される。楽曲は益子の笑顔のように明るく、聞く者に楽しさを呼び起こす曲調で、メインのメロディーがピアノと掛け合うように繰り返し重なり、更に転調していく。晴れやかな歌を聴いているかのような心地がした。

演奏を終えたあと、この曲が先ごろ発売された、バンド編成によるポップスのアルバムに収録されていることが紹介され、互いのCDや、多彩なジャンルでの活動の話も聞かれた後、3曲目は映画『美女と野獣』より「 Be our guest」が華やかに披露される。アニメーション映画、ミュージカル、実写映画化と、幅広い支持を得ている作品『美女と野獣』の中で、野獣の城に囚われたヒロイン・ベルを、ポット、時計、燭台、絨毯、カトラリーなどに姿を変えられている城の家来たちが、明るい歌と踊りでもてなす、劇中でも屈指の賑やかなナンバーが、益子の明るいヴァイオリンの音色にピッタリ。後半小瀧のピアノにメロディーが移ると、益子のヴァイオリンはまるで即興のような自由さを増して奏でられ、美女と野獣ならぬ、美女と王子の演奏に、カフェは大いに盛り上がった。

益子侑

益子侑

小瀧俊治

小瀧俊治

繊細なピアノソロから華麗なロマン派ヴァイオリン名曲メドレーへ

熱気の中益子がいったん退場し、小瀧のピアノソロで、リストの「愛の夢」が披露される。リストらしい煌びやかな華やぎを持った、こちらも大定番曲だが、小瀧の演奏にはひと際の繊細さがあり、そもそもが歌曲であったこの曲の出自を感じさせる、豊かな表現力が印象的な演奏となった。

再び、益子がステージに戻り、コンサートはいよいよクライマックスへ。「こちらは『サンデー・ブランチ・クラシック』ですので」とのことで、用意されたのは「ロマン派 ヴァイオリン名曲メドレー」。音楽の歴史の中で、楽曲にロマンティックな要素が展開されていった時代の、名曲中の名曲がメドレーで綴られていく。

益子侑(ヴァイオリン)、小瀧俊治(ピアノ)

益子侑(ヴァイオリン)、小瀧俊治(ピアノ)

まず、チャイコフスキーの「ヴァイオリン協奏曲第一楽章」から著名な旋律が流れ、そこからゆったりとしたマスネの「タイスの瞑想曲」をたっぷりと。続いてメンデルスゾーン「ヴァイオリン協奏曲第一楽章」から哀愁に満ちたメロディーが奏でられると、ヴィエニャフスキー「創作主題による変奏曲」パガニーニ /クライスラー編曲「ラ・カンパネラ」と、演奏者と楽器が一体になる醍醐味が伝わる、ヴァイオリンの多彩な技巧が煌めく演奏が続き、最後は冒頭で演奏された、チャイコフスキー「ヴァイオリン協奏曲 第一楽章」の、フィナーレ部分へとつながり、息もつかせぬ名曲ばかりの贅沢なメドレーが見事にフィニッシュ。会場は喝采の拍手に包まれた。

その拍手に応えるように、アンコールはこれもお馴染み、葉加瀬太郎の「情熱大陸」へ。会場から自然に手拍子が沸き起こり、益子がフロアーに降りて、ラウンジのソファーの間を練り歩きながらの演奏もあり、ステージと聴衆とが一体となって更に大きな拍手と歓声に包まれる中コンサートは終演。益子と小瀧ならではの、ジャンルレスな音楽が堪能できる時間となった。

思いがけずフロアライブも

思いがけずフロアライブも

音楽の楽しさを伝えたい意欲を持った、二人の共演

演奏終了後、熱気も冷めやらぬお二人に、お話を伺った。

――素晴らしい演奏をありがとうございました。演奏していて会場の雰囲気はいかがでしたか?

益子:すごくアットホームで、お客様を身近に感じて、一緒に音を共有できたことがとても楽しかったです。一生懸命聞いてくださって、温かい空気の中演奏することができました。

小瀧:僕はこちらのリビングルームカフェでは二回目の演奏で、前回も温かさが感じましたが、今日は特に演奏後の拍手の温かさが伝わって、幸せな気持ちになりました。

――選曲にあたっては、どんな工夫をされたのですか?

益子:普段はポップス系の曲を演奏することが多いのですが、今日は「クラシック・コンサート」ということなので、クラシック音楽ではあるけれども、皆様にポップスのように親しまれている、馴染みのあるサウンドやリズムのものを選んで、お客様に楽しんで頂けるようなプログラムになるように考えました。

益子侑

益子侑

――『美女と野獣』等が入ることによって、お子さんも喜ばれたと思います。

益子:そうなんです。小学生のお子さんが何人かいらして、演奏後「美女と野獣」の話をしにきてくれて。喜んでくれたのが伝わるお話が聞けて、私も元気をもらえました。

――小瀧さんは、ピアノソロに「愛の夢」を選ばれましたが。

小瀧:いくつか候補があったのですが、ちょうどバレンタインデーが近いこともあって、やはり「愛」がテーマかなと。

益子:「王子」ですしね。

小瀧:いや、待って、それ自分では思ってないから(笑)。でも曲想的にもこの空間にあっているかな?と思って選びました。

益子侑(ヴァイオリン)、小瀧俊治(ピアノ)

益子侑(ヴァイオリン)、小瀧俊治(ピアノ)

――また、メドレーが素晴らしかったです。

益子:楽曲の構成は自分で考えたのですが、大学までクラシックを勉強してきた中で好きだった曲を選んでいて、今日が初披露なんです。途中に入っているヴィエニャフスキーの「創作主題による変奏曲」は、卒業試験で弾いた曲で、個人的な思い出も詰め込んで作ってみました。

――とても楽しいメドレーで、有名なメロディーもどんどん出てくるので、次は?次は?と興味をひかれました。そのメドレーも含めて、ご一緒された小瀧さんはいかがでしたか?

小瀧:セットリストをもらった時に「幅広いな」という印象をまず持ちました。最初の「愛の挨拶」も元々原曲バージョンでやるつもりだったのですが、実際に今日聞いて頂いたような編曲のバージョンもお持ちで、本当に音楽性の幅が広いなと。クラシックの基礎がきちんとある上に、ポップスの要素などが入ってきている。オリジナル曲も素敵で、今回僕は初めてご一緒させて頂いたので、是非他の曲も聞いてみたなと思いました。

小瀧俊治

小瀧俊治

――お二人共、ジャンルを超えた活躍をされていますが、お互いの存在は刺激になっているのでは?

益子:刺激になりますし、尊敬しています。

小瀧:いや、こちらこそ。本当に一緒に演奏することこそ今日が初めてでしたけれども、SNS上で様々な活動の様子は見てきていたので。

益子:私もです!

小瀧:やっと一緒に演奏できて良かったです。

益子:私こそです。貴重な機会をありがとうございました。

――今後の活動についての夢などは?

益子:たくさんの方に演奏を聞いて頂きたいという気持ちが1番にあって、夢や希望、音楽の楽しさを、自分なりに多くの人たちに伝えられたら良いなと思っています。

小瀧:元々クラシックをやっていて、今色々な音楽もやっている中で、やはりクラシック音楽はどうしても広がりが難しい側面を持っているなと感じます。それをもう少し気軽に聴きに来て頂けるものにしたい、広く接して頂ける機会を作る為に、少しでも力になる活動をしていきたいと思っています。

――お二人の活躍を楽しみにしています。ありがとうございました。

小瀧俊治(ピアノ)、益子侑(ヴァイオリン)

小瀧俊治(ピアノ)、益子侑(ヴァイオリン)

取材・文=橘 涼香 撮影=荒川潤

サンデー・ブランチ・クラシック情報
2月25日(日)
滝千春/ヴァイオリン
13:00~13:30
MUSIC CHARGE: 500円

3月4日(日)

藤井香織/フルート&藤井裕子/ピアノ
13:00~13:30
MUSIC CHARGE: 500円

3月11日(日)

あいのね/フルート、ピアノ
13:00~13:30
MUSIC CHARGE: 500円

3月18日(日)

但馬有紀美/ヴァイオリン
13:00~13:30
MUSIC CHARGE: 500円

3月25日(日)

太田糸音/ピアノ
13:00~13:30
MUSIC CHARGE: 500円

4月8日(日)

寺下真理子/ヴァイオリン&SUGURU​/(from TSUKEMEN)ピアノ
13:00~13:30
MUSIC CHARGE: 500円

■会場:eplus LIVING ROOM CAFE & DINING
東京都渋谷区道玄坂2-29-5 渋谷プライム5F
■お問い合わせ:03-6452-5424
■営業時間 11:30~24:00(LO 23:00)、日祝日 11:30~22:00(LO 21:00)
※祝前日は通常営業
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