北尾亘×中村蓉×五十嵐結也が語る、ダンスの未来と繋がる広場『DANCE×Scrum!!! 2022』 まもなく開催
■初の“夏フェス”も新機軸でチャレンジ!
――4回目の今回は初の“夏フェス”です。北尾さん、コンセプトをお聞かせください。
北尾:『DANCE×Scrum!!!』自体がチャレンジを更新していくことを目指してきました。2018年の第2回では、ステージプログラムは他ジャンルとのコラボを縛りにしました。2020年の第3回目では年齢制限を解除したんですね。コロナ禍でダンスの灯を絶やさないためには、年齢の縛りよりも活動を続けたいアーティストの情熱を汲み取ろうと考えました。またステージプログラムでも公募を開始し、オンラインプログラムを初めて実施しました。
今回はオンラインプログラムでも公募を行いました。コロナ禍で増えたオンライン配信によって、新たに創作の情熱を映像という媒体に見出した人がいるかもしれないし、東京以外で活動するアーティストにとって東京と繋がる、あるいは世界と繋がることができます。それに2020年だけオンラインに頼ったという一過性のものにしたくないというのが僕の切なる願いです。
北尾亘
オーディエンス賞の創設も新しいチャレンジです。ステージとホワイエとオンラインそれぞれから1つ作品賞が選ばれます。またステージとホワイエからそれぞれダンサー賞も選ばれる。副賞は次回2024年開催での上演・出演権利を予定しています。今はなくなってしまった「トヨタ コレオグラフィーアワード」で、僕はオーディエンス賞(2012年)をいただきました。だから、お客様によって未来へ向けて背中を押してもらえたという感覚が強くあります。また、ダンスはSNSとかの媒体も含めてもの凄く広がっていて可能性にあふれていると感じますが、その折に、お客さんの眼差し、“いいね!”を取りこぼしてはいけない。コロナ禍であることも含めて観客と繋がりたいと強く思ったんです。
五十嵐:素晴らしい!
北尾:我々も本気で狙っていきます!
中村:獲りにいきますよ!
――中村さんは、ホワイエプログラムに池上たっくんと踊る自作『fマクベス』、MOSA/月面着陸として『Adama(Short ver)』(振付:Mario Bermudez Gil)を出しますね?
中村:私は小説や映画に着想を得て創作してきました。物語や登場人物に共感し、心動かされ、それを踊りにしたいという入り方でした。でも『fマクベス』では構造から作品を創り始めたいんですね。シェイクスピアの『マクベス』に「きれいは汚い、汚いはきれい」という言葉があります。英語で言うと「fair is foul、and foul is fair」ですが、fが多いと思ったんですよ。それで原文でfを探して読み始めたんです。すると物語だけを読んできた時とは違う質感とか、デコボコした身体性が湧いてきました。それを池上たっくんと一緒に体で探って創っています。
MOSA/月面着陸の方では、振付家のMarioさん――柿崎麻莉子さんの元同僚なんですけれど――のトリオの作品を私たちで踊ります。入れ替わり立ち替わり計6人、MOSA(柿崎麻莉子、小暮香帆、中村蓉)と月面着陸(真壁遥、Ikuma Murakami、土本花)という、世代が違う3人の組み合わせでやります。Marioさんは、スペインとイスラエルで踊っていた方なので日本とはまた違う感覚があります。砂埃みたいなものを感じる振付をやるというチャレンジをしています。
中村蓉
――五十嵐さんは開幕祭で縁起物を踊るそうですね。
五十嵐:爆笑の渦に巻き込みたいですね! アイツ馬鹿だなー!って楽しんでもらいたいんです。 ちょっと質の高い“宴会芸”という感じでやらせていただこうかな。この素晴らしい企画をお祝いとして盛り上げることができたらいいですね。できれば開幕1番目にやらせていただきたいです。祭りだから。
――北尾さんはステージプログラムでBaobab『或いは、熱狂。』Re:born vol.7を上演しますね。
北尾:もともとは『DANCE×Scrum!!!』の初回で上演した作品です。昨年から始めたRe:born projectという、Baobabの過去作品を生み直すプロジェクトの中で、次に何を手掛けたいかを考えました。「人が集って熱狂するメカニズムとは何なんだろう」みたいなことを、コロナや様々な出来事によって一変した今、捉え直してみたい。そして今回はカンパニーメンバーとトライアルメンバーのみでRe:bornします。メンバーのみでこの規模は初めてなので、Baobabの新しい切り口になったらいいなと願っています。
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