【映画レビュー】『セカンド・カミング』50歳をこえてロバート・カーライルが魅せる、『トレインスポッティング』以来の名演
『セカンド・カミング』 (C) 2012 California Solo, LLC. All Rights Reserved.
SPICE×ぷれシネ特集 第十三回
SPICEをご覧のみなさま、いかがお過ごしでしょうか?この特集では毎回、日本初の映画試写アプリ「ぷれシネ」配信作品を紹介していきます。
同アプリでは、最新作やDVDの本編を新旧問わず丸々1本を無料で楽しめます。アプリ内の作品一覧から選んで応募すれば、その場で抽選結果も分かり、当選すればそのまま鑑賞可能です。この企画では、SPICE編集部の映画好きライター・フジモトが同アプリを体験し、ネタバレなしの作品レビューで皆さまにその魅力をお伝えしていきます。
第十三回、2015年最後に取り上げる作品は、イギリスの名優 ロバート・カーライル主演のドラマ『セカンド・カミング』です。
■あらすじ
アメリカ・L.A郊外で暮らすラクラン・マクアルドニック(ロバート・カーライル)は、米国永住権・グリーンカードを持つスコットランド人。
かつては本国で伝説的バンド"ザ・クランクス"のギターとしてスポットライトを浴びていたが、米国進出後にある理由からバンドは解散。現在は、雇われ農夫として農場の管理を任され、市場で作物を売る貧しくも穏やかな生活を営んでいた。一方で、過去を忘れることもできず、夜な夜な過去の名ミュージシャンを紹介するポッドキャスト番組を放送していた。そんなある夜、ラクランはバーで泥酔し飲酒運転で連行されてしまう。取り調べでは、彼が過去に犯したドラッグ歴が発覚。移民局からスコットランドへの強制送還を言い渡される。弁護士費用すらままならないため、ラクランは元マネージャーや離婚した妻に助けを求めるが、送還への期限は刻一刻と迫っていた。
■40半ばで生きる場所を失う…名優 ロバート・カーライルが堕ちたスターを好演 『セカンド・カミング』 (C) 2012 California Solo, LLC. All Rights Reserved.
主人公・ラクランは一見人当たりのいい社交的な農夫ですが、飲酒が原因で追い詰められていき、次第に自らが犯したある罪と向き合うことになります。強制送還を恐れ、ポッドキャストで独り語りを続ける理由もその過程で徐々に明らかになっていくんですね。じたばたしてもどんどん事態は悪化し、ラクランは40歳半ばにして生きる場所すら危ぶまれることに。劇的にではありませんが、ゆっくりと、そして淡々と追い込まれていく中年の姿って、本当に辛いですねえ。本作には移民やアルコール中毒が問題として登場しますが、本質的なテーマは「歳をとればとるほど、過去を清算することは難しい」という普遍的なことのような気がしてなりません。
そんな複雑な主人公を演じたのは『トレインスポッティング』のサイコ野郎・ベグビー役や、『フルモンティ』の主演で一躍注目を浴びたロバート・カーライル。ここしばらく彼の出演作を観ていなかった筆者は、50歳をすぎて皺を刻まれたその顔にやや驚きました。しかし、時おり軽口や罵声を吐く激しい演技と、打ちひしがれた弱々しい姿とのギャップは、まさに「堕ちたスター」そのもの。カーライルはもともとシナリオ通りに演じるのが好きではないらしく、本作の1割はリハーサルなしの即興だそうです。もちろん、カーライルは『カルラの歌』など名匠が手掛けた人間ドラマでもその実力を発揮してきました。しかし、個人的には本作の役柄は『トレインスポッティング』のベグビー以来のハマり役だったと思います。
■オアシス、ブラー、ザ・ストーン・ローゼズ…作品に漂う"ブリットポップ"の残り香 『セカンド・カミング』 (C) 2012 California Solo, LLC. All Rights Reserved.
本作のそこかしこには、90年代にイギリスを席巻した”ブリットポップ”ムーブメントの影がちらほら現れます。監督のマーシャル・レヴィーは、同ムーブメントの中心的バンドだったオアシスやブラー、そしてストーン・ローゼスなどのメンバーが消えていたら?という発想から本作を着想したそうです。さらに、カーライル自身もギャラがー兄弟やデーモン・アルバーンとは知己の仲。劇中でラクランのバンドが解散したのも、ちょうどムーブメントが終息を迎えた時期です。オアシスやブラーのメンバーは現在も活躍中ですが、当時はムーブメントとともに消えていったバンドも数多く存在しました…だからこそ、ラクランのキャラクター設定にも生々しい悲しさを感じてしまうのかもしれません。当時のUKロックに少しでもハマった方は、より楽しめる作品だと思いますよ。
ちなみに、本作のタイトル『セカンド・カミング』は、ザ・ストーン・ローゼズのセカンドアルバムのそれと同じ。劇中にはまったく登場しない単語ですが、伝説的な存在でありながら、
短期間でいったん幕を下ろした同バンドと重ねるとなかなか趣深いタイトルにも思えます。が、そんなザ・ストーン・ローゼズは、なんと本作公開の2012年に再結成!2016年の日本公演も発表しています。本作の主人公・ラクランにも、そんな明るい未来が待っているのか?それは観てのお楽しみです。
さて、本作に興味を持った方はぷれシネで試写会に応募して見てください。応募の方法は簡単。
①itunesまたはApp storeでアプリをダウンロード
②会員登録(メールアドレスと希望するパスワードを入力)
③ログイン
これだけで応募が完了し、その場で当選の結果もわかります。当選決定から24時間の間は、いつでも同じ作品を観ることができるので、通勤や通学、ちょっとした待ち時間をつぶしながら気軽に鑑賞するのもいいですね。
現在公開されている作品の定員は50~100名。ただし、抽選ではなく先着で当選が確定するものも多いので、人気作は早めに応募したほうが良さそうです。
また、鑑賞後は「シェア」ボタンをタップして、TwitterやFacebookに感想を投稿することもできます。感想を投稿すると、次回からの試写会の当選確率が上がるそうです。フジモトも投稿してみました。
なお、ぷれシネでの『セカンド・カミング』配信は2016年1月20日まで。期間中でも、先着100名に達すると申し込めなくなるのでご注意を。
現在配信中の作品と応募期間はこちら。
セカンド・カミング
(2012年/アメリカ/94分)
監督・脚本:マーシャル・レヴィー
製作総指揮・出演:ロバート・カーライル
出演:アレクシア・ラスムッセン、キャスリーン・ウィルホイト、A・マルティネス、ダニー・マスターソン
大阪最後の日
『大阪最後の日』 (C) 2013AMI Entertainment. All Rights Reserved.
監督・脚本:大木ミノル
出演: みぶ真也、夏守陽平、若林奈緒子、沖一文字、浅尾典彦
試写期間:12月30日まで
募集定員:先着100名
リトル・グローリー 〜小さな栄光〜
『リトル・グローリー 〜小さな栄光〜』 (C) The Little Film Company
監督:ヴィンセント・ラノー
脚本:フランソワ・ヴェリアン
出演:キャメロン・ブライト、イザベラ・ブレイク=トーマス、ハンナ・マリー、アストリッド・ホウェットノール、マーティン・スワビー
試写期間:2016年1月6日まで
募集定員:先着50名
尾曲がり猫と猫的ロボット
『尾曲がり猫と猫的ロボット』 (C) Three W Film
監督:荻野欣士郎
出演: 小澤綾子、長谷川愛紗、粒良安里
試写期間:2016年1月13日まで
募集定員:先着100名
呪ギャル ~芸能怨霊伝説~
『 呪ギャル ~芸能怨霊伝説~』 (C) 「呪ギャル」製作委員会/(有)十影堂エンターテイメント
監督・出演:夏目大一朗
製作総指揮・脚本:黒木公彦
プロデューサー:大江智宏、松浦翔
出演:前田美里、羽宮千皓、藍田将太、森博嗣、赤澤廉、久田将義、西川千尋
○レビューはこちら
Androidアプリへの対応は現在調整中。SPICEは毎週オススメの作品とともに進捗をお伝えしていくので、お待ちください。
価格:無料
カテゴリ: 写真/ビデオ
言語: 日本語、英語
販売元: HIROFUMI SOYAMA
(C) simpleplus / (C) precine
App store: https://appsto.re/jp/d4uL6.i ※iPhoneからアクセス可能
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