新国立劇場、ワルツ王シュトラウスⅡ世が作曲したオペレッタの最高傑作『こうもり』を上演
新国立劇場『こうもり』より 撮影:寺司正彦
2023年12月6日(水)~12月12日(火)新国立劇場 オペラパレスにて、2023/2024 シーズン オペラ『こうもり』が上演される。
本作は、ワルツ王シュトラウスⅡ世が作曲した、オペレッタの最高傑作。次々に繰り出される美しいワルツやポルカ、小粋な風刺やユーモアが観客の心を高揚させ、大団円を迎える頃には劇場じゅうが幸福な空気に包まれる、最高の音楽劇だ。華と笑いがいっぱいで、ウィーン年末年始の風物詩としてもおなじみな演目でもある。
新国立劇場『こうもり』より 撮影:寺司正彦
新国立劇場『こうもり』より 撮影:寺司正彦
陽気で軽妙な応酬、素朴な愛があふれる一方で、人生の浮き沈みに対するほろ苦い哲学も込められ、その深みがいっそう観客の共感を呼ぶ。『こうもり』が作曲された当時のウィーンの町はウィーン万国博覧会に沸くなか、でコレラの流行と株の大暴落に見舞われていた。舞踏会で人々が唱和する「みな兄弟姉妹となろう」という共生のメッセージは、世界情勢に不安を覚える現在の観客の心にもひと際深く染みるだろう。
新国立劇場『こうもり』より 撮影:寺司正彦
演出はウィーン宮廷歌手の名テノール、ハインツ・ツェドニク。2006年新国立劇場でのこの演出でツェドニクは演出家としてデビュー、この後、翌年のウィーン・フォルクスオーパー『こうもり』などの演出を手がけた。ウィーン出身で『こうもり』の四役をレパートリーとする名テノール歌手ツェドニクは、ウィーン気質が身体の隅々まで沁み込んでくる。小粋でエレガント、洒脱な仕掛けがたくさん用意された正統的な演出は、『こうもり』の魅力を余すところなく伝える。
新国立劇場『こうもり』より 撮影:寺司正彦
新国立劇場『こうもり』より 撮影:寺司正彦
ツェドニク演出の『こうもり』は、アール・デコ調の華やかな舞台美術・衣裳も大きな見どころ。舞台の縁を飾る市松模様、背景を優雅に彩る植物のモチーフなど、舞台はアール・デコの感覚で統一してデザインされ、照明の効果で刻々と表情を変える。金色に輝く幾何学模様や、日本の美感を取り入れた優雅で官能的なラインの衣裳など、クリムトを彷彿させるデザインも盛りだくさんで、美術ファンの心も捉えてやまない。
指揮には、オーストリア出身でジャズピアノなど多才ぶりを発揮する若手指揮者パトリック・ハーンが新国立劇場初登場。そして、アイゼンシュタインに温かな声と抜群の感性で評価されるマクガヴァン、ロザリンデにはウィーンで学びウィーン、ベルリン、ブリュッセルなどで活躍するソプラノのマルグエッレ、アデーレにスウェーデンの誇る歌姫シェシュティン・アヴェモとフレッシュなキャストが華やかに揃った。アルフレードには日本のトップテノールの一角に躍り出た伊藤達人が出演する。
美しい音楽が満載で幸福感のあふれる『こうもり』。オペラ初心者の方や家族連れにもお薦めな公演となるので、チェックしてみてはいかがだろうか。
新国立劇場オペラ「こうもり」ダイジェスト映像 Die Fledermaus-NNTT
ウィーン郊外。 アイゼンシュタインは顧問弁護士の不手際で禁固刑を受け大憤慨。 しかし、悪友ファルケに誘われ、妻ロザリンデには「刑務所へ出頭する」と偽り、変装してオルロフスキー公爵邸の夜会へ。 そこで仮面の美女を妻と気づかず口説く。 翌朝、刑務所に出頭したアイゼンシュタインは駆けつけた妻の浮気を疑うが、 自分の浮気がばれて逆にやり込められる。 そこへ、この茶番劇の仕掛人ファルケが現れ、 「すべてはシャンパンのいたずら!」と大団円を迎える。
公演情報
ヨハン・シュトラウスⅡ世『こうもり』全3幕 〈ドイツ語上演/日本語及び英語字幕付〉
Die Fledermaus / Johann StraussⅡ
会場:新国立劇場 オペラパレス
予定上演時間:約3時間(休憩含む)
【指揮】パトリック・ハーン
【演出】ハインツ・ツェドニク
【美術・衣裳】オラフ・ツォンベック
【振付】マリア・ルイーズ・ヤスカ
【照明】立田雄士
【舞台監督】髙橋尚史
【ガブリエル・フォン・アイゼンシュタイン】ジョナサン・マクガヴァン
【ロザリンデ】エレオノーレ・マルグエッレ
【フランク】ヘンリー・ワディントン
【オルロフスキー公爵】タマラ・グーラ
【アルフレード】伊藤達人
【ファルケ博士】トーマス・タツル
【アデーレ】シェシュティン・アヴェモ
【ブリント博士】青地英幸
【フロッシュ】ホルスト・ラムネク
【イーダ】伊藤 晴
【合唱】新国立劇場合唱団
【バレエ】東京シティ・バレエ団
【管弦楽】東京フィルハーモニー交響楽団