中村鶴松にインタビュー~『中村七之助 特別舞踊公演 2019』で「汐汲」を踊る

インタビュー
舞台
2019.3.1
中村鶴松 (撮影:山本れお)

中村鶴松 (撮影:山本れお)

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中村屋恒例の巡業歌舞伎が、『中村七之助 特別舞踊公演 2019』として上演される。今年は中村勘九郎が大河ドラマで主演をつとめていることから、七之助が座頭となり全国12カ所を巡る。本公演で、七之助と並び、中村屋を背負って舞台に立つのが中村鶴松。二幕では、一人で「汐汲(しおくみ)」の海女苅藻(あまみるめ)を演じる。その鶴松が、巡業公演での意気込みや自身の意識の変化などを語った。

毎年恒例、中村屋の巡業歌舞伎

――『中村七之助 特別舞踊公演 2019』での意気込みを教えてください。

今年は勘九郎さんが大河ドラマでいないというのが一番大きなところだと思います。僕も一つ演目をさせて頂くという大きなプレッシャーもありますし、お客様に入って頂けるのかなと言う不安も多々あります。勘九郎さんがいないとだめだね、と言われないように頑張って勤めたいと思います。

――各地を巡る楽しさは?

芝居小屋は反応がダイレクトに伝わってくるのが楽しいです。地方によって、笑いのツボなどが違うのも面白いですね。ただ、勘九郎さんには、「反応に流されすぎないように」と言われました。あと、お散歩が好きなので、合間の時間にお散歩をするのが楽しみです。ながめ余興場は前回伺ったときに、紅葉の季節でとってもきれいだったのを覚えています。去年は勘九郎さんがずっと走っていましたね。たまに一緒に筋トレさせられたりして(笑)。各地のおいしいご飯も楽しみです。

「汐汲」で“魅せる”踊りを

――ご自身で演目を決めたと言うことですが、決め手は?

演目を決める際に、七之助さんから「何をやってもいいよ。自分で選んで」と言われました。今までそのようなことが無かったので、本などもたくさん読んで決めました。立役でも女形でもいいという事だったのですが、最近は女形の、自分の心の中で動いていく心情が楽しいですし、衣装の着方一つでも役が変わってくるので、女形の奥の深さにはまっています。なので女形の演目で決めました。

――「汐汲」はどのような演目ですか?

元々、能の松風という演目から来た踊りです。日本舞踊をやっている人なら誰しも習うような基本的な舞踊ですが、だからこそしっかりとした土台が無いと出来ない踊りです。その演目をこの年でさせて頂くというのは、今後の役者人生の中で生きていくのではないかと思います。小道具もたくさん使う演目なので難しさは感じています。小道具に集中しすぎて体が乱れてしまう事が無いようにしっかり稽古して臨みたいと思っています。

――意気込みを教えてください。

ずっとやってみたいと思っていた演目でした。最近意識しているのは、ただ丁寧に踊るという事より、“魅せる”踊りをするという事です。七之助さんにも言われるのですが、「踊りというのは、技術点と芸術点があると思う。お前は技術点はあるかもしれないけど、魅せる踊りがまだ出来ていない」と。玉三郎さんや七之助さんは美しく、お客様をうっとりさせるような踊りなので、丁寧に踊るだけでなく魅せる踊りを意識したいと思っています。また、衣装や後道具についての意識も変わりました。玉三郎さんには、「襟ひとつで役の違いが分かるような着方を覚えなさい」と言われました。衣装、かつら、小道具、全てに気を配るというのは、役者として大切な事なので、日頃から小道具も自分で拭いたりするようにしてます。あとは最近、女形として美しくいたいととても思いますね。

――美しくいるために努力している事はありますか?

最近はシュッとしている方がきれいなのかなと思い、体重に気を遣ったりしています。顔にすぐ 出ちゃうので。稽古終わり、ラーメンが食べたいところをスープ春雨にしたりとか(笑)。

――勘九郎さん、七之助さんから何かアドバイスは?

なにもないです(笑)。でも、一番身近に、一番尊敬できる立役と女形の見本がいるのはとても大きいことだと思います。やはり歌舞伎というのは、日頃から耳にしたり目にしているものが一番の勉強材料になると思うので。それがあの二人だというのは強みだと思います。中村屋でよかったと思います。

芸談では七之助と鶴松の幼少期の秘蔵映像も

――芸談について、どんなお話をするかはもう考えましたか?

それが全く決めていなくて。今、母が事務所に小さいときの写真をたくさん送っていますが、何が送られているかは把握していません(笑)。毎年密着して頂いてる番組から、七之助さんの幼少期の出したことのない映像とかも出すみたいです。

――今回は司会が、澤村國久さんと、お弟子さんの中村小三郎さんです。

お弟子さんからは、僕も知らない十七代目からのお話も聞けるのでは無いかと楽しみにしています。國久さんは僕らの中で一番のおしゃべりな方なので(笑)たくさん盛り上げてくれると思います。

誰が見ても楽しめる、七之助の四役早替り

――「隅田川千種濡事」(すみだがわちくざのぬれごと)は、今回のために「お染の七役」(おそめのななやく)を特別に書き換えた演目ですが、見所は?

やはり四役の早替りだと思います。歌舞伎の早替りは昔からある手法の一つで、隅田川は誰が見ても面白い演目だと思います。初心者の方でも楽しんで頂けるのはないかなと。ただ、今回12カ所も回るので、その都度劇場での動線の確認や衣装を着替える場所の確認だったりが大変になってくると思います。

2019年一つ一つを大切に

――2019年、どんな年にしたいですか?

昨年は、大学を卒業してから歌舞伎一本に集中できるはじめの一年でした。最近は、ご飯を食べるときも役について考えていて、歌舞伎に浸食されている感じがあります。今年も一月から新春浅草歌舞伎では四役全く違う役をお勉強させて頂いて、三月は汐汲、四月もすし屋のお里という大きな役をさせて頂きます。毎月力がついているのか不安はありますが、目の前の事を、一つ一つ大切にしながら必死に頑張ろうと思います。

――中村屋としては?

勘九郎さんがいないのはさみしいです。いない分、僕もしっかりしないといけないなと思います。三月は勘太郎くん(勘九郎の長男)も一人で歌舞伎座の舞台に立ちますし、みんなで勘九郎さんの穴を埋めようと頑張っています。

『中村七之助 特別舞踊公演 2019』は、3月2日ながめ余興場を皮切りに、3月19日(火)まで全国12カ所を巡る。

取材・文=一ノ瀬ふみか  写真撮影=山本れお

公演情報

中村七之助特別舞踊公演 2019
 
一、
芸談
中村屋ヒストリー

出演者:中村七之助 中村鶴松
司会:中村小三郎 澤村國久

 
二、
汐汲(しおくみ)
海女苅藻(あまみるめ):中村鶴松

 
三、
四世鶴屋南北 作/藤間勘祖 振付/竹柴徳太朗 補綴/杵屋五吉郎 作曲
於染久松色読販より
隅田川千種濡事(すみだがわちぐさのぬれごと)
中村七之助四役早替りにて相勤め申し候
許嫁お光/油屋娘お染/丁稚久松/土手のお六:中村七之助
猿廻夫婦長三:中村いてう
同 お作:澤村國久 ほか

 
<日程・会場・料金(税込価格)>
■公演日時:2019年3月2日(土)開演 11:00/15:00
■会場:ながめ余興場(群馬県)
■料金:全席指定8,000円
■問い合わせ:サンライズプロモーション東京 0570-00-3337(10:00~18:00)

 
■公演日時:2019年3月3日(日)開演 11:30/15:30
■会場:電力ホール(宮城県)
■料金:全席指定6,500円
■問い合わせ:キョードー東北 022-217-7788(平日11:00~18:00、土曜日10:00~17:00)

 
■公演日時:2019年3月4日(月)開演 13:00/18:30
■会場:さいたま市民会館おおみや(埼玉県)
■料金:S席6,500円 A席5,000円
■問い合わせ:サンライズプロモーション東京 0570-00-3337(10:00~18:00)

 
■公演日時:2019年3月5日(火)開演 13:00/18:30
■会場:ホクト文化ホール 中ホール(長野県)
■料金:全席指定6,500円
■問い合わせ:サンライズプロモーション北陸 025-246-3939(平日11:00~18:00、土曜日10:00~17:00)

 
■公演日時:2019年3月6日(水)開演 12:00/16:00
■会場:金沢市文化ホール(石川県)
■料金:全席指定6,500円
■問い合わせ:サンライズプロモーション北陸 025-246-3939(平日11:00~18:00、土曜日10:00~17:00)

 
■公演日時:2019年3月9日(土)開演 12:00/16:00
■会場:けんしん郡山文化センター 中ホール(福島県)
■料金:全席指定6,500円
■問い合わせ:テレビユー福島企画事業部 024-531-5111(平日10:00~12:00、13:00~17:00)

 
■公演日時:2019年3月11日(月)開演 11:00/15:00
■会場:サンケイホールブリーゼ(大阪府)
■料金:全席指定6,500円
■問い合わせ:キョードーインフォメーション 0570-200-888(10:00~18:00)

 
■公演日時:2019年3月12日(火)開演 13:00/18:30
■会場:JMSアステールプラザ 大ホール(広島県)
■料金:S席:6,500円 A席5,000円
■問い合わせ:TSS事業部 082-253-1010(平日10:00~18:00)

 
■公演日時:2019年3月14日(木)開演 13:00/18:30
■会場:千葉市民会館 大ホール(千葉県)
■料金:全席指定6,500円
■問い合わせ:サンライズプロモーション東京 0570-00-3337(10:00~18:00)

 
■公演日時:2019年3月16日(土)開演 12:00/16:00
■会場:かしも明治座(岐阜県)
■料金:全席指定8,000円
■問い合わせ:サンライズプロモーション東京 0570-00-3337(10:00~18:00)

 
■公演日時:2019年3月17日(日)開演 12:00/16:00
■会場:東座(岐阜県)
■料金:自由席8,000円
■問い合わせ:サンライズプロモーション東京 0570-00-3337(10:00~18:00)

 
■公演日時:2019年3月19日(火)開演 13:00/18:30
■会場:東海市芸術劇場 大ホール(愛知県)
■料金:全席指定6,500円
■問い合わせ:東海テレビ放送事業部 052-954-1107(平日10:00~18:00)
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