アートの聖地で味わう、旅型の芸術祭 『瀬戸内国際芸術祭2022 企画発表会』レポート

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2021.11.10
『瀬戸内国際芸術祭2022 企画発表会』

『瀬戸内国際芸術祭2022 企画発表会』

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3年に一度のアートの祭典が、いよいよ次の春に迫ってきた──。2022年は『瀬戸内国際芸術祭』開催の年である。開幕を約5ヶ月後に控えた11月9日、都内にて開かれた『瀬戸内国際芸術祭2022 企画発表会』にて、開催への意気込みや展示計画などが主催者より語られた。ここではその様子をレポートする。

瀬戸芸とは何か?

会場風景

会場風景

『瀬戸内国際芸術祭(瀬戸芸)』とは、香川県から岡山県にまたがる瀬戸内エリアにて、春・夏・秋の3シーズンにわたって開催される現代アートフェスティバルだ。2010年から3年ごとに開催されており、今度の『瀬戸内国際芸術祭2022』で5回目を迎える。

瀬戸内といえば、直島の「地中美術館」や「ベネッセハウスミュージアム」をはじめとした人気のアートスポットが数多く点在し、エリア全体が “現代アートの聖地” として名高い。たとえ現地に行ったことはなくても、「瀬戸内のアート」と聞けば巨大なカボチャが脳裏に浮かぶ人も多いのではないだろうか?

直島に展示されている草間彌生作の《赤かぼちゃ》

直島に展示されている草間彌生作の《赤かぼちゃ》

『瀬戸内国際芸術祭2022』では、瀬戸内海に浮かぶ12の島と2つの港を舞台に、国内外のアーティストがそれぞれの島に独自の歴史・景観を活かしたアートプロジェクトを展開する。この “場所性” こそ、本芸術祭の重要なキーワードのひとつだ。瀬戸内のその場所だから出会える作品、そこでしか体験できない瞬間が、来場者を待っているのである。

実行委員会会長 浜田恵造氏コメント

企画発表会では、まず瀬戸内国際芸術祭実行委員会会長である、香川県知事の浜田恵造氏が登壇して、開催への思いを語った。

瀬戸内国際芸術祭実行委員会委員長(香川県知事)浜田恵造氏

瀬戸内国際芸術祭実行委員会委員長(香川県知事)浜田恵造氏

「『瀬戸内国際芸術祭』は、アートを道標に瀬戸内海の島々を巡りながら、心癒される風景とそこで育まれた文化・暮らしに出会う現代アートの祭典であります。これまでの4回の開催では、世界トップレベルのアーティストが瀬戸内ならではのアートや建築を展開し、それを求めて世界中から訪れた人々と島に暮らす人々との新たな出会いが、地域の元気に繋がりました。今回はこれまでの “あるものを活かして新しい価値を生み出す” サイトスペシフィックなアートプロジェクトを基本としながら、本土側も含めた新たなエリアでの作品展開 ・イベントの開催を通じて来場者の周遊の促進を図ります。来年4月14日の開催まであと5ヶ月となり、いよいよ準備も本格化してまいりました。コロナ禍が続くなか、島民の皆様やご来場いただく皆様の安心安全に配慮することを基本としながら、アートを通じて瀬戸内海の魅力を広く世界に発信し、より多くの皆様に実際に島々を訪れていただきたいと考えております。」

総合プロデューサー 福武總一郎氏コメント

続いては、瀬戸内国際芸術祭総合プロデューサーを務める公益財団法人福武財団理事長の福武總一郎氏がオンライン出演し、芸術祭の意義や開催に向けての意気込みを語った。

瀬戸内国際芸術祭総合プロデューサー(公益財団法人福武財団理事長)福武總一郎氏

瀬戸内国際芸術祭総合プロデューサー(公益財団法人福武財団理事長)福武總一郎氏

「『瀬戸内国際芸術祭』は一貫して “海の復権” をテーマに掲げております。 過度の近代化、都市への一極集中、経済偏重の社会に対して、地方にこそ個性と魅力あふれる文化が残っていると考え、それをアートの力で再発掘し顕在化することで、地域を元気にすることを目的としてきました。その活動を通して私たちは、現代アートには田舎を、そしてそこに住む人生の達人であるお年寄りの方々をとても元気にする力があることを、おそらく世界で初めて確認することができました。現在世界的パンデミックの状況下において、アートの力にはより一層の期待が寄せられていると思います。特に、気候変動、環境汚染、貧富の格差といった大きな社会課題が我々の前に突きつけられている現在、メッセージ性の高い現代アートに向き合い、美しい自然の中に身を置くことによって、本当の豊かさ・本当の幸せ・本当に持続可能な社会とは何かを改めて深く考えることは、大変意義あることではないでしょうか。瀬戸芸はこれからの新しい地域やコミュニティのあり方を考える大きなチャンスであり、その提言を世界に向かって発信する重要な機会だと考えております。」

総合ディレクター 北川フラム氏による企画発表

ここで、瀬戸内国際芸術祭総合ディレクターの北川フラム氏によって、芸術祭の企画概要が発表された。

瀬戸内国際芸術祭総合ディレクター 北川フラム氏

瀬戸内国際芸術祭総合ディレクター 北川フラム氏

「2006年から準備に入った『瀬戸内国際芸術祭』は、地域の持つ様々な課題を将来的に解決していければ、という思いで始まりました。アートはそのための強力な力になるだろうと。これまでは期間中に100万を超える方々に来場いただきましたが、今回はこの状況ということもあり、特にゆったりと回っていただける環境づくりを意識していきます。」

『瀬戸内国際芸術祭2022』メインビジュアル (グラフィックデザイン=原研哉、撮影=上田義彦)

『瀬戸内国際芸術祭2022』メインビジュアル (グラフィックデザイン=原研哉、撮影=上田義彦)

「アーティストが各地域の特色を発見し、作品作りをするなかで、地域との交流が生まれていく。その際、島の人たち、お年寄りの知恵が生きてきます。そのときに初めて、アートはアーティストだけではなく地域の人たちのものにもなるわけですね。本芸術祭は作品だけがあればいい、というのものではありません。作品自体の持つ非常に大きな力はありますが、その表現に至った元にある、歴史・生活・文化などを皆さんにお伝えすることに意識を払っています。」

例えば豊かな水が特色である豊島には、水をテーマにした「豊島美術館」が存在する

例えば豊かな水が特色である豊島には、水をテーマにした「豊島美術館」が存在する

「アートはなかなか写真や映像だけでは伝わりません。地域に来てみて、海を渡るときの新しい感触、足に返ってくる土の弾力、あるいは草いきれ……。そういった五感全体に入っていくものです。瀬戸芸は、そのあり方がいわば “旅型の芸術祭” とも言われ、世界的に評価を受けるようになりました。瀬戸芸によって瀬戸内が評価されたことは、私たちにとって本当に大きな喜びです。」

今回の新しい動きとしては、本土側への誘客の拡大や、それぞれの市町が持つ計画に伴走するような、市町主体の取り組みが展開される。また、本芸術祭の開催にあたっては、県の保健医療機関や、岡山大学・香川大学の様々な指導を仰ぎながら徹底した感染症対策が実施されるという。お客さん側にとっては “行って良し” で、迎える島の人たちにとっては “来られて良し”、そんな芸術祭を目指す、と北川氏は力強く語った。

気になる参加アーティスト陣は?

ポーランドを拠点に活動するスタシス・エイドリゲヴィチウス

ポーランドを拠点に活動するスタシス・エイドリゲヴィチウス

『瀬戸内国際芸術祭2022』では、現在公式ウェブサイトで公開されている参加アーティスト以外にも、全体で100名ほどの参加が予定されている。実行委員会では、現在世界のアーティストたち約100人とのコンタクトをとっている状態で、コロナ禍の状況を鑑みたうえで1月ごろには現実化するめどだという。

ひびのこづえとダンスチーム 芝居や舞踏などのパフォーマンスも展開される

ひびのこづえとダンスチーム 芝居や舞踏などのパフォーマンスも展開される

さらに北川氏からは「今日は具体的に発表はできませんが、各アーティストが各島でワークショップを充実させる方針を考えています。来場者がワークショップを通じてアートと関わることのできるツアーを組んでいきたいと思います。」とのコメントもあった。これは、今後の発表から目が離せなくなりそうだ。 

「瀬戸芸デジパス」が登場!

続いてはや会場アクセスなどについて、運営面でのお知らせ。注目すべきは「作品鑑賞パスポート」、なかでも「デジタルパスポート(デジパス)」の存在だろう。

チケットについての解説

チケットについての解説

作品鑑賞パスポートは、会期中に芸術祭の作品や施設を各1回鑑賞できるだ(地中美術館、豊島美術館、ほか一部の作品やイベントは別途料金が必要)。価格は全会期を通じて使える3シーズンパスポートが5,000円で、春・夏・秋それぞれのワンシーズン限定パスポートが4,200円。この時点で3シーズンパスポートがだいぶお得だと感じるが、話はそれで終わらない。

「今回は従来の紙のパスポートに加えまして、新たにデジタルパスポートを導入しました。本日(11月9日)からデジパス限定でお得な3シーズンパスポートを先行販売いたします。ぜひご利用ください。」

なんとデジパス限定で、3シーズンパスポートが前売り特別価格4,000円になるという(ワンシーズンより安い)! デジパス専用アプリについては芸術祭公式サイトの「パスポート」ページに詳細が掲載されているとのことなので、ぜひ確認してほしい。

春が待ちきれない

概要解説の最後には、世界中のアーティストやサポーターから寄せられた『瀬戸内国際芸術祭2022』へのメッセージ映像が披露された。

シンガポールのサポーターより

シンガポールのサポーターより

フランスのアーティストより

フランスのアーティストより

「これは10月に世界26カ国・32人のアーティストでのオンラインブレストをやったときのものです。他にも、80人を超えるアーティストたちがテキストを寄せてきてくれています。現在、彼らといろんなやり方を今検討している最中です。そして多くのサポーターの皆さんも、瀬戸芸に関わることを心待ちにしてくれています。多くの方達と、“行って良し、来られて良し” の瀬戸芸を開催したいと思いますので、皆様どうぞよろしくお願いいたします。」

そう言って北川氏は会場の面々とオンライン視聴者へ深く一礼し、企画発表を結んだ。

『瀬戸内国際芸術祭2022』は、2022年4月14日(木)に春会期の幕を開ける。現代アートの祭典、この機会をぜひお見逃しなく。


文・写真=小杉美香

展覧会情報

瀬戸内国際芸術祭2022
会期:
春会期|2022年4月14日(木)~5月18日(水)35日間
夏会期|2022年8月5日(金)~9月4日(日)31日間
秋会期|2022年9月29日(木) ~ 11月6日(日)39日間
会場:12の島と2つの港
直島 / 豊島 / 女木島 / 男木島 / 小豆島 / 大島 / 犬島 / 沙弥島[春のみ]/ 本島[秋のみ] / 高見島[秋のみ] / 粟島[秋のみ] / 伊吹島[秋のみ]/ 高松港周辺 / 宇野港周辺
 
料金
「瀬戸芸デジパス」アプリをダウンロードいただき、ご購入いただけます。
瀬戸内国際芸術祭2022「瀬戸芸デジパス」購入サイト
https://setouchi-artfest-passport.eplus.jp/
 
<3シーズンパスポート>
瀬戸内国際芸術祭2022の全会期で使用できます。
・一般(19歳以上):4,000円(前売特別価格)
※通常価格(2022/4/14~):5,000円
・ユース(16〜18歳):3,100円
<会期限定パスポート>
瀬戸内国際芸術祭2022の「春・夏・秋」それぞれの会期のみ有効のパスポートです。
※会期限定パスポートの販売は、現在未定。発売開始以降は瀬戸芸デジパスアプリにて購入可能。
一般(19歳以上):4,200円
ユース(16〜18歳):2,600円
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