「さあ、始めよう。私の人生を奪った“演劇”に復讐を」~少年社中 25周年記念ファイナル 第42回公演『テンペスト』ゲネプロレポート

レポート
舞台
2024.1.7
少年社中 25周年記念ファイナル 第42回公演『テンペスト』舞台写真

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2024年1月6日(土)、東京・サンシャイン劇場にて、少年社中 25周年記念ファイナル 第42回公演『テンペスト』が開幕! “周年公演”シリーズ第3弾にして締めくくりとなる本作、その初日公演に先駆け行われたゲネプロの模様をレポートしよう。

サンシャイン劇場にてシェイクスピアの『テンペスト』を上演することになった人気劇団「虎煌遊戯」。だがまさに開演を迎えようというその時、客席にかつて劇団を追われた男が現れる。彼は叫ぶ。「さあ、始めよう。私の人生を奪った“演劇”に復讐を」——。

少年社中 25周年記念ファイナル 第42回公演『テンペスト』舞台写真

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看板役者の死、演出家の交代劇など幾多の危機を乗り越えながら25周年を迎えた劇団に降りかかった最大のピンチを、『テンペスト』の本番公演との同時進行という形で描いていく本作。舞台上で、舞台袖で、控室で……と、劇場のさまざまな場所でリアルタイムにドラマが切り取られ、役者たちは舞台上での顔とバックステージでの素顔をクルクルと切り替えながら、ハイテンポで物語を進めていく。

少年社中 25周年記念ファイナル 第42回公演『テンペスト』舞台写真

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復讐を胸に舞い戻ってきたギンを演じるのは少年社中の井俣太良。熱く濃いその演劇愛ゆえに“パワハラ演出家”などとも揶揄される頑固者としての存在感は確か。客演陣も豪華だ。『テンペスト』を戯曲外へと誘っていく“天才役者”ランを演じるのは鈴木拡樹。ギンと出会い芝居を学び「虎煌遊戯」の風雲児となる爆発力が、常に場を活気付けていく。傾きそうだった劇団を守るために研鑽を積みいまや中心的存在となったカグラを演じるのは矢崎広。責任感ゆえにがんじがらめになっていく苦悩を、真っ直ぐ伝えてくれる。そんなカグラの側に常に居てくれるのは“永遠のライバル”シュン。演じる鈴木勝吾は、仲間を思う洞察力と、澄んだ演劇愛に溢れていた。次世代の代表・ヒナタを演じる本田礼生の愛すべき弟キャラも欠かせないアクセント。萩谷慧悟のゲキは、「虎煌遊戯」にとっての青春の幻影とも言える“別次元”のオーラを纏っていた。

少年社中 25周年記念ファイナル 第42回公演『テンペスト』舞台写真

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当たり前と言えば当たり前だが、井俣を筆頭とする少年社中メンバーがきっちりと地盤を固めているだけあり、カンパニー全体が「虎煌遊戯」として一枚岩のうねりを持っているのは本作の最大の強み。役者がいつにも増して生き生きとして見えたのも、そうした信頼感ゆえの自由さや、メタ要素と役柄と本人が共鳴して生まれるここにしかあり得ないパワーの賜物なのだろう。

少年社中 25周年記念ファイナル 第42回公演『テンペスト』舞台写真

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現実での人間模様と『テンペスト』の人物相関がリンクする“復讐劇”の構成は、リアルとフィクションとの境界が曖昧になっていくほどに物語の解像度が上がっていくというアンビバレントな心地よさを生み出し、後半に向けてじわじわと浸食してくるファンタジー要素へのグラデーションも美しい。俳優たちの身体能力を活かしたダンスやアクションも楽しく、また、実際に少年社中の歴史を追いかけてきた演劇ファンには嬉しいサプライズも散りばめられているのも周年公演らしいサービスポイント。

少年社中 25周年記念ファイナル 第42回公演『テンペスト』舞台写真

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また、劇団を続けていく難しさや楽しさ、演劇を追い求める者の胸中を吐露するセリフの数々は、作品世界を飛び越えた“現場で生きるものたちの本心の吐露”としてもこちらの胸に刺さってくるようで……。全体を通じて演出の毛利亘宏の“攻め”の作家性が発揮され、筆致の勢いに「この先も演劇を生きるのだ」という決意が強く感じられるピリッとした空気も見逃せない。

少年社中 25周年記念ファイナル 第42回公演『テンペスト』舞台写真

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「演劇でみんなを幸せにする」「楽しいから芝居をする」。演劇を志した若者の初期衝動、思いの原点——シンプルだからこそ大事なこと、忘れたくないこと、好きなものへの愛情は普遍なはず。それが突然、いや、実はじわじわと揺らいでいた時にやってきた“大嵐”、これはもはや絶好の転機だ。ピンチに向き合い、それぞれのスタート地点に想いを馳せながら道程を振り返り、改めて過去と未来とに思いを馳せる。そして……復讐劇の果てに辿り着いた場所はひとつのピリオドであり、紛れもない新たなスタートラインなんだと、舞台上の彼らは気づいていくのだった。

少年社中 25周年記念ファイナル 第42回公演『テンペスト』舞台写真

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帰路、毛利が「今の全てを注ぎんこんで作る」と語っていた本作を反芻するほどに、楽しさと同じくらい「覚悟」の2文字が湧き上がってきた。芝居をする覚悟、そして我々観客が芝居を観る覚悟。少年社中の『テンペスト』に込められた、立場を超えて感じざるを得ない演劇に対する“当事者”感と愛情。これはぜひ今、共に分かち合いたい体験だと思った。

取材・文=横澤由香

公演情報

少年社中 25周年記念ファイナル
第42回公演『テンペスト』
 
日程・会場:
<東京公演>2024年1月6日(土)~21日(日) サンシャイン劇場
<大阪公演>2024年1月25日(木)~28日(日)梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ
 
原作:ウィリアム・シェイクスピア
脚色・演出:毛利亘宏
出演:井俣太良 大竹えり 田辺幸太郎 長谷川太郎 杉山未央 山川ありそ 内山智絵 川本裕之
鈴木拡樹 本田礼生 萩谷慧悟(7ORDER) なだぎ武 山﨑雅志(劇団ホチキス) 鈴木勝吾 矢崎広
 
 
【日替わり出演者】
東京会場
1月6日(土) 17:30 松本寛也
1月7日(日) 13:00/17:30 多和田任益
1月8日(月祝) 13:00 森大
1月9日(火) 14:00 椎名鯛造
1月10日(水) 14:00 中村龍介
1月12日(金) 19:00 伊藤昌弘
1月13日(土) 13:00/17:30 橋本祥平
1月14日(日) 13:00 唐橋充
1月15日(月) 19:00 松田岳
1月16日(火) 14:00/19:00 松田凌
1月17日(水) 14:00 輝馬
1月19日(金) 19:00 橋本真一
1月20日(土) 13:00/17:30 小野健斗
1月21日(日) 12:00/16:30 高崎翔太
 
大阪会場
1月25日(木) 19:00 谷口賢志
1月26日(金) 19:00 納谷健
1月27日(土) 13:00/17:30 安西慎太郎
1月28日(日) 12:00/16:30 宮崎秋人

 
:<全席指定> ※未就学児入場不可
一般:9,500円(税込)
U-19:2,000円(税込 19歳以下枚数限定)
社中ありがと割:8,500円(税込)
 
 
企画・製作:シャチュウワークス
 
■公演特設HP  http://www.shachu.com/tempest/
■少年社中公式HP http://www.shachu.com/
■少年社中公式X(旧Twitter) @shonen_shachu
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