WOWOW「宝塚プルミエール LIVE 2018」公開収録ライブレポート

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2018.3.15
WOWOW「宝塚プルミエール LIVE 2018」

WOWOW「宝塚プルミエール LIVE 2018」

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宝塚歌劇の情報番組として宝塚ファンに愛され続けているWOWOWの長寿番組「宝塚プルミエール」。その人気番組で、3月24日(土)午後5時15分に放送されるのが「宝塚プルミエール LIVE 2018」だ。宝塚歌劇に新たな時代の到来を感じさせた21世紀に誕生した元トップスターたちが集い、宝塚歌劇の名曲を歌い継ぐ一夜限りの豪華ライブ&トークショーを繰り広げる、スペシャルなイベントとなっている。

出演は元星組の安蘭けい、元雪組の朝海ひかる壮一帆、元星組の北翔海莉、元月組の龍真咲、というそれぞれ一時代を画した歴代トップスターたちに加え、スペシャルゲストとして三浦涼介が出演。今年帝国劇場を皮切りに大阪、博多でも再演されるミュージカル『1789~バスティーユの恋人たち~』で新マリー・アントワネットとして登場する龍と、新ロベスピエールとして登場する三浦という、2018年ならではの顔合わせもあり、夢の競演が実現する一夜ともなる。そして今回の演出は、世界的演出家・蜷川幸雄さんの演出助手を長年務めた井上尊晶が担当。

そんな「宝塚プルミエール LIVE 2018」の公開収録が2月28日東京JPタワー学術文化ミュージアム「インターメディアテク」で行われ、豪華出演者の熱唱が披露された。

「インターメディアテク」は昭和モダニズムを代表する歴史建築として知られていた旧東京郵便局舎の2、3階部分を改装して、日本郵便株式会社と東京大学総合研究博物館が協働で誕生させたミュージアムスペース。ミンククジラ、キリン、オキゴンドウ、アカシカ、アシカの現生動物、さらには幻の絶滅巨鳥エピオルニス(通称象鳥)などの大型骨格標本や、巨大ダイヤモンドのレプリカ、貴石のコレクションなどが並ぶ格調高い空間だ。そこには、ここが東京の真ん中だということをしばし忘れさせるような、時を超えて佇む展示物が創る静けさと不変を感じさせる趣があり、その中に、歌劇の世界にしか存在しない「男役」の香りをまとった元トップスターたちが登場する、まさに幻想世界が展開されていく。

WOWOW加入者から抽選で選ばれた観客が見守る中、宝塚の大階段を連想させる白い階段上にまず現れたのは、出演者の統一カラーである白の衣装に身を包んだ朝海ひかる。宝塚の代名詞ともなっている作品『ベルサイユのばら』から主題歌「愛あればこそ」を階段を下りながら熱唱する。続いて、階段上に三浦涼介が登場。朝海の歌った「愛それは甘く~」を受けて、「愛それは悲しく~」と歌い継ぐ。男性が歌う「愛あればこそ」はなかなかに新鮮だ。そのまま二人のデュエットとなり、男女で歌われる「オスカルとアンドレ」、新たな楽曲の魅力に大きな拍手が沸き起こった。朝海と三浦は2010年に朝海が主演したDANCE ACT『MATERIAL』で共演した間柄。三浦にとって、この作品が初ミュージカルの舞台という記念すべき公演だったこともあり、10年ぶりに手を取り、瞳を交わして微笑みあう二人が美しい

ゴージャスな楽曲は一転して、小粋なメロディーに。階段下に佇んだのは壮一帆。自身が花組の二番手男役スター時代に出演した『復活─恋が終わり、愛が残った』のシェンボック役のナンバー「男の美学」をスタイリッシュに歌う。トルストイの「復活」を原作にしたどちらかと言えば重い作品の中で、壮がこの曲を歌う場面ではいきなり電飾が煌めくという演出を、何の違和感もなく歌い切った現役時代さながらの洒脱な雰囲気が、白のワンピース姿でもちゃんと醸し出せることに感嘆させられる。

続いて北翔海莉が登場。自身の主演作であるブロードウェイ・ミュージカル『ガイズ&ドールズ』から「運命よ、今夜は女神らしく」を持ち前の豊かな歌声で響き渡らせる。白のソフト帽を使った前半から、帽子を客席に投げてアップテンポになる後半へと、階段を上がる北翔はスカイ・マスターソンそのまま。どんな大きな賭けをも勝ち抜いてきたクラップシューターが、何よりも大切な女性への約束を賭けた時、運命の女神に祈る姿が浮かび上がった。

舞台のままに階段の中央でサイコロを投げるポーズで歌を締めくくった北翔が去ると、階段上に登場したのは安蘭けい。「絶景かな、絶景かな」のキメ台詞と共に披露するのは、自身のバウホール主演作であり、代表作の1つでもある『花吹雪恋吹雪』の同名主題歌。石川五右衛門を演じた安蘭の爽快な舞台ぶりが、目の前に蘇る。桜吹雪が会場全体に舞い散る中、アップテンポに畳みかける楽曲を力感のある声で歌いながら階段を下りると、楽曲はスローテンポな編曲になり、大型骨格標本の間を歩きながら、安蘭が歌い続けるという神秘的な演出に。ここにしかない空間で聞く耳に馴染んだ楽曲は、まるで別の魅力を放ち、演出の井上尊晶のアイディアが光る。

朝海ひかる

朝海ひかる

そこからLIVEは標本展示の中で繰り広げられ、朝海ひかるが再び登場。『ブラック・ジャック』から主題歌「かわらぬ思い」を。生れ出たことの奇跡と、命の尊さを歌った名曲がこの空間に驚くほどベストマッチ。女声の音域を越えているほど歌い出しの低い楽曲を楽々と歌う朝海が、退団後磨きをかけてきた歌唱力の充実を確かに感じさせる歌唱となった。

静かに和音が刻まれる中、北翔海莉が現われ、宝塚の海外ミュージカルレパートリーを代表する『エリザベート』から、皇妃エリザベートが歌うビックナンバー「私だけに」を。元男役トップスターの北翔としてはサプライズな選曲だが、そこは音域の広さを誇った北翔のこと。ついさっき『ガイズ&ドールズ』のスカイとして歌った同じ人が、同じ衣装でここまで無垢な表情を見せるのか!と目を奪う表現力での、変身の妙が楽しめる歌声となった。

龍真咲

龍真咲

続いて登場したのが龍真咲。白のドレスのワンショルダーをドロップさせて、美しい肩も見せる中、自身のバウホール単独初主演作品『HAMLET!!』から「To be or not To be」を歌い上げる。宝塚退団後は歌手としての活動に力を入れている龍だけに、久々に聴くこの楽曲にも更に熱が加わり「生か死かそれが疑問だ」で知られるシェイクスピアの名台詞が、ロックテイストの楽曲として響き渡る迫力のパフォーマンスとなった。

音楽が変化して、展示物の前に座った三浦涼介が『オーシャンズ11』から「愛した日々に偽りはない」を歌う。宝塚で柚希礼音、蘭寿とむの主演で上演された後、元SMAPの香取慎吾の主演でも上演された作品だから、男性が歌うことにも違和感がないだけでなく、三浦のソフトでありつつ切々とした歌い方にこのナンバーがピッタリ。もしこの曲を知らない方に、三浦のオリジナル曲だと言ったら信じてくれるのでは?と思うほどで、これは新鮮な聞きものだった。

三浦涼介

三浦涼介

その静けさを一気に明るく染め上げたのが壮一帆で、『SPEAKEASY─風の街の純情な悪党たち─』から「風の街(シカゴ)の心優しい悪党たち」を気障にかつ晴れやかに歌う。壮が最初に花組生になった最下級生時代のトップスター真矢ミキ(在団時みき)退団公演のミュージカル作品の主題歌で、当時宝塚の革命児だった真矢を象徴する楽曲。様々な経験を重ねて独自のダンディズムを開花させた壮の根っこに、この時代があることを再認識させる粋な選曲となった。

そして、この豪華ライブのトリを飾る安蘭けいが、『ザ・レビュー』から名曲中の名曲「夢人」を思い切ったブルースアレンジで披露する。宝塚の歴史の中で「ベルばら四天王」と呼ばれた四人のトップスターのうちの二人である、汀夏子と安奈淳トップ時代に、雪組から花組への続演という形で1977年に上演された『ザ・レビュー』から、現在まで歌い継がれている楽曲だが、これほど凝ったアレンジは珍しい。安蘭の豊かな歌唱力とジャージーなアレンジが、名曲に新たな光を当てた様は目を瞠るばかり。迫力のシャウトでキメるラストまで、このライブでしか聞けない宝物のような歌唱に万来の拍手が沸いた。

全員が勢ぞろいしてのカーテンコールで、この特別な空間でのライブは華やかに終了。贅沢で圧巻な歌唱の数々に、熱い喝采が贈られた。

そんなライブの熱狂の余韻が残る中、演出の井上尊晶を囲んで元トップスターたちのトークショーも行われ、ライブで歌った楽曲や、ミュージアムで歌う特別感、互いのこと等のトークに花が咲き、それぞれに組は違えども、宝塚という花園で結ばれた絆を感じさせる和やかな時間となっていた。

特別な場所での、特別な楽曲の数々。宝塚ファンなら見逃せない番組の放送が待たれる。

取材・文=橘涼香

放送情報

宝塚プルミエール LIVE 2018

■放送日時:3月24日(土)午後5:15
■放送局:WOWOWライブ
■出演:安蘭けい、朝海ひかる、壮一帆、北翔海莉、龍真咲
■スペシャルゲスト:三浦涼介
■演出:井上尊晶
■音楽:松田眞樹
■収録日・収録場所:2018年2月28日/東京 JPタワー学術文化総合ミュージアム「インターメディアテク」

 
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