Wアニバーサリーイヤー真っ最中『神はサイコロを振らないHall Tour 2025“Lovey Dovey City”』国内ツアー千秋楽ーー次のステージは男性/女性限定ライブへ
神はサイコロを振らない 撮影=松本いづみ
『神はサイコロを振らない Hall Tour 2025 “Lovey Dovey City”』2025.9.13(SAT)岡山・岡山芸術創造劇場 ハレノワ 中劇場
神はサイコロを振らない の全国9都市10公演を巡るホールツアー『神はサイコロを振らない Hall Tour 2025 “Lovey Dovey City”』の最終公演が9月13日、岡山・岡山芸術創造劇場 ハレノワ 中劇場で開催された。今年で結成10周年、さらにメジャーデビュー5周年とWアニバーサリーイヤーを迎える彼ら。2月にはバンド初の日本武道館でのワンマンライブを開催。さらに4週連続でシングル曲を配信リリースするなど、精力的な活動を展開している。結成10年の集大成となる日本武道館公演を経て、また一歩先へ。神はサイコロを振らない(以下、神サイ)が魅せた、次なる理想郷の姿とは。ツアー最終公演の模様をお伝えしたい。
神はサイコロを振らない
開演時間を迎え、場内に車のエンジン音が響き渡る。舞台上にはアメリカ・西海岸にあるダイナーを思わせるステージセットが広がり、ネオン管には「Lovey Dovey City」の文字が光る。ツアータイトル、そして4月に配信リリースされたシングル曲と同じ言葉。そして、同作のMVの世界観を感じさせるステージデザインだ。エンジン音が止まり、すぐそばまで足音が聞こえる…。たった数秒、たった1シーンの風景なのに、早くもバンドが描くストーリーに引き込まれてしまう。
神はサイコロを振らない
「待たせたな、岡山! ファイナルのこのツアーで一番ヤバい景色見せてくれ!」、柳田周作(Vo)の叫びから、ツアータイトルでもある1曲目「Lovey Dovey」へ。吉田喜一(Gt)が描く爽やかで甘く、ほんのりとチルな雰囲気漂うメロがステージの雰囲気にもぴったりとハマっている。ツアーの世界観へアジテートされたのが瞬時に感じ、観客は歓喜の声を上げる。「ファイナル、調子はどうだ!」、柳田の呼びかけで「1on1」へ。柳田の甘くハスキーな歌声がより一層弾み、リリックに描かれた高揚感を臨場感たっぷりに再現する黒川亮介(Dr)のビートに乗せ、タオルがご機嫌に回る。
ファンキーなナンバー「揺らめいて候」では、ジェットコースターみたいな緩急が心地よい桐木岳貢(Ba)のリズムに会場が大きく揺れ、グランジテイストを盛り込んだ重厚かつスリリングなバンドサウンドの「修羅の巷」では、気だるげなのに気圧されるような迫を感じる柳田の歌声、その姿に目が離せない。冒頭4曲で、多面的なバンドの姿をこれでもかと見せつける4人。喜怒哀楽が激しい、青春真っ最中の恋模様にも似ていて、神サイの世界に振り回される楽しさに早くもハマってしまう。
神はサイコロを振らない
「日本では今日がファイナル! 今日は音楽でみんなに僕らの愛を届けられたら。どうか受け取ってね」。10公演のツアーで積み上げてきた神サイの“愛”の形。それは最新型のバンドサウンドで届けられた。「Smoke」、「煌々と輝く」「秋明菊」、「アーティスト」と、4週連続でリリースされた、未配信だった楽曲の“Reproduce”版。ライブで愛されてきた楽曲を現在進行形の神サイサウンドで纏い、次の道へ進むための糧にする。そんな4人の決心にも見える楽曲陣が続いていく。なかでも、「大切な曲、やります」と「アーティスト」で響かせたサウンドの繊細さには特に驚かされた。昨年のビルボード公演からサポートメンバーとして参加するDevin Kinoshita(Key)の存在だ。柳田の繊細な心情を歌う歌声により立体感を、生きる温度を持たせるピアノの音色がオーディエンスの心の深淵へ入り込んでいく。「夜永唄」ではさらに世界観が濃厚になり、目の前に広がる一枚の絵画をじっと見つめるように、観客はただじっと前を見据えて4+1人の音に聴き入っている。アメリカンダイナーを模したステージセットは真っ白なのだけど、楽曲毎に灯る照明の色に染まると、より一層深い世界観に入っていける感覚もいい。
タイトルコールだけで大きな歓声が沸き起こったのはアンセム「タイムファクター」。じわじわと熱を高めていくバンドサウンド、感情を解き放つ柳田の歌声。共に高みへ。リリックに込められた思いを確かに実感できるステージが目の前にあることがうれしくて、観客もともに歌声を響かせる。続く「六畳の電波塔」の冒頭、柳田が“岡山”と“東京”を間違えて叫んでしまうご愛敬もあって、アットホームな雰囲気が会場に広がる。
神はサイコロを振らない
星が光り、虫の音が響く夜の世界へステージが暗転。柳田がステージセットのダイナーの扉を開け、ランタンを手にベンチに腰掛ける。Devin Kinoshitaのピアノと2人、夜のまどろみの中で「目蓋」を歌う。濃紺の夜に溶け込むように、寂しげに歌う柳田の声。そこにメンバーのコーラスが愛おしさを持って寄り添っていく。冷たかった体温がじわりと上がっていくような、慈しみに富んだ世界が広がっていく。
暗い夜もいつか明るい朝が来る。ステージは時の流れを描くように、多幸感に満ちた「スケッチ」へと流れる。メンバーとオーディエンスを明るく照らす照明。音で、視覚で、神サイが描く世界観へと引き込まれてしまう。「What's a Pop?」ではポップなサウンドに、テンション高まったメンバーがステージを右へ左へと練り歩く。「最高のツアーでした! 愛してるよ、神チル(ファンの呼称)!」、メンバーの嬉々とした表情からこの日の、そしてツアーの充実度が誰の目にも明らかに伝わってくる。もちろん、4人の高揚感は音でもひしひしと感じる。「巡る巡る」ではミラーボールが光り輝くなか、シンセの音の粒が弾むダンサブルなサウンドで会場を揺らす。
神はサイコロを振らない
ライブ後半は遊び心たっぷりな楽曲陣で。ライトセーバー風の剣を振り回し、最前列の観客さえも巻き込みながら、メンバーをばっさばっさと斬り倒す柳田。警察に追われながらステージセットの2階部分に逃げ込んだところへ「ちょっとだけかゆい」へ流れる。MJ風のご機嫌なビート+言葉遊びで、セクシーに腰を振りながら踊る柳田。さっきまでの感動はどこに行ったん??とツッコミたくなるほどのおふざけたっぷりのステージ展開に観客は大喜び。その後も「桃色の絶対領域」「愛のけだもの」と、ジャジーにグルーヴィに、ジャンルを縦横無尽に駆け巡る神サイワールドをたっぷりと披露。
「最高すぎる……」、惚けるようにつぶやく柳田。「東京2daysのライブが良すぎて……、神サイ、めっちゃ良いバンドだなぁ」と語りながら、このMCの冒頭で“岡山”と“東京”を言い間違えたことに触れ、今回のツアーの充実度について語る。バンドの温かい部分を見せたくて、ツアー『Lovey Dovey City』の世界観をメンバー全員で作り上げたこと。ステージに作り上げたアメリカンダイナーに神チルを招待し、音楽で“Lovey Dovey=いちゃいちゃ”を届けたい。そして、過日の日本武道館で見せた結成10周年の集大成となるステージで感じた「もっと大きいバンドになりたい」という思い。ロックバンドという名目ながら歌ものもロックも、ハッピーで桃色なサウンドも、ロックバンドの領域を超え、好き放題しているバンドの姿を応援してくれるファンに感謝の気持ちを伝える。
神はサイコロを振らない
吉田は「今回のツアーはいつもより“終わってほしくない”と思えた。武道館を終えて、状況や心情の変化があってメンバー同士で今後について話し合うこともあった。それでもたくさんの人に支えられて、ツアーを走り抜けることができた。今日もスーパーハートフルな一日にしたい」と、ツアーの達成感と名残惜しさを。黒川は「ツアーテーマの“愛”が伝わっていたらうれしい。その“愛”をもらって、大きくしたその“愛”を台湾公演でブチまけたい」と、台湾公演への意気込みを。桐木は「このバンドをを好きになってくれてありがとう。1公演ずつを大事に、これからもやっていきたい」と、今後の活動への思いを語る。柳田は「こんなにも愛に溢れた、塗れた“可愛い”ツアーはしばらくないかもしれない。ライブの形はどんどん変わっていくはず」とこれからもバンドが進化していくことを示唆。それでも、今ツアーを実現できたのは支えてくれるファン、そしてスタッフあってこそと感謝しつつ、「僕らの夢を実現させてくれてありがとう」と感謝の気持ちを伝える。
千秋楽とあってついつい話し込んでしまったと照れつつも、「個性の違う4人でやるバンドはすごく面白い。これからも吉田喜一と桐木岳貢、黒川亮介と、時々Devinと。神サイチームと、そしてみんなとこれから先もずっとずっと歩いていけたらいいな」と、弾き語りで「告白」へ。溢れる願いを切々と。メンバー4人が向かい合って演奏する姿はMCタイムで語っていた数々の言葉にリンクしていく。
ステージ終盤、ダイナーがクローズするようにステージの明かりが消え、ツアーの終わりを感じる。観客一人ひとりに愛を行き渡らせるような「夜間飛行」、その感情をさらに昇華させる「Baby Baby」。柳田が「ずっとずっと愛してる」と思いの丈を叫び、バンドサウンドはより一層華やかに舞い上がる。最終曲「LOVE」、多幸感いっぱいの晴れやかな表情とハートサインを見せ、音に応える観客たち。キラキラ輝く愛を受け、充実感に満ちた笑顔を見せるメンバー。ツアータイトルまんま、“Lovey Dovey”した空間に心癒され、全22曲のステージはあっという間に終わりを迎えた。
神はサイコロを振らない
『神はサイコロを振らない Hall Tour 2025 “Lovey Dovey City”』の日本公演はこの日を以て閉幕。9月26日(金)には、初の海外単独公演となる台湾でのステージが待っている。次の彼らのステージは、バンド結成10周年、デビュー5周年のWアニバーサリーイヤーで掲げている「10の叶えたいこと」のひとつである、男性限定/女性限定ライブ「Limited Live 2025『男祭女祭』」の開催だ。本公演に懸ける思いは公式サイトにメンバーのコメントが掲載されているので、ぜひチェックを。
「10の叶えたいこと」はまだ残り5つが残っている。神はサイコロを振らないが願いを叶えた先、どんなアーティスト像を見せてくれるのか、楽しみにしたい。
神はサイコロを振らない
取材・文=黒田奈保子 撮影=松本いづみ
イベント情報
2025年10月17日(金)大阪・OSAKA MUSE <男性限定>
2025年10月24日(金)東京・Shibuya WWW X <女性限定>
2025年10月26日(日)東京・下北沢SHELTER <男性限定>
11月22日(土)韓国 MYUNGHWA LIVE HALL
11月23日(日・祝)韓国 MYUNGHWA LIVE HALL
出演:神はサイコロを振らない / DRAGON PONY
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韓国販売:スタンディング 99,000ウォン / 指定席 110,000ウォン
日本販売:スタンディング ¥10,500(税込)
※日本での販売は、スタンディングのみになります。
■一般販売:9月25日(木)18:00~
『youTopia vol.2 神はサイコロを振らないxDRAGON PONY』【東京公演】
2026年1月16日(金)Zepp DiverCity(TOKYO)
OPEN 18:00 / START 19:00
出演:神はサイコロを振らない / DRAGON PONY
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1F自由/2F指定席 ¥8,800(D代別)