360度+αの巨大空間でモネの《睡蓮》に没入する感動体験へ 『イマーシブミュージアム』鑑賞レポート

レポート
アート
2022.7.22
『Immersive Museum(イマーシブミュージアム)』

『Immersive Museum(イマーシブミュージアム)』

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『Immersive Museum(イマーシブミュージアム)』が、7月8日(金)に東京・室町の日本橋三井ホールで始まった。10月29日(土)まで開催されるこのイベントは、最新テクノロジーにより印象派絵画の世界に入り込む体験ができる日本初の“没入体験型ミュージアム”だ。巨大空間に投影されるプログラムには、モネ、ドガ、ルノワールら印象派のオールスターといえる顔ぶれの代表作が続々登場。大人の美術ファンにとっては新たな発見があり、初めて印象派絵画にふれるという子供たちはきっと忘れることのできないアート体験が楽しめる。ここでは開幕前日の内覧会でひと足早く体験した本展の感想と感動を伝えていく。

高さ6メートル、約700平方メートルの巨大空間で印象派絵画に没入

例年よりも早く猛暑がやってきた今年の夏、もうすでに外の暑さにうんざりだし、でもどこかに遊びに行きたいし、できることなら涼しい部屋で気分爽快になれる体験はないものか……。そんなことを考えている方におすすめしたいのが、今回紹介する『Immersive Museum』だ。

……と、まるで通販の触れ込みのような形で始めてしまったが、タイトルにある「イマーシブ」とは「没入感」のことをいう。本展では高さ6メートル、約700平方メートルの巨大空間を舞台に、最新のテクノロジーと名作絵画をかけ合わせた没入型コンテンツを上映。音とともに動き出す絵の中に身を投じ、名画の世界に全身で入り込める新感覚の鑑賞体験が楽しめる。今回は印象派の歴史を辿るプログラムが見られるということで、心弾ませながら会場の日本橋三井ホールに向かった。

エントランスに用意されたパネルには、本展のコンセプト「Dive in Art」に関するメッセージと印象派の歩みが語られたプロローグが掲載されていた。その中には「本展は、単なる『絵画の映像化』ではない。瞬間の光を捉えた印象派絵画に『時間』を与え、鑑賞者との距離や大きさという『スケール』を変え、編集や音楽の『文脈』を加えることで、印象派を解体し再構築する」といった言葉が並んでいる。ふむふむふむふむ、なるほど、その壮大な感じ、ますます胸のワクワクが止まらないじゃないか。

《印象・日の出》から始まる印象派のストーリーを辿る

会場の巨大空間に入ると、前面いっぱいに映し出されたモネの睡蓮の池が視界を埋める。池には太鼓橋がかかり、前方だけでなく床の上にも睡蓮がびっしり。まだ本番前でありながら、さっそく睡蓮の池にダイブしているかのような美しい空間に圧倒される。

そして期待感が高まる中、ついに上演が始まった。まず映し出されたのはどこかの海だ。手前には小舟が浮き、遠くでは蒸気船が煙突から煙を上げている。はて、ここはどこだ? ……すると、写真のような風景が徐々に筆のタッチへ転換されていく。その最中で、ここが印象派という言葉を生んだ《印象・日の出》の舞台だと気付く。19世紀のル・アーブル港に朝日が登りゆく景色に違いない。

そこにはモネが戸外に飛び出し、目の前の景色をキャンパスに描くまでの流れを追体験するかのような感動がある。まさに幕開けを告げるにふさわしい作品のチョイスであり、印象派ファンならきっと一度は抱いたことがあるだろう「絵の中の風景に飛び込みたい」という夢を、序盤から一発回答で叶えてくれる。

続いて、第1回の印象派展が行われたパリのナダール写真館を再現したシーンを経て、印象派の特徴である筆触分割の技法を拡大映像で見せるシーンへ。

誰の筆かわからないが、ビシッ、ビシッと力強い筆さばきが画面上に走り、だんだんと色の数を増していく。我々はまるで“虫の目”になって無数の筆致が重なっていくのを見つめることになる。この時点で何の作品が描かれているかは相当な印象派ファンであってもわからないはず。視点は次第に引いていき、無数の色は川面の景色を作り出す。そして、だんだんとモネの“あの絵”が完成されていくことがわかる。

鑑賞者が景色のひとつとなる《睡蓮》のオーバーフロー

次にピサロ、ドガ、カサットら印象派の時代を彩った画家の作品が乱舞し溶け合う演出を鑑賞し、さらに次のシーンへ。

ここでは額装された絵画が登場。その上で、今度はこちらの視点が絵の中へグッと迫っていく。その最中で絵は立体的な色の点に分解され、さらに額の中を飛び出して、我々の足元に色彩の海のようになって溢れ出していく。次々と別の絵画が表れ、印象派の眩い色彩が煌めきとなって周囲を包み込む光景に息を呑む。

終盤にはモネが幾度となく描いた《睡蓮》が再び登場。ジヴェルニーの池を泳ぐような視点の中、光ふりそそぐ庭に生きる植物が立体的に描かれ、景色が何度も弾け飛んで再生される。池がもたらす涼感、そして色彩のスプラッシュは、暑い夏に爽快な没入感をもたらしてくれる。

一度はジヴェルニーにあるゴッホの家に行って睡蓮の連作を見てみたいなぁ……と思っていた。もちろんそれも貴重な体験であることは間違いないが、ここでは睡蓮の絵を見るだけでなく、作品の中に入り込んでいるという、日本にいながら、ある意味で“それ以上”の体験ができてしまっている自分がいることに気付かされた。

子供向けキットも用意! 夏休みのレジャーにもおすすめ

鑑賞後は「Immersive Museum Cafe」で、モネの代表作など印象派絵画にインスパイアされたオリジナルメニューを楽しむのもお楽しみのひとつ。

また、本展は小学生以下の入場が無料。さらにファッション誌のVERYとコラボした絵本キットを子供たち向けにプレゼントしている。ベビーカー連れでの入場もOKと、ファミリーでの来場も推奨しているのもひとつのポイントだ。通常の美術館ではじっとしていられないという小さな子でも、この空間であれば遊び感覚で印象派の名作に触れるきっかけを作れるはず。アートに包まれる“真夏の大冒険”を親子で楽しんでほしい。

なお、入場は下記の公式オンラインサイト等を通じた日時指定の予約制。入場時間枠に余裕がある場合は当日のみの日時指定券を販売するが、予約での来場が確実だ。『Immersive Museum』は、10月29日(土)まで東京・室町の日本橋三井ホールで開催中。この夏、印象派の世界に全身で溶け込んでみて。


文・撮影=Sho Suzuki

イベント情報

Immersive Museum(イマーシブミュージアム)
期間:2022年7月8日(金)~2022年10月29日(土)
場所:日本橋三井ホール(東京都中央区室町2-2-1 コレド室町1 5F)
公式サイト: https://immersive-museum.jp/
入場券:大人 2,500円(税込)/ 中学生・高校生・専門学生・大学生 1,500円(税込)/ 小学生以下 無料
公式オンラインサイト:https://ticket4.eplus.jp
・小学生以下の乳幼児・児童のみの入場は不可。
・保護者1人に対して小学生以下の乳幼児・児童は最大3名様まで同伴可。
・必ず乳幼児・
児童の本人確認書類を持参(健康保険証など)
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