[ kei ] ×武瑠 “ヴィジュアル系”という言葉に翻弄された両雄が初対談、いまだから話せること、惹かれ合う理由

インタビュー
音楽
2023.3.3

――そんな闇を見ていた時期、武瑠さんは[ kei ] さんに楽曲プロデュースを依頼して、アルバム『センチメンタルワールズエンド』収録曲「感傷終末世界(feat.圭)」を作成。どうしてプロデュースを依頼したのですか?

武瑠:特別な理由はなくて。この曲は自然と[ kei ] 君だなと感じたのでお願いしただけです。すごい雑なデモとメロディーを渡して。打ち込みとかも他のアレンジャーを入れずに全部お願いしたんですよ。ちょうど。

[ kei ] :コロナ禍になってすぐぐらいだよね?

武瑠:そうです。まだ世界がどうなるのか分からない空気感に包まれてた時期でした。

――武瑠さんからオーダーしたことはなにかあったのですか?

武瑠:“ガラスが降ってくる”とか、曲を作るときに頭に浮かんでた映像は伝えたと思います。

[ kei ] :タイトルも付いてたよね?

武瑠:あった気がします。

[ kei ] :いまさらだけど、あれってパーソナルな曲なの?

武瑠:歌詞をのせるときはパーソナルだった気がします。いつもパーソナルなことは書かないんですけど、あのアルバム『センチメンタルワールズエンド』だけすごくパーソナル。アルバムタイトルを漢字にしたのが「感傷終末世界」で、歌詞は[ kei ] 君からトラックが上がってきてから書き始めました。最後、サビのリフレインをしたほうがいいっていうアイデアが[ kei ] 君から出てきたので、じゃあその部分はキャッチコピーになるような言葉じゃなきゃいけないなと思って《終末くらい側にいて 死んでも良いよ側にいて》にしました。

暴れながら、俺もステージで武瑠の純粋な笑顔を見たんだよね。滅びた世界だからこそ、いろんなものから解放された空間に俺も武瑠もいたんじゃないかな。([ kei ] )

――[ kei ] さんは武瑠さんから依頼を受けてどうだったのですか?

[ kei ] :メロとコード以外に、ピアノのメインフレーズもたしかあったよね?

武瑠:ありました。あ、思い出した! カップラーメンのCMで、高校生のカップル以外、世界が滅びるというのがあったんですけど。そこにガラスの雨が降ってる映像があったから、さっき話した歌詞が出てきたんだ。

[ kei ] :その話を聞いて、俺はシガー・ロスの子供たちがガスマスクをしてるMV(「Untitled Track #1」)を思い出したんですよ。ちょうどコロナ禍だったこともあって。それで、もらったメロとコードを聴きながら、なんでこの曲を武瑠は自分とやりたいと言ってきたんだろう?ってことをずっと考えてて。俺は誰かと何かをやるとき、その人の根元を知りたいんです。俺はこのメロを聴いたとき、最初から武瑠のパーソナルを感じてて。悲しさとか苦しさを感じたんだよね。ずっと世界が泣いてるようなイメージがわいてきたから、そういう部分が武瑠の心の中にあって、そっちサイドからのアウトプットなんだなと分析して。それで、曲が始まったら世界が崩壊してるような感じで、ガラスの壊れる音を追加して入れて。でも途中で4つ打ちになったりするんだけど。そこは他のバンドマンだったらね、バンドサウンド以外の音を入れたら嫌がるかもしれないけど、お互いクラブミュージックが好きっていう共通点があったから、この感覚は分かるだろうなと思って入れました。

――去年はお互いのライブでコラボステージもやられてましたね。

武瑠:自分は悲観フィルターが常にあるんですけど、あの日(武瑠のアーティスト活動15周年を記念して開催した主催フェス『STREET GOTHIC FES』)は珍しく、ただ楽しめばいいやっていう日だったんですね。あの日の[ kei ] 君との時間は短いけどスローモーション感があるというか。一番シリアスなところとなった曲だったんですけど、なぜか自然と笑顔が出てきて。めっちゃ不思議な時間でした。

[ kei ] :俺は久しぶりにギタリストとしてのステージだったから、いい意味で何も考えないでフラットにやろうと思ってたんですよ。でも、曲が始まったら壊れた世界の住人になってて。

武瑠:ステージ上で暴れ倒してた(笑)。

[ kei ] :暴れながら、俺もステージで武瑠の純粋な笑顔を見たんだよね。滅びた世界だからこそ、いろんなものから解放された空間に俺も武瑠もいたんじゃないかな。あのときは。

いま大人になって改めて聴くとSuG時代の曲で“これは、(kannivalismに)相当影響受けてるなー”っていうのがありましたね(笑)。(武瑠)

――その後は[ kei ] さんのライブ(『圭 LIVE[IIIIII]DAY1-DISMANTLING-』2022年12月26日)に武瑠さんがゲスト参加されていましたが。

武瑠:今日の対談の前に、今度出るシングル「MIRACLE」を聴かせてもらったんですけど。前だったらギターで弾いてたようなところを歌でいってて。歌の自我みたいものをあの日のステージからも感じましたね。シングルは、新曲曲以外セルフカバーなんですか?

[ kei ] :うん。「pitiful emotional picture.([ kei ] Ver.)」は『silk tree.』(2009年3月発売)の曲で、4つ打ちの「SIN QUALIA([ kei ] Ver.)」はBAROQUEのアルバム『SIN DIVISION』(2020年1月発売)の曲。音ネタは昔のものをリメイクして使って、楽器や歌は録り直した。

武瑠:えーっ。そうなんだ。いま自分が影響を受けた人の作品をいろいろ聴き直してるんですけど。kannivalismの『Nu age.』(2007年2月発売)とかめっちゃよくて。たぶん、[ kei ] 君が作った音楽で一番影響を受けたのはこれだと思いました。yuji(ex SuG:Gt)も昔、これが一番好きだって言ってて。いま大人になって改めて聴くとSuG時代の曲で“これは、相当影響受けてるなー”っていうのがありましたね(笑)。

――影響受けすぎてるものがあったと。

武瑠:そう。で、kannivalismやったあと、バロックを4人で復活させたじゃないですか? あのときはどういう心境でどういうモチベーションでバンドをやってたんですか?

[ kei ] :あれは、復活前のbaroqueのアルバム『sug life.』にしても、自分のソロアルバム『silk tree.』にしても、やりたい音楽をやったらみんなを置いてけぼりにしちゃうわ、baroqueもkannivalismもいろんなことがあって自分自身まいっちゃってた時期で。もう自分がやりたいことを表現するのはやめようと。それがbaroque再結成のタイミングだったの。それで、1回自分の自我とかクリエイティビティーは置いといて、周りのために周りが望むことをやろうと俺は思ったの。だから、復活のときの曲たちは、みんながなんとなく思うbaroque像みたいなものを再構築する。そういう心境で俺はやってたね。

武瑠:それ出てますね。聴き直したら、復活後の作品から別の人みたいなものを感じて。

[ kei ] :そうかもしれない。いい言葉で言うとバランスをとってて。悪い言葉で言うと、音楽として新たな挑戦はしてない、保守的な作品かもしれないね。

武瑠:アートワークとかも意識的に子供っぽく作ってるなっていうのをすごく感じました。

[ kei ] :その時期のアートワークは自分の手は入ってないからね。他のメンバーが納得するものであればいいなっていう。逆に『sug life.』とかはめっちゃ俺の手が入ってる。baroqueはそうやって復活したにも関わらず、すぐにメンバーがいなくなったり抜けちゃったりして。そこで止めましたね。

――バランスを取るのは。

[ kei ] :周りのこと考えて、バランスを取ってここまでやったのに、それでもダメだったんだから、じゃあ好きなようにやるしかないって。それが2人のBAROQUE。そこからはアートワークもまた俺の手が入ってる。

――そして、[ kei ] さんと武瑠さん2人の共通点としてもう一つ。お互い、昨年改名をしているんですよ。

武瑠:最初から本名の武瑠にすればよかったものの、なんでか分かんないけどsleepyheadにしちゃったんですよね。怒り、憎しみがそのときすごすぎて、武瑠って名前を使うのが嫌だったんですよ。その理由はこれから紐解いていきます。こんな状況、状態のままいままでやってきたこと。夢が終わってたまるかと思って、夢から覚めないという意味でsleepyheadという名前にしたんです。それでいろいろ挑戦しまくって。人生を振り返ったときに“やっぱ武瑠だな”と自然に思ったので武瑠に戻したんです。でも、あの武瑠という名前にできなかった怒りの時期は本当に毎日友達に会ったりしてて。そのとき印象的だったのが、近くにいる先輩だとアリス九號.の将さんと[ kei ]君。将さんは俺の話を聞きながら泣いて、一緒に悲しんでくれて。[ kei ] 君は“ぶん殴りに行こうぜ”って自分のことのように怒ってくれたのが印象的でしたね。

――では[ kei ] さんが圭から名前の表記を変えた理由は?

[ kei ] :僕の場合、元々目指してたものがバンドの象徴となるギタリスト。そういうものだったので、いまやってること=ギターを弾いてステージの真ん中に立って歌うなんて1ミリも考えたことがなかった。いまやってることって、もう本名の圭を超えてるんですよね。自分が想像していなかった自分になっていこうという気持ちで、カッコの中のアーティストをファンのみんなと一緒に理想のアーティストに育てていこうというプロジェクトという意味で、表記を変えました。だから、本名に戻した武瑠とはここは逆だね。

武瑠:そうですね。

――いろいろ重なるところが多い2人。今後の活動についても聞かせて下さい。武瑠さんは3月9日にSuGとして『SuG LIVE 2023 THE GAMBLER』を開催。それ以降は武瑠ソロとして5月11日は東京、13日には大阪で『武瑠 birthday scream party 2023』を、6月5日はSHINさんとのツーマンライブ『SHIN×武瑠 2MAN LIVE“蝶反響”』も決定。今後はどんな活動をしていく予定ですか?

武瑠:今年はあまり進化をしない年にしようと思ってます。昨年の15周年までが大きなタームだったので、これまでの15年全部を振り返って、そのあと何をしたいかを考えようと思っています。直近でやる3月9日のライブもバンド時代を振り返る感じだし、誕生日ライブにしても、これまでみたいに貪欲に向かっていくというのはまったくなくて。遊びに行くから来てね、楽しもうね、というライブです。

――では[ kei ] さんは?

[ kei ] :名前の表記を変えたばかりで、その第1弾となるシングル「MIRACLE」を3月1日に発売します。バンドを休止して2年近く経ちましたけど、本当の意味でアーティスト[ kei ] としてスタートの1年にしたいと思います。とは言ってもマイペースでね(笑)。


取材・文=東條祥恵 撮影=大橋祐希

 

 

武瑠 情報

SuG LIVE 2023 THE GAMBLER
3月9日(木)EXシアター六本木
https://sug2023.tokyo/

YOUSAY SONIC 2023
4月22日(土)立川 TACHIHI BEACH
購入ページ>> https://eplus.jp/sf/detail/2899660001-P0030008P021001

武瑠 birthday scream party 2023 -LIVE-
5月11日(木)渋谷 Club Malcolm

武瑠 birthday scream party 2023
5月13日(土)THE超PINK(大阪)

SHIN×武瑠 2MAN LIVE ” 蝶反響 “
6月5日(月)Spotify O-EAST

■武瑠 オフィシャルサイト https://www.takeru-official.tokyo/

[ kei ]情報

シングル「MIRACLE」
2023年3月1日発売
 
【初回限定盤】
PGSK-039/040 (CD+DVD) ¥8,800(tax in) ※特殊パッケージ仕様
<収録内容>
[disc1 : CD]
1. MIRACLE
2. ETERNAL HEART
3. MIRACLE (Instrumental Ver.)
4. ETERNAL HEART (Instrumental Ver.)
5. pitiful emotional picture. ([ kei ] Ver.)
6. SIN QUALIA ([ kei ] Ver.)

[disc2 : DVD]
TOUR // SENSE OF WONDER -LIVE at SHIBUYA PLEASURE PLEASURE 2022.08.12-
1. the sin.
2. I LUCIFER
3. SIN QUALIA
4. longing star.
5. eve.
6. STAY
7. the salvation.
8. the primary.
9. ring clef.

【通常盤】PGSK-041 (CD) ¥2,200(tax in) ※紙ジャケット仕様
<収録内容>
1. MIRACLE
2. ETERNAL HEART 

■[ kei ] オフィシャルサイト https://kei-official.jp/
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