スペインの魂と響き合う――ピアニスト、マルティン・ガルシア・ガルシアが語るADDA交響楽団

インタビュー
クラシック
14:52
Martín García García (C) Ayane Shindo

Martín García García (C) Ayane Shindo

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今秋11月、ショパン国際ピアノコンクール第3位のマルティン・ガルシア・ガルシア(以下ガルシア)が、故郷スペインのADDA交響楽団(以下ADDA)と、東京・大阪でショパンの「ピアノ協奏曲第2番」を演奏する。

ADDAは、成長著しく注目されている若きオーケストラ。ガルシアに、共演への抱負とスペインのオーケストラ事情を尋ねた。

「過去約10年の間に、スペインの主要オーケストラでは大規模なメンバーの刷新が相次ぎ、世代交代が進んでいます。ときにはメンバーの半分以上が、新しい音楽家に入れ替わっていますね」とガルシア。

  初来日するADDAは、2018年に指揮者のジョセップ・ビセントが創立した。メンバーは潜在能力の大きさやチャレンジ精神を感じる有望な若手が中心。交響曲やオペラといったクラシック作品はもとより、ジャズ、ポップス、タンゴなどもレパートリーに取り入れ、味わい深い演奏をする。世界的な指揮者や演奏家との共演も多い。楽団拠点はスペイン東南の地中海沿いの街・アリカンテにあるコンサートホール、ADDAオーディトリアムだ。

スペインADDA交響楽団

スペインADDA交響楽団

ジョセップ・ヴィセント

ジョセップ・ヴィセント

「メンバーはほとんど若い音楽家で、一緒に素晴らしい音楽を創り上げようという意志を持っています。各自いろいろと研鑽を積んでいて経験豊富ですよ。首席指揮者のビセントさんは、音楽に対して常に一貫した規律、敬意、そして情熱を持って臨んでいて、録音物も非常に多岐にわたっています。彼とは、スロバキアの首都・ブラチスラヴァで初共演しましたが、その印象は初対面で確固たるものとなりました!」

演奏曲は、ファリャの名曲「スペインの庭の夜」だった。

「この時、僕たちは必然的なつながりを感じた。それほど素晴らしい時間を一緒に過ごしたので、以来、再会を心待ちにしていました。日本ツアーの前に、アリカンテのADDAオーディトリアムで再び共演する予定です。ADDAとは初共演となります。優れたオーケストラには優れたホールが不可欠ですが、ADDAオーディトリアムはヨーロッパでとても印象的なホールの一つと言えるでしょう。彼らのその本拠地で会うことは、きっと忘れられない経験になると思います」

  そして11月、日本で共演する。演目はショパンの「ビアノ協奏曲第2番」だ。

「選曲理由は、多くの方がご存じの通り、ショパン・コンクールでの私の演奏といえば、最終選考のときのこの協奏曲の演奏を思い出す人が多いからです。もちろん、ショパンの初期作品の気軽さ、明快な発想、そして華麗なスタイルは、世界中の聴衆とウィンウィンであり、なかでも協奏曲の演奏は最も効果的と言えるでしょう」

Martín García García Beethoven Easter Festival (C) Bruno Fidrych

Martín García García Beethoven Easter Festival (C) Bruno Fidrych

  ガルシアは、ショパンコンクール、翌年の初来日リサイタル公演の成功をきっかけに、日本をとても気に入り、毎年来日している。いろんな文化に積極的に触れて、わずか数年で、相当の「通(つう)」になった。

「オフタイムは僕にとって特別な時間です! 多忙ですが、かなうなら、赤く色づいた紅葉の下を散歩して静寂に浸り、おいしい料理を味わえたら最高。愛媛県から続く瀬戸内海の美しい海岸線も好きだなあ、眺められたらとてもうれしい」

グルメで、去年は「すき焼き」が大好物と言っていた。

「福岡のもつ鍋から網走のホタテまで、日本各地でおいしいものをたくさん食べてきて、もはやどれか一つを選ぶのは不可能になってきた(笑)。すき焼きだけでも、さまざまな種類を試してきて、自宅で作ったこともありますよ。苦手は奈良漬だけど、少しずつ食べられるようになりました。牛の腸を使ったスペインの伝統的なモツ煮「カジョス」のように、最初は戸惑う人もだんだんと慣れて好きになっていきます」

ADDAは、ラヴェル(1875~1937)生誕150年に寄せて「ボレロ」や「亡き王女のためのパヴァーヌ」などを演奏する予定。ラヴェルの母はフランス領バスク出身で、マドリッド暮らしをしていたスペイン通だったと聞く。ラヴェルはパリ育ちだが、母の故郷で生まれていて、バカンスによく訪れていたそうだ。スペインの若いオーケストラが「ボレロ」などの名曲をどのように演奏するのか、興味が持たれる。

ガルシアはやる気満々で「日本に訪れるたびに、クラシック音楽のファンの方々の熱意に、とても不思議な気持ちになります。公演を楽しみにしています!」。

文=原納暢子

公演情報

『スペインADDA交響楽団来日公演』
 
▼2025年11月6日(木)19:00 サントリーホール 
ピアノ:マルティン・ガルシア・ガルシア 
[プログラム]
ラヴェル:亡き王女のためのパヴァーヌ
ショパン:ピアノ協奏曲 第2番 ヘ短調 op.21
ビゼー:カルメン組曲 ラヴェル:ボレロ 
料金 S席15,000円 A席11,000円 B席9,000円 C席6,000円 D席4,000円
 
▼2025年11月8日(土)14:00 ザ・シンフォニーホール
ピアノ:マルティン・ガルシア・ガルシア
ギター:村治佳織
[プログラム]
ラヴェル:亡き王女のためのパヴァーヌ
ショパン:ピアノ協奏曲 第2番 ヘ短調 op.21
ロドリーゴ:アランフェス協奏曲
ラヴェル:ボレロ
料金  S席15,000円 A席12,000円 B席9,000円 C席5,000円
 
【その他ツアースケジュール】
10月29日(水)19:00 福岡 福岡シンフォニーホール 出演:村治佳織
11月1日(土)14:00 山口 周南市文化会館 出演:村治佳織
11月3日(月祝)19:15 川崎 ミューザ川崎シンフォニーホール 出演:村治佳織
11月7日(金)19:00 東京 サントリーホール  出演:村治佳織
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