ジョニー・ウィアーがスポーツ界のホモフォビア(同性愛嫌悪)、先駆者へのリスペクトを語る 『氷上の王、ジョン・カリー』イベント

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2019.6.13
ジョニー・ウィアー

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6月11日(火)、公開中の映画『氷上の王、ジョン・カリー』の公開記念イベントが東京・新宿ピカデリーで行われ、フィギュアスケートの元五輪選手で現プロスケーターのジョニー・ウィアーが登壇した。

『氷上の王、ジョン・カリー』は、フィギュアスケート・インスブルック五輪金メダリストのジョン・カリーを追ったドキュメンタリー映画。カリーは、アイススケートをメジャースポーツへと押し上げ、芸術の領域にまで昇華させた人物。本作では、アスリートとしてのカリーの姿だけではなく、栄光の裏にあった深い孤独や、彼が自ら立ち上げたカンパニーでの新たな挑戦、エイズとの闘いまでを、貴重なパフォーマンス映像と、本人、家族、友人、スケート関係者へのインタビューを通して明らかにしていく。


イベントゲストとして登場したジョニー・ウィアーは、本作にも出演し、衣装デザイナー、ファッショニスタ、役者などの分野でも活躍中。この日は、『Fantasy on Ice 2019』の公演で多忙を極める中、映画のために会場に駆けつけた。

羽生結弦選手をはじめとするフィギュアスケーターの衣装デザインを手掛けるほどファッションにこだわりを持つジョニーは、神戸の大丸で購入したイッセイ・ミヤケの斬新なドレスに、ドリスヴァンノッテンのスタイリッシュな靴で登場。満面の笑顔を浮かべ、まずは「皆さん、こんばんは!ジョニー・ウィアーです」と日本語であいさつ。本作に大きな感銘を受けたというジョニーは、「この世界で、自分らしさを求め、自分らしく生きることはとても大事なこと。その闘いを(ジョン・カリーを通して)この映画で観ることができる」とコメント。

ジョニー・ウィアー

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カリーから受けた影響については、「例えば、今、私が斬新なドレスを着て、皆さんを笑わせたり、喜ばせたりしていますが、何か爪痕を残すことは凄く大事だと思います。カリーは音楽や衣装の選択も独特な感覚を持っていましたし、どんなトラブルに見舞われても、クリエイティブな部分を残しつつ、それを実践してきた方なので、とてもリスペクトしています」と称賛する。

また、ジョニーはカリーのDNAを受け継いでいる選手として、「まず、長年の友人であるステファン・ランビエールが頭に浮かぶ」と明言。「ディテールに細かく意識を向けているところ、氷の上でバレエを再現しているところ、そして音楽に合わせた振り付けを完璧にこなしているところを見ると、明らかにジョン・カリーの遺伝子を受け継いでいるな、と思いますね」と分析した。ちなみに日本人選手についても言及し、「直接的ではないかもしれませんが、町田樹さんと宮原知子選手ですね」と名前を挙げている。

また、劇中でのスポーツ界のホモフォビア(同性愛嫌悪)に触れ、カリーの勇気を賞賛。さらに、自身の経験も振り返り、「トリノオリンピックでは、自分のセクシャリティは関係なく、国の代表として戦ったが、メダルを取ることができなかった。滑り終わったあとに、パフォーマンスについて質問があると思っていたら、『ジョニー、君はゲイだよね?』という質問ばかりで驚きました」と吐露。さらに、次のバンクーバーオリンピックでの出来事を振り返り、「カナダのテレビレポーターが、『ジョニー・ウィアーの性別テストをしよう』と言い出して問題になりましたが、今からわずか9年前の話。これは残念に思いましたね」と表情を曇らせる。そして、「このように自分を隠さず、フィギュアスケートをやって来られたのは、同じ経験をしてきた先輩たちのおかげであり、カリーもその一人」と、選手生活を全う出来たことについて、周囲の人々への感謝の意を表した。さらに、「私は強い人間なので耐えることができるけれど、みんなが強い人間ではない。だからその人たちのためにも声をあげ、傷ついた仲間がいたらサポートしていきたい」と、意思を表明している。

ジョニー・ウィアー

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そんなジョニーも、2022 年にはプロスケーターから引退することを表明している。これについては、「この道は自分だけで歩んできたのではなく、ファンのみなさんと一緒に歩んできた。良い時も悪い時も、みなさんが支えてくれました。本当に感謝しています。この話をすると涙が出てしまうのですが……自分はフィギュアスケーターをやめたくない、という気持ちは強いです。でも、自分が退いて、今度は若い選手がその場に立つ。またその選手がいずれ自分よりも若い選手を支える。私はその流れを横で見守る立場になると思いますが、自分自身の新しい挑戦も楽しみにしています」と、最後に笑顔を見せた。

『氷上の王、ジョン・カリー』は新宿ピカデリー、東劇、アップリンク渋谷、アップリンク吉祥寺ほか全国公開中。

作品情報

映画『氷上の王、ジョン・カリー』
(2018年/イギリス/89分/英語/DCP/16:9)
原題:The Ice King
監督:ジェイムス・エルスキン(『パンターニ/海賊と呼ばれたサイクリスト』)
出演:ジョン・カリー、ディック・バトン、ロビン・カズンズ、ジョニー・ウィアー、イアン・ロレッロ
ナレーション:フレディ・フォックス(『パレードへようこそ』『キング・アーサー』)
 
字幕翻訳:牧野琴子
字幕監修・学術協力:町田樹
配給・宣伝:アップリンク
 
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