神尾真由子(ヴァイオリン)~本場の名奏者たちと弾く、注目のバッハ演奏

神尾真由子

神尾真由子

本場の名奏者たちと弾く、注目のバッハ演奏


 チャイコフスキー国際コンクール優勝から8年を経て、持ち前の強靭なテクニックや濃厚な表現に深みを加えている人気ヴァイオリニスト、神尾真由子。昨年3月の出産からほどなく復帰し、秋にはベルリン・ドイツ響やラハティ響の来日公演で一段とスケールを増した協奏曲を聴かせている。そんな彼女が今年2月、ベルリン・バロック・ゾリステンの日本公演でソリストを務める。1995年ライナー・クスマウルとベルリン・フィルの首席奏者たちによって創設されたこのアンサンブルは、現在もメンバーの大半が同楽団の現役奏者だ。
「ベルリンでは一番新しいCD(アンコール集)の録音を行っていますが、ベルリン・フィルのメンバーとの接点はなく、完全に未知の世界です。共演はとても刺激的ですし、どうなるのか楽しみですね」

 演目はJ.S.バッハの「2つのヴァイオリンのための協奏曲」と「ヴァイオリンとオーボエのための協奏曲」。前者は元ウィーン・フィルのコンサートマスター、ダニエル・ゲーデ、後者はベルリン・フィルの首席オーボエ奏者ジョナサン・ケリーとパートナーも超一流だけに注目度は高い。
「共に初めての共演ですので、インスピレーションをいただけたらいいなと思っています。ただ複数楽器の協奏曲自体は、これまでバッハの2台の協奏曲のほか、ブラームスの二重協奏曲、ベートーヴェンの三重協奏曲、ヴィヴァルディの4台の協奏曲などを演奏しています。ソロ協奏曲との大きな違いは、相手がいるので自分勝手な音量や音色は出せないと同時に、室内楽のように溶け込み切ってもいけないこと。ある程度は譲りながら揃えることもありますし、ソリストとしての個性から大きく離れないようにもします。また私は、ソロ協奏曲の時と違って、タイミングなどを書き込んだ譜面を見ながら弾きます」

 バロック協奏曲の演奏経験は、単体では「ヴィヴァルディの『四季』が最も多い」とのことだが、バッハもかなり弾いてきた。
「協奏曲第1番・第2番も含めて20回くらい弾いています。中でも一番多いのがこの『2つのヴァイオリンのための協奏曲』。幼稚園の頃から10回近く演奏していますので、バッハの中で最も長く親しんでいる作品といえるでしょう。私は特に第2楽章が大好きで、弾くのがいつも楽しみ。それに第1楽章と第3楽章はほぼ二人対等ですが、第2楽章はセカンド奏者が少し低めで中音寄りなので、私はそちらを弾くのが好みです」

 「ヴァイオリンとオーボエのための協奏曲」は今回が初挑戦となる。
「特に第1楽章の出だしがいいですよね。オーボエはオーケストラの中でもスターで、他の楽器にはない独特の魅力がありますが、この曲はその良さが出ている作品。またオーボエのまろやかな感じはヴァイオリンでは出せないですし、そうした音色が全く違う楽器の二重協奏曲という点も妙味です。ただ今回は素晴らしい奏者との共演ですから、私は身を委ねたいと思っています」

 バッハ自体は「とても好きな作曲家」だという。
「協奏曲だけでなく、『無伴奏ソナタ&パルティータ』は、絶対に演奏しなければいけないレパートリーなので、もちろん勉強はしましたし、コンクールでも弾きました。特にフーガが好きなのですが、実はリサイタルであまり取り上げたことがないのです。やはり特別な作品ですから、ホールやプログラミングなど、それに相応しい態勢で臨むべきだと考えています」

 いまバロック団体とのバッハとなればピリオド奏法が浮上するが、そのあたりはどうだろうか?
「私はピリオド奏法には懐疑的ですね。方法自体を否定するのではなく、専ら、モダン楽器で演奏する私のような奏者が“つまみ食い”のように立ち入る領域ではないかなと。確かに現在の主流はオリジナル尊重ですが、古楽専門の方や少なくとも3〜4年勉強した方ならともかく、付け焼き刃的に演奏するのはすごく失礼だと思います」

 何れにせよ、今回は彼女が日本のステージでバロック音楽を弾く珍しい機会。しかも本場の奏者とのダブル・コンチェルトだからより貴重だ。新境地も期待できるその演奏にぜひ触れてみたい。

取材・文:柴田克彦 写真:藤本史昭
(ぶらあぼ + Danza inside 2016年2月号から)
 


ベルリン・バロック・ゾリステン with 神尾真由子 & ジョナサン・ケリー

2/5(金)19:00 ザ・シンフォニーホール 
2/6(土)18:00 サントリーホール 
問:アスペン03-5467-0081 
http://www.aspen.jp

2/7(日)14:00 福島市音楽堂 
問:福島市音楽堂024-531-6221 
http://www.f-shinkoukousha.or.jp/ongakudou

2/10(水)19:00 札幌コンサートホールKitara※ 
問:Kitaraチケットセンター011-520-1234
http://www.kitara-sapporo.or.jp
※神尾の出演はなし

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