「最近観た映画の中で一番オールドスクール。そこが良い」[Alexandros]川上洋平、デンゼル・ワシントン主演の大ヒットアクションシリーズ最終章『イコライザー THE FINAL』を語る【映画連載:ポップコーン、バター多めで PART2】

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2023.10.22
撮影=河本悠貴 ヘア&メイク=坂手マキ(vicca)

撮影=河本悠貴 ヘア&メイク=坂手マキ(vicca)

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大の映画好きとして知られる[Alexandros]のボーカル&ギター川上洋平の映画連載「ポップコーン、バター多めで PART2」。今回取り上げるのは、デンゼル・ワシントン演じる闇の仕事請負人=イコライザーが肉体的にも精神的にも限界を迎え、辿り着いたアマルフィ海岸沿いの田舎町にて引退を決意。しかし、自らを救ってくれた人々のために仕事を“再開”する名アクションシリーズファイナル『イコライザー THE FINAL』を語ります。

『イコライザー THE FINAL』

『イコライザー THE FINAL』

──『イコライザー THE FINAL』どうでしたか?

いや、これはめちゃめちゃおもしろかったです。

──そうですよね。

1作目は素晴らしくて。正直2作目はあんまり俺はハマらなかったんですよね。それで、「ああ、これでもうシリーズ終わりかな?」と思ってた時に3が制作されると聞いて「本当に? これ以上描くことある!?」って疑ってしまったんだけど、心配ご無用でした。とても良かったし、『イコライザー』のあるべき姿に戻った気がしました。

──まさに。1は本当におもしろかったですが、2はいまいちでしたよね。

俺の周りも割とそんな意見が多くて。広げようとして、ちょっと空回ってる感じがしましたね。イスタンブールの鉄道から話が始まったりとか……いわゆるスパイ映画っぽくなり過ぎたなあと。その割には地味だし。でも今回はデンゼル・ワシントンが演じる主人公のマッコールの年齢的にも、元CIAトップエージェントっていうバックグラウンドがすごくハマってる感じがした。

──孤独に戦い抜いてきたイコライザーが人生の最終地点となる居場所を見つけたというストーリーです。

そうそう。彼の中で「俺は誰なんだ?」「俺は善人なのか? 悪人なのか?」っていう問いかけをシリーズ通してやってきたじゃないですか。その答え合わせみたいなものが縁もゆかりもないイタリアのアマルフィという土地でようやくできた感じがありましたよね。

──マッコールはアメリカンですが、だからこそ異国である南イタリアの人々の陽気さやファミリー感に救われているようにも見えました。

そうですよね。実は俺、前世はイタリア人なんだと思うんだよね。

──え、そうなんですか?

なぜかランチにスパゲッティを選びがちなんだよね。夜はピザが食べたくなる。多分イタリアの血が流れてるはず。

──(笑)じゃあ、そういう面でもこの映画はど真ん中ですね。アマルフィやローマ、ナポリでも撮影しているし。

そうなんですよ。イタリア行きたくなりますよね。「この登場人物が食べてるごはんを食べたい」って思う映画は良い映画だって前に話したことあると思うんですけど、「この舞台に行きたい」って思える映画も良いですよね。

──そうですよね。さっき話に出たスパイ映画でいうと、『ミッション:インポッシブル』とかもそうですけど。

ドバイとかね。でも、『ミッション:インポッシブル』はいろんな国にまたがり過ぎだな。『イコライザー THE FINAL』はほぼイタリアで完結してるのも焦点が絞られてて良かった。

『イコライザー THE FINAL』より

『イコライザー THE FINAL』より

■黒澤明の『用心棒』や『七人の侍』みたいな、ある種の様式美に則ってる映画

黒澤明の『用心棒』や『七人の侍』みたいな、ある種のセオリーというか、様式美に則ってる映画だと思う。だから「こんなことになるんだ?」とか「こんな映画初めて観た!」という驚きは別にないんだよね。最近観た映画の中で一番オールドスクール。でもそこが良い。『ミッション:インポッシブル』の今年公開された『デッドレコニング PART ONE』はちょっとてんこもりの映画過ぎて胃もたれしました。

──盛りに盛って、「アクション映画の限界突破するぞ!」って感じでしたよね。

アクション映画しか観ない俺の父親も「あれはさすがにお腹いっぱいだった」って言ってた。「父親もそういう絶妙さやわびさびがわかるんだな」と感心しました。あれを観てから今作を観たこともあって、さらに良く感じた。そんなことを言うと『ミッション:インポッシブル』の悪口に聞こえるかもしれないけど、あれはあれで良いのよね。スタミナ丼とか二郎系ラーメンみたいな。イコライザーは煮干し系ラーメンぐらいかな(笑)。

──(笑)渋さすら感じる美学があるというか、まさにオールドスクールな。

そうなんだよ。『イコライザー』の1を観直してから3を観に行ったんだけど、意外とそこまでアクションシーンが多くない。最後の方で派手なドンパチがあるけど。前半はアクションシーンよりも、マッコールの寡黙な表情から過去に何があったかを察したり、周りの人との関係性が展開されたり、人間ドラマの要素が強い。特に序盤はクロエ・グレース・モレッツちゃんが演じる娼婦の復讐をしに行くまでかなり長いんですよね。それまでは、行きつけのダイナーで紅茶飲むシーンとかが中心で、マッコールが強いかどうかもよくわかんない。だから、ちゃんとしたわびさび的なものがあるシリーズなんだなと思っていて。3はスタイリッシュなスタイルを持った主人公の映画っていう前提をしっかり踏襲してるなって。

──人間ドラマとしてしっかり見せつつ、キレのあるアクションが無駄なく入ってくるところが痺れますよね。

痺れますよね。3は1よりおもしろかったかもしれない。

──19秒とか16秒で殺していたのが、今回は9秒になってます。

それもあるかも。アクション映画の主人公のキャッチフレーズって大事ですね。わかりやすい“成り”みたいな。『イコライザー』のマッコールは相手を倒す時にかかる秒数を予告したり、飲食店で必ず紅茶を飲んだり。3でおもしろかったのが、お店で紅茶を飲もうとしたら、「紅茶はイギリス人しか飲まないよ」って言われて、コーヒーを出されるシーン。

──そういうイタリアの風土も良い感じで盛り込まれてましたよね。

ああいう人情味溢れる下町感も良かったですよね。いやあ、でも本当にこれでファイナルなのが潔いですよね。ダニエル・クレイグの『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』のエンディングがちょっと僕的には微妙だったところもあって。『ジョン・ウィック』も最近最新作の『ジョン・ウィック:コンセクエンス』が公開されましたけど、あれもちょっとてんこ盛りな印象がありました。すごい好きなシリーズなんですけど。イコライザーはフランチャイズしないということで、それこそ伝説の男を演出できてますよね。

──シリーズものとなると、盛るか広げるかの方向にいきがちですよね。

そうなんですよ。だから『イコライザー』が本来の良さを踏襲した上で3で終わらせたのはかっこいい。

──主人公が歳を取ったからこそ最後の居場所を見つけるという人生観も描かれているところに説得力があるし。

そうそう。別に恋愛してその場所に定住するわけじゃなくて、街や人々の雰囲気で選んでる感じが良いですよね。

『イコライザー THE FINAL』より

『イコライザー THE FINAL』より

■『イコライザー』を観ても、やっぱりデンゼル・ワシントンって貴重だなって思いました

──デンゼル・ワシントンが現在68歳なのにも驚きました。

びっくりですよね。デンゼル・ワシントンって、アフリカンアメリカンにおいてトップ・オブ・トップな存在ですよね。黒人の俳優で主人公ができる人っていうと、まずデンゼル・ワシントンが挙がるくらいの王道。僕もすごく好きなんですけど。黒人として初めてアカデミー賞を受賞したのがシドニー・ポワチエさんで、デンゼル・ワシントンが黒人として2人目のアカデミー賞受賞者になった時のスピーチで「シドニー・ポワチエがいなかったら僕はここにはいない」みたいなことを言ったのがすごく印象に残ってて。それもあって、僕の中ではデンゼル・ワシントンとシドニー・ポワチエって割と重なるところがあるんですよね。

──ああ。

シドニー・ポワチエが出てくる前の黒人の役って、割と三枚目的だったり肉体派な感じの役が多かったんだけど、ポワチエは知的でシリアスな役を演じていて。でも、黒人からは「白人が望む素直で礼儀正しい黒人を演じている」って批判されてたんですよね。白人にとっての理想の黒人像っていうか。でもこの人の活躍があったからこそ、デンゼル・ワシントンやモーガン・フリーマンみたいな主役を演じられる黒人俳優が出てきたわけで。あとイドリス・エルバとか。『イコライザー』を観ても、やっぱりデンゼル・ワシントンって貴重だなって思いました。

──確かに。

『イコライザー』って主人公の映画じゃないですか。ダコタ・ファニングは出てたけど、バディ映画にはなってなくて。

──『マイ・ボディガード』以来の19年ぶりの共演という。

その要素はあるんだけど、でもやっぱり主人公が中心で、街の人が「何とかしてください!」ってなって、「よっしゃ、わかった!」っていう、ある種松平健の『暴れん坊将軍』的な。

──確かに。イコライザーは必殺仕事人ですから。侍感がありますよね。

めっちゃある。浪人みたいな。でも独り占めし過ぎない感じ。また例に出しちゃうけど、トム・クルーズが出てる映画ってどれだけ出演者がいてチーム感があったとしても、結局トム・クルーズが目立つことが多いじゃないですか。それがデンゼル・ワシントンにはないっていうか。

──引きの美学というか。

そうそう。悪役を演じる時もすごく素敵だし。その感じもすごいなって思う。トム・クルーズはアクションが控えめな『アウトロー』でも寡黙感が出てないんだよなあ。

──確かに。食べ物でいうと、デンゼル・ワシントンはこってりしてないけど、トム・クルーズってめっちゃこってりしてますよね。

頼んでないのにおかわり持ってきてくれる感じ。

──(笑)勝手にごはんが盛られていったり、どんどん味付けが増えていくみたいな。

そうそう(笑)。あえて『イコライザー』の弱いところを言うと、さっきも言ったけど目新しさはないですよね。『ミッション:インポッシブル』がめちゃめちゃおもしろかったっていう人には物足りないかもしれない。

──それはあるかもしれないです。でもわかりやすいアクション映画でもありますから。

そうなんです。とにかくわかりやすい。1と2を観なくても全然大丈夫だと思うし。1は本当におもしろいからできれば観てほしいけど。そして、こういう映画はやっぱり映画館でポップコーン食べながら観たいなと思って、僕はそうしました。

 

取材・文=小松香里

※本連載や取り上げている作品についての感想等を是非spice_info@eplus.co.jp へお送りください。川上洋平さん共々お待ちしています! 

上映情報

『イコライザー THE FINAL』
監督:アントワーン・フークア/出演:デンゼル・ワシントン、ダコタ・ファニング、デヴィッド・デンマン/配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
あらすじ:ある時、訪れたシチリアでの事件で負傷したことをきっかけに、肉体的にも精神的にも限界を迎えたロバート・マッコール(デンゼル・ワシントン)は、アマルフィ海岸沿いの静かな田舎町に辿り着く。よそ者にも関わらず身内のように看病し、親しみをもって「ロベルト」と呼んで接してくれる街の人々。昼の顔、夜の顔を使い分け、長い時間をたった一人、誰にも頼らず生きてきたマッコールにとって、それはまさに癒しと救いだった――。
大ヒット上映中

アーティストプロフィール

川上洋平(Yoohei Kawakami)
ロックバンド[Alexandros]のボーカル・ギター担当。ほぼすべての楽曲の作詞・作曲を手がける。毎年映画を約130本以上鑑賞している。「My Blueberry Morning」や「Sleepless in Brooklyn」と、曲タイトル等に映画愛がちりばめられているのはファンの間では有名な話。

ツアー情報

[Alexandros]『NEW MEANING TOUR 2023』
11/15(水)、16(木) Zepp Osaka Bayside
11/29(水)、30(木) Zepp Nagoya
12/08(金)、09(土) Zepp DiverCity (TOKYO)
代 ¥8,800- (D代別)
 
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