舞台『残響のテロル』演出 奥秀太郎 脚本 熊谷純インタビュー
舞台版『残響のテロル』脚本の熊谷純、演出の奥秀太郎
演出 奥秀太郎 脚本 熊谷純が語る「舞台でやる残響のテロル」
「攻殻機動隊ARISE:GHOST is ALIVE」で、まさかの攻殻機動隊舞台化を成功させた奥秀太郎が間髪入れず動き出した。次回作は2014年にフジテレビノイタミナ系列で放送され、そのセンセーショナルな内容と、リアルな作風で話題をさらった「残響のテロル」。脚本にPERSONA3 the Weird Masquerade〜青の覚醒〜などでもタッグ経験があり、残響のテロルアニメ本編の脚本も担当した熊谷純。攻殻機動隊に続き3D映像もふんだんに使うという情報もある今作。脚本会議を終えたばかりの奥秀太郎、熊谷純に直撃インタビューを敢行した。
――今日はよろしくお願いします。まず、なんで「残響のテロル」を舞台化しようと思ったのでしょうか?
奥:ココ昨今のアニメーション作品の中でも非常にメッセージ性が高く、衝撃的な作品だったので。イメージの話になりますけど、アニメ原作舞台が多い中で、アニメ・ゲームのもつ夢や希望、愛を描いているだけでなく、それプラス他のメディアが中々触れづらい原発問題、放射線の話。さらにテロの話題にも触れているこの作品を舞台化してみたかったんです。
熊谷:俺はアニメ版にも脚本で関わっていて、奥さんとも別の舞台脚本でご一緒してたので、ぜひ舞台化したいというお話を受けてフジテレビに打診しました。
――正直「今、この作品を舞台化して大丈夫なのか?」って思うところもあるんですが。アニメ版、全11話で構成されていた作品を舞台にするということで、全編をやるのか、それとも一部を切り取るのかなど興味は尽きません。
熊谷:時間の問題もありますから、全てを再現するのは難しいと思っています。それにアニメ版は11話それぞれに分かれているお話であって、それが一つのストーリーに結実していく。舞台にするには改めて一本の作品とするために、ストーリーを再構築しないとならないです。原作の持っているテイストやメッセージ、キャラクター性は大事にしながらも、変える部分は変えないとならないのかな、とは思っていますね。
――奥さんが演出された「攻殻機動隊ARISE:GHOST is ALIVE」では日本初となる、舞台での3D映像を使用されました。今回も使われるそうですが、前回使って見て感想はいかがでしたか?
奥:想像以上に反響がありました。今までの舞台と違って、映像が客席の上にまで出てくる。より広がりがあり、客席も一体化出来るような演出ができましたね。この残響のテロルの舞台化にあたっても、3D映像を使うことによって表現できるものが増えるので、楽しみですね。
――実際3D映像を舞台本編で使われて発見などありましたか?今回はこうしてみたいとか。
奥:そうですね、今回はよりエモーショナルなものにしたいと思っています。攻殻機動隊は作品の描いている世界観が複雑だと思うんです。それに比べて残響のテロルは現代の話ですし、描いている事柄はシンプルだったりするので、それを表現するために、うまく3Dを使いたいと思います。よりシンプルなセットで、世界観に没頭できるようなものにしたいですし。だからこそキャラクターの心の動きの描写も細かくやりたいですね。
-――演者も発表されていますが、こちらについては?
奥:若いキャストにしたかったというのはあります。ナイン役の松村龍之介くんとは二回、ツエルブ役の石渡真修くんとは過去一回ご一緒したことはあるんですけど、信頼しているキャストですね。再現度も高いです。
――ヒロインリサ役には桃瀬美咲さん、柴崎役には滝川英治さんですが。
奥:リサはとても難しい役だと思います。桃瀬さんにはチャレンジになるかとは思うんですけど、やってくれるんじゃないかと。柴崎に関してはもう滝川さんしか居ないと思いますね(笑)兄貴分でもあるし、懐の大きさというかね。柴崎はただ追うだけでもなく、ナインとツエルブのことを理解しようとするので、そこも表現してくれるんじゃないかな。
――そしてハイヴ役にはアニメ版でも同じ役を演じられた潘めぐみさんです
奥:単純に僕、潘さんのファンなんですけどね(笑)
――アニメに出演している人が同じ役で舞台にも出演するというところに対して、演出としてはプレッシャーはありませんか?
奥:プレッシャーはないですけど、やっぱりアニメ原作舞台ってアニメが好きな人のお祭り的な場所でもあると思うんです。そこにキャラクターが居たり、声優さんもいるというスペシャル感は出したいんです。まあ残響のテロルの場合は、お祭りって雰囲気の作品ではないかもしれませんが、ファンが心から喜べる場所にしたいとは思ってます。キャラクターと同じ場所に居たい、同じ時代を生きたいと思ってもらえる場面を作れれば。例えば原作では伝えきれなかった場面をもっと深く掘りさげたり、新しい側面を見せたり出来ればいいですよね。
舞台版『残響のテロル』演出 奥秀太郎
リアルにこだわった『残響のテロル』、制作現場は挑戦の場でありたい。
――さて、残響のテロルは本放送当時から、センセーショナルかつ硬派な作品だったと思っています。この作品が内包してるテーマというのは、一言で語りきれない部分があると思うんですが、当時の脚本制作現場はどのような感じだったのでしょうか?
熊谷:とにかく監督の渡辺信一郎さんが作劇のリアリティにこだわる方で、「実際コレが出来るの?」とか専門家の方にお伺いしたりしてましたね。第一話で都庁の爆発とショッキングなシーンがありましたが、脚本会議の席ではもっとすごいアイデアも出てたんです。
――そうなんですか?
熊谷:6話、7話で書かれた空港テロのシーンで、本当は飛行機を飛ばして落とすという案があったんです。それは流石に難しいんじゃないかとか意見も出たんですけど、航空会社さんに質問したり、専門家の人に聞いたり、実際見に行ったりしたんです。結論として「飛行機はあんまり落ちない」という結論に至りました。渡辺監督の「アニメだけどリアリティにこだわる」っていうのはキャラに対してもそうで、キャラクターではなく人間として書く、という事で細かいセリフの修正があったり、脚本担当としてはやりがいはありましたけど、大変でもありましたね。
奥 そのリアリティを今度は舞台でどこまでやれるかというのもありますね、渡辺監督のこだわった部分をどこまで再現できるかが挑戦だと思ってます。
――あまり通常のアニメ原作舞台を作るとしてもとりあげない作品だと思います、沢山いるアニメ原作舞台ファンに向けて意気込みというか、メッセージがあれば。
奥:そうですね、今回は人間の影というか、内面にフォーカスした作品だと思っています。主演の松村くんも真修くんも、今本格的な俳優として新たなフェイズに挑戦しようとしているタイミングで、そんな時にこの残響のテロルに出演する。彼らも挑戦だし、僕達スタッフ、カンパニー全体が挑戦していかないといけないと思っています。
――アニメ版のテーマがあって、勿論同時に舞台版ならではのテーマというのもあると思うんですが
奥:難しいな…単純に言えば「若さ」かな。誰もが成し得なかったことを自分たちが信念を貫いて成し遂げる、それを後押しする若さみたいなものを表現したいですね。
熊谷:「存在の証明」というのは一つのテーマなんじゃないかと思うんですよ、ナインとツエルブの二人が、自分たちの危うい存在を認めさせたいという所から事件を起こす。少年たちの存在証明というのはあるんじゃないかな。
――この前に脚本会議もありましたが
熊谷 ここは原作から離れすぎてるから戻そうとか、もう少し発展させてもいいんじゃないかとかありましたね。
――コメディ的なシーンも想定されてるんですか?
熊谷:原作よりは少しコメディ的な部分もあるかもしれませんね。張り詰めすぎると観客も疲れると思うので、バランスよく書くつもりです、ナインとツエルブ、リサのやりとりとか。
奥:堅苦しい社会派作品というだけではなく、そのテーマをどうエンターテイメントで出せるかというところだと思いますね。
舞台版『残響のテロル』脚本の熊谷純
アニメ原作舞台がどんどん増えればいい、そして世界へ。
――最後に、ここ最近アニメ原作舞台というのは、とても本数も多く上演されております、これに関して思われることってありますか?
奥:増えることは凄くいいことだと思いますね。ロンドンのウエストエンドとか行くと、街中に劇場があって色々な作品が上演されてるじゃないですか。あれみたいに街中でアニメ原作舞台が行われててもいいんじゃないかな?と思ったりします。劇団四季さんや宝塚さんと並ぶようなアニメ原作舞台になれば面白いですよね。
-――世界に誇るコンテンツ、という形ですね。
奥:ウエストエンドで「チャーリーとチョコレート工場」の舞台が人気があるように、日本に来れば人気アニメの舞台が見れる!世界中からそういう人が訪れるようになるといいですね。
――そんな思いをもって制作される「残響のテロル」ということですね。
奥:それぞれの舞台の作りとして、見どころって多様にあると思うんですよ。ダンスが凄い所、殺陣が凄い所、僕の演出で言ったら映像とのコラボレーションなのかな。そういう特色を出しつつ、面白いもの作りたいですね、でも今回は「アニメゲーム系の舞台を初めて見るのであればコレだろ!」という思いはあります。アニメ原作っていう部分に対する見方が替わるんじゃないかと思いますよ。
熊谷:肩肘張らず見てほしいです、どうしても舞台って敷居が高いと思うんですけど、楽しんでもらえるように頑張ります!
舞台を作ることの難しさ、面白さを語る二人。
日時:2016年3月2日~3月6日
会場:Zeppブルーシアター六本木
演出:奥秀太郎 脚本:熊谷純
出演:松村龍之介、石渡真修、滝川英治、桃瀬美咲
潘めぐみ、井深克彦、郷本直也、かぬか光明、チャド・マレーン 他