『銃夢』実写映画化『アリータ:バトル・エンジェル』主人公の“目”はなぜ大きい? プロデューサーが実写化コンセプトを明かす
『アリータ:バトル・エンジェル』プロデューサーのジョン・ランドー氏
6月14日(木)、映画『アリータ:バトル・エンジェル』のプレゼンテーションが東京・TOHOシネマズ 六本木ヒルズにて開催された。イベントには、同作のプロデューサー・ジョン・ランドー氏が登壇した。
『アリータ:バトル・エンジェル』は、木城ゆきと原作の漫画『銃夢』を、『アバター』シリーズのジェームズ・キャメロン製作・脚本、『デスペラード』『シン・シティ』『マチェーテ』シリーズのロバート・ロドリゲス監督で実写化するプロジェクト。現在から数百年先の未来を舞台に、サイボーグの少女・アリータ(ローサ・サラザール)が自身の存在のルーツを求めて戦う姿を描く。アリータをスクラップの中から救い出し、肉体を与えるサイバードクター・イドをクリストフ・ヴァルツが演じるほか、ジェニファー・コネリーや、マハーシャラ・アリ、エド・スクレイン、ミシェル・ロドリゲス、マルコ・サロールらが出演している。
イベントでは、世界最速となる同作のフッテージ上映も行われた。上映に際し、ランドー氏は、キャメロン氏が『銃夢』実写化を1999年から企画していたことなど、製作経緯を説明。『アバター』の製作で培った3Dやパフォーマンスキャプチャーの経験や知識が、『アリータ』に役だったこと、ロドリゲス監督が昼食会で同作監督を直談判して勝ち取ったことなど、様々なエピソードを明かしていた。その後、アリータが義体を得て目覚めるシーンに始まり、舞台となるアイアンシティの姿、アリータがサイボーグたちと戦う迫力の戦闘シーンなど、約10分にわたるフッテージを上映。ランドー氏は、「ここまでの映像はほんの一部です。本編では、原作の“モーターボール”のシーンも登場します」など自信をうかがわせていた。
また、ランドー氏は記者からの質問にも丁寧に回答している。以下はイベント時のQ&Aより。
(C)2017 Twentieth Century Fox Film Corporation
――『アリータ』(『銃夢』)というコンテンツのどこに世界に通用する魅力があると考えられたのですか?
アリータというキャラクターですね。この漫画を初めて読んだとき、キャメロン氏には当時13歳の娘さんがいました。そこで、ティーンエイジャーがどんな苦しみを経て成長していくのか、その過程を見ていたんです。木城先生は、キャラクターの中で自分自身が誇りに思える方法を探り、自分で世界にインパクトを与えることが出来るということを理解していく、その過程を描いていらっしゃいます。そして、「人であるということは、どういうことなのか?」という疑問にも答えようとしています。今は技術もどんどん発展して、ペースメーカーや義肢をつけたり、身体を変えていく世の中です。そんな中で(『銃夢』)では、頭から心に繋がり、私たちを人たらしめているものが描かれている。わたしたちは、アリータの中にある人間的なキャラクターに惹かれたんだと思います。
――『アリータ』製作までの経緯をもう少し詳しく教えてください。
ジェームズ・キャメロンと私の『アリータ』との出会いには、(ロドリゲス監督以外に)もう一人フィルムメイカーの存在があります。それは、ギレルモ・デル・トロ氏です。彼は非常に熱心に『アリータ』シリーズを読んでいて、漫画をわたしたちのところに持ってきてくれました。そして、「これ(の映画化)を考えてみたほうがいいですよ」と勧めてくれました。わたしは3巻まで目を通し、あとあとほかにも沢山巻数があることを知りました。ギレルモ氏が漫画を持ってきてくれたことで、わたしはこの作品に出会うことができたんです。
――主人公・アリータの瞳がとても大きいことには、どんな意味があるのですか?
目は心の窓。その窓を大きくすればするほど、キャラクターの心の中に観客を引き込むことが出来ると考えています。この映画を作るにあたって、沢山の人に「そんなに目を大きくしなくても……」と言われました。でも、この原作シリーズや漫画という文化を見ても、そこに意味があると思うんです。そして、現在の技術は、漫画のキャラクターとのつながりを犠牲にすることなく、映像化できるようになりました。映像をご覧になると、やはり最初は目が気になると思います。でも、彼女が最後の敵を殴りつけるシーンをご覧になるころには、そんなことは気にならなくなっていることを願います。わたしたちは、キャラクターに命を吹き込むことで、文化や歴史を称えることが出来たんじゃないか、と思っています。
――原作の再現度にはどの程度こだわれれたのでしょうか?
わたしたちが意識したのは、“漫画のビジュアル”を活かすことでした。それは、アイアンシティを造るにあたってもそうです。その中で、木城先生ともお話をしました。先生は、アイアンシティの場所として、北米のどこかをイメージされていた。でも、わたしたちは中央アメリカ付近を提案したんです。なぜなら、「(アイアンシティと繋がる)ザレムには軌道エレベーターがあるので、赤道近くのロケーションじゃないといけない」と思ったからです。この作品はSFではありますが、一部は事実に基づいたものにしたかった。そして、木城先生もそれを認めてくださいました。アイアンシティにしても、“カンザス”というバーにしても、モーターボールにしても、キャラクターにしても、漫画のページから飛び出して、スクリーンに躍り出てきたようなものを作りたいと思いました。一方で、サイエンス・ファクト(科学的な事実)に基づいたものになるよう、『アバター』や『エイリアン』のように、キチンと詰めて作り込みたいと思ったんです。
なお、イベントでは原作者・木城ゆきと氏のコメントも読み上げられている。
木城ゆきと(原作)
「銃夢」の最初の連載が終わる少し前の1994年から、海外のプロデューサーや監督から映画化したいというオファーがいくつかきて、そんなとき編集者の人と「キャメロンが映画化したいと言ってきたらどうする?」と冗談を言い合っていたものです。強いヒロイン、アクション、SFビジュアル、などキャメロン監督と僕の作品には共通点が多いけれども、本当にそうなるとは、もちろんその時は夢にも思っていませんでした。
そしてこの度、『アリータ:バトル・エンジェル』の世界で初めてメディアに公開される最新映像を、作品が生まれた日本に最初に持ってきていただき、ありがとうございます。
僕自身、この映画の完成をとても楽しみにしています。
映画『アリータ:バトル・エンジェル』は12月全国公開。