手紙社『もみじ市』がルーツ、野球場が舞台の『東京クラフトフェスティバル』で‟陶芸 ガラス 木工”の作り手と「思い」を交換
東京クラフトフェスティバル 2025.10.4(SAT)~5(SUN) GIANTS TOWN STADIUM
2025年10月4日(土)、5日(日)に『東京クラフトフェスティバル』が東京読売ジャイアンツの新球場「GIANTS TOWN STADIUM」にて開催された。ボールパークという遊び心あふれる会場に、全国から器や革小物、アクセサリー、そしてクラフトビールやフードの出店者149組が集結。作り手たちの情熱と魂が込められた作品が数多く並んだ。作り手と使い手の交流の場ともなった会場の様子をレポートする。
●『東京クラフトフェスティバル』とは?
会場のGIANTS TOWN STADIUMは人工芝で歩きやすさも抜群
イベントのルーツは手紙社の創立メンバーなどが開催していたイベント『もみじ市』にある。『もみじ市』は多摩川河川敷を舞台にした「大人の文化祭」とも呼ばれ、作り手と使い手が直接交流できる場として人気を集めた。
作品を通して作り手と使い手が交流できるのも魅力
今回の『東京クラフトフェスティバル』も同様に、作品に触れるだけでなく、作り手のライフルタイルや仕事への取り組み方なども感じられるイベントだ。公式HP内のブログ「クラフェスだより」では、担当者も以下のように思いをつづっている。
「クラフト作品は作り手により全く特色が違う、見せる世界が違うものであります。作家それぞれの思いが込められたものであることは間違いないのですが、私は担い手(作品を買う人)の元に渡ることで、作品はさらに意味を持つと考えています」
作品のストーリーが購入者に引き継がれることで、新しい価値が生まれていく……。「買い物」だけで終わらない、特別な体験ができるのが最大の魅力だ。
会場はフードやドリンク、クラフトビールの販売も充実!
会場となったのは東京都稲城市にあるGIANTS TOWN STADIUM(ジャイアンツタウン スタジアム)。国内初の水族館一体型の新球場となる予定で、エンターテインメント性にあふれているのも特徴だ。手紙社とよみうりランドがタッグを組み、開催が実現した。球場内は人工芝が敷かれており、まるでクラフト界の「巨人」たちのボールゲームを鑑賞しているような気分に。手仕事の裏側を聞けるトークショーやアーティストによるライブ演奏も開催され、心を躍らせながらゆっくりと各ブースを散策することができた。
●さまざまな素材の作品が集結!作り手との会話も楽しい時間に
さまざまな素材の作品が並ぶ。陶芸の展示方法にも工夫が凝らされている
会場には出店者のテントが軒を連ね、個性あふれる作品たちがずらりと並んだ。陶器、木工、金工、ガラスなど作品の素材もさまざまだ。
木工作品。かわいいだけでなく日常生活で活用しやすいのもうれしい
作品をあらゆる方向からゆっくりと眺められるので、自分のペースで買い物を満喫する来場者も多く見られた。筆者も心惹かれたガラス作品をじっくりと見つめていると、光の挿し方によって色が繊細に変化しているのを発見。
使い方を想像するのも楽しいガラス作品
すぐさま作り手に感動を伝え、おすすめの使い方を尋ねると「あえて使い方は決めていないんです」と予想外の答えが返ってきた。「使い方を考えていただくのも楽しみ方のひとつなんです」と前置きをしたうえで「茶葉入れにして、茶器と合わせて使うのもいいですよ。淡い色彩がアクセントになり、お茶の時間も癒しのひとときになります」と教えてくれた。なるほど! と納得すると同時に、作り手との距離の近さを実感。作品を通じて「思い」を交換する体験ができたことにうれしさを感じた。
●作り手と一緒に手を動かす「ワークショップエリア」も大盛況
さまざまな色や素材の糸が並ぶ「つづれ織」ワークショップ
会場の一角にはワークショップ専門のエリアが設けられており、アクセサリーや多肉の寄せ植え、端材を活用してつくる工作などオリジナリティの高い15店舗が集結。その道のプロに教えてもらいながら手を動かし、自分だけの作品をつくることができた。ひとりで集中して作品と向き合う方や、子どもと一緒にわいわいと取り組む方など、参加者がみなそれぞれのスタイルで自由に作品をつくっていたのが印象的だった。
ワークショップでは自分と向き合いながら作品を完成させていく
縦糸(たていと)に緯糸(よこいと)を織り込み図柄を表現する「つづれ織」技法が体験できるワークショップでは、作業スペースにカラフルな色の糸がたくさん並び、それを自由に掛け合わせてコースターを創作していく。毛糸だけでなくスズランテープやリボンも揃い、素材を見ているだけでもわくわくした気持ちに! 「織物の仕組みを学ぶだけでなく、好きな色を選んで手を動かす体験も楽しんでもらえたら」と作り手の方が教えてくれた。自分の感性や創造力を活かしながら手作業に集中する時間は、非日常かつ幸せな時間とも言えるだろう。
●実際に「現代金継ぎ」を体験!
作品への思いや愛を作り手に届けることができる「ラブレターポスト」
体験・参加型のブースが充実しているのも『東京クラフトフェスティバル』の特徴だ。作り手への愛をつづった手紙を投函できるラブレターポストやレザークラフト体験、器の金継ぎ体験など、手紙社ならではのお楽しみコンテンツがそろっていた。
現代金継ぎの作業行程。欠けてしまった部分に真鍮(しんちゅう)粉を付けていく
筆者もアトラクションのなかから金継ぎワークショップに参加した。体験では漆(うるし)ではなく合成接着剤を使うため、手軽に短時間で体験が可能。器の破損部分に合成接着剤を塗り、ある程度固まったらその上から真鍮(しんちゅう)粉と呼ばれる金色の粉を少しずつ付けていく。このわずかな作業行程で破損した器が見違えたような唯一無二の作品となることに驚きを隠せなかった。
作品の完成例。修復するだけでなく新しいデザインに生まれ変わる
筆者の隣で体験していた参加者は自分でつくった器をうっかり割ってしまい、それを今回の金継ぎ体験に持ち込んでいたが「新しく生まれ変わった気持ちで器を使えるのがうれしい」と喜びを語っていた。金継ぎをした部分は経年変化で色が変わっていくとのことで、器を日々の暮らしに溶け込ませていくのがとても待ち遠しくなった。
●「時間を積み重ねて作られたもの」に触れる幸せを体感できる空間
手仕事の美しさや素晴らしさに触れられる、貴重な体験!
クラフトに根差した人にフォーカスした『東京クラフトフェスティバル』。作り手と談笑を楽しむ来場者からは「完成までの背景など、サイドストーリーを知ることでお迎えする作品により愛着がわいた。大切に使っていきたい」という声も聞こえた。作り手と使い手の交流が体験できる手紙社のイベントに今後も注目していきたい。
取材・文・撮影=丹下紋香
イベント情報
[時間]10時00分~16時00分
[会場]GIANTS TOWN STADIUM
[アクセス]東京都稲城市矢野口3228番地南山95街区1号
京王電鉄相模原線「稲城駅」から徒歩約15分
「京王よみうりランド駅」からシャトルバス運行予定
小田急小田原線「読売ランド前駅」から小田急バス[読01] 京王よみうりランド駅行き または 矢野口駅行き「東京ジャイアンツタウン」下車
共催:よみうりランド 後援:稲城市
制作:手紙社