<2015年末回顧>中西理の「舞台芸術」ベスト5

2015.12.30
特集
舞台

『汗と涙の結晶を破壊』公演チラシ


2015年 私の「舞台芸術」ベスト5

◆青年団若手自主企画 綾門企画『汗と涙の結晶を破壊』 (11/26-12/1 アトリエ春風舎)
◆本広克行×平田オリザ『転校生』 (8/22-9/8 ZEPPブルーシアター六本木)
◆BATIKレパートリーズ『春の祭典』 (12/11-12/13 森下スタジオ)
◆荒木飛呂彦×森山未來『死刑執行中脱獄進行中』 (11/20-11/29 天王洲 銀河劇場)
◆演劇計画II 山崎彬 作・演出 『また愛か』 (10/24-11/2 京都芸術センター)


「舞台芸術」ベスト5としたが順位はない。通常はある基準の沿ってよい作品を1位から5位まで選ぶのがベスト5であるが、今回はあえて5つの別々の基準でそれぞれトップの作品5本をあえて選んでみた。

今年2015年はチェルフィッチュの岡田利規が「三月の5日間」で岸田戯曲賞を受賞してから10年になる。さらにいえば平田オリザが「東京ノート」で同賞を受賞してから20年となる。新たな才能が必ずしも周期的に登場する根拠はないが、実はひそかに「この次」と睨んでいるのが綾門優季(青年団演出部)である。

柴幸男らの系譜を感じさせながらもさらに高度に構築的。まるで精密な模型を組みたてるように演劇を組み立てていく。恐るべき才気を感じるが、皮肉なことに『汗と涙の結晶を破壊』はアート作品のコンペティションを舞台に「才能があるとかないとかとを安易に評価するな」と独白し極度に戦略的な作品つくりへのアプローチを告白する主人公を登場させ、芸術という神話を冷酷に解体してみせた作品。評価は分かれるだろうが今年最大の問題作であることは間違いない。

演劇における今年最大のトピックは本広克行×平田オリザ×ももいろクローバーZによる「幕が上がる」プロジェクトである。ただ一連のプロジェクトにおいてメインコンテンツは映画「幕が上がる」であるためここでは若手女優の登竜門として両者が企画した『転校生』を選んだ。

ダンスでは黒田育世『春の祭典』の圧倒的な群舞の迫力に脱帽させられた。演劇、ダンスの要素を総合した身体表現パフォーマンスの領域ではその完成度の高さにおいて荒木飛呂彦×森山未來『死刑執行中脱獄進行中』は突出していた。劇作家、演出家としてここ数年高水準の仕事をしてきた悪い芝居の山崎彬だが、劇作の完成度の高さという意味では3年間の準備で実現した演劇計画II 『また愛か』は新境地を見せたといってもよかったかもしれない。