ふぉ〜ゆ〜、中川翔子らが紡ぐ新たな伝説 3度目にしてさらに深化し新しく生まれ変わった『SHOW BOY』ゲネプロ&会見レポート

レポート
舞台
2023.7.2

フランスのムーラン・ルージュやクレイジーホースと並ぶ最高級キャバレーLIDOを彷彿とさせる、近未来のナイトクラブ。物語の舞台は東京湾に浮かぶ大型カジノ豪華客船。オリンピックを間近に控えた東京のエンターテインメントの象徴であるその客船は、水上を動くラスベガスと呼ばれている。

ある日、客船の目玉であるショーの開演前に、ディーヴァが牡蠣にあたってしまう。大急ぎで代わりの出演者探しを行う支配人(中川翔子)。裏方(福田悠太)は主演ダンサー(高田翔)が推薦するエンジェル(高嶋菜七)を探し回る。時を同じくして、船上では様々な物語が動き出していた。 カジノで全財産を失ったギャンブラー(越岡裕貴)は、大金を抱える少女(大廣アンナ/森田みなも)と出会う。日本人と取引予定の中国人マフィア(松崎祐介)は通訳(瀬下尚人)と顔を合わせ、控え室ではマジシャン見習い(辰巳雄大)が師匠(小松利昌)の前でマジックの試験中。
4人の男たちの宝石のような小さな物語が徐々に結びつき――。

* * *

会見で「深化した」と語っていた通り、各キャラクターの心情、キャラクター同士の関係性がより深く描かれ、わかりやすくなっている。特に、それぞれが抱えるステージへの思いがより鮮明に伝わるセリフが増えたことでラストに向かうエネルギーが説得力を増している。芝居もパフォーマンスもハードなはずだが、ショーステージで輝く姿は軽やか。歌やタップ、ダンス、マジックといったパフォーマンスの楽しさだけがひしひしと伝わってきて、見ているこちらも自然と笑顔になってしまう。細かに修正されたセリフや歌詞、追加シーンも印象的で、ウォーリー木下のふぉ〜ゆ〜への信頼や愛情も見えるような気がした。

また、それぞれがチャレンジしているマジックや中国語、タップ、ピアノはもちろん、4人のハーモニーも2021年公演からさらに安定し、深みが増している。個々のスキルが伸び、1つ1つのパフォーマンスに余裕が生まれたことで、笑えるシーンと胸に迫る芝居の緩急がより強くなったと感じた。

裏方役の福田は、ステージに対する未練とひたむきな情熱をまっすぐに表現する。周囲の人間に振り回されながらも自然と世話を焼く人の良さ、ステージで見せる、弾けるような笑顔が魅力的だ。ダンスを披露するシーンも多いが、そのいずれもキラキラとした笑顔で軽やかにこなしていく様子が小気味いい。

ギャンブラー役の越岡は、情けないがどこか可愛らしくて憎めない「おじさん」を好演。ユーモアたっぷりな芝居で笑わせたかと思うと甘い歌声やピアノの演奏を披露し、エネルギッシュなダンスで魅せるなど、ギャップが楽しい。

松崎は、家族を愛する中国人マフィアの複雑な心境を見事に表現。背景に日本語字幕が出るのだが、字幕を読まなくても気持ちが伝わってくる声と表情にぐっと引き込まれる。ディーヴァの代役としてのアドリブを含めたパフォーマンスもキュートだ。

見習いマジシャンを演じる辰巳は、様々なマジックを失敗・成功問わず鮮やかに披露する。芝居の部分にも注目してほしいと語っていた通り、本音を吐露するシーンは真に迫っている。彼の気持ちがしっかりわかることで、師匠やエンジェルとの会話もさらに深く切なく感じられる。

彼らを取り巻くキャラクター達も、パフォーマンスと芝居それぞれで魅せるシーンが増えている。

中川演じる支配人は、不得手な仕事を懸命に頑張る不器用な人といった印象。個性的なショーキャストたちに振り回されつつ、弟である裏方と一緒にキャバレーを運営する苦労人っぷりを応援したくなる。一方で、堂々とした歌唱やユーモアたっぷりのMCは非常にクールだ。MCはアドリブ要素も多いので、何度か観る方も新鮮に楽しめるだろう。


高田演じる主演ダンサーは生意気さ全開。自信家で思い込みが激しい個性的なキャラが立っており、ちょっと厄介だが憎めないスターだ。福田・瀬下とともに披露するタップダンスも素晴らしい。

ゲネプロでは少女を大廣が演じた。溌剌として聡明な雰囲気の少女と情けないギャンブラーのコンビが微笑ましい。追加シーンもあり、2人の心の通い合いが魅力的に描かれている。

とある事情で中国人マフィアと共に船内を逃げ回ることになる通訳を演じる瀬下は、気弱そうに見えて意外とノリの良いキャラクターが楽しい。マフィアと共に過ごす中で友情が芽生えていく様子があたたかく、グッとくる。

今回新キャストとして加わった小松のコメディアンっぷりも見逃せない。マジシャンとしての見習いとのやりとりはもちろん、乗客などのモブとして登場している時もユーモラスな芝居で目を引く。長い年月を共にしてきた師匠として、随所から見習いに対する愛情が垣間見えるのも印象的だ。

エンジェル役の高嶋は、口と酒癖は悪いが愛嬌のあるショーガールを好演。 煮え切らないキャラクターが多い作品において、彼女の素直さがアクセントになっている。見習いが披露するマジックに目を輝かせる様子が愛らしく、2人のやりとりにきゅんとしてしまう。

さらに、各シーンに居合わせる乗客やスタッフの人数が増え、それぞれがより自由に行動している。メインのキャラクターたちに負けず劣らず個性的なキャラクターたちの関係性や背景を想像するのも楽しい。芝居だけでなくセットや衣装もグレードアップ。より船内の様子がわかりやすくなるとともに、豪華客船の賑やかさが鮮明に見えてくる。

3度目の上演にあたって細部までブラッシュアップされ、熱さと深みを増した『SHOW BOY』。キャストはもちろん、クリエイター、スタッフ陣の情熱が感じられるこの作品、1度観たら再度乗船したくなること請け合いだ。

本作は7月1日(土)~21日(金)まで日比谷シアタークリエにて上演。7月28日(金)から30日(日)まで大阪・新歌舞伎座、8月12日(土)に愛知県芸術劇場 大ホールでも公演が行われる。

取材・文・撮影=吉田沙奈

公演情報

舞台『SHOW BOY』
 

日程・会場:
2023年7月1日(土)~21日(金)日比谷シアタークリエ
2023年7月28日(金)~30日(日)大阪・新歌舞伎座
2023年8月12日(土)愛知・愛知県芸術劇場 大ホール
 
脚本:登米裕一 
原案・演出:ウォーリー木下
主演:ふぉ~ゆ~(福田悠太 辰巳雄大 越岡裕貴 松崎祐介)
出演:高田翔 高嶋菜七 小松利昌 大廣アンナ 森田みなも
瀬下尚人 中川翔子
 
【人物紹介】
福田悠太・・・・裏方 キャバレーで働く
 
辰巳雄大・・・・マジシャンの見習い
 
越岡裕貴・・・・ギャンブラー 全財産を失った男。
 
松崎祐介・・・・中国人マフィア
 
高田翔(ジャニーズ Jr.)・・・・主演ダンサー
高嶋菜七・・・・ショーのマドンナ
小松利昌(新キャスト)・・・・マジシャン
少女(新キャスト)・・・・大廣アンナ・森田みなも(Wキャスト)
瀬下尚人・・・・中国語通訳
中川翔子・・・・キャバレーの支配人
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