田中圭インタビュー「その瞬間瞬間で、嘘のない芝居をしたい」 舞台『サメと泳ぐ』

インタビュー
舞台
2018.5.14
田中圭

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2018年9月から東京にて初日を迎え、その後、仙台、兵庫、福岡、愛媛、広島と巡演される舞台『サメと泳ぐ』。本作は原作者のジョージ・ホアンがハリウッドでの実体験に着想を得て書き下ろした、映画界の裏側をブラックユーモア満載に描いた傑作戯曲だ。
ショー・ビジネスとは、夢を実現させるためには、地位と名誉を求める意味とは、そこで生きる男と女それぞれの思惑とは……。描かれるのは綺麗事一切なし、究極の騙し合いと凄絶な人間ドラマだ。

人間性は最悪だが、数々の作品をヒットされた業界の大物プロデューサー・バディ(田中哲司)の元で、ハリウッドでの成功を夢見る脚本家志望のガイを演じるのが田中圭。TVドラマ、映画、そして舞台と休む暇なく活躍している田中は本作を、また舞台という仕事をどう見ているのか。話を聞いた。

田中圭

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--今年は3月に三谷幸喜さん作・演出の舞台『江戸は燃えているか』への出演に続き2本目の舞台となるんですね。この作品のオファーがあったときの心境はいかがでしたか?

「さあどうしようかなあ」って正直思っていました(笑)。というのも、舞台の仕事は1年に1本にしたいと思っているんです。舞台は好きです。好きだからこそ、一つひとつ大切にやっていきたいと思っています。ですが、そのスパンが半年に1本になってきたので、今回受けるかどうするか迷ったんです。そんなとき信頼できる先輩や友人から「千葉哲也さんの演出いいよ! やってみなよ!」と背中を押されまして。僕は人見知りなのであまり「初めまして」な演出家さんと組むことがないんですけれど……「運命」というと大げさですが、その時期に出会うべくして出会った「役」や「人」ってきっとあると思うんです。だから今回やってみようと決めました。

--なるほど。ちなみに本作はご存知でしたか? 以前映画にもなっていますが。

はい。この作品を映画で観たとき、「ああ~」って声が出ました(笑)。やりがいも手ごたえもありそうで、相当疲れそうでもある、大変な作品だと思います。人間の嫌なところや人間臭い部分がたくさん出ている作品だな、と感じました。演じる上で芝居っぽくならなければいいと思います

--今回演じるガイは上司のバディにかなりひどい扱いを受ける役です。そのバディ役を演じる田中哲司さんに対して、どのようなイメージを持っていますか?

哲司さんの印象は「熱い」「怖い」「頑固」ですね(笑)。実際それほど哲司さんと共演したことがないので、哲司さんが普段やっている役が持つイメージがそのままあります。今回はまっさらな気持ちで哲司さんにぶつかろうと思っています。

--ガイの役作りについて。今の時点で何か構想や準備されていることはありますか?

いつものことなんですが、今は何も考えていないんです。以前は役作りをして形から入ろうとしていた時期もありました。でも今は稽古をやりながらいろいろ感じて、そこで役を作っていくようにしています。哲司さんや野波(麻帆)さんという相手の出方でこちらも変わってくるので、僕が勝手に役を作って持っていくのはあまり意味がないなと考えています。稽古をしながら作っていくほうが絶対楽しくなると思うんです。だから……作っていません(笑)! 千葉さん含め、共演の皆さんとは、同じ土俵の上で同じ感覚をぶつけていけたらいいな、と思っています。

田中圭

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--となると、稽古が重要になってきますね。稽古はお好きですか?

いいえ、嫌いです。大嫌いです(爆笑)。芝居を作っていくのはもちろん好きなんですが、稽古となるとすっ飛ばせるならすっ飛ばしたいタイプです。

--そんなハッキリと(笑)。

稽古ってやってもやってもまだ足りないと思うんです。だったら決まった期間の中で本番で形になるようにある程度まで仕上げておく、それがプロの仕事だと思うんです。ああ、こういうことを口にするってことは僕にもプロ意識ってあるんだなと思いました(笑

田中圭

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--ちなみに田中さんはシリアスな役から、ドラマ『おっさんずラブ』で男性から愛される男性役まで、演じる役の幅が非常に広い方だという印象を持っています。

客観的にはおもしろい作品に関わらせていただけているなと思っています。でも演じる役については、その台本を読むと「俺にはできねーよ」って思うことがよくありますね(笑)。先日まで出演していた『江戸は燃えているか』の村上俊五郎役も、三谷さんが当て書きしてくれています。ですが、最初読んだときは「どこが俺なんだよ!」って思いました(笑)。最初はどうやっていけばいいか分からない役であっても、気が付いたら自分のものになっている。『おっさんずラブ』でもこのシーンは自分にはとてもできるとは思えない、と考えていても、気が付いたら撮影が終わっていて「あれ?」と。だから構えずに、その瞬間瞬間で嘘がないものができていればいいんじゃないかな、それが最高なんじゃないかなと思うんです。その役が僕に合ってなかったらどうしようって考えることもありますが、やってみないとわからないですしね。「僕とその役はまったく似ていないし全てが違いますが、でも全部が僕なんです」って言える俳優になりたいです。

--最後に、本作に出演するにあたって、楽しみにしていることは?

僕自身は、ガイのようにあまり追いつめられるのは好きじゃないし、出世欲もないです。でもガイという男を興味深く感じています。芝居の後半で哲司さんとのやり合いもありますし、体力も相当使いそうですが、ガイを演じるときに僕自身がどうこの役を感じるのか楽しみにしています。

田中圭

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取材・文・撮影=こむらさき

公演情報

関西テレビ放送開局60周年記念『サメと泳ぐ』

■日程・会場:
【東京公演】2018年9月1日(土)~9日(日) 世田谷パブリックシアター 
【仙台公演】2018年9月11日(火) 電力ホール 
【兵庫公演】2018年9月14日(金)~17日(月・祝) 兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール
【福岡公演】2018年9月20日(木)~21日(金) ももちパレス 
【愛媛公演】2018年9月28日(金) 松山市総合コミュニティセンター キャメリアホール 
【広島公演】2018年10月4日(木) JMSアステールプラザ大ホール 

■原作:ジョージ・ホアン
■上演台本:マイケル・レスリー
■演出:千葉哲也
■翻訳:徐 賀世子
■出演:田中哲司、田中圭、野波麻帆、千葉哲也、ほか
【企画・製作】関西テレビ放送
 
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