内藤大希×平野良×原田優一が語る、新たな一歩への意気込み シン る・ひま オリジナ・る ミュージカ・る『明治座で逆風に帆を張・る!!』インタビュー
内藤大希、原田優一、平野良
毎年、年末に行われる明治座×る・ひまわりの「祭シリーズ」。様々な偉人にフォーカスし、笑って泣けて学べる舞台を上演してきた本シリーズは昨年で10周年を迎えた。新たな一歩となる今回は「シン る・ひま」と題し、グランドミュージカルから2.5次元まで多彩な要素を詰め込んだミュージカル『明治座で逆風に帆を張・る!!』が上演される。演出は、これまでの祭シリーズやるひま作品にも多数出演し、2019年の祭シリーズ『麒麟にの・る』の演出も手がけた原田優一。同じく過去シリーズへの出演経験があり、本作でW主演を務める内藤大希・平野良との鼎談の様子をお届けしよう。
――まずは本作への意気込みを教えてください。
原田:今回は祭シリーズの新たな挑戦、ミュージカルです。2019年に演出を手がけた『麒麟にの・る』では、明治座の機構を使い、貴重で贅沢な経験をさせていただきました。前回の経験と反省点を全部活かしていきたいと思っています。集まってくれたキャストは、実力があって頼もしい方ばかりなので、皆さんに委ねて、大人の遊びを混ぜつつ最高のエンターテインメントをやっていきたいですね。今まで祭シリーズをご覧いただいていたお客様も、初めて観る方も楽しめるような作品にしたいと思っています。
ミュージカルについてはまだ構想中。王道でありながらも、祭シリーズの遊び感覚というか、「そうくるんだ」というところも求めていきたいです。(作曲の)オレノグラフィティさんとは何回かご一緒していて。ジャンルに囚われないキャッチーな曲が多いので、(観劇後に)明治座を出た皆さんが口ずさみながら駅に向かってくださればいいなと思っています。
原田優一
内藤:る・ひまわりさんの10年続くシリーズなんですよね。10年続くって、想像もつかないくらいすごいことだなと。その新たな一歩目を、座長として(平野と)二人で務めさせていただけるのは光栄だと思います。それだけ頑張らなきゃとも思うんですけど、楽しみという思いも強いです。早く稽古をしたいですね。あとは明治座の客席にお客様がいる状況を早く見たいなと思います。
平野:一昨年、去年、今年の間にいろんなことが変わったし、すごく濃密な3年でした。今年11年目のシン る・ひまは、脱皮するような新たな挑戦。そこに呼んでいただけたので、自分の役者人生においても脱皮を図る気持ちで一歩踏み出せたらと思っています。実は今、初舞台くらい緊張しています。キャストがすごいじゃないですか。で、ミュージカル。で、大希。その相方ってなると胃が痛くて。楽しみ・ワクワクと不安・プレッシャーで、自分の感情がよく分からないです(笑)。
――今回の作品は源頼朝と北条義時が主役です。あまり主役として取り上げられない人物ですが、頼朝と義時や鎌倉幕府に関するイメージはどんなものですか?
平野:それこそ、僕が初めて祭シリーズに出演した2013年は義経が主演だったんです。でも“if”の物語、史実と言われているものを遊ぶシリーズなので、「この時代こうかな、ああかな」って勉強しても、あんま意味ねえなと思って(笑)。衣装とか所作も史実とは違うし。ただ、人の思惑がより濃い感じがしますよね。伝達の方法や学のある人が限られるぶん、昔にいくにつれて言葉のやりとり、裏切りや結託が重くなる気がします。今はツールがいっぱいあるから、現代人は薄情じゃないですか(笑)。平安や鎌倉は、より言葉に力があるなっていう印象があります。
内藤:時代で言葉の重みが違うとか、言われて確かにと思いました。(平野と原田の)二人が、皆さんやお客さんに向けて投げかける言葉のチョイスがとっても素敵で、しかも毎回違う球を投げるので、間に座っていてすごいなと思います。
内藤大希
平野:質問へのアンサーになってない(笑)!
内藤:何もないんですよ(笑)。小学校の時に学んだくらいで。しかも、話してると「それ今違うらしいよ」みたいな感じで。
原田:取り上げられない、今まで扱われなかったのには理由があると思っていて。今回も扱いが結構難しいんですよね。鎌倉時代とミュージカルとの相性もあるし。(この時代は)鬱憤が溜まって蓋が取れていない状態というか、言わんとすることをオブラートに包んでいるような人が多いんですよね。溜まり切っているものをどう表現するか考えているところです。ifの物語を設定するけど、その人たちが抱えているものだからこそ、こういう物語ができるよね、というのを、うまいこと曲に乗せられたらいいなと思っています。特に、今回の頼朝と義時はキャラクターを真逆に作っています。なぜこの二人なのか、最終的にどう着地するかっていうところを見せられたら。鎌倉時代のバディものってあんまりないような気がするんですよ。ちょっと謎に包まれている時代だからこそ、「こうだったんじゃないかな」っていうお芝居ができたらと思っています。
――祭シリーズにおいて、原田さんは『麒麟にの・る』に続く演出・出演です。現時点での構想、やってみたいことを教えてください。
原田:やっぱりミュージカルってことで、「ミュージカル的名場面」を作りたいなと思っています。「シン る・ひまと言えばあれ!」みたいな、壮大なシーンは一つ作りたいなと思っています。
――内藤さん・平野さんが思う原田さん演出の魅力はなんでしょうか。
内藤:一緒に出演させていただいた時には、言葉は多くないけど導いてくれて、その距離感が絶妙でした。先輩によってはすごく言ってくる人とか逆に言わない人とか極端なんですけど、その塩梅がもう。ちゃんと自分で考える余地も与えつつ導いてくれるので、「好き!」っていう感じです。役者の気持ちに寄り添って導いてくれるのかなと思いますね。稽古場も、萎縮することなくやれる雰囲気があります。
平野:いやもう原田さんね、頭がいいんです。すっごくクレバーで。自分がどういう演出をしたら役者がどう動くかまで見越してるから、みんながやりやすいんだと思う。言い方一つとっても、「この俳優だったらこういう方が聞くだろうな」ってとこまで考えてくださいますね。
平野良
――原田さんが演出家として内藤さん・平野さんに期待していることはなんですか?
原田:たくさんありますね。二人とも、舞台における表現や芝居については経験や感性で備わっていますし。今回に関しては(頼朝と義時の)キャラクターの違いがはっきりしているので、そのマッチングには二人のチームにすごく期待しています。それぞれに対しては、すごく信頼していますし、関係性も普段からできていて、遠慮することもない(笑)。それをうまく利用して、ともに高みを目指すじゃないですけど、創作することを楽しみたいと思っています。
――お互いの印象や、共演で楽しみなことを教えてください。
平野:原田さんは芸歴も年齢も上ですし、演出として色々手掛けたり仕掛けたりしていて。いろんなものに造詣が深くて、役者としても人としても尊敬している一人です。また原田さんと作品を作れるのが楽しみだし、その相手が大希っていうのもすごく楽しみ。僕、去年と一昨年、「実は……」展開のキャラクターで。去年はこばかつさん(小林且弥)と同じラインに見えるけど……という感じで。でも今回は(内藤と)同じ目線で一つの物語を紡いでいけるんですよね。それこそ二人三脚じゃないですけど、感じ方は違えど同じ風景を見て、同じ方向に進んでいけるんだろうなって。俳優としても全く違う武器があるので、それがどう混ざり合っていくのかが楽しみですね。
内藤:信頼している優一さんが信頼してる良くんっていう。
原田:友達の友達みたいな(笑)。
内藤:そういう感覚(笑)。舞台においての信頼って、普通の友達とはまた違う信頼感というか。舞台上で一回共演してさらけ出して知ってる中での「信頼してます」って言葉って、うわべじゃなくて本音だと思うんですよ。だからそう思われてる良くんと一緒にできるのが楽しみです。あと、喋ってる中で、二人は本当にいろんなこと考えてるんだなって思ったんです。そういう姿勢を見るのも楽しみというか、しっかり吸収したいなと思っています。
原田:出演する時と演出する時でスイッチが違うので、演出してる時は全く出たいと思わないんですよ。でも、舞台上ではいち共演者になるので、そこでの会話を楽しみたいですね。作り手としてじゃなく、共演者として向き合えればいいなと。出てきたものには応えるし、応えてもらえるように自分も出したいなと思うし。共演するのは、作り手とはまた違うエキサイティングが待っていると思います。
内藤大希、原田優一、平野良
――最後に、楽しみにされているお客様に向けてメッセージをお願いします。
内藤:ミュージカルって、歌も踊りもお芝居もあって、3時間半に詰め込めるエンターテインメントの中で一番楽しいものだと思うんですよ。しかも、役者の生身を通してお客さんに伝える。そんな仕事をしている自分はなんて幸せなんだと思うし、それは観にきてくださるお客様がいて初めて成り立つもの。やっぱり、ミュージカルってみんなを幸せにするので、いいですよね!
11年目まで続いてきたシリーズというのもそうなんですけど、これから新しい一歩。二歩目に続くような一歩にしたいと思っているし、そうできるよう、自分が持っている力とキャストさん、スタッフさん、サポートしてくださる皆さんの力を合わせて、素敵な舞台を作り上げて新年を迎えたいと思っています。全公演配信もあります。劇場でもお家でもいいのでぜひご覧ください。
平野:今までは俳優さんがミュージカルのパロディみたいなことをしてたけど、今回はミュージカルと銘打って、ミュージカル界で活躍している方々がいっぱい出てくださる。これ、本物じゃんと(笑)。その中でどう遊んでいくかが新たな楽しみ・試みなので、今までの年末シリーズを知っている方も楽しめると思いますし、今回から来てみようかなという方にもいい機会だと思います。ベテランから中堅から、素晴らしいキャストが揃って、耳で聴いても目で見ても楽しい。なのにこんなに馬鹿馬鹿しいことするんだっていうのが醍醐味で、他では味わえない作品になるんじゃないかと思うので、常連さんも悩んでいる方も一度足を運んでいただけたら幸いです。
原田:ミュージカルと銘打っていますが、祭シリーズが続いて来たからこそのミュージカルです。なので、観終わった後に「あ、そうだね。言われてみればミュージカルしてたね。面白かったね」みたいな、新たなジャンルになったらいいと思います。異種格闘技戦じゃないですが、畑が違うキャストが集まってくださっているので、それこそいい意味でのごった煮。そこを楽しんでもらえたら。
舞台って「今ここは鎌倉時代です!」「今宇宙になりました」「海になりました」っていうのが魅力ですよね。皆様の想像次第でどこにでもなるし時代も飛べる。やっぱりお客様は、日常から非日常への変化を期待して集まってくださると思うので、劇場の非日常にお越しくださいと。時代もジャンルも飛べますよというところで楽しんでいただけたらと思っています。
原田優一、内藤大希、平野良
本作は12月28日(火)〜31(金)まで、明治座にて上演される。ユニークな解釈のもと、実力派キャストたちが大真面目に遊び倒すのが魅力の祭シリーズ。新たな一歩目を見届け、2021年を明るく楽しく締め括ってはどうだろうか。
取材・文=吉田沙奈 撮影=荒川潤