MONOEYESが互いに向き合い音を鳴らした、初にしてメモリアルな生配信ワンマン
MONOEYES 撮影=石井麻木
Between the Black and Gray Live on Streaming 2020 2020.10.19
青龍、白虎、朱雀、そして玄武。広いフロアの真ん中で互いに向き合ってロックするMONOEYESの4人は、まるでそれぞれが東西南北の方角と四季を司るという、四神のようだった。こんなポジションでライブを行う彼らを観るのは初めてだったが、バンド始動から5年間、MONOEYESはこんなふうに対峙し思いをぶつけあいながら音楽を生み出し、そして共に季節をくぐり抜けて来たのだ。これからもきっとそうだろう。
MONOEYES 撮影=石井麻木
MONOEYESにとって初の生配信ワンマンライブ『Between the Black and Gray Live on Streaming 2020』は、公演タイトルどおり9月にリリースされた3作目のフルアルバム『Between the Black and Gray』を携えてのライブだ。新作収録曲のすべてと、以前からのレパートリーを織り交ぜたセットリストで構成され、アンコールなしの全18曲を駆け抜けた。10月19日(月)、開演予定時刻の20時を迎えると、刺激的でクールなオープニング映像が流れ、細美武士(Vo/Gt)、スコット・マーフィー(Ba/Cho)、戸高賢史(Gt)、一瀬正和(Dr)の4人が位置につくと、いよいよライブの幕開けである。
MONOEYES 撮影=石井麻木
MONOEYES 撮影=石井麻木
今回の生配信ライブに触れて驚かされたのは、最新アルバムの収録曲たちが、過去作の楽曲たちと同じように皮膚と意識に馴染んだ響き方をしていることだった。コロナ禍の状況の中で生み出された楽曲も含まれる新曲群は、不安に駆られながらも湧き上がる不屈の情熱と結束力を帯び、MONOEYESのより深く緊密なコンビネーションを呼び起こしていたはずだ。ところが、彼らの最大の武器であるキャッチーなコーラスの求心力においてはまったくブレておらず、リリースから1ヶ月足らずの間にこちらの意識に深く浸透していたのである。
MONOEYES 撮影=石井麻木
MONOEYES 撮影=石井麻木
さらに、喜々として新曲群をプレイする4人の表情はどうだろう。ソリッドなギターリフを掻き鳴らすトディこと戸高も、自身の運営する音楽スタジオ=OLIVEのTシャツを着込んだ一瀬も、満面の笑みを浮かべて思いきりプレイしている。オーディエンスの姿、視線や歓声もないステージなのに、MONOEYESは4人で向き合って音を鳴らし、新しい楽曲を演奏すること自体が既に大きな喜びとなっていることがわかる。メンバーそれぞれが一流アーティストの活動を経て結成されたバンドなのに、まるでバンドを始めたばかりの少年たちのようなピュアな笑顔を見せているのである。
MONOEYES 撮影=石井麻木
現地時間では早朝の、故郷フロリダから両親も配信を見守っているというスコットは「Hello, Mom & Dad」と照れ臭そうに挨拶を投げかけ、彼が作詞・作曲を務めリードボーカルを担う「Castles in the Sand」はロマンチックな響きをもたらす。そのとき配信のチャット欄には、“Scott’s Mom”なるアカウントによる「I love this song」という書き込みが流れ、チャット参加者は大騒ぎだ。配信ライブならではの、この上ない楽しさである。
MONOEYES 撮影=石井麻木
一方細美は、この日この会場でのライブが、実は1年以上前から決定しており、MONOEYESにとっても大切な日になっていたことを明かす。ドローンに搭載されたカメラが上空で旋回しながら、明滅する照明の中でプレイする4人の姿をダイナミックに捉えた際には、彼らの立つステージを正八角形の観客席がぐるりと取り囲んだ壮観な光景が映し出される。そう、MONOEYES初の生配信ライブは、初の日本武道館ワンマンだったのである。
MONOEYES 撮影=石井麻木
もちろん観ているこちらとしても、本来であれば、という無念さはある。しかしそれ以上に、あの4人の表情と同じく、夢の舞台をこうして分かちあえる喜びの方が勝っていた。トディは、新作曲をこうして日本武道館でライブ初披露していることに最後まで夢見心地なことを告げていたし、スコットはかつてビートルズが立った憧れの光景を噛み締めている。
MONOEYES 撮影=石井麻木
MONOEYES 撮影=石井麻木
「Two Little Fishes」の美しい友愛が奏で歌われるとき、手にしたラップトップのブラウザで配信の様子をメンバーに見せびらかしながらユーモラスに登場し、スコットのマイクで寄り添うように、そして細美の隣に立ってボーカル参加したのはTOSHI-LOW(BRAHMAN/OAU)だ。2018年に開催されたBRAHMANの武道館ワンマン『八面玲瓏』Tシャツに身を包んでいる。彼は、コロナ禍が去った後にはあらためて有観客の武道館公演を開催するよう促し、それに対して細美は「じゃあ約束しちゃおう。(武道館が)取れたら最速で」と応えるのだった。
MONOEYES / TOSHI-LOW 撮影=石井麻木
バンド始動から5年間の濃い歩みを振り返り、細美があらためて3人に感謝の思いを伝えるさまも、互いに向き合った姿勢だからこそ一層胸を熱くさせる。<かすかに聞いた/言葉の意味を/わかったつもりでいるけど/今度会えたら/ちゃんと聞かせてくれよ>。新しい約束と折り重なるように披露された「彼は誰の夢」の響きが、アルバムで聴くのとはまた異なる余韻を残していった。素晴らしい、そして確かにメモリアルな生配信ライブであった。
なお今回のライブの模様は、10月26日(月)23:59までアーカイブ配信され、視聴の販売は同日20時まで行われる予定となっている。
取材・文=小池宏和 撮影=石井麻木
MONOEYES 撮影=石井麻木