「愛知県芸術劇場」芸術監督・勅使川原三郎による、2022年度プロデュース公演「ダンス『風の又三郎』」「ライヴミュージック&ダンス『天上の庭』」記者会見レポート

レポート
舞台
2022.9.1
 ダンサー・振付家・演出家で「愛知県芸術劇場」芸術監督の勅使川原三郎  (C)Hiroshi Noguchi(Flowers)

ダンサー・振付家・演出家で「愛知県芸術劇場」芸術監督の勅使川原三郎  (C)Hiroshi Noguchi(Flowers)

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「愛知県芸術劇場」の芸術監督で、世界的に活躍するダンサー・振付家・演出家の勅使川原三郎。その2022年度プロデュース公演として、9月第1週と第3週に連続上演する、「ダンス『風の又三郎』」「勅使川原三郎 ライヴミュージック&ダンス『天上の庭』」のオンライン記者会見が行われた。

会見には勅使川原三郎と、上記2公演に出演し、近年は勅使川原のアーティスティック・コラボレーターを務め、振付家としても活躍するダンサーの佐東利穂子が出席。また、『天上の庭』にチェリストとして参加し、勅使川原らと初共演を果たすヨナタン・ローゼマンのコメントも発表された。

まず、2022年9月3日(土)・4日(日)に「愛知県芸術劇場 大ホール」で上演する「ダンス『風の又三郎』」は、宮沢賢治の同名小説をもとに、勅使川原が演出や振付、美術、衣装、照明デザイン、音楽編集も手掛け、愛知にゆかりのあるバレエ経験者と共に創り上げていくダンス公演だ。この作品は、ダンスが盛んな当地の特性を活かし、地域の若手ダンサーを育てる人材育成の取り組みとして2021年7月に初演。今回は、昨年出演した一部のダンサーと、新たにオーディションで選出した10代~30代までのダンサーによる、新チームでの再演となる。また、本作で佐東利穂子は、初演に引き続きダンスでの出演と共に、朗読の役割も担っている。

「ダンス『風の又三郎』」チラシ表/裏

「ダンス『風の又三郎』」チラシ表/裏

続いて9月16日(金)・17日(土)に同劇場「コンサートホール」で開催するダンス・コンサート「勅使川原三郎 ライヴミュージック&ダンス『天井の庭』」は、ダンスとチェロ生演奏によるコラボレーション公演だ。“ダンス・コンサート”とは、世界トップクラスの「ダンス」と「音楽」を、コンサートホールで同時に堪能してもらおうという同劇場企画・制作のオリジナルシリーズで、今回が第6弾となる。

ダンス・コンサート「勅使川原三郎 ライヴミュージック&ダンス『天井の庭』」チラシ表

ダンス・コンサート「勅使川原三郎 ライヴミュージック&ダンス『天井の庭』」チラシ表

本作では、勅使川原と佐東がダンスを、そしてチェロ演奏を、フィンランド系オランダ人チェリストのヨナタン・ローゼマンが担当。ヨナタンは、〈マリインスキー歌劇場管弦楽団〉や〈フランクフルト放送交響楽団〉など数々のオーケストラと共演を重ねるほか、「チャイコフスキー国際コンクール」にも入賞を果たした経歴を持つ、若き俊英として注目されているチェリストである。また、勅使川原はこれまでの数々の受賞歴に加え、今年7月には《ヴェネツィア・ビエンナーレ2022》金獅子功労賞を受賞。この作品が愛知で出演する、受賞後初の舞台となる。


勅使川原 三郎(ダンサー/振付家/演出家)】
1981年より、独自の創作活動を開始。’85年ダンスカンパニーKARAS設立。世界の主要な芸術祭や劇場から招聘され公演を重ねる。ダンスのみならず、音楽、衣装、舞台照明など多岐にわたって才能を発揮し、2007年芸術選奨文部科学大臣賞、’09年紫綬褒章、’17年フランス芸術文化勲章オフィシエ、’22年ヴェネツィア・ビエンナーレダンツァ金獅子功労賞など多数受賞。’20年4月より愛知県芸術劇場初の芸術監督に就任。近年では若手育成にも精力的に取り組む。


会見の冒頭で勅使川原は、2つの作品について、このように語った。

「去年初演しました、『風の又三郎』の再演がとても大事だと思っています。愛知県のグループ、研究所、バレエ団の中から選ばれたダンサー達が結集して新しい作品を去年創ったわけですが、今年は何人かのダンサーが入れ替わって、去年以上に良い作品にする意気込みで、今リハーサル中であります。

宮沢賢治は、大人向けというよりは少年少女、若者へのメッセージのような作品をずいぶん書かれています。詩の中には人生の厳しさを表現しているものもありますが、小説の中…特にこの「風の又三郎」では、生き生きした子ども達の姿が描かれています。東北の小さな谷間の村の学校に転校生がやって来て、そこで起こる出来事、夏休みの終わりから2学期の始まりに至る数日間を描いた小説です。

それをダンスの作品にするということでありましたが、全体としては、“朗読”が重要な地位を占めています。佐東利穂子はダンスもしますが、彼女の朗読によって音楽構成と共に内容を進行していきます。去年も出演した一人一人のダンサーの成長は一年の中でずいぶん大きなものもあるでしょうし、新しく参加するダンサー達も、生き生きした風を吹かせてくれるだろうと思っています」

2021年7月上演「ダンス『風の又三郎』」より。オーディションで選ばれた11名のダンサーが出演した  (C)Naoshi Hatori

2021年7月上演「ダンス『風の又三郎』」より。オーディションで選ばれた11名のダンサーが出演した  (C)Naoshi Hatori

「次に、ほとんど連続するような形で『天上の庭』を上演します。タイトルの天上は、空と言ってもいいと思いますが、『空の庭』というよりは『天上の庭』。つまり、浮世や地上を離れた世界、純粋音楽の世界を描きたいと思ったので、『天上の庭』としました。その空の上で、純粋な音楽と共にダンスする。内容は『風の又三郎』とは異なりまして、文学的解釈というか文学的メッセージというのは一切なくて、ダンサー2人、チェリスト1人の共演ということが中心の、コンサート形式のダンス作品になります。

私達は先日までベニスに滞在して、そこでの公演と教育プロジェクトを遂行していたんですが、同じヨーロッパに住んで活動しているヨナタン・ローゼマン氏に、私達が稽古しているところへ訪れてもらって、リハーサルをしました。選曲もそこで最終的に行ったわけですが、とても充実したリハーサルになったと感じています。彼はいわゆるベテランのチェリストではなくて、どちらかというと若手に入る人です。しかしヨーロッパではとても高く評価されていて、今後ますます期待されるチェリストの一人であります。リハーサルの雰囲気はとても良くて、音楽に対する彼の真剣さ、そしてある意味では自然な、彼の本質的な人間性がそのまま現れているような穏やかさと、彼が目指す音楽性がとても高い域に達している、ということを感じました。

音楽が持っている、まるで重力から解放されるような、或るいは重力を身体全身できちっと受け取れるような力。そういう人智を超えたものが音楽の中から湧き出てくることを感じることがダンスになるならば、音楽の力というのは、とても大きいものだと思っています。『天上の庭』は、そうした音楽とダンスが出会う場所、という意味です。庭で何するか、それは「遊ぶ」「戯れる」ということです。英語で音楽を演奏することを「PLAY」と言いますね。それから遊ぶことも「PLAY」と言います。或いはスポーツをすることも。

要するに、そこで遊んで楽しむだけでなく、物事がそこで進行して、音楽と人間の身体のより面白い絡み方、或いは空間と音楽の音調が絡んで新たな響きを作ること。まさに「コンサートホール」はそういうことに適している場所で、純粋に音楽とダンスから何を生み出せるのか、ということを目指しているものです。ですから観客の皆さんが、『ダンス「風の又三郎」』とはまた別な遊び方や楽しみ方ができる、そういう二つの作品、ラインナップになっていると思います」

続いて佐東利穂子も、両作に対する思いを次のように述べた。

「まず『風の又三郎』に関してですと、名作だな、と改めて思っています。子どもの話ではありますが、まだというか、ずっとというか、私達も持っている気持ちがそこにある、という風に、大人になった今だからこそ尚更感じます。宮沢賢治の文章は、読むのがとても面白いというか、読むと尚更生き生きしてくる感じがあります。音や周りの描写、ただ目に見えている風景というだけじゃなくて、そこに動いている風…まさにこの作品はそうですが、そういったものまでも言葉のリズムによって運ばれてくる、そんな感じがいつもします。

この作品はどちらかというと長い作品ですが、全て朗読するわけではなく、要所要所を読んでいます。それでもとてもテンポがよく、子どもの頃に感じた独特の淋しさとか不安のようなもの、もしかしたら明日になったら天気のように忘れ去ってしまうかもしれないひょんな気持ちとか、そんなものがある瞬間、とても深く、じっくり感じられる。そんな描写とダンスの構成とがとても合っていて、非常に生き生きした作品だという風に思っています。

去年上演して今年も上演することも、とても大きな意味があると思っています。ダンスというのは、踊って初めて作品として成長していくものだ、という風にいつも思って自分自身も踊っているんですが、この『風の又三郎』も、もっともっと大きく豊かな作品になっていってほしいと思うので、ずっと続けていけるといいな、という風に感じています」

2021年7月上演「ダンス『風の又三郎』」より。ダンスと朗読を務める佐東利穂子  (C)Naoshi Hatori

2021年7月上演「ダンス『風の又三郎』」より。ダンスと朗読を務める佐東利穂子  (C)Naoshi Hatori

「『天上の庭』に関しては、まずヨナタン・ローゼンマンさんとは今回初めてのコラボレーションなんですが、外国の方の場合、初めてコラボレーションする時はだいたいメールでのやりとりから始まって、そこでプログラムを決めるということがかなり進んでいきます。メールだけで話をしなくてはいけない時もあれば、既に依頼されたプログラムが決まっている場合などいろいろあるんですが、幸い彼とはプログラムを考えている段階で直接会ってリハーサルを出来たことは、私としてもとても良かったな、と思っています。

彼がどのように音楽を捉えているか、ということに触れることができましたし、プログラムを決める時に、好きとか嫌いとかではなくて、今ここで私達がやろうとしていることとして何が有り得るか、ということを真剣に、そして音楽的に、とてもニュートラルに考えて話が出来たというのが良かったです。長く知っているから話が通じるとか、そういうこととは全く違って、初めて会っても「あ、この人とは解り合える部分がある」という感覚で話が出来てリハーサル出来たのがとても面白かったです。リハーサルといっても、踊るというよりは彼の音楽を身体で感じる、そこに居るということがまずどう有り得るのか、ということを行っていました。全身で彼の音楽を聞くということが、ある意味彼を知ること、或いは、選んだ音楽をまた新たに知ることになっていくんだな、ということも感じました。

チェロの曲自体、生演奏で踊るのは初めてですし、チェロだけで踊るということも初めてなので、そういう意味でもとても独特というかユニークな体験です。チェロのためだけの曲というのもそんなに多くあるわけではありませんが、作曲されているものはまさにチェロのために作られている、という感じがすごくするので、そういうものに改めて触れることに対して、今とても楽しみにしています」

佐東利穂子  Photo by Akihiro Abe

佐東利穂子  Photo by Akihiro Abe


佐東利穂子(ダンサー/振付家/アーティスティック・コラボレーター)】
1995年からKARASワークショップに参加。’96年より勅使川原三郎振付の全グループ作品に出演。その高度な技術と芸術性が、身体空間の新たな次元を切り開く表現として世界的評価を得る。近年は勅使川原のアーティスティック・コラボレーターを務め、2019年からは待望されていた振付家としての創作活動を開始。’12年には日本人で初めて第40回レオニード・マシーン賞、’18年に芸術選奨文部科学大臣賞を受賞


さらに勅使川原から、『天上の庭』の曲目についての説明も。

「ヨナタン・ローゼマン氏が提案したのは、まずはJ.S.バッハの「無伴奏チェロ組曲」ですね。それが30分くらいありまして、2曲目がカサドというスペインのチェリストが作曲した「無伴奏チェロ組曲」。自由というか、少し風変わりで面白い、まさに遊戯性のある音楽であります。最後のブロックは、コダーイの「無伴奏チェロソナタ Op-8」。ハンガリー出身の有名な作曲家、バルトークと友人関係だった作曲家の曲で、低音主体でとても重厚な響きを持ちつつ、軽やかなリズムのある曲であります。

1曲目は有名なバッハの「無伴奏チェロ組曲」ですが、以前私は同じ曲…全曲ではありませんが、そこから抜粋した曲で踊ったことがあります。今回はその中から曲を選んで、それもとても音楽的ロジックに沿ったやり方をしています。まさに天上の音楽のようなバッハ、遊戯性のある伸び伸びしたカサドの音楽、そして重厚であるが同時に浮き立つようなエネルギーを持ったコダーイ。全体としては、まさに“天と地を結ぶ音楽構成”になっているので、とてもユニークで面白いプログラムになったと思います」

また、佐東は会見当日の朝にヨナタン・ローゼマンから届いたというメッセージを、日本語に訳しながら伝えてくれた。

「こんにちは。私の名前はヨナタン・ローゼマンです。私はフィンランドのチェリストです。ここ数ヶ月の間で、私は勅使川原三郎、佐東利穂子と知り合う光栄に授かりました。この2人の素晴らしいアーティストとの最初の出会い以来、とても多くのインスピレーションを得ています。勅使川原さんの芸術に対する考えはとても啓示的であり、自分自身の芸術に対する考えをますます活気づけてくれました。最初に会ってから、私はこのプロジェクトの未来を思うと、とても感動します。そしてそれ以来、何かとてもユニークで特別なものを一緒に創りたい、という気持ちが日々大きくなるばかりです。コラボレーションをする際に、このように感じられることはとても稀であり、このプロジェクトに関われることをとても楽しみにしています。

そして、この公演のために我々は、さまざまなチェロのためのスイート(組曲)を選びました。バッハのチェロスイート、カサドのチェロスイート、コダーイのソロソナタなどです。コダーイはこの中では全楽章を弾く予定なので、中心的存在になるかもしれません。チェリストとしてとても厳しい作品でありますが、素晴らしいレパートリーです。これらの作品はどれも、自分のチェリストとしての人生の中で常に近しいものとしてありました。その理由ゆえに、これらの作品を勅使川原さん、佐東さんと共に演奏するということが楽しみでなりません。

いろいろなコラボレーションをした経験はありますが、このような思いでプロジェクトに臨むのは本当に初めてです。とても幸せで、日本の観客の皆さんとこのコラボレーションをシェアできることを嬉しく思っています。皆さんにも良いインスピレーションを与えられますように。どうもありがとうございます」


ヨナタン・ローゼマン  Photo by Heikki Tuuli 

ヨナタン・ローゼマン  Photo by Heikki Tuuli 


ヨナタン・ローゼマン(チェリスト)】
2013年パウロおよびガスパール・カサド両国際チェロ・コンクール特別賞受賞。これまでにマリインスキー歌劇場管弦楽団、サンクトペテルブルク・フィル、フランクフルト放送交響楽団などと共演。その印象深く多彩な響きはクラシックのみならず、コッコネン、サッリネンなど近現代の作品でも遺憾なく発揮されている。フィンランド文化財団より貸与されたダービッド・テクラーによる1707年製のチェロを、弓は1850年製のジャン・ピーエル・マリー・ペルソワを使用。
 

このメッセージを聞き、勅使川原は以下の言葉を添えた。

「私達は“共演”という形で演奏家と同じ舞台でものを創ることがあるわけですが、その時には「唯一無二、他に類のない、そこで初めて起こることを創りましょう」ということが第一の目的です。それは、今生きている、ということの証でもあるわけです。そこで初めて行われることによって、たとえクラシック音楽でも新たに命を吹き込むことができる。そして、今同時に生きている人達と価値観を共有することができる。その価値観は新たに見出すべきもので、「その時に必要だと思える強い精神を持って課題に立ち向かいましょう、そして一緒に喜びましょう」ということを彼も語っているんだと思います。そういう意味で、とても大事なメッセージだと思います」

続いて行われた質疑応答の時間で、「ダンス『風の又三郎』」を約1年で再演できることについての芸術監督としての考え、を記者から問われた勅使川原は、次のように回答。

「去年初演して、とても良い公演が出来たと思っています。(新型コロナウイルスの影響により)本当に数少ない観客のご来場になってしまったので、再演すべきだという話は公演直後から出ていて、それを実現するべく今年の上演に至りました。このプロジェクトは、私の任期中に3年連続して作品を創りましょう、というものですが、私は一番最初から再演は必要であろう、と考えていました。しかし、実際どうするかは公演後に決めるべきだと思い、この成果がとても素晴らしかったので再演ということになりました。

今回の再演については、去年上演したものがより成長して、より多くの人に観ていただきたいという意義があります。この作品は「ファミリー・プログラム」の公演ではありますが、子どもに焦点を合わせすぎない、大人が鑑賞できる作品で、子どもがそこから学ぶことができる内容が大事である、と思っています。つまり、大人がとか子どもがではなく、大人が子どもだった頃に感じていたことが表現されるならば、今子どもである人達も、過去子どもであった大人達も、同じ内容を世代を超えて感じることができるだろう、と。それは、懐かしさや今風なことを求めるのではなくて、人間として幾つになっても感じられるようなことって何だろう? ということですね。

例えば、新しい人との出会い。そこでの喜びと戸惑い、発見。そして季節の変化と自分自身の人生の岐路に立つような転換期。又三郎は、お父さんの仕事の関係で転校してきたけれど、ほんの一週間ほどでお父さんの転勤がまた決まって、その場所から離れなければならなかった。まさに風のように無言で来て無言で去っていく、そんな少年です。そして、そこに元々いた子ども達は、子どもっぽい夏から、又三郎との経験を通して少し大人になっていく。夏から秋へ季節が巡っていくということも、宮沢賢治は象徴的というより具体的に表現していると思うんですね。それを身体が表現するダンスとして感じられて、音楽がそこに伴うならば、単に読み物としてではない内容がそこに生み出されるのではいか、と考えています」

「ダンス『風の又三郎』」2022年3月の稽古より

「ダンス『風の又三郎』」2022年3月の稽古より


続いて、「チェロは“人間の声に近い楽器”と言われ、身体との親和性も高いと思われますが、実際にチェロと共演されてみた感想は?」といった問いに勅使川原は、次のように答えた。

「親和性はとても強くあると思います。ヨナタンが演奏する時などは、形もまるで、女性の身体を抱いているように見えるくらいの大きさです。つまり、形と音がほとんど人間の身体に近いというか、そういう風に感じさせる響きを持っていると言えるかもしれません。まさに人間がもう一人いるような感じがしますし、音域としても、低いところから高いところの領域がすごく幅が広いと思います。まるで身体の奥底から響いてくる…つまり大地と足が密接になっていって、そこから上体に音が引き上げられてくるような、そういうダイナミズムを感じます。例えば人間の営みからすると、地面を耕すような音、木がそこから生えてきて枝葉に分かれていくような、そして空に向かうような。そういう意味ではとても人間の身体と近いものであることは確かだと思います。それが、佐東利穂子が先ほど言った、「ダンス『風の又三郎』」での言葉の身体性とはまた違った意味の音楽的身体性、そういったものがあります」

また会見終盤で勅使川原は、芸術監督として実施するダンスプロジェクト及び「愛知県芸術劇場」にかける想いも語り、会見を締めくくった。

「私はこのプロジェクトの継続性というものがどういうところにあるかというと、地元の人達がいかに参加するか、ということ。つまり、劇場が活性化し創造的に仕事が出来る場所になるためには、この「愛知県芸術劇場」に関わる地元の人達が増えること、そしてダンサーがここで生き生き伸び伸びと毎年公演が出来ること、そのことがとても大事だと思っています。ここで育っていただきたい、ここで育つことが出来るんだ、という場所にしたい。稽古場も充実していますし、素晴らしい劇場空間があります。地元のダンサーが伸び伸び活動できる場所になり、愛知県独自のダンスというものが生まれたらより素晴らしいと思っています」

取材・文=望月勝美

公演情報

ダンス『風の又三郎』
 
■原作:宮沢賢治『風の又三郎』
■演出・振付・美術・衣装・照明デザイン・音楽編集:勅使川原三郎
■アーティスティック コラボレーター・ダンス・朗読:佐東利穂子
■ダンス:赤木萌絵、石川愛子、伊藤心結、岩怜那、菰田いづみ、佐藤静佳、西川花帆、松川果歩、宮本咲里、吉田美生、渡邊菫
■日時:2022年9月3日(土)15:00、4日(日)15:00
■会場:愛知県芸術劇場 大ホール(愛知県名古屋市東区東桜1-13-2 愛知芸術文化センター2階)
■料金:S 4,000円(U25 2,000円、中学生以下1,000円) A 3,000円(U25 2,000円、中学生以下1,000円)
■アクセス:名古屋駅から地下鉄東山線で「栄」駅下車、オアシス21地下連絡通路経由または2F連絡通路経由で徒歩5分
■問い合わせ:
愛知県芸術劇場 052-211-7552(10:00~18:00)
愛知県芸術劇場オンラインサービス https://www-stage.aac.pref.aichi.jp/event/
■公式サイト:愛知県芸術劇場 https://www-stage.aac.pref.aichi.jp

公演情報

ダンス・コンサート
勅使川原三郎 ライヴミュージック&ダンス『天上の庭』

 
■演出・照明・衣装・選曲・ダンス:勅使川原三郎
■アーティスティック コラボレーター・ダンス:佐東利穂子
■チェロ:ヨナタン・ローゼマン
■日時:2022年9月16日(金)19:00、17日(土)16:00
■会場:愛知県芸術劇場 コンサートホール(愛知県名古屋市東区東桜1-13-2 愛知芸術文化センター4階)
■料金:S席7,000円(U25 3,500円) A席5,000円(U25 2,500円) ※U25は公演日に25歳以下対象。要証明書
■アクセス:名古屋駅から地下鉄東山線で「栄」駅下車、オアシス21地下連絡通路経由または2F連絡通路経由で徒歩5分
■問い合わせ:
愛知県芸術劇場 052-211-7552(10:00~18:00)
愛知県芸術劇場オンラインサービス https://www-stage.aac.pref.aichi.jp/event/
■公式サイト:愛知県芸術劇場 https://www-stage.aac.pref.aichi.jp
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