苦悩、怒り、諦め、涙……様々な想いと共に試練に立ち向かうユダヤ人家族の生き様を描く、ミュージカル『屋根の上のヴァイオリン弾き』開幕

レポート
舞台
2021.2.8
ミュージカル『屋根の上のヴァイオリン弾き』舞台写真より

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2021年2月6日(土)東京・日生劇場にて、ミュージカル『屋根の上のヴァイオリン弾き』が開幕した。

ミュージカル『屋根の上のヴァイオリン弾き』舞台写真より

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ミュージカル『屋根の上のヴァイオリン弾き』舞台写真より

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本作は20世紀初頭の帝政ロシア時代、アナテフカという寒村で酪農業を営むお人好しで働き者のテヴィエ(市村正親)とその妻ゴールデ(鳳蘭)、そして5人の娘たちという貧しいながらも幸せな日々を送っていた一家の物語。
長女のツァイテル(凰稀かなめ)、次女のホーデル(唯月ふうか)、三女のチャヴァ(屋比久知奈)、年頃の娘たちの今の最大の関心事は、自分たちの結婚について。ユダヤの厳格な戒律と“しきたり”に倣い、両親の祝福が無ければ結婚は許されないという環境のなか、金持ちで肉屋のラザール(ブラザートム)からツァイテルを後妻に迎えたいと申し出を受けたテヴィエは、酔った勢いでついつい結婚に同意。だが当のツァイテル本人には仕立屋のモーテル(上口耕平)という相思相愛の存在があった。ツァイテルとモーテルの熱意に心を動かされたテヴィエは、ついに若い二人の結婚に同意するが、結婚の許しを同時に二つも出してしまったテヴィエ、ゴールデやラザールに何と切り出せば良いのやら……。

ユダヤの厳格なしきたりがユーモラスに描かれており、戒律を守らんとするために無茶苦茶なことをしようと試みるテヴィエの姿に会場から笑い声が起きる。だが、娘たちが巡り合う運命の男性たちにはそれぞれ問題を抱えており、戒律や昔からのしきたりに翻弄される様は胸を苦しくさせる。時折テヴィエが神に祈る姿も織り込まれ、きっとテヴィエたちは娘たちに幸せになってほしいだけ、そして貧乏ながらも幸せに暮らしたいだけなのに……そんな想いを強く感じさせるのだ。

だが時代はそうはさせてくれない。やがてテヴィエらは大きな決断を迫られるが、その目には怒りや悲しみと共に未来に向かって新たな希望を見つけようとするたくましい光すら感じさせるのだった。

ミュージカル『屋根の上のヴァイオリン弾き』舞台写真より

ミュージカル『屋根の上のヴァイオリン弾き』舞台写真より

聞けば辛い物語なのだが、全編を取り巻く美しい歌の数々が耳を潤す。市村、鳳はもちろんだが凰稀、唯月、屋比久の三姉妹がそれぞれに歌い上げるナンバーは是非ものの美しさだ。なかでも唯月の歌声が際立っており、会場中に響き渡るとため息と拍手を送らざるを得なかった。

ミュージカル『屋根の上のヴァイオリン弾き』舞台写真より

ミュージカル『屋根の上のヴァイオリン弾き』舞台写真より

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ミュージカル『屋根の上のヴァイオリン弾き』舞台写真より

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また三姉妹と関わりを持つモーテル役の上口とパーチック役の植原卓也、そしてフョートカ役の神田恭兵の存在も重要だ。貧しい仕立屋のモーテル、キエフ出身の進歩的な学生パーチック、ユダヤ人たちとは異教徒であり、支配側にあるロシア軍兵士のフョートカがこの家族に関わることで物語が大きな渦に巻き込まれていく。三者三様でテヴィエたちの悩みの種になるそれぞれの個性にも注目してほしい。

ミュージカル『屋根の上のヴァイオリン弾き』舞台写真より

ミュージカル『屋根の上のヴァイオリン弾き』舞台写真より

そして歌と共に描かれる家族の絆。市村と鳳のゴールデンコンビが笑いと涙で描く姿には幾度となく心揺るがされた。森繁久彌、上條恒彦、西田敏行と受け継がれてきた本作の要・テヴィエ役を今市村が演じているが今後とも長く続けてほしいと願うばかりだ。

なお、初日の終演後にはカーテンコールが行われ、カンパニーを代表して市村が挨拶した。市村は初日観劇の観客に深々と頭を下げて御礼を述べる。「コロナ禍で世界のエンターテインメントが苦しんでおります。ブロードウェイもウエストエンドもまだ再開の見込みが立っていない。そんな中本作の初日を迎えるのはゴールデの台詞にもあるように(ユダヤ風の手を合わせる仕草をしつつ)“奇跡”です。稽古場から昨日の通し稽古までずっとマスク姿でした。(鳳は)目が特徴あるのでわかりますが(笑)、初めてのメンバーはどんな顔をしているのかと思っていたので、(今こうして顔を全部見れるのは)嬉しいです。あとはお客様の顔も全部見たいところですが、もう少しの辛抱です。ワクチンも開発されたり、近いうちには治療薬もできると思います。その時にはまた劇場で顔と顔を突き合わせたいです」と言葉を述べ、また全員で観客に頭を下げていた。

観客は1階席が約半分の占有率、グランドサークル席も約半分、そして2階席はほぼ売り止めにしたのではと思うくらいの少人数での幕開けだったが、その観客が何度も何度も最後まで拍手を止めずに市村たちにエールを送っていた姿が実に印象的で目頭が熱くなるものとなっていた。是非とも市村が語っていた“その時”が一日でも早く訪れる事を期待したい。

ミュージカル『屋根の上のヴァイオリン弾き』舞台写真より

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取材・文=こむらさき  写真提供=東宝演劇部

公演情報

ミュージカル『屋根の上のヴァイオリン弾き』

■日時・会場:
<東京公演>2021年2月6日(土)~3月1日(月)日生劇場
<愛知公演>2021年3月5日(金)~7日(日)愛知県芸術劇場 大ホール
<埼玉公演>2021年3月12日(金)~14日(日)ウェスタ川越 大ホール
 
■台本:ジョセフ・スタイン
■音楽:ジェリー・ボック
■作詞:シェルドン・ハーニック
■オリジナルプロダクション演出・振付:ジェローム・ロビンス
■翻訳:倉橋健
■訳詞:滝弘太郎、若谷和子
■日本版振付:真島茂樹
■日本版演出:寺崎秀臣
■共同演出:鈴木ひがし
 
■キャスト
テヴィエ:市村正親
ゴールデ:鳳蘭
ツァイテル:凰稀かなめ
ホーデル:唯月ふうか
チャヴァ:屋比久知奈
モーテル:上口耕平
パーチック:植原卓也
フョートカ:神田恭兵
ラザール:ブラザートム
 
シュロイム:真島茂樹
アブラム:石鍋多加史
司祭:青山達三
巡査部長:廣田高志
イエンテ:荒井洸子
モールチャ:祖父江進
メンデル:かとりしんいち
ナフム:山本真裕
楽士:品川政治
ヴァイオリン弾き:日比野啓一
ツァイテル婆さん:北川理恵
フルマセーラ:園山晴子
 
板垣辰治、大森輝順、佐々木誠、附田政信、楢原じゅんや、尾関晃輔、佐野隼平、酒井銀丈、清水錬、鈴木結加里、真記子、真田慶子、竹内晶美、飯塚杏実、松本弥恵、渡辺京花
 
※寺崎秀臣の「崎」は立つ崎(たつさき)が正式表記。
 
製作:東宝
 
公式サイト:https://www.tohostage.com/yane
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