前田美波里「待ちに待っていた」ブロードウェイミュージカル『ピピン』インタビュー

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2022.6.17
前田美波里

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2019年に初演されたブロードウェイミュージカル『ピピン』日本版が、主演ピピン役に新たに森崎ウィンを迎え、8月から9月にかけて東京・大阪にて再演される。

ボブ・フォッシー(ミュージカル『シカゴ』、映画版『キャバレー』)による演出と振付で1972年に初演された本作は、紀元8世紀後半のローマ帝国を舞台に、若き王子ピピンが「特別な何か」を探し求めて旅に出る物語。

2013年には、日本版でも演出を手掛けるダイアン・パウルスによって、ボブ・フォッシーのスタイルを踏襲したダンスと、シルク・ドゥ・ソレイユ出身のアーティストが手掛けたサーカスアクロバットが加わった斬新な新演出で上演。同年、トニー賞でミュージカル部門最優秀リバイバル賞ほか4部門を受賞した。

本作で、初演に続きピピンの祖母・バーサを演じる前田美波里(中尾ミエとWキャスト)に話を聞いた。

この作品を観て、自分の人生を切り拓いていってほしい

――『ピピン』再演にあたって、今はどんなお気持ちですか?

待ちに待っていました。「もっと早く」「もっと早く」という気持ちで。なぜかというとやっぱり人間は年齢を重ねると、そのぶん身体が言うことをきかなくなったりしますので。そうならないように、自分を鍛えて鍛えて今日まできましたけどね。それでもどうなるかは未知です。年齢を重ねるということは未知との遭遇ですよ。どうなるかは自分自身もわからないし、だからこそ面白い。だからこそやってみよう、っていう。

――待ちに待っていた、というのはどうしてですか?

この作品を観ると、みんなが幸せになるんですよね。人生待っていてもしょうがない、自分で切り拓いていくべきだ。「自分で自分を見つけましょう」というのがテーマですから。最近はマスク生活にも飽きてきたし、考えることがどんどん暗くなる。落ち込む時代に明るくなれる、こんないい作品はないんじゃないかなと思います。ピピンは戦争も嫌だって言っていますしね。この『ピピン』を観て、自分の人生を切り拓いていってほしいと思います。

――前田さんが演じるピピンの祖母・バーサという役にはどう思われていますか?

バーサはピピンに、「人間としてどう生きていくかは、自分で考えないと」「待っているだけでは来ないんだよ」ということを言いますよね。そういう意味でも、素敵な作品、素敵な役をいただいたと思っています。初演のときは、最後の3~4公演で、パフォーマンスで相手に委ねることができたんです。それがとても気持ち良かった。だから今回はそれを最初からできるように努力したいと思っています。

前田美波里

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それとバーサは空中ブランコのスターだった役ですから。それを思わせるような瞬間は出さないといけないなと思います。そう言いながらも、年齢がきているから怖い気持ちもありますけど。でもがんばります。このくらいしかできなかった、となっても、それも私だし。「がんばります」って言っておくしかないですね(笑)。ただ私は小さい頃から身体を動かすのがすごく好きで。身体を動かしてないと自分じゃない、みたいなところがあるので、ピッタリな役なのかもしれません。「なんでそこまでやるの?」って聞かれるんですよ。女優の友達は「再演はもう出ないでしょ? えー! 出るの!?」と言ってます(笑)。

――一言で言えることではないと思いますが、舞台のどんなところに惹かれるのですか?

『ピピン』でいえば、相手なしにはパフォーマンスができないことです。さきほど「委ねることができた」という話をしましたが、相手の手を握って、自分がいろんな動きをしていると、やはり身体が硬くなってしまうんですよ。でも、そこで委ねることができたとき、こんなに気持ちがいいことはない。「私、サーカスの一員になれるかな」って気分になったんです。それはイコール、「この作品に委ねられた」ということだと思うの。その素晴らしさっていったらないですよね。いろんな役をいただいた中でも、このバーサという役は素晴らしいと思います。見せ場はたった一か所しかないですけど、その一か所がどれほど大切か。(バーサが歌う)「No Time at All」もいい歌ですしね。本当にいいお仕事をさせていただいて幸せです。

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