<2015年末回顧>SPICE[舞台]編集子による極私的「KPOP」ベスト5
ソウルの街角風景(撮影:SPICE編集子)
2015年は格別のご愛顧を賜り、誠に有難うございました。些か唐突ではございますが、わたくし、SPICE[舞台]編集子の分際ながら、専門領域外の[音楽]ジャンルに越境し、2015年のKPOP(主に女子アイドルシーン)について回顧、極私的なベスト5を挙げさせていただきます。
■第5位 CLC(シエルシ)「Pepe」 (作詞:LONG CANDY、作曲:ヤンゲン,イダンヨプチャギ、編曲:ヤンゲン)
BEASTや4Minuteの所属する事務所CUBEエンタテインメントから今年3月にデビューした、5人組新人ガールズグループCLC(うち一人はタイ人)。グループ名は「CrystaL Clear」の略という。そんな彼女らの記念すべきデビュー曲が「Pepe」。このレトロ調の脳内にへばり付きやすいメロディは、何だか二段横蹴り=イダンヨプチャギ(二人組の作曲チーム)の匂いがするぞ、と思って調べたら、やっぱりイダンヨプチャギが、作曲家ヤンゲンと共同で作曲したものだった。出だしの、微かなシンコペーションの利いた気怠い感じがまた堪らない。シンプルなのに巧妙な曲構成。振付も決まってる。個人的に贔屓なのが、PVの冒頭から登場しているチャン・スンヨンという子である。彼女の臀部から太腿にかけての、滑らかで弾力性のある動きには目が吸い寄せられる。CLCは、この後の2曲目にあたる活動曲から風情が一気に遠のいた感があり、些か心配している。
■第4位 Lovelyz(ロブリジュ)「Ah-Choo」 (作詞:ソ・ジウム 作曲・編曲:OnePiece)
Lovelyz。INFINITEらが所属する事務所Woolimエンタテインメントが手掛けた8人組ガールズグループだ。デビューは2014年11月。APINKが確立した徹底的な清純派路線をより強化するような展開で、そのマーケットを掠め取るような勢いが感じられる。スジョン、Keiという強烈に華のあるツートップを中心に擁しつつ、あとはオボコい可愛さの漂う女子らを各種取り揃えて、中高生男子や我らおっさん層をイチコロにしてやろうという作戦なのだろう。まあ編集子も、Lovelyzを見てるうちにAPINKのファンクラブの更新をやめてしまったのだから、癪だが事務所の術中にまんまとハマってしまったクチであることを認めざるを得ない。
さて、「Ah-Choo」だが、これがまた絶対にAPINKの「Mr.Chu」を意識してるはず。とはいいながら、名曲であることもまた確かなのだ。サビの「アチュー(くしゃみの音)」から続いて展開する甘酸っぱいメロディなどは、わが涙腺を刺戟してやまない。u1729さんによる「おっちゃん&ミンジュの怪しいK-Pop喫茶」セーラー服大戦(前篇)の回で語られた 制服系女子アイドルの代表格であり、爽やかかつ、ふわっとした印象が強いけれど、その実ダンスの振付には激しいものもあり(PVではわかりづらい)、「ああ見えて、なかなかやるじゃないか」と好感度がグングンあがってしまう。もっとも、それもまた事務所の術中にはまっている証拠だろう。
■第3位 OH MY GIRL(オマイゴル)「CUPID」 (作詞:キムイナ、作曲:DK, シンヒョク, Jordan Kyle, Jarah Gibson、編曲:シンヒョク, Jordan Kyle, Jarah Gibson)
同第3位 OH MY GIRL(オマイゴル)「CLOSER」 (作詞:ソ・ジウム, ミミ、作曲:Laura Brian, Sean Alexander、編曲:Avenue 52)
B1A4の所属する事務所、WMエンターテイメントから2015年4月にデビューした、こちらも8人組ガールズグループ。デビュー曲「CUPID」は、フォーサイスの「In the middle, somewhat elevated」のようなエッヂの利いたサウンドから入ってゆくが、サビ部分になると突然チアリーディングの掛け声のようになって聴き手を驚かす。アヴァンギャルド感を醸す、“攻め”の曲構成に痺れた。歌番組などでのパフォーマンスで確認できる、その振付もカッコいい。
次いで10月に発表した「CLOSER」では前作の元気イメージを180度転換して、ゴシック的な耽美さを前面に押し出してきた。楽曲は明るさこそ皆無だが、或る意味ベタで耳馴染みするメロディ。なによりも、「カモンカモン」の箇所で見せる群舞の独特な振付が脳裏にこびりつく。
メンバー一人一人の印象はあまり強くないのだが、事務所やブレーンの戦略が色濃くまぶされ実を結んだことにおいて、OH MY GIRLの「CUPID」そして「CLOSER」の2曲は私の中では同点3位なのである。
■第2位 Shannon Williams 「Why Why」 (作詞:チョングン、作曲・編曲:ラド)
Shannon Williamsこと、通称シャノンである。u1729さんによる「おっちゃん&ミンジュの怪しいK-Pop喫茶」夜明けのハーフ芸人の回 で詳しい紹介がなされている通り、イギリス人の父と韓国人の母の間に生まれたハーフだ。シャノンの圧倒的な可愛さ、および英国演劇学校で磨いたと思われる芯の通った歌唱力もさることながら、2015年3月にリリースされた「ウェヨ ウェヨ( Why Why )」は、極上のポップスだと心から思う。作曲をしたラドは韓国ヒットメーカーの一人で、A Pinkの、あの至高の名曲「My My」や「Hush」なんかも手掛けている。甘酸っぱさのツボをよく押さえている作曲家だと思う。しかし、そのこと以上に、何といっても我が心をがっつり掴んだ理由は、その振付けの特定箇所にあった。
「I wanna say yeah」に続いて、男子にしがみつきながら臀部を悩ましげに「ウ~ウ~ウ~ウウ~」と回すところである。女子の欲望をチャーミングに表現する最高の振付ではないか。ここにおいて、私の中では、下記の曲が出てくるまでは、今年のベスト1作品なのであった。
■第1位 TWICE(トゥワイス) 「Like OOH-AHH」 (作詞・作曲:ブラック・アイド・ピルスン(必勝), Sam Lewis、編曲:ラド)
「うわっハゲ!」という歌詞にドキッとする紳士諸氏も多いかもしれないが、安心してください、韓国語で「優雅に」という意味です。ともあれ、TWICEについて、あまり多くは語るまい。これも、u1729さんによる「おっちゃん&ミンジュの怪しいK-Pop喫茶」セーラー服大戦(後編)の回 で詳しい紹介がなされている通り、MnetとJYPエンタテインメントが組んだオーディション番組「SIXTEEN」から生まれた9人組ガールズグループ。2015年10月20日にデビューし、瞬く間にチャートを席巻、12月にはMAMA新人賞に輝いた。各メンバーの魅力、音楽のクォリティ、元気の良さなど、他とは一線を画す次元の高さ、格の高さを有するグループだ。個人的には初期少女時代が放っていた魅力に近いものを感じる。
だが、何より素敵なことは、メンバー構成が韓国人5名(ナヨン、ジョンヨン、ジヒョ、ダヒョン、チェヨン)、日本人3名(モモ、サナ、ミナ)、そして台湾人1名(ツウィ)という多国籍性にある。本当は中共の人にも入っていて欲しかったくらいだ。いま、日韓の外交関係も少しづつ改善の兆しが見え始めている。そして文化の力は国境を越えて、狭隘なナショナリスムを解体・無化してゆく。TWICEがその象徴として、アイドルポップスの新たなる地平を切り拓いてゆくことは、アジアの希望である。
以上、KPOP極私的ベスト5を挙げた。他にも感激した名曲は多数あったが、それらの話は後日、u1729さんが近日ネット上で開催する「関西ソニョシデ歌謡祭」 に参加のうえ、改めて繰り広げてゆくつもりだ。