勅使川原三郎が令和4年度文化功労者に選出、独自のダンス美学を追求し多分野の芸術発展に寄与

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2022.10.25
勅使川原三郎 photo by Akihito Abe

勅使川原三郎 photo by Akihito Abe

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2022年10月25日(火)、勅使川原三郎が令和4年度文化功労者に決まったことが発表された。

勅使川原は舞踊家、振付家、演出家。クラシック・バレエを学んだ後、1981年より独自の創作活動を始めた。1985年に宮田佳と共にダンスカンパニー KARASを結成し、1986年にフランスのバニョレ国際舞踊振付コンクールで準優勝後、第一線で活躍している。

このたびの選出にあたり「自らのソロ作品、「KARAS」でのグループ作品、海外も含めた振付提供作品などにおいて従来の舞踊家の範疇をはるかに超える成果を示し、舞踊界をはじめ様々な芸術分野に新風をもたらしたもので、その功績は際めて顕著である」と評価された。これまでに国内外で多くの受章・受賞歴を誇っていたが、本年2022年には生涯の功労を称えられヴェネツィア・ヴィエンナーレ・ダンス金獅子功労賞を受けるなど世界的名声をさらに高めている。

『ペトルーシュカ』(左から)佐東利穂子 勅使川原三郎 photo by Akihito Abe

『ペトルーシュカ』(左から)佐東利穂子 勅使川原三郎 photo by Akihito Abe

勅使川原は報道陣の取材に応じ「選ばれたことはとてもありがたいこと、身の引き締まる思いです。これまで関わってくれた仲間、感動してくださった方々、支援、激励してくださった方々、あるいは教えをくださった方々に感謝したいと思います」(KARASによるリリース)と喜びを語った。それと同時に「困難や見果てぬもの、知らないことがあることによって、私は大いに力を与えられてきました。この機会は自分にとって新たな興味を抱かせるきっかけになると、そう捉えることができます」と話したうえで、『これからももっとやれ』と言われているような気がしています」(同上)と今後の抱負を述べている。

勅使川原三郎 photo by Akihito Abe

勅使川原三郎 photo by Akihito Abe

勅使川原のダンスは、呼吸を基礎にした独自の身体メソッドに裏打ちされ、旧来のバレエやモダンダンスなどと一線を画し非常にユニークだ。天と地のあいだの"空気"を鮮やかに体現する踊りは唯一無二といっていいだろう。さらに勅使川原は振付・演出に留まらず、舞台美術・照明デザイン・衣裳・音楽構成も自身で行い、研ぎ澄まされた美に貫かれた総合芸術を追求。欧米をはじめ世界各地の一流劇場、著名フェスティバルから招聘され公演活動を展開している。

KARAS以外には、3作品を振付した名門パリ・オペラ座バレエ団をはじめ世界有数の舞踊団体に作品提供。またオペラ演出においても、フェニーチェ歌劇場『ディドとエネアス』(2011年)、エクサン・プロヴァンス音楽祭『エイシスとガラテア』(2010年)など檜舞台を踏んでおり、本年5月には東京・新国立劇場で『オルフェオとエウリディーチェ』を手がけ評判を呼んだ。

ドローイングダンス『失われた線を求めて』勅使川原三郎  photo by Akihito Abe

ドローイングダンス『失われた線を求めて』勅使川原三郎  photo by Akihito Abe

近年の勅使川原は国内でも精力的に活動する。2013年、東京・荻窪に新たな活動拠点カラス・アパラタスを設立。劇場とアトリエを備えた創造発信の場において「アップデイトダンス」シリーズを展開し、そこで初演された『トリスタンとイゾルデ』(2017年)や『白痴』(2016年)は海外で上演されるレパートリーとなった。それらの作品では、勅使川原の下でダンスを始め、現在アーティスティック・コラボレーターとして協同作業にあたる佐東利穂子の存在も大きい。

なお勅使川原は2020年4月、愛知県芸術劇場初代芸術監督に就任。2006年度から2013年度は立教大学、2014年度からは多摩美術大学で教鞭をとり、後進の育成にも努めている。

『天上の庭』(左から)ヨナタン・ローゼマン 佐東利穂子 ©︎Kosaku Nakagawa 提供:愛知県芸術劇場

『天上の庭』(左から)ヨナタン・ローゼマン 佐東利穂子 ©︎Kosaku Nakagawa 提供:愛知県芸術劇場

KARASでは、佐東利穂子の新作『告白の森』を10月30日(日)までカラス・アパラタスで上演中。続いて11月上旬よりイタリア6都市でのツアーに旅立つ。2023年の第1弾は、1月13日(金)~15日(日)に東京・両国のシアターΧで上演する「ドローイングダンス」シリーズの2作目。アップデイトダンスNo.95 新作公演は 2023年2月4日(土)〜14日(火)に予定されている。

文=高橋森彦

公演情報

アップデイトダンスNo.94
佐東利穂子『告白の森』

日程:上演中~10月27日(木)19:30、28日(金)19:30、29日(土)16:00、30日(日)16:00
劇場:カラス アパラタス/B2ホール

 
イタリアツアー
イタリア6都市でのツアー
日程:11月6日~12月4日
公演地:フェラーラ、ぺサロ、ソロメオ、モデナ、ブレシア、ミラノ

 
新作公演
「ドローイングダンス」シリーズの2作目
日程:2023年1月13日(金)19:30開演、14日(土)18:00開演、15日(日)16:00開演
劇場:東京・両国シアターX

 
アップデイトダンスNo.95
活動拠点カラス アパラタスでの新作公演
日程:2022年2月4日(土)〜14日(火)
※2/8,9,10は休演日
劇場:カラス アパラタス/B2ホール

勅使川原三郎 KARAS 公式サイト:https://www.st-karas.com
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