JY(=知英) 歌手として、女優として、マルチに活躍する表現者の源に宿るパワー
JY 撮影=菊池貴裕
JY(=知英)が映画監督・岩井俊二とコラボレートしたプロジェクトのボーカルとして、企画EP『星が降る前に』をリリースする。岩井俊二が手がけた「星が降る前に」という歌詞をもとに、岩井、亀田誠治、Seiho、MONJOE、山本加津彦という5人のプロデューサーが楽曲を制作するという今作の新しい試みを、JYはどう表現したのか? 女優としては、ホームレスからセクシーな殺し屋、最新作『レオン』では“おっさん”など、与えられた役はなんでも自分のものにしてしまう。また最近では、映像作品(ネスレショートムービー『星に願いを』の第1話「1人じゃなくなるまでの1日」)で監督や編集まで務めるなどマルチに活躍するJY。英語、北京語、広東語、もちろん日本語も話せるという才女、JYというマルチでキレキレの表現者、その源に宿るパワーを探る。
いろんなことをやって、本当の自分を探している気がするんです。本当に好きなもの、本当にやってて楽しいものを探して人は生きているんじゃないかな。
――岩井監督の映画作品はご存知だったんですか?
はい。一番好きなのは『Love Letter』ですけど、他に『花とアリス』や『リリィ・シュシュのすべて』も好きでした。
――今回、岩井監督と一緒にお仕事できたことについてはどう思われましたか?
夢みたいですね。
――過去にはドラマ(『オーファン・ブラック〜七つの遺伝子〜』)で1人7役を演じたJYさん。今作では、同じ歌詞だけど違う5曲を5通りに歌い分けるという、歌手としての新しい挑戦があった訳ですけど。役を演じ分けるのとは違いましたか?
そうですね。曲に対しては、私はその曲の主人公になって一生懸命表現しようとするんですけど。たぶん、聴いた人それぞれ、抱く感情は違うと思うんです。でも、お芝居というのはあらかじめちゃんと決まったストーリーがあって。キャラクターの人生が描かれてますから。そこは歌とは少し違うんですよ。表現する、というところは同じだと思うんですけど、お芝居は始まりと結末がちゃんと決まっていて。周りの登場人物もちゃんと描かれている。だけど、歌はそこが自由なんですよね。
――ストーリーの起承転結や登場人物がそこまで具体的にかっちりと決まっている訳ではないですからね。
そうなんですよ。ただ、自由といっても、5人のプロデューサーの想い。“こういう風にやって欲しい”というのがまずあって。“ここはもっとこうして”と細かく言う方もいれば、 “もっと明るく”とかざっくり言う方もいましたし。
――歌録りは各プロデューサーと一緒にやっていったんですか?
そうですね。岩井さんは一緒にレコーディングはできなかったんですけど。
JY 撮影=菊池貴裕
――5人のプロデューサーはそれぞれどんな方ですか?
まず、岩井さん。岩井さんには今回のミュージックビデオも撮ってもらったんですけど。本当に映画を撮っているような気分でした。ミュージックビデオ にしては珍しくカメラ目線がないんですよ。考え事をしたり携帯をいじったり空を見たりという動きを繰り返して、歌詞を表現していったんですけど。そこは、岩井監督だったからこそこういうミュージックビデオになったんじゃないかなと思います。最後にエンドロールが流れるんですけど、映画みたいで嬉しかったですね。
――岩井さんはどんな方なんですか?
あまりしゃべらない方です。岩井さんって。ミュージックビデオを撮るときも「(ボソボソと)じゃあカフェで時間潰してる感じでいってください」みたいな感じで(笑)。でも、この曲ができたきっかけは岩井さんと出会ったことなんです。
――そうなんですか?
ええ。アメリカにお互い別の仕事で行っていたとき、たまたま同じホテルだったんですよ。それで、私の知り合いの方と岩井さんの知り合いの方が仲がよくて、一緒にご飯に行ったんです。その移動でL.A.の街を車で走っているときに、私がふと外を見て「空が綺麗だな」「あー、月だ」って言いながら写真を撮ってたんですね。そうしたら、私がそのとき独り言でしゃべっていたことを岩井さんが覚えていてくれて。このプロジェクトが動き出したとき「(あのときの)知英のこと思い出して歌詞を書いたんだ」っておっしゃっていて。
――うわー、ロマンチック。
ロマンチックですよね? それでこの曲が生まれたんです。だから、この歌の裏にはリアルなストーリーがあったんです。岩井さんはきっと、私が写真を撮っているのを見て、私の中が見えたんじゃないですかね。“なんか寂しそうだな”“写真を撮って、これを誰に送ろうとしてるんだろう”という風に物語を考えていったんじゃないですかね。私も実際、写真を撮って家族に送ったりすることもあるので、この歌詞を見たときはグッとくるものがあって感動しました。
――JYさんが家族に写真を撮るときは、どんなものを撮ることが多いんですか?
空の写真が一番多いと思います。
――なんで空を撮っちゃうんだと思います?
特に理由はないけど。空って同じじゃないですか? つながっているから。国境とか国とか関係なく、みんながつながっているから。あとは、私は自然というものにビックリさせられることが多いんです。綺麗な夕焼けとかを見ると、人間が人工的には作れないから、自然ってすごいなって思いますし。
――日本で見る空と韓国で見る空とは違いますか?
そんなに変わらないと思うんですけど。例えばヨーロッパとかは空が低いんですよ。
――月の色もオレンジだったりしますよね。
なんででしょうね。それも地球がどうやって生まれたのかという話になるんですけど。
――ああー。たしか取材の前に、星やそこから地球が誕生した起源などをスタッフさんに熱くレクチャーされてましたけど。JYさんはハマるとそれを追求していくタイプなんですか?
一つのことを全力でやりすぎて最後は疲れきっちゃう人ですね。でも、そうしないと私は満足できない。そこまでやっても満足できない人だから。物事に自分のすべてをバーッて入れないと物足りない気がしてしまうんです。何事も。
――JYさんって、熱血人間なんですね。
みんなそうは思ってないかもしれないですけど。私は意外とマジメなんです(笑)。そして意外とアツいんです。
JY 撮影=菊池貴裕
グループの頃も“自分がライバル”だと言っていた。私はおウチでもグループでも末っ子で。どこに行っても末っ子扱いされるのがすごく嫌だったんです。
――では、亀田誠治さんはいかがでしたか?
亀田さんは有名な方じゃないですか? でも最初はテンションが高すぎてびっくりしました。“あれ?”って(笑)。私がボーカルブースに入ったとき、カーテンを閉められたので分からなかったんですけど。私の歌を聴きながら亀田さんは立って踊っていたみたいです。全然踊る曲じゃないのに(一同笑)。それぐらいテンションが高くて、レコーディングも楽しかったです。
――にこやかでお茶目な方なんですよね。
そうなんですよ。私のスカーフを見て「それカワイイね!」って写真撮ったりしてましたから。曲は女の子らしい感じになりました。
――ではSeihoさんは?
Seihoさんは「好きな人がいること」のRemixを以前やってくれたんですけど。バラードだけどSeihoさん特有のサウンドで、面白い曲になったと思います。
――MONJOEさんは?
お仕事をするのは今回が初めてだったんですけど、MONJOEさんはバンドとしても活動していて、すごくオシャレな方でした。曲もミディアムテンポで、すごく歌いやすかったので、ノリノリでレコーディングできました。
――山本加津彦さんは?
山本さんはJYのソウルメイト。JYのデビュー曲からお世話になってますから。
――そこから、いまやソウルメイトといえる仲に。
いつも会ったら喧嘩ばかりしてますけどね(笑)。山本さんは大阪人で、私は大阪人とノリが合うので、山本さんと会うといじっちゃうんです。
――熱血に関西ノリ。お会いするまでJYさんがこんな人だとは思いませんでした。
ですよね? 会うと皆さん私の魅力にハマっていくんですよ(笑)。あと、こんなに日本語をしゃべるとも思ってなかったですよね?
――ええ。しかもおしゃべりだし(笑)。
いや。そこはインタビュアーさんによって全然変わるんです(笑)。
――今回のアー写とか、女性っぽくて大人な仕上がりなのに。
あー。写真は写真ですから(きっぱり)。あれはイメージ。でも、そういうところもあります(笑)。
――でも、こんなにクリエイティブに対して、表現者として熱血で挑むJYさんだからこそ、こんな豪華なプロデューサーたちとの共演が実現できたんだなと、今日インタビューをしていて感じましたよ。
私はアイドルだったし、グループの一員だったからか、みなさん「ここまでやるとは思わなかった」とおっしゃるんですけど。とくにお芝居をしているときはみんなそう言いますね。
――そこは一人になって変わったところなんですか? それとも、グループ時代からそういう資質は持ってらっしゃったんでしょうか。
小さい頃からこうでした。負けず嫌いなんです。しかも、自分に負けるのがすごく嫌で。例えば、グループのなかではみんながライバルじゃないですか? 同じグループでも。ただ、私はそういうことは全然思ったことがなくて。グループの頃も“自分がライバル”だと言っていたんですけど。私はおウチでもグループでも末っ子で。どこに行っても末っ子扱いされるのがすごく嫌だったんですよ。
――末っ子としてみんなに可愛がられてたじゃないですか?
それがすっごい嫌で。“私のこと子ども扱いしないで”って思っていたんです。それで、私は絶対変わってやると思って。グループを出てからは、“カワイイ”って言われるのは絶対嫌だと思って、セクシーな役に挑戦したりして。そうやっていろんなことをやっていくなかで、徐々に今回のミュージックビデオのような大人っぽいこともできるようになったんじゃないかなと思います。根本にそういう負けず嫌いがあるから、なんでも熱くなっちゃうんだと思います。
――子ども扱いされるのがなんで嫌だったんですか?
みんなに“ジヨンは末っ子だからいいよ”という扱いをされるのが嫌だったんです。それに対して“バカにするなよ!”っていう感じで“絶対大人になってやる”と思ってたんですよね。一人になってからは、それ以上に責任感をすごく感じていたからこそ、すべてに対して熱く挑めていたんだと思います。グループのときは、自分はこれぐらいやればあとは他の4人がやってくれたから。そうやってみんなで一緒に作るのがグループのいいところなんですけど。いまは一人だから、5人で歌っていた分の歌を自分一人でやる訳ですから。責任感は全然違いますよね。
JY 撮影=菊池貴裕
――じゃあ、自分に負けるのが嫌なのはなんでですか? ときには“ま、このぐらいはいっか”とサボりたくなるときはないですか?
その気持ちはまったくないです。自分には一番厳しいんですよ。いい加減なことは許せないんです。他の人がサボっているのはどうでもいいんです、気にならない。でも、自分には厳しくて。
――例えば、どんなことが一番許せないんですか?
練習したのに本番でちゃんとできないとか。見た目もですね。自分の体調管理、ダイエットも含め。そういうのは特に厳しいです。そういう生活に慣れてしまっているというのもあるんですけど。たまに嫌になるときもありますけどね。
――そういうときはどうやって気分転換するんですか?
極端なんです。自分にすごく厳しいときと、張り詰めていた気を緩めてなんにもしないとか。そういう風にしないと私は壊れてしまう。それも自分はよくわかっているので、切り替えをちゃんとして。休むときはしっかり休んで、頑張るときは頑張るというのを決めてますね。
――では、頑張り通したときの自分へのご褒美はなんですか?
好きな人と会って美味しいご飯を食べるとか、おしゃべるするとか。あとは寝る。寝るの大好きです。
――中身はサバサバしてて男らしいんですね。
よく言われます(笑)。
――では最後に、読者にメッセージをお願いします。
言葉はいらないぐらい今回のプロジェクトはスペシャルで。私もこんな挑戦は初めてだし、いままであまり見たこともないんですよ。同じ歌詞を5人のプロデューサーが作った曲で歌うというのは。あと岩井さんがこういう形で参加してくれたことも特別なことだと思うし。歌詞は、誰が聞いても“あー、私もこういうこと思ったことある”と感じてもらえると思います。同じ歌詞だけど、この5曲のなかから自分の好きなテイストの曲を探したり。そのときの気分で順番を入れ替えて聴いたりするのも楽しいだろうし。いろんな形で楽しんでほしいです。
――分かりました。これが最後の質問です。女優に歌手に映像監督に、JYさんはこの先、何になりたいのか教えてください。
何になりたいか? うーん、自分になりたいです。私はいろんなことをやっていて、最終的には本当の自分を探している気がするんですよね。そういうことなんじゃないかなという気がします。いま初めて考えてみたんですけど(笑)。みんなそうじゃないですか? 本当に好きなものはなんだろうとか、本当にやってて楽しいものはなんだろうとか。そういうものを探して、人は生きているんじゃないかなと思います。
取材・文=東條祥恵 撮影=菊池貴裕
JY 撮影=菊池貴裕
リリース情報
【完全生産限定盤】SRCL-9733 ~ SRCL-9735 ¥7,000+税
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イベント情報
【イベント参加方法】
知英 JY ファンクラブ「bicycle」にご登録の方限定で、抽選で100名様(年間80名様・月額20名様)を無料ご招待させていただきます。
受付開始の26日にメールマガジンにて応募受付ページのURLをお送りいたします。※お申込みにはログインが必要です。
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応募開始:3月26日(月)12:00
応募締切:3月29日(木)23:59
当選発表:3月30日(金)予定(当選者の方にのみメールにてご連絡いたします)
イベント内容:トーク&ライブ&CDジャケットサイン会
※会場内にて、3月28日発売、「星が降る前に」(SRCL-9733〜35)をお買い上げの方対象で、お買い上げいただいたCDジャケットにサイン会を実施します。
※商品はなくなり次第終了となります。
※おひとり様1回の会計につき、2枚までとさせて頂きます。
※当イベントはクローズドでの実施となります。ご当選者以外のお客様は、ご参加頂けませんので予めご了承下さい。