現代の日本と中世ヨーロッパ 2つの時代を超えた物語 アメツチプロジェクト Re:flag vol.1『sacrifice』安藤匠郎×湯本健一×氏家蓮インタビュー

インタビュー
舞台
2023.6.23
湯本健一、安藤匠郎、氏家蓮

湯本健一、安藤匠郎、氏家蓮

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2023年6月28日(水)~7月2日(日)中野ザ・ポケットにて、アメツチプロジェクト Re:flag vol.1『sacrifice』が上演される。

アメツチは、プロデューサーの安藤匠郎と演出家の山田英真により結成された演劇プロジェクトで、これまで山田の脚本・演出によるオリジナルのエンターテイメント作品を生み出してきた。映像技術を取り入れた演出を得意としているが、今回のRe:flag企画では、これまでとは異なった手法で作品を立ち上げるという。プロデューサーの安藤匠郎と、出演者の湯本健一、氏家蓮に、今作に挑む思いを聞いた。

ブランディングから抜け出すために打ち出した企画

安藤匠郎

安藤匠郎

――アメツチはこれまで映像技術を駆使した演出で、“マルチモーダルエンターテイメント”を掲げて作品を上演してきました。今回は作品タイトルの前に「Re:flag」と入っていますが、また違った方向性の作品になるのでしょうか。

安藤: 「アメツチはこんな感じ」というブランディングに自分たちがはまって「俺たちはこういうのをやらなきゃいけないんだ」と思ってしまうのはすごく苦しいことだな、と思ったので、これまでとはちょっと違うこともやっていこうか、という感じで「Re:flag」というプロジェクトを始めてみました。今年2月には「ウブスナ」という、新人作家発掘プロジェクト公演を立ち上げてやってみたんですけど、アメツチという団体の中でもいろいろやっていきますよ、ということをはっきり示した方が自分たちとしても整理しやすいので、企画の方向性ごとに「ウブスナ」や「Re:flag」と再定義していこう、ということになりました。

――Re:flagというプロジェクトでは、どのような作品を目指しているのでしょうか。

安藤:より舞台上が「生」であることを大切にして、今回に関して言えば、役者の芝居をじっくり見せる会話劇です。そうなるとキャストの演技力が重要になってくるので、演出の山田がこれまでご一緒したことある人、もしくは出演作を見て実力がわかっている人に声をかけました。

――ということは、湯本さんと氏家さんがキャスティングされた理由は、山田さんが以前から知っていた役者さんだから、ということなんですね。

安藤:山田とアメツチを立ち上げたときに、「そのうちご一緒したい人リスト」を共有していて(笑)、湯本くんはそのリストに前々から入っていたので、今回お声がけしました。氏家くんは、僕がやった別の企画のときに出てもらったことがあったんですけど、山田とは今回が初めてになります。

湯本健一

湯本健一

氏家蓮

氏家蓮

――湯本さんと氏家さんは、今回が3回目の共演とうかがいました。

湯本:そうなんですよ! 初めて共演したのが今年1月にT-gene stageという団体で上演した『嘘つき』という公演で、2回目は同じくT-gene stageで先月末にやった『MOMOTARO』という作品です。半年の間に共演3回目って、すごくないですか?

氏家:タイミングというか縁というか、重なるときは重なるんだな、と思いました。おかげで一気に距離が縮まったよね。

湯本:歳も近いですし、とっつきやすくて良い先輩です!

氏家:とっつきやすくて、って(笑)。

湯本:正直最初は、蓮さんにどう声をかけたらいいんだろう、ってちょっと二の足踏んじゃったんですけど、でも話してみたらすごく優しくて、いつも僕の話を聞いてくれるので、大好きです!

「アイドル」と「神」 どちらも崇拝の対象

湯本健一

湯本健一

――今作は現代の日本と中世ヨーロッパという2つの時代が舞台になっていて、出演者の皆さんは2役演じるそうですが、ご自分の役について教えてください。

湯本:僕は現代パートではツルタというアイドルオタクの役で、中世パートではクレドという神学の研究者の役です。どちらも自分の中に一つの答えを持っている役で、でも自分とは違う答えを持った人とぶつかって、それでも自分が思っている答えを出した結果、新たな波を起こしてしまう、という役です。台本を読んで、今自分が思っていることと重なるセリフがいっぱいあって、このセリフをぜひお客さんに聞いて欲しい、と思っています。

氏家:僕は、現代パートでは中館というファミレスの店員で、中世パートではレガトという皇帝の側近の役です。中館は、ファミレスに集うアイドルオタクたちを傍観している立場というか、結構物事を達観して見ているポジションで、レガトは湯本くん演じるクレドたちとは相反する立場なのかな?どうなのかな?という謎めいたキャラなので、そのへんの雰囲気をお届けできたらいいなと思います。

氏家蓮

氏家蓮

――脚本の印象だと、湯本さんの役は能動的というか、自分の思いに正直に動いている感じがしましたが、氏家さんの役はどちらかというと観察者みたいな感じがしました。

氏家:湯本くんの演じるキャラクターはどちらもとにかくまっすぐ突き進んでいる、という感じですよね。僕のキャラクターは、達観して観察している感じなのかな。

湯本:俯瞰しているというか、一歩引いているイメージもありますよね。

安藤:この作品では2つの時代が描かれていますが、中世の方は宗教革命をモデルにした話なんです。

氏家:現代の方で描かれる「アイドルを推す」っていうところと、中世の方で描かれる宗教への信仰というところが、重なるというか交わるところがあって、すごく独特な世界観だな、と思います。

安藤:山田の初期アイディアは、アイドルオタクだけじゃなくて、アニメオタクとかいろんな種類のオタクが登場するというものだったんですよ。でも中世で描かれる「神」の話と、現代で描かれる「アイドル」と、どちらも崇拝の対象として照らし合わせた方が面白い、と思って、現代の方はアイドルオタクに絞った今の形になっているんだと思います。

安藤匠郎

安藤匠郎

――では最後に、今作を楽しみにしている方たちにメッセージをお願いします。

湯本:この作品は、今僕らが生きている時間軸と重なるようなシチュエーションがあると僕は思っていて、僕の前半の方のセリフで「知らない者が悪いのか、知っている者が悪いのか。」というのがあるんですが、後半の方で「知らない者」が「知っている者」になったときに、物語の方向性が変わって行くんです。その様子を今の世の中に重ね合わせて考えて、何かを感じてもらえたらとても嬉しいですし、それはすごく意味があることなんじゃないかなと思っています。

氏家:日常的な会話のようなシーンがたくさんあるんですけど、その随所に「意外とこれ刺さるかも」というようなセリフがあるんですよ。例えば「アイドルも普通の人間なのにね」とか、人によってはものすごく刺さるセリフだと思うし、どのセリフが自分に刺さるのか、というのを感じてもらえたら面白いんじゃないかなと思います。いろんなセリフがお客さんに刺さるようにお届けしたいと思いますので、ぜひ劇場にお越しください。

安藤:アメツチで今までやってきたような、エンタメに全振りしたみたいな派手な感じも好きなんですけど、今回はあえて大きな波があるというよりは、セリフでじっくり見せる部分が多いので、見る人の感受性に左右されるところが大きいのかなと思います。この作品を見て、自分がどう感じるのか、どんなところに反応するのかをぜひ楽しんで欲しいですね。あとは、普段推されている立場の彼らが推す側の役をやっているところを、推している側のお客さんが俯瞰で見ている、というのはちょっとメタ的で面白いんじゃないかな、と思っています(笑)。お客さんの反応が楽しみです!

湯本健一、安藤匠郎、氏家蓮

湯本健一、安藤匠郎、氏家蓮

取材・文=久田絢子 撮影=池上夢貢

公演情報

アメツチプロジェクト Re:flag vol.1『sacrifice』
 
日程:2023年6月28日(水)~7月2日(日)
会場:中野ザ・ポケット
 

前方確約席(3列目まで):8,000円(選べるブロマイド、ランダムブロマイド付き)
S席:7,500円(ランダムブロマイド付き)
 
キャスト:
ツルタ / クレド 湯本健一
里奈 / レイス 生田輝
中館 / レガト 氏家蓮
テツ / プティオ 神谷春樹
フルヤ / テスタ 松波優輝
レオ / テネシア 本川翔太
タツト / レフォル 龍人
伊勢 / ラートル 緑川睦
 
スタッフ:
脚本・演出 山田英真
 
音楽 竹下亮
舞台監督 岩淵吉能
音響 竹下亮
照明 上田茉衣子(リヒター)
美術 仁平祐也
衣裳 岩田洋一
ヘアメイク 松前詠美子
宣伝カメラマン インテツ
キービジュアル 鈴木宏治(luxis)
票券 Mitt
進行 葛西祥太
制作 小田夏穂(アメツチ)
プロデューサー 安藤匠郎
 
製作:アメツチ
公式サイト:https://ame-tsuchi.co.jp/sacrifice/
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