NHK大河ドラマ特別展『西郷どん』レポート 大久保利通役・瑛太「日本中の大河ファンに見てほしい」

レポート
アート
2018.6.1
瑛太

瑛太

画像を全て表示(16件)

東京・上野の東京藝術大学大学美術館で、NHK大河ドラマ特別展『西郷(せご)どん』が開幕した。2018年のNHK大河ドラマ『西郷どん』と連動した本展は、薩摩藩や西郷隆盛ゆかりの歴史資料や美術品などを通して、西郷隆盛の人生を辿るとともに、幕末から明治維新にかけての激動の時代を紐解いていく。開幕に先駆けて行われた報道内覧会には、大河ドラマで大久保正助(利通)を演じる瑛太も登場。瑛太が語った本展の感想やドラマの今後の展開などを交えつつ、展覧会の見どころを紹介する。

「西郷どん」はどんな顔?

西郷隆盛といえば、私たちの頭に思い浮かぶ顔がある。太い眉毛に大きな眼、恰幅のよさがうかがえるどっしりとした顔立ち。かなり明確なイメージが共通認識として出来上がっているものの、実は西郷隆盛の写真は1枚も残っていないというからびっくりする。

本展では、そんな謎に包まれた西郷像に迫るべく、西郷本人を直接知る者が描いた肖像画や、西郷の遺族の写真や証言などを参考に制作された肖像画の数々が並ぶ。どれもやはり先に挙げた特徴がしっかりと描かれているが、装いや表情など細部の違いを見比べてみると面白い。

石川静正画「西郷隆盛肖像画」(大正時代初、個人蔵)

石川静正画「西郷隆盛肖像画」(大正時代初、個人蔵)

のっぺらぼう!? 西郷像制作の苦労が伝わる新出写真

私たちが抱く西郷隆盛のイメージを決定づけたのは、上野公園にある西郷隆盛像だろう。この銅像は、西郷が亡くなってから20年以上たった1898(明治31)年に完成したもの。東京藝術大学美術学部の前身である東京美術学校が制作にあたったが、その制作の苦労がうかがえる写真が本展で初めて公開される。

上野公園内にある西郷隆盛像のバナー

上野公園内にある西郷隆盛像のバナー

「西郷隆盛未成像并面部」(明治時代、東京藝術大学蔵)【展示期間:2018年5月26日~6月17日】

「西郷隆盛未成像并面部」(明治時代、東京藝術大学蔵)【展示期間:2018年5月26日~6月17日】

「西郷隆盛未成像并面部」拡大パネル

「西郷隆盛未成像并面部」拡大パネル

写真は木型の制作過程で撮影したもので、西郷と犬の顔がのっぺらぼうになっている。肖像写真が1枚も残っていなかった西郷の顔をどう表現したらいいのか、悩みながら制作にあたっていたのだろう。木型制作担当の高村光雲は、当時の新聞で、西郷の顔を立体で表現することの苦労を語っている。資料が乏しい中、写真左上に添えられているイタリアの画家・キヨッソーネの肖像画をはじめ、西郷の兄弟や親戚の顔、西郷を知る人物から聞いた話を基に制作を進めたという。

西郷の犬好きを物語る逸品も初公開

西郷といえば、上野公園の銅像でも犬がお供をしており、愛犬家として知られる。自身の好物である鰻を犬に与えたという逸話がいくつか残っているほどだ。そんな無類の犬好きな西郷は、1873(明治6)年に参議を辞して鹿児島に帰郷すると、何匹もの犬と共に兎狩りに出かけるようになった。優秀な猟犬の噂を聞きつけては譲渡を願い出ていたという。

「西郷隆盛所用 刀装具(縁頭、目貫)」(1820年、個人蔵)

「西郷隆盛所用 刀装具(縁頭、目貫)」(1820年、個人蔵)

今回が初公開となるこの刀装具は、西郷が「雪」という猟犬を預かる代わりに贈ったと伝わる縁頭と目貫だ。なんと明治天皇が下賜したものとのこと。このような貴重なものを贈るほど、西郷にとって犬は大切な存在だったのだろう。

歴史が大きく動くきっかけとなった幕末の重要資料

歴史好きに注目してもらいたいのが、時代の転換が垣間見られる資料の数々。1867(慶応3)年10月13日に朝廷から薩摩藩へと下された「討幕の密勅」(6月17日まで展示、それ以降は複製)は、時代が討幕への道を突き進む契機となった。

「討幕の密勅」(1867年10月13日付、鹿児島県歴史資料センター黎明館蔵 玉里島津家資料)

「討幕の密勅」(1867年10月13日付、鹿児島県歴史資料センター黎明館蔵 玉里島津家資料)

この密勅と時を同じくして、二条城二の丸御殿黒書院にて徳川慶喜が大政奉還を上表。その様子を描いた「大政奉還 下図」は、遠近感が強調された構図と天井画や障壁画の細やかな描写が印象的だ。黒書院の障壁画は狩野探幽の弟・尚信の筆によるもので、そのうち「二条城二の丸御殿 黒書院二之間 桜花雉子図(部分)」が展示されている。「大政奉還 下図」に描かれている障壁画とあわせて見ることで、史実をよりリアルなものとして感じられるはずだ。

邨田丹陵筆「大政奉還 下図」(大正時代末~昭和時代初、明治神宮蔵)

邨田丹陵筆「大政奉還 下図」(大正時代末~昭和時代初、明治神宮蔵)

狩野尚信筆「二条城二の丸御殿 黒書院二之間 桜花雉子図 (部分)」(重文、1626年、 京都・元離宮二条城事務所蔵)

狩野尚信筆「二条城二の丸御殿 黒書院二之間 桜花雉子図 (部分)」(重文、1626年、 京都・元離宮二条城事務所蔵)

もう一人の明治維新の英雄、大久保利通

西郷と並び、明治維新の立役者となった英雄の一人が大久保利通だ。大河ドラマで大久保を演じる瑛太は、本展を見て「実物の資料を見ると、実在した人物なのだとひしひしと実感しました」とコメント。「大久保は小物好きと聞きましたが、僕も小物が好き。懐中時計が展示されていたのを見て、僕も懐中時計が好きで持っているので、似たところがあるのかなと思いました」と話し、自身と大久保との間に共通点を見出していた。

瑛太

瑛太

一方、ドラマで吉之助(西郷)と久光(島津)との間に挟まれる自身の役どころを中間管理職的立場だといい、「自分とは全然違いますね。でも、だからこそ演じる上での面白さはあります」とも。さらに、演技とはいえ、中間管理職的な立場がストレスで白髪が増えたと告白し、会場の笑いを誘った。

印象に残った展示品について聞かれると、島津斉彬のものと伝わる甲冑や西郷が勝海舟のすばらしさをしたためた大久保宛ての手紙を挙げ、「百何十年も前のものなのに、それが今でもきれいに残っている。実際に起きたことをドラマ化する面白さを想像しながら展示を楽しんでほしいです。日本中の大河ファンの方にぜひ見てもらいたい」と、本展をアピール。ドラマについても「裏切り者的な扱いをされがちな大久保ですが、大久保のすばらしさをしっかりと伝えて、大久保ファンを増やしていきたい。これからどんどん面白いキャラクターが出てくるので、その化学反応を今から楽しみにしてほしいですね」と熱く語った。

左が「伝島津斉彬所用 紫糸威鎧」(江戸時代、京都国立博物館蔵)、右が「島津斉彬下賜の陣羽織」(江戸時代、鹿児島県歴史資料センター黎明館蔵)

左が「伝島津斉彬所用 紫糸威鎧」(江戸時代、京都国立博物館蔵)、右が「島津斉彬下賜の陣羽織」(江戸時代、鹿児島県歴史資料センター黎明館蔵)

重文「大久保利通宛 西郷隆盛書状」(1864年9月16日付、鹿児島県歴史資料センター黎明館蔵)【展示期間:2018年5月26日~6月17日】

重文「大久保利通宛 西郷隆盛書状」(1864年9月16日付、鹿児島県歴史資料センター黎明館蔵)【展示期間:2018年5月26日~6月17日】

NHK大河ドラマ特別展『西郷どん』東京展は2018年5月26日〜7月16日まで開催。その後、本展は、大阪、鹿児島と、「西郷どん」ゆかりの地を巡る予定だ。明治150年という節目を迎えた2018年。本展を通じて明治維新を改めて見つめ直してみてはいかがだろうか。

イベント情報

NHK 大河ドラマ特別展『西郷どん』
 
【東京展】
日時:2018年5月26日(土)~7月16日(月・祝)
場所:東京藝術大学大学美術館
東京藝術大学大学美術館HP:https://www.geidai.ac.jp/museum/
 
【大阪展】
日時:2018年7月28日(土)~9月17日(月・祝)
場所:大阪歴史博物館
 
【鹿児島展】
日時:2018年9月27日(木)~11月18日(日)
場所:鹿児島県歴史資料センター 黎明館
シェア / 保存先を選択