極上バレエ&音楽の饗宴、新春は日本でパリ・オペラ座気分!

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2015.11.9
左からジョルジュ・ヴィラドムス、ドロテ・ジルベール、エルヴェ・モロー、マチュー・ガニオ (c)Ann Ray

左からジョルジュ・ヴィラドムス、ドロテ・ジルベール、エルヴェ・モロー、マチュー・ガニオ (c)Ann Ray

「この感動を日本の観客と分かち合いたい!」〈エルヴェ・モロー/オペラ座エトワール〉

今秋、舞台芸術ファンを歓喜させるビッグニュースが舞い込んだ! パリ・オペラ座を代表するエトワール、エルヴェ・モローがメキシコ出身の若手ピアニスト、ジョルジュ・ヴィラドムスと共に企画・出演し、昨秋NYのカーネギー・ホールで大好評を博したバレエと音楽の公演が、内容も新たにパワーアップして新春の日本にやってくる。それが『Stars in the Moonlight月夜に煌めくエトワール~Music&Ballet Concert~』だ。

日本ツアーのため、急きょ中村恩恵に新作『ツクヨミ』の振付を依頼するなど、ぎりぎりまで練り上げられたプログラムはバレエ6作品&ピアノとヴァイオリン演奏5作品の全11作品。しかも、バレエ6作品のうち5作品が世界初演または日本初演という豪華ラインアップだ。今回はゲストダンサーにパリ・オペラ座のエトワールからダンスマガジン誌の「人気ダンサーランキング」でトップに君臨する“王子様”ことマチュー・ガニオ、愛らしい容姿と抜群のテクニックでモデルとしても活躍する新世代のディーヴァ、ドロテ・ジルベールの出演が決定。さらに演奏では史上最年少の16歳で世界最難関と言われるハノーファー国際コンクール優勝の実績を誇る世界的ヴァイオリニスト、三浦文彰が加わり魅惑の演奏を披露する。

カーネギー・ホールでの喝采の最中、「この感動を日本の観客と分かち合いたい!」と即座に日本ツアーを思いついたというエルヴェ・モローに、公演にかける意気込みを聞いた。

ジョルジュ・ヴィラドムスが奏でるドビュッシー作曲『月の光』で踊るエルヴェ・モロー (C)Francette Levieux

ジョルジュ・ヴィラドムスが奏でるドビュッシー作曲『月の光』で踊るエルヴェ・モロー (C)Francette Levieux

―――今作はとくに思い入れの強いプロジェクトだそうですね。

ピアニストのジョルジュ・ヴィラドムスが芸術を通して貧困の子どもたちを支援する財団(Crescendo con la Musica Fondation,2012年設立)を立ち上げて、その活動に感銘を受けてスタートした企画です。今回の日本公演は基金ではないけれど、自分自身とてもやりがいのあるオリジナルのプロジェクトです。

昨秋、NYカーネギー・ホールで初めての公演を行いました。好評を頂き、その瞬間日本で公演したいと思いました。14歳で初来日して以来、日本へは何度も来ていますので。この経験を日本の方と分かち合いたいという気持ちでした。心を込めてプロジェクトに向かっています。

―――ゲストダンサーも豪華で、日本にいながらパリ・オペラ座を感じられそうです。

マチュー・ガニオとはオペラ座で一緒に踊っていますし、2人ともほんとに大好きなんですよ。今回のプロジェクトに2人は絶対に必要だと思いました。タレント性に富みチームワーク良く、しかも僕たち3人には友情もありますしね。

―――今回のプログラムはヨハン・ガブリエル・ザイドルの詩『さすらい人が付きに寄せる歌』に着想を得た構成です。

詩のイメージから今公演では〈月、夜、旅人〉をテーマにしています。音楽的にもミュージック系のバレエという構成で、バレエのための音楽にはしたくなかった。演奏のみのコンサートのような場面もありますし、ダンサーも音楽家もそれぞれが役割をもっている。オリジナリティの強い新プロジェクトです。

―――中村恩恵振付の新作『ツクヨミ』からも、日本公演へ向けた熱意が伝わります。

ネットなどを駆使して何時間もテーマを探しました。そうして、ようやく『ツクヨミ』のテーマを見つけたのです。でも、日本の方には全然知られていないと、後で知りました(笑)。あまり馴染みのない、かけ離れた世界だと聞きました。ただ、ヒストリーを語るわけではないので。文化、時間とか色んな面がありますよね。月に関するアイデアをくれたのが『ツクヨミ』でした。

中村さんとは01年に初めてオペラ座でお会いしました。その時は、イリ・キリアンのアシスタントという立場でした。初めて彼女の踊りを見たときは、他の誰とも違う美しさに衝撃を受けましたね。本当に心打たれたので、『ツクヨミ』の振付をお願いできるのは彼女以外考えられなかった。依頼を引き受けて貰えて本当に幸せです。彼女の振付でソロを踊れることは喜びですし、自分のイメージしたものよりさらに美しいものができたと自負しています。

―――『LUNA』はご自身の振付ですね。

始めて自らのソロのために振付を行いました。やりたいことが見つかったという感じです。楽曲はラフマニノフの『ヴォカリーズ』。ピアノとソプラノ歌手のための楽曲で歌詞はなく、すべて「ラララ~」で歌われるもの。旅人、新月だったりいろんなことを想像できる。振付に関してはクラシックになります。

一方で、自分自身に振り付けることは、とても難しいことだと分かりました。自分の踊りを後ろから観ることはできないでしょ。振付家は作品を外側からみないといけないので。確かに色んな方法を駆使して確認することもできますが、本当のことを言えば、振付は他人のためにするべきです(笑)。

『LUNA』を踊るエルヴェ・モロー (C)Luis Enrique Rivera Cuyar

『LUNA』を踊るエルヴェ・モロー (C)Luis Enrique Rivera Cuyar

―――『LUNA』のようにピアノと共に、ヴァイオリンの伴奏で踊ることは珍しいのでは?

確かにピアニストとは朝のレッスンから一緒ですし、ピアノ音楽をベースに振り付けられた作品も多い。そういう意味で、ヴァイオリンで踊ることは珍しい。それでも、素晴らしい楽曲も見つかったので。ヴァイオリンの音色は本当に美しい。ピアノとヴァイオリンの合奏もあります。月のテーマにぴったりな、ロマンチックな曲になっています。

今作では独奏やピアノとの合奏も披露するヴァイオリニスト三浦文彰 (C)Kotaro Yokomizo

今作では独奏やピアノとの合奏も披露するヴァイオリニスト三浦文彰 (C)Kotaro Yokomizo

―――パトリック・ド・バナ振付の世界初演作『ラスト・ヘヴン』ではマチューとの共演が実現。男性同士のデュエットが新鮮です。

パ・ド・ドュというように男女2人のペアはあっても、男性2人は珍しい。ただ、最近は少しずつですが、男性2人で踊ることも増えてきています。パトリック・ド・バナには、ダンサーは僕とマチューのみ。テーマは月で、音楽には必ずピアノとヴァイオリンを入れてくれとお願いしました。彼は一ヶ月ぐらいこもって振付を考えてくれました。その時『鏡の中の鏡』という楽曲を見つけました。

男2人が踊っている。兄弟か友達か、ふたりの関係はわからない。ストーリーはなく、肉体美で魅せるものです。本当に美しい振付ですから、言葉で伝えられないのが心苦しいのですが。美しい動き、マチューと僕との関わり合いの中から雰囲気が立ち上る。そこから物語を語るのかもしれません。

―――他にもドロテ・ジルベールが踊る古典の名作『瀕死の白鳥』など、新旧多彩な構成が目を惹きます。最後にファンへメッセージを。

公演に関わるすべての芸術家たちの力を集結して、美しく新しいスペクタクルをお届けします。たくさんの方に興味を持って観て頂きたいですね。ご来場をお待ちしております。

公演情報

『Stars in the Moonlight 月夜に煌めくエトワール ~Music&Ballet Concert~』

<東京公演>
■日時:2016年1月10日(日)18:00開演、1月11日(月・祝)15:00開演
■会場:Bunkamuraオーチャードホール
問合せ:Bunkamura 03-3477-3244(10:00~19:00)

<名古屋公演>

■日時:2016年1月13日(水)19:00開演
■会場:愛知県芸術劇場コンサートホール
■問合わせ:愛知県芸術劇場 052-971-5609(10:00~18:00)

<大阪公演>

■日時:2016年1月14日(木)19:00開演
■会場:フェスティバルホール
問合せ:キョードーインフォメーション 0570-200-888(10:00~18:00)
■出演:
[Dance] エルヴェ・モロー、ドロテ・ジルベール、マチュー・ガニオ
[Music] ジョルジュ・ヴィラドムス(ピアニスト)、三浦 文彰(ヴァイオリニスト)

■演目:
◎『LUNA』*日本初演
音楽:セルゲイ・ラフマニノフ「ヴォカリーズ」
振付:エルヴェ・モロー
バレエ:エルヴェ・モロー
ヴァイオリン:三浦文彰
ピアノ:ジョルジュ・ヴィラドムス


リスト:『バラード 第2番 ロ短調』
ピアノ:ジョルジュ・ヴィラドムス


『瀕死の白鳥』
音楽:カミーユ・サン=サーンス「動物の謝肉祭」より第13曲「白鳥」
振付:ミハイル・フォーキン
バレエ:ドロテ・ジルベール
ヴァイオリン:三浦文彰
ピアノ:ジョルジュ・ヴィラドムス


サン=サーンス:『序奏とロンド・カプリチオーソ』
ヴァイオリン:三浦文彰
ピアノ:ジョルジュ・ヴィラドムス
『ラスト・ヘヴン』*世界初演
音楽:アルヴォ・ペルト「鏡の中の鏡」
振付:パトリック・ド・バナ
バレエ:エルヴェ・モロー&マチュー・ガニオ
ヴァイオリン:三浦文彰
ピアノ:ジョルジュ・ヴィラドムス


『月の光』
音楽:クロード・ドビュッシー
振付:イリ・ブベニチェク
バレエ:エルヴェ・モロー
ピアノ:ジョルジュ・ヴィラドムス


イザイ:『無伴奏ヴァイオリン・ソナタ 第3番 ニ短調“ バラード”』
ヴァイオリン:三浦文彰


『トリスタンとイゾルデ』よりパ・ド・ドゥ *日本初演
音楽:リヒャルト・ワーグナー
振付:ジョルジオ・マンチーニ
バレエ:ドロテ・ジルベール&マチュー・ガニオ


『ツクヨミ』*世界初演
音楽:アルヴォ・ペルト「アリーナのために」
振付:中村 恩恵
バレエ:エルヴェ・モロー
ピアノ:ジョルジュ・ヴィラドムス


ポンセ:『メキシカン・バラード』
ピアノ:ジョルジュ・ヴィラドムス


『フィナーレ』*世界初演
音楽:マヌエル・ポンセ
編曲:ギャスパール・グラウス「エストレリータ~小さな星~」
振付:エルヴェ・モロー
出演:全員

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