Offo tokyo、見た目は謎だが明快にポップでスタイリッシュ 一筋縄ではいかないニューカマー自信のメジャー1stに迫る
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Offo tokyo
ボーカル、ギター、キーボードに猫一匹。見た目は謎だが、音楽は明快にポップでスタイリッシュな4人組。お洒落でスマートなシティポップ・リバイバルの流れを汲みつつ、ひねりの効いたアレンジ、きわどい比喩を放り込んだ歌詞など、一筋縄ではいかない音楽性が魅力のニューカマー。メジャーデビュー曲「Your Song」も、爽やかな曲調が理屈抜きで心地よく、その中に巧妙に仕掛けたフックに気づけばさらに楽しめる、メンバーのこだわりを詰め込んだ自信作だ。なぜかメンバーの中で最も多忙らしい猫=NEMO(DJ)の留守中に、Hiira(Vo)、Seiya Ozaki(Key)、Shota Kaya(G&Sax)に、バンドの成り立ちとその音楽性について聞いてみよう。
――そもそもグループの成り立ちは、様々なジャンルのクリエイター集団から始まったと聞いてます。
Shota Kaya:元々は「Offo」という名前で、僕ともう一人の二人組だったんですけど。音楽を始めるとライブもやらなきゃいけなくて、サポートメンバーに助けてもらう中で、多い時は10人くらいになって、ちっちゃいライブハウスだとステージの上がパンパンで(笑)。それをばっさりカットして、「tokyo」をつけて始めたのがきっかけです。元々のコンセプトは、日常のふとした時に聴きたくなるような音楽で、「ご自由にうちらの音楽を使ってください」という感じでした。
――日常のサウンドトラックと言いますか。
Shota:そうですね。
Seiya Ozaki:よく言ってたもんね。「ちょっとOffoでもかけるか」みたいなノリで、ホームパーティーとか、車の中で聴いてもらいたいなって。「Offoかけとけば心地いいから」って。
Shota:自分たちにもそういうサントラ的な音楽があるので、人にとってのそういう存在になったらいいなと思います。
――そのニュアンスってかなり繊細なところですよね。音楽が主張しすぎるとサントラにならないし、バランスが難しいような。
Shota:難しいです。絶妙なバランスを狙うので、曲を作るたびに毎回死にたくなる(笑)。わかりやすいジャンルだったら作りやすいですけど、いろんなハイブリッドで、かつ誰にでも馴染みやすいところを狙うとなると難しいです。
Shota
――グループの成り立ちで言うと、次に登場するのは誰ですか。
Seiya:僕です。Shotaとは松任谷正隆さんの音楽学校で出会って、でも最初は友達でもなんでもなくて。
Shota:感じ悪かったですね。
Seiya:お互いやろ(笑)。僕が先にいたんですけど、なんか嫌な奴だなと思ってました。
Shota:当時は別のキーボーディストがいたんですよ。その時はもうSeiyaと知り合ってたんですけど、Seiyaはお酒が入ると同じ話を何回も何回もするんですよ。飲み会のたびにそれは嫌だなと思って、ほかの人を選んでたんですけど、その子が抜けることになって、「ちょっとやらせてみるか」と。誘った時点でも全然仲良くなかったんですけど。
Seiya:ライブが終わった後とか、会話しなかったもんね。別々の場所で飲んでる。
Shota:だからOffoがなければたぶん…。
Seiya:もう切れてた縁だね。
Shota:でもキーボーディストとしての腕は確かなので。飲みの席で同じ話を繰り返すのにはちょっと目をつぶって。
――その癖は今も変わってない(笑)。
Shota:全然変わんない。飲みの席どころか、最近は楽屋でもずっと一人でしゃべってますから、ちょっと静かにしてくれって思う時もありますよ。車移動とか。
Seiya:だからこの前、耳栓をプレゼントしたじゃん。
――いいコンビじゃないですか。
Seiya:元々、好きな音楽がかぶっていて、ジャンルとか、70’sとか80’sとか、洋楽も邦楽も含めて。当時は同じ作曲クラス、シンガーソングライターコースにいたんですけど、どういう音を作る子なんだろう?っていうライバル心があって、それで感じが悪かったというか、あんまり関わりたくなかったんですよね。たぶん同じようなことをやりたいんだろうと思ってたから。
Shota:俺は普通に嬉しかったけどね。「同じような音楽の趣味の人がいるんだな」って。それがSeiyaにとっては嫌だったみたい。
Seiya:同族嫌悪みたいな。でも一緒に音を作る上で、会話はしやすいです。「あれやりたい、これやりたい」というのがすぐわかるから。
――プロフィールに書いてある、影響を受けたアーティストも、けっこうかぶってますもんね。ビートルズとか、ユーミンとか。
Shota:松任谷さんの学校に行くぐらいですから、好みは偏ってますよね。
――シティポップのリバイバルが始まっていた頃ですよね。時代的に。
Seiya:そういうことをやりたいと思ってたんですけど、先にやられちゃったなって感はありました。でも今は、そこがベースになりつつも、Offo tokyoとして新しい音楽をやれてると思います。
――そして、お待たせしました。3人目の男、Hiiraさんが登場。
Shota:元々いたボーカルが抜けることになって、さてどうしよう?という時に、なんか入ってきたんですよ。俺は嫌だったんですけどね。
Hiira:奇跡だと思いません? このバランス。
Seiya:こんな奴とバンドやってるんだから(笑)。
Shota:でも、前のボーカルに比べたらいいかなって。まぁ試しにやってみるかって感じでしたね。
Hiira:それはこっちも同じ(笑)。僕は地元が愛媛なんですけど、インディーズバンドを5、6年やっていって、解散して、ギター一本で上京して。ふらっと寄った下北沢のDUKE CAPOというバーにライブスペースがあって、そこで弾き語りをさせてもらう中でOffoと出会って、サポートで1、2曲歌うところから始まって。僕は一人で弾き語りをやってたんで、「なんか楽しそう」とか思っちゃったんですよね。当時はボーカリストも4人くらいいて、映像をやってる人や、ダンスをやってる人や、色々集まってるグループだったので、ソロもやりながらこっちで新しい表現ができたらいいなみたいな感じで入って行ったら、あれよあれという感じで、ボーカルが僕だけになって今に至る。
――成り立ちがすでに面白い。こういう未来は予想してましたか。
Shota:してないです。仲良くなかった2人が残るとは思ってませんでした。
Hiira:今日で大きな溝ができたな(笑)。でも普段からこんなことばっかり言ってるから。
Shota:仲良しでバンドやろうぜと言って集まったわけじゃないので。だからこそバンドはバンドとしてちゃんと存続させようよっていう感覚は、3人ともあるのかもしれない。
Hiira:確かに。仲良しこよしでやってたら、たぶん続いてない。
Seiya
――Offo tokyoとして活動を始めたのが、2021年の夏。まさにコロナ禍ですよね。
Seiya:コロナ真っ盛りの時にこの3人になったので、最初の課題はライブでした。唯一集まれるのがライブのリハだったので、そこで「次はこうしよう」って、必然的にディスカッションする機会が増えて、ここまで結束力を上げてきたというイメージがあります。1年後、2年後のビジョンというよりは、目の前のことをこなしながら進んで行く感覚でした。
Shota:見通しが立たなかったので、目の前のことで必死でした。ライブができない時期は、ずっと制作をしてました。
――曲作りは、Shotaさんがメインですか。
Shota:そうです。一応打ち合わせはして、実際に作業するのは自分一人です。
――歌詞もShotaさん?
Shota:基本は僕です。
Hiira:僕も何曲か書いてます。リリースされた中だと「COCO TOKYO」「Dreamland」「Modern Romance」「Day Drip」とか。
Shota:意外と書いてたね。
Hiira:半々ぐらいになったね。EPの中でも何曲か書いてます。
――日常のサウンドトラックという言い方をしましたけど、歌詞もそんな感じがしますね。都会の風景、月金で働く人の生活や恋愛、週末の開放感を待つ気持ちとか。
Hiira:前のバンドでも歌詞を書いていたんですけど、このバンドになってからは、その時々の自分のリアルを、なるべく普遍的に落とし込む感じにはしてます。その裏側に実はこういう思いがあって、みたいなものもあったりします。
――たとえば?
Hiira:「COCO TOKYO」という曲は、上京してからの、僕の内にある熱い思いを出してますね。逆に、同じEPに入ってる「iiima」という曲は、「COCO TOKYO」で書いたような、都会のペースに合わせて走ることに疲れた時期があって、僕は愛媛の瀬戸内沿いでゆったり育っている人間なので、「ちょっと無理してたな」みたいなところを、地元を思い浮かべながら書いたりとか。曲によって様々ではあります。
Shota:僕ら3人とも、地方出身者なんですよ。地方都市の少年が思い描く東京って、特別な響きがあるというか、東京っていう言葉自体に夢があるから。その見え方は忘れないようにしたいなと思っていて、地方出身だからこその見え方の、東京を書きたいなとは思ってます。
――東京で、月金で働いてる人には、リアルに響くだろうなっていう歌詞が多いんですよね。「Weekend」とか。
Shota:僕も一瞬サラリーマンだったことがあるので、「わかるよその気持ち」っていうのはあるかもしれない。でも別に、そこを特別意識してるとかはないです。みんなそれぞれ忙しいし、大変だから、悩むこととか安らぐポイントとか、わりと同じようなところなんだろうなと思うので。たとえば綺麗な花を見たらほっこりするし、明日は朝早いけど、もうちょっと飲みたいなとか思うし、そういう日常のちょっとしたツボを突いていきたいなと思います。
Nemo
――ではメジャーデビュー曲「Your Song」の話に行きましょう。TVドラマ『マイ・ワンナイト・ルール』のエンディングテーマに抜擢されたこの曲。いつ、どんなふうに作った曲ですか。
Shota:「Your Song」は、実はOffo tokyoが始まって最初に作った曲です。バラードみたいな曲と軽めのアップテンポな曲と、「Beautiful Life」と「Your Song」を2曲平行で作ってました。
――なんと。メジャーデビューだし、でっかいタイアップもついてるし、気合い入れて書き下ろしましたね、とか思ったら、実は最初に作った曲だったとは。
Shota:Offo tokyoの音楽を表現する時に、シティポップというのは一つの大きいキーワードなんですけど、その方向性をわかりやすく打ち出した曲です。最初に作った曲なので、「かましてやろう」と気合いを入れて作ってましたね。
――それを今まで寝かせていたと。
Shota:寝かせるつもりはなかったんですけど、寝てましたね(笑)。で、気づいたらタイアップ曲になっていた。でも話を聞いた時に、ドラマにぴったりだなと思いました。Offoの歌詞は恋愛ものが多くて、それも一筋縄の恋愛じゃなくて、ちょっとこじれてたり、大っぴらに言えないようなフェチ的なこととかも、「爽やかに歌えば許されるでしょ」っていうノリで書いてるので。リビドー(本能、強い欲望)由来の歌詞が多いので、このドラマと通ずるものが本当にあるなと思っていて。「作っといてよかった」と思いました。
Seiya:待ってたかのようだよね。曲が。
――歌詞も変えていない?
Shota:変えてないです。しかも、他の曲はああだこうだ微調整しながら作るんですけど、これはメロディと歌詞がほぼ同時に浮かんできて、それをブラッシュアップしたような作り方をしたので。そういう意味でも、初期衝動がそのまま生かされている、リビドーの賜物です。
――確かに、よく読むとヤバイですよね。この歌詞。君の嫌がることばかり気合が入る、とか。
Shota:でも曲が爽やかだから気づかない(笑)。そういう楽しみ方をしているかもしれない。
Hiira:ド変態です。
Shota:みんな、わかんないで「いい曲だな」って聴いてるんだろうなって。こういう歌詞を、演歌とかにしちゃったら、情念がこもるじゃないですか。そうじゃなくて、素敵なこと歌ってますよ風に、変なことを言いたいなと。
――それはOffo tokyoの核心に迫るワード。なるほど。
Shota:最近はどこもかしこも、漂白されてますから。社会が。そこにじわじわと、バレないように、抵抗していきたいなと思います。
Hiira:暗に歌詞に込められたことを、僕の歌声でちょっとクリーンにするみたいな、そこの妙なバランス感が、ポップスとして評価される部分なのかな?と。僕の歌にもクセはあるんですけど、「Your Song」に関してはなるべくニュートラルに歌った感じはあります。
――そこも、Offo tokyoの個性ですよね。熱すぎず、スマートでおしゃれ。日本語を覚えたての人が丁寧に歌ってるみたいな、独特の浮遊感があって、言葉の響きがかっこいい。そこがすごく面白いなって、個人的には思います。
Hiira:うまく歌おうとしていないんですよ。やろうとしてもできない、という部分もありますけど。 日本語を覚えたての人という表現は、自分でもしっくりきます。
Seiya:この曲はライブでずっとやってきていて、フラットに歌うことが正解というか、感情がこもると、男の性(さが)みたいなものが出てきちゃうから。ウェットでもなくドライでもない湿度感が、Hiiraのボーカルの特徴で、それが顕著に表れた曲だなって、今話していてあらためて感じました。爽やかな曲なので、中身まであんまりバレたくないです(笑)。
Hiira
――ほかにはあまりいないタイプのグループなので、頑張ってほしいです。ここがメジャーデビューですけど、どんな未来を目指しますか。
Shota:正直、未来は見えていなくて、目の前のことでいっぱいいっぱいなんですけど。リスナー目線で言うと、最近はメジャーかどうかって、あんまり重要じゃないじゃないですか。だけど、今この立場で、現場の肌感覚として一番変わったことは、関係者がめっちゃ増えました。それは本当に支えてくださる人がたくさんいるってことだし、そのぶん期待もされてるからプレッシャーもあるんですけど、Offo tokyoを信じて「頑張れ」と言ってくれてる人たちを悲しませたくないなっていうのが、今の一番の思いです。だから目の前のことを頑張って、何でもやりますっていう感じですけど。どうですか?
Seiya:メジャーでというよりかは、いつも思うこととして、我々がやってることはポップスで、普遍的なものを目指しているけど、その中身は実はもっとディープなもので、見方によっては人生の讃歌みたいなものが多いんですね。誰かの人生を応援する曲たちが実は多くて、それが届く機会が増えるのがメジャーなのかな?と思ってます。そういう機会をいただけたことがすごく嬉しいです。
Hiira:僕は個人的に目指したい場所があって、紅白歌合戦に出たいです。Shotaが言ったように、僕たちに関わってくれている人たちに、「応援しててよかったな」と思ってもらうためにも、華やかなステージに立ちたい気持ちはずっとあるんですけど、大きい場所に行けば行くほど、僕はパフォーマンスが上がっていくのがもうわかっているので。売れるって何だろう?って考えた時に、 武道館とかも指標としてあるんですけど、この間の正月に久々に実家で紅白を見た時に、やっぱり地元の両親や友達がわかりやすいものってこれだよなと思ったので。そういう目標ができあがりました。
Shota:ちなみに、なんですけどね。「俺、紅白出るまで酒やめる」って言ったんですよ。その1か月後ぐらいにもう飲んでました(笑)。
Hiira:寅さん(渥美清)が神社に行って、タバコやめるから売れたいですって願掛けして、売れたっていうエピソードがあるじゃないですか。あれをやろうと思ったんですけど、まだ神社に行ってないからいいかって(笑)。そういうゆるさも持って、人間らしくやっていこうかなと思います。
――いい感じでまとまった(笑)。期待してます。メジャー活動の最初の一歩はこの「Your Song」と、3月の名古屋、大阪、東京でのお披露目ライブですね。お客さんへ、メッセージをもらえますか。
Shota:たぶん僕らのライブに来たことない人が大勢だと思うんですけど。配信している音源には絶対自信がありますし、それをライブで体感したらこんななんだ、という驚きが必ずあると思うので、ぜひみなさんでお越しください。よろしくお願いします。
Hiira:特に東京の、下北沢ADRIFTは好きな会場で、天井が高いから歌ってて気持ちいいんですよ。フラットな空間で、内装の雰囲気もいいし、僕らに合ってると思うから、今後ホームにしていきたいなと思ってます。ぜひ来てほしいです。
取材・文=宮本英夫
Your Song
リリース情報
ツアー情報
3月1日(土)名古屋ell size
3月2日(日)心斎橋LIVE SPACE CONPASS
3月16日(日)下北沢ADRIFT
¥4500(D代別)