ショパン・コンクール開催年におくる「ピアノの森 Special」その見所は? 髙木竜馬・ニュウニュウ・東亮太インタビューが到着!~特集!『スタクラ 2025 in 横浜』【番外編】
2018年に日本最大級の野外型クラシック音楽祭として横浜の地でスタートした『STAND UP! CLASSIC FESTIVAL(スタクラフェス)』が2年ぶりに帰ってくる。2025年10月4日(土)・5日(日)横浜みなとみらいホール 大ホールにて2日間にわたり開催される『スタクラ 2025 in 横浜 ーSTAND UP! CLASSICー』より、2日目のオープニングを飾る『ピアノの森 Special』に出演するピアニスト髙木竜馬、ニュウニュウ、ヴァイオリニスト東亮太のインタビューが到着した。
なお、『ピアノの森 Special』は、スタクラフェス内での開催のほか、長野(10月11日(土)軽井沢大賀ホール)、新潟(10月13日(月・祝)りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館 コンサートホール)での開催も決定している(※厳選クラシックちゃんねるnaco(ナビゲーター)の出演はスタクラフェス内のみ)。
髙木竜馬インタビュー
髙木竜馬(C)Yuji Ueno
――『ピアノの森』ピアノコンサートツアーは今年で5年目を迎えました。現在もSummerツアーを開催中(2025年8月時点)ですが、改めて『ピアノの森』ピアノコンサートの特徴や魅力を教えてください。
『ピアノの森』ツアーも、皆様のご声援のお陰様をもちまして今年で5年目を迎えることができました。
大きな特徴は、ショパンを中心に『ピアノの森』で扱われた楽曲の数々を中心に演奏しているので、皆様にとってお聴き馴染みのある楽曲を演奏する点です。そのため、とても嬉しいことに、お子様連れのご家族や、初めてクラシックの演奏会にいらっしゃるお客様がとても多いです。そんな方々に公演を通して、クラシック音楽の魅力、作曲家と作品の魅力、そして『ピアノの森』の魅力をお届けできればという想いで、演奏させていただいております!
そんななかで、私自身も、今年のツアーで演奏しているようなショパンの練習曲や「幻想ポロネーズ」など今演奏したい曲目や新たなレパートリーなどにも取り組むことができるので、私にとっても意義深く大切な演奏会であることは間違いありません。
―― 今回は『ピアノの森 Special』ということで、ピアノ協奏曲や4手連弾、弦楽五重奏を交えたパワーアップ版です。スペシャル版への期待、見どころを教えてください。
基本的に多くの時間を一人で過ごすピアノ奏者にとって、他の音楽家の方と一緒に演奏する時間は極めて実り多い時間であることは言うまでもありません。私にとって室内楽は音楽活動の大きな柱の一つですので、その中で尊敬する素晴らしい奏者の方々とご一緒できることが本当に楽しみです。
――今回演奏される「ショパン:ピアノ協奏曲第2番 ヘ短調 Op.21」は初挑戦だそうですね。
協奏曲 第2番は第1番に比べると演奏の機会は少ないですが、ベートーヴェンの《熱情》(ピアノソナタ 第23番)や、ブラームスのピアノソナタ 第3番のように、ヘ短調は情熱を表現することに長けた調性です。この曲も若かりし日のショパンの情熱とロマンティシズムが余すことなく表現されていると思います。
高校生の頃、アレクセイ・スルタノフが私のアイドルの一人でした。ショパンコンクールでのスルタノフの2番の演奏は神がかっていて、私にとっても理想的な演奏です。
――髙木さんは2018年の初年度からずっとスタクラにご出演いただいています。スタクラの楽しさ、おすすめポイントを交えて、読者へメッセージをお願いします!
スタクラは私にとって本当に特別な音楽祭です。赤レンガ倉庫で演奏させていただいた際の、あの舞台からの景色、海と音楽が調和する景色を今でも鮮明に覚えています。そこから多くの思い出があり、いつも本当に楽しく賑やかな場なので、今年もとても楽しみです! フェスなので皆様にもぜひ、お楽しみいただけたらと思います!
ニュウニュウ インタビュー
ニュウニュウ
――ニュウニュウさんは昨年2024年に『ピアノの森』ピアノコンサートツアーにご出演されました。ツアーを行ってみての感想と、『ピアノの森』ピアノコンサートの魅力を教えてください。
去年の『ピアノの森』春ツアーでは、数多くの大好きなショパンの曲を7公演で演奏でき、本当に思い出深い経験でした。まるでパン・ウェイ(TVアニメ『ピアノの森』でニュウニュウが担当したアニメキャラクター)がテレビ画面から飛び出してきて観客の前で生演奏していたような、とてもスペシャルな感覚だったと思います(私自身も小さい頃から日本アニメのファンなので、大好きなキャラクターが目の前に現れてほしいといつも願っていました)。
ステージ上では各曲について日本語でたくさん話しました。普段のリサイタルよりも多く話したので、ショパンの曲のバックグラウンドを観客に伝えながら、日本語も少しずつ向上できたと思います。
『ピアノの森』は、クラシック音楽ファンはもちろんアニメのファンなど、より多くの観客に音楽の魅力を届ける素晴らしい作品だと思います。今年8月のメキシコでのデビューコンサートではショパンの「ピアノ協奏曲 第1番」を演奏したのですが、演奏会後、何人かのファンがパン・ウェイのアルバムジャケットのプリントアウトを持ってきて、サインを頼んでくれました。本当に『ピアノの森』の世界的な影響力を感じた出来事でした。
―― 今回、この企画のために「茶色の小瓶」を4手連弾と弦楽五重奏にアレンジされたそうですね。アレンジのポイント、聞きどころを教えてください。
昨年のツアーではソロバージョンを演奏しましたが、お客様に私の編曲を楽しんでいただけてとても嬉しかったです。
今回は楽器やミュージシャンの人数が増えたので編曲は全く異なっています。編曲にあたっては、アニメでこの曲を使用されているシーンを見たり、ジョセフ・ウィナーのオリジナルバージョンを繰り返し聴いていました。オリジナルのジャズの要素やアニメからの愉快的な気持ちなどを表現できたらと思います。
昨年のソロバージョンと比べて、今回の室内楽版は音楽の内容が豊かになり、どの楽器も単なる伴奏ではなく、メインメロディーやリズムを作ることなどのそれぞれの役割がはっきりに感じられるようにアレンジしました。様々な楽器からの音楽的な対話のように、ほかの共演するミュージシャンたちもお客様もこの編曲を楽しんでいただけたら嬉しいです。
―― 今回は、「ショパン:ピアノ協奏曲第1番 ホ短調 Op.11」を演奏されます。何度も演奏されている曲かと思いますが、曲のご紹介と合わせて室内楽版としての聞きどころ、ピアニストとしてのむずかしさや面白さがあれば合わせて教えてください。
この曲は私の大好きなピアノ協奏曲で、本当に心の奥底の感情や記憶に呼び起こす1曲だと思います。
今年2月に香港で、香港フィルハーモニーの弦楽部の首席奏者さんたちとこの室内楽版を演奏したのですが、本当にオリジナルの協奏曲バージョンとは異なる感覚でした。なぜかというと、音楽がより自由になり、お互いの音をより近く聴けるし、お互いの呼吸や音楽の起伏もより深く感じられるようになったからです。香港のお客様のなかには、「室内楽版はショパンの音楽のサロン性をより引き出せるし、ピアノの豊かな色彩やパワーもよりはっきりに聴こえるように感じた」と言ってくれた方もたくさんいました。
この協奏曲は、音楽を通して、ミュージシャンたちがより良い友人になるように繋がることができるという素晴らしい音楽であり、それも『ピアノの森』が伝えている重要なメッセージだと思います。
――ニュウニュウさんは、直近では2023年のスタクラONLINE(配信版)にご出演いただきました。スタクラの思い出や今回へのご期待と合わせて、読者の方へメッセージをお願いします!
スタクラは、自分を挑戦し、音楽の様々な可能性を披露できる素晴らしいステージだと思います。2023年の配信版では、チャイコフスキーの協奏曲 第1番の第一楽章を神奈フィルと共演したほか、私が編曲した「クラシック花火メドレー」も日本で初めて演奏しました。これは8曲のクラシック名曲を5分以内に演奏する形でアレンジしたメドレーですが、それ以降、日本でのツアーのアンコールで度々演奏し、コンサートのクライマックスを飾るものになりました。
今年のスタクラでは、ショパンの「ピアノ協奏曲 第1番」の弦楽五重奏版を演奏すること、そして私が編曲した「茶色の小瓶」の4手連弾と弦楽五重奏版も世界初演になります。どちらも『ピアノの森』からの名曲なので、皆様には私たちの演奏を楽しんでいただきたいです。一緒にパン・ウェイと新しい思い出を作りましょう!
東亮太インタビュー
東亮汰(C)Ayako Yamamoto
――今回は東さんが室内楽のメンバー編成をされたと伺っています。メンバーのご紹介と合わせて、今回の編成意図や期待するところをお聞かせください。
私が今回お願いさせていただいたのは、一緒に音楽作りをさせていただきたい、共演を通して学ばせていただきたいと思っている演奏家の皆さまであるのはもちろんのことですが、今回の室内楽編成は、オーケストラで演奏されるオリジナル版とは異なり、各パートを一人で担う特別な形です。そのため、時にソリストのような輝きと、オーケストラ的なアンサンブル感覚とのバランスが非常に重要になると考えています。
私がご紹介するのは烏滸がましいくらいですが……ヴァイオリン橘和美優さん、ヴィオラ川本嘉子さん、チェロ矢部優典さん、コントラバス吉田秀さんは、それぞれにソロからオーケストラまで幅広く活躍されている音楽界の中心的若手、重鎮の皆さまです。そんな皆さまとの音楽での対話による化学反応を、心から楽しみにしています。
―― 共演する髙木竜馬さん、ニュウニュウさんの印象をお聞かせください。
髙木竜馬さんとは、リサイタルや私のメジャーデビューアルバムをはじめ、ありがたいことにこれまでにも度々共演させていただいています。そのお人柄と同様に温かい音色の持ち主だと感じていて、感情豊かでエモーショナルな演奏が印象的です。
ニュウニュウさんは、同年代にも関わらず私が幼い頃から「天才少年」と呼ばれ、活躍を拝見していた存在でもあるので、今回初めてご一緒できることを楽しみにしています。特に弱音が美しく、透明感のある音色を持つピアニストであり、詩的かつ知的に音を紡ぐ演奏が印象的です。
個性の異なるお二人の素晴らしいピアニストが奏でるショパンを一夜で味わうことができるのは、とても贅沢で特別な演奏会になると思います。
―― ショパンは生涯で残した室内楽作品が5曲のみととても少なく、弦楽奏者にとってはとても貴重な作品群かと思いますが、ショパンの音楽について、またショパンを演奏することについてどのようにお考えですか?
ショパンが弦楽器を取り入れた作品は限られているからこそ、深い詩情や親密さ持つ彼の音楽に、私たち弦楽奏者が向き合うことができる機会はとても貴重です。弦楽器を用いたその意図にも思いを馳せ、一音一音に特別な意味を感じます。
また、今回演奏する作品において、弦楽器は寄り添うパートナーのような立ち位置になります。ただ伴奏するのではなく、時に対話し、時に支え合うことで、ピアノとの関係性に新たな温度感や陰影が生まれます。その繊細なやり取りこそが、ショパンを室内楽で演奏する醍醐味だと感じています。
――最後に、このスペシャル版を楽しみにしてくださっている方へメッセージをお願いします。
今回は、ショパンのピアノ協奏曲をオーケストラではなく、ピアノと弦楽五重奏での室内楽版でお届けします。ピアノソロとは違い、弦楽器との対話が加わることで、ショパンの音楽に新しい呼吸が生まれ、ピアノとオーケストラでの協奏曲とはまた異なる、より繊細で親密な響きが生まれ、作曲家が心の奥に秘めた想いや詩情を、より身近に感じていただけるのでは、と思っています。
『ピアノの森』の世界観を愛する皆さまにとっても、クラシック音楽を愛する方にとっても、ショパンが紡いだ旋律と弦楽の柔らかい響きが重なり合う時間が皆様にとって特別な体験になるよう、素晴らしい演奏家の皆さまと共にお届けします。
ぜひこの機会に、ショパンの音楽が持つ親密さや詩情を、弦楽との対話を通じてじっくりと味わい、ホールだからこそ感じられる響きや演奏者との一体感を、会場でご一緒に楽しんでいただけたら幸いです。
公演情報
開催日程:2025年10月4日(土)・5日(日)
会場: 横浜みなとみらいホール 大ホール(横浜市西区みなとみらい2-3-6)
◆各公演券(一般発売日より販売)
10月4日(土)「ちさ子と琢磨のなるほどクラシック入門」
10月4日(土)「あなたの思い出リクエスト 〜アニメ・シネマ名曲コンサート」
各公演 全席指定 5,500円(税込)
10月5日(日)「ピアノの森 Special」
10月5日(日)「務川慧悟 ALL CHOPIN(オール ショパン)」
10月5日(日)「ガーシュウィン meets ラヴェル」
各公演 全席指定 4,500円(税込)
『ちさ子と琢磨のなるほどクラシック入門』
日程:10月4日(土)13:00開演(約90分)
出演:石井琢磨(ピアノ、MC)、高嶋ちさ子(ヴァイオリン、MC)、12人のヴァイオリニスト
演奏予定曲目:
ロッシーニ:「ウィリアム・テル」序曲
ベートーヴェン:「運命」「エリーゼのために」
モーツァルト:「きらきら星変奏曲」「トルコ行進曲」
ショパン:「英雄ポロネーズ」「子犬のワルツ」 他
日程:10月4日(土)17:00開演(約90分)
出演:菊池亮太(ピアノ)、紀平凱成(ピアノ)、12人のヴァイオリニスト、野々村綾乃(ソプラノ)、高嶋ちさ子(トークゲスト)、石井琢磨(MC)
演奏予定曲目:
ディズニー「アラジン」メドレー
ジブリメドレー
シネマ名曲リクエストコーナー 他 ※リクエスト詳細は後日発表予定
日程:10月5日(日)11:00開演(約80分)
出演:髙木竜馬(ピアノ)、ニュウニュウ(ピアノ)、東亮汰(ヴァイオリン)、橘和美優(ヴァイオリン)、 川本嘉子(ヴィオラ)、矢部優典(チェロ)、吉田秀(コントラバス)
ナビゲーター:naco(厳選クラシックちゃんねる)
演奏予定曲目:
ショパン:ピアノ協奏曲第2番 ヘ短調 Op.21(ピアノ:高木竜馬)
ショパン:ピアノ協奏曲第1番 ホ短調 Op.11 (ピアノ:ニュウニュウ)
茶色の小瓶(ピアノ連弾:髙木竜馬、ニュウニュウ、弦楽五重奏)
日程:10月5日(日)14:40開演(約60分)
出演:務川慧悟(ピアノ)
演奏予定曲目:
ショパン(1842):3つのマズルカ Op.50
即興曲 第3番 変ト長調 Op.51
バラード 第4番 ヘ短調 Op.52
ポロネーズ 第6番 変イ長調「英雄」Op.53
スケルツォ 第4番 ホ長調 Op.54
日程:10月5日(日)18:40開演(約80分)
出演:上野耕平(サクソフォン)、菊池亮太(ピアノ)、務川慧悟(ピアノ)、ニュウニュウ(ピアノ)、三浦一馬(バンドネオン)、児玉隼人(トランペット)
演奏予定曲目:
ガーシュウィン:ラプソディ・イン・ブルー
ガーシュウィン:ザ・マン・アイラブ
ガーシュウィン:エチュード第4番「君を抱いて」(ワイルド編)
ガーシュウィン:3つのプレリュード より
ラヴェル:ヴァイオリンソナタ 第2楽章「ブルース」
ラヴェル:ハバネラ形式による小品 ト短調
ラヴェル:亡き王女のためのパヴァーヌ
ラヴェル:ラ・ヴァルス
ほか(予定)
※未就学児のご入場はご遠慮願います。
※当日は、撮影用のカメラが入る可能性がございます。
※客席内での飲食はご遠慮ください。
※やむを得ない事情により、曲目等が変更となる場合がございます。
主催・企画制作:イープラス
協力:横浜みなとみらいホール(公益財団法人横浜市芸術文化振興財団)
公式サイト: https://standupclassicfes.jp/
お問い合わせ:stacla-info@eplus.co.jp