東京バレエ団×金森穣『かぐや姫』第2幕、2023年4月下旬に上演決定~公開リハーサル&囲み取材レポート

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2022.11.5
東京バレエ団×金森穣『かぐや姫』第2幕公開リハーサル (photo:Shoko Matsuhashi)

東京バレエ団×金森穣『かぐや姫』第2幕公開リハーサル (photo:Shoko Matsuhashi)

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東京バレエ団(芸術監督:斎藤友佳理)が2023年4月下旬、〈上野の森バレエホリデイ 2023〉の開催期間中に『かぐや姫』第2幕を初演する。Noism Company Niigata(Noism)芸術総監督を務める金森穣に委嘱した全3幕からなる全幕作品の第2幕で、2021年11月初演の第1幕に続く待望の上演だ。演出振付の金森と演出助手の井関佐和子が2022年2月末からの2週間と10月18日からの2週間に来団してクリエイションを行い、10月末に公開リハーサルと金森の囲み取材を催した。

金森は若くして渡欧し、モーリス・ベジャール(1927~2007)、イリ・キリアン(1947~)という20世紀バレエの巨匠振付家の薫陶を受けた。彼らと縁の深い東京バレエ団から創作依頼を受け意気込む金森が選んだ題材は、現存する日本最古の物語といわれる「竹取物語」である。

昨年初演された第1幕では、村の翁が光る竹の中から取り出したかぐや姫が成長し、原作には登場しない村の童の兄貴分である道児と互いに惹かれ合う姿が描かれた。そして、その終幕、かぐや姫は金欲に目がくらんだ翁のため都の宮廷へと送られる……。

金森穣 (photo:Shoko Matsuhashi)

金森穣 (photo:Shoko Matsuhashi)

第2幕の主な舞台は宮廷。第1幕でのかぐや姫は愛らしくやんちゃな少女としての造形が際立ったが、ここでは宮中の新参者だ。村まで連れにやってきた侍女で教育係の秋見に見守られるかぐや姫の周りに、帝、大臣(4人)、側室(4人)らが新登場する。なかでも影姫(正室)は、かぐや姫と対をなす重要な存在となる。帝の正室であるのになぜ“影”なのかという理由に関して金森は「かぐや姫は、この世にもたらされた光というのが私の解釈。その対称は影しかない。お互いにミラーのようで、お互いがお互いを逆に存在たらしめている」と説明する。

音楽は全幕を通してクロード・ドビュッシーの楽曲。第2幕にはピエール・ルイスの散文詩集に想を得た「ビリティスの歌」の一部が入る。それについて金森いわく「一人の女性が自分の思いを砂に書いていると、そこに雨が降って消えてしまう。すべてははかなく消えていく。きっと私のことは誰も覚えていないだろう。そういう悲しげな詩なんですけれど、私の設定だと影姫が愛読している本を宮廷に来たかぐや姫も読んで、ふたりの孤独な魂が見つめ合っている」。フランス語での語りであるが、本番では日本語にすることも検討しているという。

東京バレエ団×金森穣『かぐや姫』第2幕公開リハーサル (photo:Shoko Matsuhashi)

東京バレエ団×金森穣『かぐや姫』第2幕公開リハーサル (photo:Shoko Matsuhashi)

宮廷での大勢による群舞は見どころとなる。「男性群舞は絶対にやりたい要素のひとつでした」と金森。「群舞って難しくて、まず揃えるのが大変なんですけれど、そこに一人ひとりのエネルギーがマックスで出てこそ。集団として皆を上げていくのが難しい」と明かす。そして「かぐや姫は月なんですよね。あらゆるものを引っ張ったり、押したりするんです。海が引いたり寄せたりするのも月の力ですし、人間の血流にも影響を及ぼす。人々が生理的に惹かれてしまうというくらいな群舞をしてほしい」とダンサーたちを鼓舞する。

東京バレエ団×金森穣『かぐや姫』第2幕公開リハーサル (photo:Shoko Matsuhashi)

東京バレエ団×金森穣『かぐや姫』第2幕公開リハーサル (photo:Shoko Matsuhashi)

宮廷でのシーンの間に村の場面が入る。『かぐや姫』第1幕は春から始まり夏が舞台で、第2幕、かぐや姫が都に行ってからは秋となる。村人たちの踊りを“稲穂ダンス”と金森は称する。宮廷を「人工的」なものだと述べ、それに対し「村では自然の摂理の中で人を愛したり、助け合ったり、あるいは喧嘩したり、別れてしまったりとか、そういう循環がある」と語る。日本の四季のうつろいが全編を彩り、ドラマを深めていく。

東京バレエ団×金森穣『かぐや姫』第2幕公開リハーサル 金森穣 (photo:NBS)

東京バレエ団×金森穣『かぐや姫』第2幕公開リハーサル 金森穣 (photo:NBS)

美術・衣裳に関しても注目点が。村を中心に展開する第1幕はやや具象的だった。だが、宮廷が主舞台となる今回の第2幕で抽象化した設えにしたのを機に、第1幕を含めて全部を抽象化する。「抽象に振り切っても、音楽と振りで十分伝わるかな」と金森は手応えを語った。

2023年4月下旬の公演時には『かぐや姫』第2幕ほか2作品を上演。12月中旬に公演日時・会場・配役・料金など詳細を発表する。そして『かぐや姫』全幕上演は2023年10月に予定される。東京バレエ団×金森穣が挑む、日本から世界に向けて放つ話題作から目が離せない。

取材・文=高橋森彦

公演情報

東京バレエ団×金森穣『かぐや姫』第2幕

公演スケジュール
●『かぐや姫』第2幕 2023年4月下旬 〈上野の森バレエホリデイ 2023〉開催期間中
※『かぐや姫』第2幕ほか2作品を上演します。
※12月中旬に公演日時・会場・配役・料金など詳細を発表します。

●『かぐや姫』全幕上演 2023年10月
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