川島如恵留インタビュー~初単独主演舞台『すべての幸運を手にした男』で考える「幸運」とは

インタビュー
舞台
2025.10.13

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2025年11月14日(金)から12月2日(火)まで、東京グローブ座にて、川島如恵留(Travis Japan)初単独主演舞台『すべての幸運を手にした男』が上演される。

本作はアーサー・ミラー初期の戯曲で、次々と思いがけない幸運が訪れる主人公デイヴィッド・ビーヴスをめぐる人間ドラマを描いている。主演の川島は昨年、音楽劇『A BETTER TOMORROW -男たちの挽歌-』で、松倉海斗(Travis Japan)とW主演を務め、今回が初単独主演、そして本格的なストレートプレイに初挑戦となる。演出を手掛けるのは、日本での演出が3作目となるイギリスの演出家リンゼイ・ポズナー。

本作に挑む今の思いを川島に聞いた。

運と実力はどちらかがゼロだと絶対ダメ

──これまで、ご自身の中で単独で主演をしたいという思いはお持ちでしたか。

はい、持っていました。今回のお話しをいただいたときは、二つ返事ですぐに「やらせてください」とお伝えして、送られてきた作品の資料を読んで「これはもう僕が演じるしかない」と思いました。去年はW主演を松倉と務めさせてもらって、2人だったからこそ乗り越えられたことがたくさんありました。それを今回は1人で、ということになるので、楽しみでもありつつ、若干のプレッシャーでもあります。そのプレッシャーを跳ね返せるくらい、稽古期間中に自信をつけられたら良いなと思っています。単独主演はずっと挑戦したかったので、メンバー全員に観に来てもらって「最高だったよ」「Travis Japan、まだまだいけるじゃん」と思ってもらいたいです。

──「僕が演じるしかない」と感じた理由をお聞かせいただけますか。

僕自身、ずっと昔から運がなくて、運がない分実力でカバーしなくちゃ、というふうに思って生きてきたんです。でも、デビューするちょっと前、アメリカ留学に行く前くらいから、「あ、運が回って来てるかもしれない」と思うようになりました。でもやっぱり実力の部分や、日々の積み重ねの部分も大事にしなきゃ、と思いながら、運と両輪で生きてきました。今回演じるデイヴィッド・ビーヴスは、運でしか生きていなくて「自分には実力なんて何もない」と運だけに頼ってしまっている自分が怖いというか、そういう自分に自信が持てないという人間なので、以前の「運がない」と思いながら生きていた僕とは真逆で、今の「運が回って来た」と思っている僕のもっと誇張したバージョンというか、だから気持ちがすごくわかるんですよ。最終的にデイヴィッドが気づく“何か”というものに、今の僕は気づけている気がしているので、それをデイヴィッドに見せてあげたいと、だから僕が演じるしかないな、と思いましたね。

──運がめぐってきた、というのは何かきっかけがあってそう感じたのでしょうか。

運と実力、どちらも「ゼロか100か」じゃないというか、やっぱり何か行動があるから運をつかめることもあるし、運がめぐってきたときに行動でそれを掛け算してめちゃくちゃ大きくすることもあると思うから、どちらかがゼロだと絶対ダメなんです。でも、例えばアメリカ留学に行って、ワールド・オブ・ダンス(WOD)の予選に出たときに、3位に入ったその瞬間を「アメリカズ・ゴット・タレント」のプロデューサーがたまたま観ていて番組に出演することになった、というような“たまたま”の部分は僕たちにはどうしようもないじゃないですか。そういう積み重ねがいろいろあったので、運がめぐってきたな、と感じました。

──デイヴィッド・ビーヴスを演じるにあたり、どのような意気込みをお持ちですか。

すごく共感できるというか、まるで自分のことを書いているんじゃないかと思って没入してしまうほど、僕と共通点が多いキャラクターなので、僕は自分のことを運に恵まれてきただけだと思っているんですけど、この作品を通して、実際はどうなのかとか、日々の積み重ねの大切さといったことに、改めて気づきながら自信に変えられたら良いなと思っています。作品を観終わった後、作品から少しずつ現実に引き戻される時に、「如恵留と似てたな、あの人」と思ってもらえたら嬉しいなと思います。

「すべての自信を手にした男」になっています!

──Travis Japanとしてのグループ活動や個人の活動など幅広くご活躍されている中で、舞台に立つことへの思いを教えてください。

僕、舞台が大好きなんですよ! アイドルになるまでは舞台で生きていくんだとずっと思っていたので、アイドルになった今も、またこうして1人のプロの演者として舞台に立って作品を届けられることに、すごく喜びを感じています。

──具体的に舞台のどういうところが好きなのか教えてください。

コンサートとも共通する部分ではありますが、やはりダイレクトに相互間でやり取りがあるところですね。コンサートも舞台も、良いところがあれば拍手があったり、例えばコンサートなら歓声とか声援があったりして何か繋がりを感じられるじゃないですか。舞台は、作品自体が一枚の薄い壁のようなものになっていると思うのですが、その作品を演じて届けようとしている舞台上の人たちの気持ちと、客席にいる皆様の「それが欲しい、それを見たい」という気持ちが100%相互になっているのが、ちゃんと接続されている感じ、お互いがラブラブな感じがして、すごく好きです!

──尊敬している舞台俳優はいますか。

もちろんたくさんいらっしゃいますが、僕が大学生くらいの頃にたくさん舞台を観ていて、特に「この人素敵だ」と思ったのが、成河さんと大貫勇輔さんです。やはり体が利く、歌がうまい、そしてお芝居ももちろん上手、という方がすごく好きで特にかっこいいと思うんです。

──稽古にはどのような心構えで臨もうと考えていらっしゃいますか。

まず作品のストーリー自体を自分の頭の中に入れることですね。原文を全て読んで、翻訳される前のオリジナルの内容が今ちゃんと頭の中に入っているので、それが僕にとっての大きな準備の一つだと思います。あとは演出のリンゼイさんが英語でお話しされるので、僕も英語脳にチューニングして、よりダイレクトに意味合いや伝えたいことが共有できたら嬉しいなと思って準備をしています。

──リンゼイさんとはワークショップをされたそうですが、何か印象や特徴的だと感じた点はありましたか?

独特な時間の流れを持っている方だなという印象でした。ゆったりとされているというか、すごく大らかなイメージがあるんですが、ワークショップの時のやり取りではかなり早いスピード感でズバッと言われたりすることがあって、早い時とゆっくりな時とがいろいろあるところが魅力的で、時間感覚にすごく鋭い方なんだろうなと思いました。

──「幸運」がテーマになっている作品ですが、川島さんご自身は「幸運」についてどのような考えを持っていますか。

この作品にも通じることだと思いますが、幸運はただ待っているだけでは来ないから、自ら動いてつかみに行く必要があると思っていますし、自分1人では来ないと思っています。1人でつかめる幸せには限界があると思うけど、僕は1人ではないし、人が増えれば増えるほど、取りこぼさずにより大きなものやたくさんの幸せに出会えると思うので、なるべく多くの人と一緒にいたいなと思っています。

──ちなみにその考えは以前からお持ちだったのか、それとも最近になってそう考えるようになったのでしょうか。

こう考えるようになったのは、活動休止を経験したことがすごく大きいです。活動休止期間は1人でたくさん考える時間があって、逆に1人だったからこそつかめたこともあったとは思うのですが、やはり僕が一番欲しかったものというか、僕にとって必要なもの、僕にとって幸運なものというのは、メンバーと一緒にいられることだ、ということに改めて気づいたので、それが大きかったです。

──情報解禁時のコメントの中に、メンバーに「舞台が映える」と言ってもらいたい、というような内容がありましたが、それはどのような意味なのか具体的に教えてください。

ステージ上に立って、そこに照明がなくてもどんな衣装でもその人に引き込まれる、というのが僕にとって「舞台が映える人」なんです。どんな暗闇にいても「何か来た」「ゾワッとする」というような存在感を出せる人が舞台に映える人だと僕は思っているので、そんな人になりたいなと思っています。アイドルとして立たせていただく時は、キラキラした衣装やかっこいい衣装で、きれいな照明と演出によって際立つアイドルの魅力というものがあると思いますが、舞台に映える人の魅力というのは、それとは正反対のものだと思っているので、それを身につけて「舞台でもこんなに映えるんだ」と言われるような姿をメンバーに見てもらいたいです。

──公演を楽しみにしているお客様へのメッセージをお願いします。

本当に最高の作品をお届けします、という自信を持っているので、僕は今「すべての自信を手にした男」になっています(笑)。間違いなく良い作品にしますし、もちろん僕一人だけではなく、素晴らしい共演者の皆様と作り上げて、グローブ座で「人生が一つ変わったな」と思える瞬間をお届けしたいと思いますので、ぜひ足をお運びください。

ヘアメイク=宇佐美順子(JOUER)
スタイリスト=日夏(YKP)
衣装=カーディガン ¥268,400 / THOM BROWN(問い合わせ:THOM BROWNE AOYAMA / TEL 03-5774-4668

取材・文=久田絢子 撮影=荒川潤

公演情報

『すべての幸運を手にした男』
 

作:アーサー・ミラー
翻訳:高田曜子
演出:リンゼイ・ポズナー
美術・衣裳:ピーター・マッキントッシュ
 
出演:
川島如恵留(Travis Japan)、花乃まりあ、大野拓朗、古河耕史、駒木根隆介、永島敬三、栗田桃子、内田紳一郎、大石継太、羽場裕一
 
■公演日程・会場
会場:東京グローブ座 (東京都新宿区百人町3-1-2)
日程:2025年11月14日(金)~12月2日(火)
 
料金
S席11,000円/A席9,500円 (全席指定・税込)
※未就学児入場不可 ※無断有償譲渡禁止・営利目的の転売禁止
※公演中止など、主催者がやむを得ないと判断する場合以外にの払い戻しはいたしません。
■一般発売日 2025年10月13日(月・祝)午前10:00
 
■公式サイト https://alltheluck.jp/ 
■主催・企画製作:東京グローブ座
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