“歌う架け橋”北野里沙、ジャンルの垣根を飛び越えて 第六回 “サンデー・ブランチ・クラシック”12.13ライブレポート

レポート
クラシック
2015.12.26
 北野里沙(Vo) 撮影:平田貴章

北野里沙(Vo) 撮影:平田貴章


クリスマスの気配が色濃くなってきた12月13日(日)の渋谷、午後の昼下がり。この日曜日にも、LIVING ROOM CAFE(リビングルームカフェ)by eplusでは「サンデー・ブランチ・クラシック」が開催された。第六回目となる今回は、ソプラノ歌手であり、シンガーソングライターとしても活躍する北野里沙が登場。

クラシック、ポップス・・・歌い手としてそれぞれの顔を持つ北野。この日のライブの選曲は、そんな北野ならではのラインナップとなった。まず、1曲目には、堀倉彰のピアノ伴奏を伴ってカッチーニ作曲『アヴェマリア』を聴かせてくれた。『アヴェマリア』というと、シューベルト作曲のものをよく耳にするが、実はクラシックには同タイトルのものが何十曲もあるという。北野は、「本日ボーカルを務めさせて頂きます、クラシックソプラノ、シンガーソングライターの北野里沙と申します。今日はこんな小話なんかも含めて、ライブをしていこうと思います」という挨拶とともに、早速クラシックをぐっと身近に感じさせてくれた。

北野里沙(Vo) 撮影:平田貴章

北野里沙(Vo) 撮影:平田貴章

ここから島田光理によるヴァイオリンの伴奏も加わり2曲目には、北野が初めて作曲をしたというオリジナル曲『はじまりの時』。客席と目を合わせながら、時折差し伸べられる手。ビブラートのかかったロングトーンが美しい。“ここから未来が始まる―”と丁寧に歌詞を届ける北野の歌声は、クラシック曲を歌う時とはまた違った表情を見せる。

3曲目には、ジャズのスタンダードナンバーとしてよく知られているガーシュウィン作曲『サマータイム』を選曲。ここで再び、北野からクラシック小話が。「実はこの曲、もともとは『ポーギー&ベス』というオペラの劇中歌」なのだそう。『サマータイム』はよく耳にするが、知らなかった方も多いのではないだろうか。なお、この曲はアニメ映画『心が叫びたがってるんだ。』の中でも、ストーリーの中で描かれるミュージカルで歌詞を変えて歌われていたりする。こうして見ると、クラシックは思っているよりもずっと、私たちの身近にあるものなのかもしれない。

北野里沙(Vo) 撮影:平田貴章

北野里沙(Vo) 撮影:平田貴章

「サマー、というのはちょっと季節外れでしたが(笑)」と言いつつ、北野が次に用意していたのは、クリスマスソング『Sleigh Ride』。客席からは自然と手拍子も沸き起こり、カフェの中は一気にクリスマスモードに。第2部では、『Holy Night』も披露され、クリスマスの気配で華やいだ。

そんな楽しい曲のあと、「今日は“サンデー・ブランチ・クラシック”なので・・・」とちょっと改まって見せる北野。「これぞまさにオペラ!という曲を、ここで歌ってみたいと思います」という前置きのあと、紹介されたのはヴェルディ作曲 歌劇≪椿姫≫第一幕より『乾杯の歌』。この曲は、オペラの中では多くのコーラスとともに、女性ソリストと男性ソリストが掛け合いで歌う曲だ。第1部では、北野がソロでこの曲を歌い上げたが、第2部にはサプライズゲストが登場!なんと、たまたま会場に観に来ていたというバリトン歌手・吉田敦に北野が直談判し、即興デュエットが実現した(ちなみに、この日は吉田の59回目のお誕生日。北野から吉田へのサプライズとして、会場全体でハッピーバースデーを贈る一幕も!)。

左から、北野里沙(Vo)、吉田敦(バリトン歌手) 撮影:平田貴章

左から、北野里沙(Vo)、吉田敦(バリトン歌手) 撮影:平田貴章

マイクを渡されると、北野とは長い付き合いだという吉田は「よく喋れるようになったね・・・」としみじみ。急遽の登場となった吉田だが、その歌声はマイクがいらないぐらい圧倒的だった。煽られるように、北野の歌声も熱を帯びていく。オペラをこんな近くで聴くことはまずないだろう。ちょっと離れた客席から聞いていても、音圧がすごい!全身がビリビリするような、とんでもないサプライズに会場は指笛が鳴るなど興奮が渦を巻いた。

留学中、イタリアの音楽番組に感銘を受けたという北野。イタリアでは、クラシック、ロック、ポップス、すべての垣根なく一緒になった音楽番組を作っているという。この“サンデー・ブランチ・クラシック”のコンセプトは、「音楽のジャンルの間に壁を作らず、皆さんにもっと音楽を楽しんで頂ける“歌の架け橋”になりたい」という北野の想いを形にするのにぴったりな場だったように思う。

最後に用意されていたのは「この曲がなければ、今の私はいない」という、メジャーデビュー曲『母からの手紙』。実際に、北野が20歳の時に母からもらった手紙をテーマに書いたというこの曲には、娘を見守る母の大きなやさしさに満ちている。

“夢に向かって生きていきなさい たとえ人より出遅れたとしても 絶対にあきらめないこと”
“どんな時も自分には負けない強さを持って 前に向かうのをやめないこと”
“いつまでも そしてどんな時も あなたのことを応援していますから”

歌の間に、北野は手紙を取り出し朗読をする。この手紙には、実際の母からの手紙に記されていたものが書かれているという。北野がこの手紙に背を押されたように、北野の歌声も、楽曲を通して多くの人の背を押していくのだろう。

北野里沙(Vo) 撮影:平田貴章

北野里沙(Vo) 撮影:平田貴章

終演後、北野に本日のライブの感想を伺ってみると「結構ドキドキしましたね・・・!今日みたいなライブですと、普段クラシックはあまり聴かないという方や、幅が広い年齢層の前で、クラシックの曲もオリジナルの曲も歌えるというのは、とても貴重でいい経験をさせてもらいました」と語った。

北野が留学していたイタリアでは、カフェやレストランで演奏すると、突然お客さんが乱入し歌い出したりすることもあるという。「クラシックは少し敷居が高いと思われがちですが、こういったカジュアルな空間を通して、フレンドリーに、身近に感じて頂けたら。CMや街中でも、意外とクラシックの曲はいっぱい使われているものなので、身近にクラシック音楽があることを、歌を通して伝えられるジャンルを超えた“歌う架け橋”になれたらいいなと思っています」と、改めてその想いを聞かせてくれた。

2016年2月23日(火)には、そんな北野の想いをさらに実現するライブ<北野里沙 × JZ Brat Special Concert>―癒されナイト♡ vol.1―が、渋谷・JZ Brat Sound of Tokyoにて開催される。ソプラノ歌手としての北野と、シンガーソングライターとしての北野を同じ視点で楽しめる、まさにジャンルの垣根のないライブになるとのこと。“歌う架け橋”としての、これからの北野の活動にも注目だ。

今後も続々と開催されることが決定している“サンデー・ブランチ・クラシック”。今後のラインナップも、どうぞお楽しみに。

北野里沙(Vo) 撮影:平田貴章

北野里沙(Vo) 撮影:平田貴章

イベント情報
「サンデー・ブランチ・クラシック」 vol.6
■日時:12月13日(日)
■会場:「LIVING ROOM CAFE by eplus」
■出演:北野里沙 (ソプラノ歌手、シンガーシングライター)
▶第1部13:00~、第2部15:00~
■プロフィール
北野里沙(Vo)
東京音楽大学院修了。18歳の時、サラブライトマンでオペラに目覚め、突如音大受験を決意!卒業後、本場イタリアへ渡る。留学中、路上で日本のうたを歌っていたことがキッカケとなり、2014年「母からの手紙」(作詞・作曲 北野里沙)でメジャーデビュー。(クラウンレコードより発売)
2013年以降、イタリア・ロッシーニ歌劇場、バチカン市国・聖パオロ大聖堂にて、ソプラノ ソリストとして出演。その他、WBA世界戦フェザー級内山高志チャンピオン戦 国歌独唱、神宮球場花火大会オープニングアクト、日比谷シアタークリエ「クリエンターレ」出演、FMヨコハマ First Position」レギュラーパーソナリティー等を務める。 
2015年6月よみうり大手町ホールにてメジャーデビュー後初のホールワンマンを開催。現在、シンガーソングライター/ソプラノ歌手として、幅広く活動している。

次回 「サンデー・ブランチ・クラシック」 vol.8予告

■日時:12月27日(日)
会場:「LIVING ROOM CAFE by eplus」
出演:松田理奈(Vn)​
▶第1部13:00~13:30、第2部15:00~15:30
公式サイト:「LIVING ROOM CAFE by eplus」

予定曲目:
テーマ『冬に聴きたくなるクラシックヴァイオリン小品集』
コルンゴルト・雪だるま
サンサーンス・白鳥
バッハ/グノー・アヴェマリア
チャイコフスキー・アンダンテカンタービレ
フォーレ・子守唄
カルロス ガルデル・思いの届く日
マスカーニ・「カヴァレリア ルスティカーナ」より間奏曲
プッチーニ・「ジャンニ スキッキ」より私の愛しいお父さん
and more
 
料金:ミュージックチャージ500円、別途カフェ通常利用料(飲食代)
※演奏中に食事もお喋りもOK。
※お子様もご入場可。
※予約の受付はなし。
※飲食代の他に、お一人様につき一律500円のミュージックチャージ。
※混雑状況によっては、ステージが見えづらい場合や相席のお願いをする場合あり。
※満席の場合は入店できない場合あり。
 
シェア / 保存先を選択