笑ってはいけない?でも笑えちゃうリーアム・ニーソンの復讐『スノー・ロワイヤル』#野水映画“俺たちスーパーウォッチメン”第六十六回

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2019.6.7
 (C)2019 STUDIOCANAL SAS ALL RIGHTS RESERVED.

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TVアニメ『デート・ア・ライブ  DATE A LIVE』シリーズや、『艦隊これくしょん -艦これ-』への出演で知られる声優・野水伊織。女優・歌手としても活躍中の才人だが、彼女の映画フリークとしての顔をご存じだろうか?『ロンドンゾンビ紀行』から『ムカデ人間』シリーズ、スマッシュヒットした『マッドマックス  怒りのデス・ロード』まで……野水は寝る間を惜しんで映画を鑑賞し、その本数は劇場・DVDあわせて年間200本にのぼるという。この企画は、映画に対する尋常ならざる情熱を持つ野水が、独自の観点で今オススメの作品を語るコーナーである。

五月からすでに夏日を記録している令和元年。これから本格的な夏へ向かおうとするこの季節にピッタリの、豪雪地帯を舞台にした『スノー・ロワイヤル』が公開される。本作は、ノルウェー映画『ファイティング・ダディ 怒りの除雪車』を、同作のハンス・ペテル・モランド監督がセルフリメイクした作品。リメイク元のタイトルに私のレーダーもビンビン反応していたわけだが、アメリカに舞台を移した『スノー・ロワイヤル』も独特の魅力あふれるスリラーだ。

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舞台はロッキー山脈を望む雪深い田舎町・キーホー。除雪作業員のネルズ・コックスマンは、この地で模範市民賞を受賞するほどに慎ましく、真面目に暮らしていた。そんなある日、ネルズの一人息子が死体となって発見される。地元の麻薬王・バイキング組織が息子の死に関わっていると気付き、ネルズは復讐を開始。仕事で培った体力と狩猟で身に着けた射撃スキル、犯罪小説で学んだ知識だけで敵を追い詰めてゆく。一方のバイキングは、部下たちの死を、敵対する麻薬組織の仕業だと勘違い。ネルズの復讐は、二つの犯罪組織と地元警察を巻き込み、思いもよらない方向へと進んでゆく。

 

こんなリーアム・ニーソン見たことない!?

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主人公のネルズ・コックスマンを演じたのは、リーアム・ニーソン。『96時間』(08)で、誘拐された娘を取り返そうと奮闘する元CIA工作員=ブライアン役が当たり役だ。『スノー・ロワイヤル』も、『96時間』シリーズ同様の「喧嘩売った相手が強い奴だった」系の一本かかと思いきや、一味違う。ネルズは元○○だったという過去を持たず、ただの除雪作業員でしかない。そのため、ここ最近のリーアム作品お約束のキレッキレなアクションは拝めない。

だがしかし!眉尻の下がった困り顔で、老体に鞭を打ちながら戦う、わりとレアな姿のリーアムが見られるのである。本作のリーアムは組織の下っ端をボコボコに殴り追い詰めるが、自らの拳もボロボロで、息も絶え絶え。殺すべき相手に「疲れたか?」と心配され、二人で寝っ転がって大爆笑、なんてシーンまで見られるのだからびっくり!ネルズが息子の死を嘆き悲しむまでは重々しいのだが、実はこういったクスクスできる要素も散りばめられている作品なのだ。

 

思わず笑っちゃう仕掛けとキャラクター

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本作には、ネルズのみならず、個性の強いキャラクターが多数登場する。麻薬王・バイキングは、仕事とは真逆に青汁が大好きな健康オタクだし、部下のギャングは、ホテルの清掃員をナンパすることが生きがい。そんな個性的な登場人物たちが死ぬたびに画面が暗転し、テロップでそれぞれの名前が表示される名前が出るのが面白い。活躍する間も無く退場した人物の通り名まで表示されるので、「こんな名前だったの!?」と、キャラクターの背景が気になってしまう。

そんな仕掛けも相まって、人が死ぬ度に笑いが起きるという不謹慎な状態になってゆくのだが、死に様で笑いをとる作品ではないし血や内臓が飛び散ることもないのでご安心を。ギャングたちの暴力的な描写はありながらも、あくまで血みどろスリラーにはしない、そのギリギリのバランスが絶妙で上手いと感じた。

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また、本作の“父親”はネルズだけではない。麻薬王・バイキング、そして彼に対抗する先住民の麻薬組織・ホワイトブルの長もまた父親であり、三者三様の息子たちとの関係が物語に絡んでくるのである。中でも私が気に入っているのは、学校でいじめに遭っているバイキングの息子とネルズが出会うくだり。ネルズのいい人っぷりと不器用さが発動するこのシーンは、ほっこりと笑えるので注目して欲しい。バイキングやホワイトブルよりも、復讐を一生懸命頑張るネルズを応援したくなってしまうのは、私だけではないはず。「主人公が復讐する系の作品ってたくさんあるんだよな〜」と敬遠するなかれ。ともすればぎっくり腰になりそうな弱々リーアム・ニーソンの復讐劇なんて、なかなか観られるもんじゃあない。

最後の最後まで油断を許さないブラックコメディスリラーに、感情を翻弄されてみるべし!

『スノー・ロワイヤル』は6月7日(金)全国ロードショー。

作品情報

映画『スノー・ロワイヤル』

(2019 年/アメリカ映画/シネスコ/119 分)
監督:ハンス・ペテル・モランド(『ファイティング・ダディ 怒りの除雪車』)
出演:リーアム・ニーソン、ローラ・ダーン、トム・ベイトマン、エミー・ロッサム、ジュリア・ジョーンズ、ウィリアム・フォーサイス
原案:『ファイティング・ダディ 怒りの除雪車』
 
原題:Cold Pursuit
レーティング:PG12
配給:KADOKAWA
公式サイト:https://snowroyale.jp/
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