賀来賢人「この舞台は絶対に“誰が一番オモシロいか”大会になる」 福田雄一演出の舞台『恋のヴェネチア狂騒曲』にかける思いとは?

インタビュー
舞台
2019.4.11
賀来賢人

賀来賢人

画像を全て表示(4件)

「どうしたらそんな表情ができるの?」と、ツッコミを入れたくなるほど見事な顔芸と端正な容姿のギャップで、コメディー作品の最前線に立つ俳優・賀来賢人。彼が師と仰ぐ、劇場、映画館、お茶の間とジャンルレスに強力な笑いを届け続けるヒットメイカー・福田雄一との新たなタッグが決定した。18世紀半ばのイタリア喜劇をもとに、福田が新たに構築するドタバタ・ハチャメチャな舞台『恋のヴェネチア狂騒曲』が、2019年7月5日(金)~7月28日(日)新国立劇場 中劇場にて上演される。予想を上回る(はずの)笑撃にあなたは耐えられるか?

ーー舞台と映像の境なく、福田さんとの仕事が続いていらっしゃいますね。

本当に、呼んでいただけることが嬉しくて光栄で。でも一度現場に入ると、福田さんの要求に応えられるよう、ただただ必死です。俳優としての活動初期、2011年に初舞台として福田さんが劇作・演出された『スマートモテリーマン講座』に出演させていただいたのが、全ての始まり。そこで舞台の楽しさ、コメディーの難しさと面白さを福田さんから教えていただいた。思えば安田顕さんはじめ共演の先輩方も達者な方ばかりなのに、そこで「自分に何ができるか、なんとか同列にやらなきゃ」と勝手に追い詰められていました(笑)。だから僕にとって福田さんは、一演出家というより「先生」というべき存在。現場はいつも一番緊張するしコワイし、でも同時に一番認められたいと思う場所なんです。仲良くしていただいてはいますが、一生なれ合うことはないと思います。​

ーーオリジナルからブロードウェイ・ミュージカルまで、福田さんとご一緒の舞台も幅広く経験していらっしゃいますが、「18世紀イタリアの喜劇」が原作とは、かなり珍しいのでは。

そうですね。はじめに聞いていた原作の邦題は『2人の主人に仕えた男』だったんですが、出来上がったチラシは、『恋のヴェネチア狂騒曲』になっていて。現場でご一緒していた、この舞台の主演・ムロツヨシさんと「だいぶ変わったねぇ」と話しました(笑)。

賀来賢人

賀来賢人

ーー原作は、目先の欲から二人の主人に仕え、2倍の給料をもらおうとした召使の男が、主人それぞれの恋のドタバタに巻き込まれ……というストーリーで、この召使をムロさんが演じられる。他に、福田さんからなど作品について聞いていらっしゃることはありますか?

いえ、まだ特には聞いていないんです。この取材の場で、僕はタイトルでいうと「恋」の部分担当らしい、ということを小耳に挟みましたが(笑)。でも、福田さんはオリジナルの面白さも卓抜していますが、既存作品を独自にアレンジするのも大の得意技。原作をどんなふうに料理されるのか、期待は膨らむ一方です。​

ーー作品のつくり方にも、福田組の流儀があるのですか?

舞台の場合、もちろん台本に沿って稽古はしますが、福田さんは本番一週間くらい前までは「自由にやってください」としか言わないんです。だから僕ら俳優は、毎日必死になって絞り出しながら福田さんが笑い、喜んでくれるようなことをやり続ける。経験を重ねていくと自分なりに引き出しが増え、俳優は「絞り出す」ことをしなくなる傾向があると思うのですが、福田さんとの現場でそれは通用しません。疲れるけれど得るものも大きいですね。

その後、目途が立つと集合がかかり、福田さんが採用した要素でみるみるうちに作品が立ち上がっていく。稽古中、俳優がやったことを福田さんは全部覚えているのですが、やった僕らのほうが忘れていて「そんなのやりました?」みたいなことも結構あります(笑)。​ 

ーー徹底した福田イズムが貫かれているんですね。

それが最高に笑える作品の秘訣なんだと思います。福田さんは俳優が10訊いたことに100答えてくださるし、「自分の作品を一番面白くできるのは自分だ」と言い切れる人。そんなドッシリと大きく構えてくださる方はそうはいらっしゃらないので、安心してジャッジを委ねられる、本当に信頼できる演出家・監督だと思います。

賀来賢人

賀来賢人

ーー共演はムロさんはじめ、堤真一さん、高橋克実さんら福田作品でも共演されている先輩方が多い布陣です。

僕にとっては非常に燃えるシチュエーションですね。皆さん実力派で硬軟自在の、ほぼ先輩ばかり。何をやっても受け止めてくださると思いますし、僕のほうには失うものなど何もない。この舞台は絶対、“誰が一番オモシロいか”大会になると思うので、特にムロさん、堤さん、克実さんには相手をツブすくらいの勢いで(笑)ぶつかっていこうと思っています!

ーー俳優としての活動も10年を越えましたが、俳優の仕事について、ご自身の中での捉え方は変わっていらっしゃいますか?

以前は「芝居が上手くなりたい、もっと良く見せたい」など自分のことしか考えていませんでしたが、最近は自分のポジションも変わり、観てくださる方、お客様の気持ちが少しでも前向きになるような作品をつくれたら、という気持ちが多くなっているように思います。「バカバカしいけど面白かった。明日も頑張るか!」と観た方に思っていただけたら最高じゃないですか。先日までやっていたドラマ『今日から俺は!!』は、子どもたちがとても喜んでくれたようで、親の世代の方たちが「ありがとう」と言ってくださるんです。「(子どもが)家でコスプレしてる」「口調がヤンキーになった」とか、イイのかな?とも思いましたが(笑)、でも家族ぐるみで僕が参加した作品を喜んでいただけるのは、役者冥利に尽きると思っています。​

ーー賀来さん自身、コメディーには特別のこだわりをお持ちなのですね。

こだわりではないのですが、僕はこれまで特に舞台で数多く、色々な作家・演出家さんとコメディーをつくる機会をいただいてきた。そこで学んだことはすべて自分にとって貴重なもので、自信にもなっているんです。だから、それら経験を活かして仕事をしたい想いと、それができて当然だという自負の両方が少なからず僕の中にある。この舞台でもきっと、学ぶことや挑戦が多いと思うので、全力で挑みます!

賀来賢人

賀来賢人

ヘアメイク=SHUTARO(Vitamins) スタイリング=小林新(UM)

インタビュー・文=尾上そら 撮影=加藤孝

公演情報

シス・カンパニー公演『恋のヴェネチア狂騒曲』
■会場:新国立劇場 中劇場
■日程:2019年7月5日(金)~7月28日(日)
■原作:カルロ・ゴルドーニ「2人の主人に仕えた召使(Il servitore di due  padroni)」
■上演台本・演出:福田雄一
■出演:
ムロツヨシ
堤真一
吉田羊
賀来賢人
若月佑美
池谷のぶえ
野間口徹
粕谷吉洋
大津尋葵
春海四方
高橋克実
浅野和之

■公式サイト:http://www.siscompany.com/siskoi/
シェア / 保存先を選択