古田新太、脚本の倉持裕を「殺してやろうかと(笑)」いのうえ歌舞伎《黒》BLACK『乱鶯』製作発表

レポート
舞台
2016.1.15
いのうえ歌舞伎《黒》BLACK「乱鶯」

いのうえ歌舞伎《黒》BLACK「乱鶯」

2016年劇団☆新感線春興行「いのうえ歌舞伎《黒》BLACK『乱鶯』(みだれうぐいす)」の製作発表が、1月13日(水)都内にて行われ、演出のいのうえひでのり、脚本の倉持裕、主演の古田新太、稲森いずみ、大東駿介、清水くるみ、橋本じゅん、高田聖子、粟根まことが出席した。

新橋演舞場では6年半ぶりとなるいのうえ歌舞伎。今回は劇団☆新感線初の「本格派時代劇」となる。本作の脚本を手掛ける「ペンギンプルペイルパイルズ」の主宰・倉持は、TVドラマ『弱くても勝てます~青志先生とへっぽこ高校球児の野望~』(2014年)『信長のシェフ』(2013年)などを手がけている実力派。新感線と組むのはこれが初となる。

江戸時代に生きる市井の人々の姿をリアルに描き出す本作について、いのうえは「以前は時代劇らしい商業演劇があった。TV含めて今はそういうジャンルの作品がない。かつて新橋演舞場で観た田村正和さんの舞台『乾いて候』とかが大好きで、僕らなりの商業演劇を目指したいという思いがある」と意気込みを語る。そしてタイトルにある“BLACK”については「いつもよりは若干大人っぽい、少しビターな味わいのあるようないのうえ歌舞伎を作ろうと思っている。いつもの新感線は少年漫画的なきらいがあるが、もう少し上の世代、少しリアルな形の時代劇をやっていきたいと思う」と解説。「なんちゃって時代劇、戦うか説明しているかな芝居ばかりやっていたが、今回は市民の、市井の人の生活を描き出したい」と改めて本作の目指すところを口にした。

いのうえひでのり いのうえ歌舞伎《黒》BLACK「乱鶯」

いのうえひでのり いのうえ歌舞伎《黒》BLACK「乱鶯」

倉持に脚本を依頼した理由としては「せりふが上手。新感線と違ってもっと演劇っぽい。4、5年前に『鎌塚氏』シリーズの芝居を観せていただいたときに、すごくエンターテイメントでこういうテイストなら新感線にも合うかなと思った」とコメント。

続いて倉持は「2年くらい前にこの話をいただいた。倉持がいのうえ歌舞伎をやる、という点について、全然世界観が違うじゃないか、ということを言われたりもしたが、僕自身は「やっときてくれた。待ってました」という気持ち。僕もエンターテイメントに興味があり、すごく嬉しかった。嬉しすぎてはしゃいだんですかね、台本に力を入れすぎて今日も開口一番、古田さんに「出番が多すぎるよ!」と言われました(笑)」と笑いながら気持ちを言葉にした。

倉持裕 いのうえ歌舞伎《黒》BLACK「乱鶯」

倉持裕 いのうえ歌舞伎《黒》BLACK「乱鶯」

ちなみに「乱鶯」というタイトルだが、これについて倉持は「鶯は春に鳴くものなんですが、夏になってもまだ鳴いている鶯を「老鶯」またの名を「乱鶯」と呼ぶと知りまして。古田さんが演じる元・盗賊、鶯の十三郎が、旬が過ぎた、いったん引退したのに重い腰を上げて動き出すことを意図した」と語った。

その十三郎を演じる古田は「倉持君のせいで、ものすごくせりふが多いです。言っておきますが、私はせりふ覚えが悪いです。今回立ち廻りがほとんどないと聞いていたのに、オープニングから大立ち廻りがありまして、本当に殺してやろうかと(笑)。とりあえず、(稲森)いずみちゃんに迷惑を掛けないようにセリフは覚えていこうと思います。あと、“旬が過ぎた人間”という非常にありがたい役をいただきまして、その辺は大丈夫だと思います(笑)」と笑いを誘った。

古田新太 いのうえ歌舞伎《黒》BLACK「乱鶯」

古田新太 いのうえ歌舞伎《黒》BLACK「乱鶯」

古田が倉持に抱く印象としては、「いちばん好きなのは「酒とつまみ」池谷のぶえさんと村岡希美ちゃんのユニット。倉持さんは非常にクレバーな人。今回の台本も読んだが、セリフのやり取りとかリズム感が上手だなと。心地よくて素敵」とのこと。

居酒屋のおかみ・お加代を演じる稲森は『蛮幽鬼』以来、7年ぶりの新感線出演となる。「お話をいただいたときは、一瞬で新人のような気持ちに戻りました。古田さんは、最初はちょっとだけ怖いかなと思ったのですが、本当にあたたかくてすてきな方だと思いました。(ほのかな恋愛があるということで)楽しみにしています」と久しぶりの出演を嬉しそうに語っていた。

稲森いずみ いのうえ歌舞伎《黒》BLACK「乱鶯」

稲森いずみ いのうえ歌舞伎《黒》BLACK「乱鶯」

稲森いずみ、古田新太 いのうえ歌舞伎《黒》BLACK「乱鶯」

稲森いずみ、古田新太 いのうえ歌舞伎《黒》BLACK「乱鶯」

大東は『港町純情オセロ」で新感線に初参加して以来5年ぶり。「十三郎の恩師の息子、ということで古田さんと行動を共にすることが多いんですが、さっそくラフな服装のお二人(=古田・橋本)に「おまえ、その恰好何イキっとんねん?」「おまえ、その髪型なんやねん、風も吹いてないのになに風になびいてんねん」などと洗礼をいただきまして(笑)(会見場所が)こんないいホテルで…僕の服装が正しいはずなんですが!」と先輩たちからのツッコミにおかしいと不満を漏らした。

大東駿介 いのうえ歌舞伎《黒》BLACK「乱鶯」

大東駿介 いのうえ歌舞伎《黒》BLACK「乱鶯」

 

ミュージカル『ロミオ&ジュリエット』で初舞台を踏み、本作が2作目となる清水は、緊張を隠し切れず「なんで自分がここにいるんだろうとまだ不思議です。カメラの数も多いし、事務所の偉い方も来ていて…本当にすごい舞台なんだなと」と正直すぎる気持ちを口にすると、たまらず会場内の“大人たち”から笑い声がわきおこった。

清水くるみ いのうえ歌舞伎《黒》BLACK「乱鶯」

清水くるみ いのうえ歌舞伎《黒》BLACK「乱鶯」

橋本は「いつもの新感線だと主役の人は足袋に雪駄、それ以外はなぜかスニーカーを履いているんですが、今度はそうでないらしい。いのうえさんは本当にちょっぴり時代劇に挑戦するんだな」と劇団の古株ならではの気づきを語ったが、「大東くん以外はすごく優しく導いていこうと思います」とイジリを入れる。すかさず大東が「ちょっと!?」とリアクションすると「そんな服着てるから!」と先の話題を使ってツッコミ返し、大東を困らせていた。

橋本じゅん いのうえ歌舞伎《黒》BLACK「乱鶯」

橋本じゅん いのうえ歌舞伎《黒》BLACK「乱鶯」

二人またいで大東にツッコむ橋本先輩。いのうえ歌舞伎《黒》BLACK「乱鶯」

二人またいで大東にツッコむ橋本先輩。いのうえ歌舞伎《黒》BLACK「乱鶯」

ちなみに、「いのうえ歌舞伎」で古田と橋本の共演は『吉原御免状』以来。これについて古田が「橋本さんとの絡みのシーンでは下ネタを入れようと思っている」と嬉しそうに語ると笑いを抑えきれない橋本だった。

古田新太、橋本じゅん いのうえ歌舞伎《黒》BLACK「乱鶯」

古田新太、橋本じゅん いのうえ歌舞伎《黒》BLACK「乱鶯」

高田は、「呉服屋の女将をやらせていただくということでお着物を着せていただき、いい気分でございます」と艶然。「去年(『五右衛門vs轟天』)との差もあって(BLACKの)苦味が際立ったらいい」と微笑んでいた。

高田聖子 いのうえ歌舞伎《黒》BLACK「乱鶯」

高田聖子 いのうえ歌舞伎《黒》BLACK「乱鶯」

そして粟根。「居酒屋の店主で、稲森さんと夫婦ということで光栄でこれが唯一の楽しみです。いのうえ歌舞伎で江戸中期を扱うことがなかったし、江戸弁で話す人ばかりでこれは新感線で初めての試みだと思います。BLACKということで全く笑いがないかと思いきやそこそこ笑いもある。しかも新感線だと押しつけがましい笑いが多いんですが、倉持さんの独特なひょうひょうとしたおもしろさが出てくる。台本上は下ネタはないので。出てきたら(古田が)足したんだな、と思っていただければ。十三郎とお加代にほのかなロマンスがあるということなので、いまからすごく気になっています」とトレードマークのメガネをきらめかせた。

粟根まこと いのうえ歌舞伎《黒》BLACK「乱鶯」

粟根まこと いのうえ歌舞伎《黒》BLACK「乱鶯」

いのうえ歌舞伎の新たな挑戦が、2016年3月、始まる。

公演情報
2016年劇団☆新感線春興行「いのうえ歌舞伎《黒》BLACK『乱鶯』(みだれうぐいす)」

■日時・会場:
東京公演:2016年3月5日(土)~4月1日(金) 新橋演舞場
大阪公演:2016年4月13日(水)~30日(土) 梅田芸術劇場 メインホール
北九州公演:2016年5月8日(日)~16日(月) 北九州芸術劇場 大ホール

■作:倉持裕
■演出:いのうえひでのり
■出演:古田新太/稲森いずみ、大東駿介、清水くるみ/橋本じゅん、高田聖子、粟根まこと/山本享、大谷亮介 ほか
■公式サイト:http://www.midareuguisu.com/
 
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