上原彩子インタビュー ベートーヴェン×プロコフィエフ、二人の作曲家の作品によるリサイタル
ピアニストの上原彩子が今年もザ・シンフォニーホールでリサイタルをひらく。今回は、ベートーヴェンの2曲のピアノ・ソナタとプロコフィエフの2曲のピアノ・ソナタが並ぶ。
「ベートーヴェンもプロコフィエフも時代を切り拓いた作曲家で、常に新しいものに挑戦した人ということでつながりを感じています。そして、お客さまには、ベートーヴェンだけやプロコフィエフだけよりもバラエティに富んだ音を楽しんでいただけると思い、二人の作曲家の作品によるリサイタルにしました」
リサイタル前半は、ベートーヴェンのピアノ・ソナタ第8番「悲愴」と第14番「月光」。
「今、東京で1年に1回、ベートーヴェンのピアノ・ソナタによるリサイタルに取り組んでいまして、1回目は第1番から第3番と第19番、第20番、2回目は第4番から第7番を弾きました。そして今年度(2026年3月)は第8番『悲愴』が入っていますので、ザ・シンフォニーホールのお客さまにも今取り組んでいるものを聴いていただきたいと思いました。
『悲愴』は3楽章形式で書かれていて古典的なソナタの枠組みを踏まえていますが、『月光』は同じ3楽章形式でもソナタをすごく自由にとらえた、後期のソナタに向かう作品だと思います。『月光』はロマン派に片足を踏み入れている感じのところも多いのですが、自由に弾けばいいわけでもありません。ロマン派的なものと古典派的なもののバランスをいろいろ試したいと思います」
現在、ベートーヴェンのピアノ・ソナタ全曲演奏会のシリーズを進行中。
「デビュー20周年(2022年)では今までやってきたチャイコフスキーとラフマニノフを取り上げましたが、まだこの年齢ですし、今は時間があるので、新しいものをしっかり形としてやりたいと思い、ベートーヴェンを始めました」
リサイタル後半は、プロコフィエフの「戦争ソナタ」と呼ばれる第6番と第7番のピアノ・ソナタ。
「プロコフィエフは、テクニックが前面に押し出されて、大音量という印象がある作曲ですが、実は、人間的な脆いところや温かみの感じられる作曲家です。プロコフィエフは、10代の頃にいくつかの協奏曲やソナタを勉強し、20代に結構弾きました。私がプロコフィエフを好きなのは、すごく透明感のあるところですね。暴力的で攻撃的なところもありますが、いつも音にプロコフィエフならではの透明感があります。
第6番はどちらかというとオーケストラ的なところが多く、構成がかっちりとしています。第7番はピアニスティックな要素を極めた感じ。打楽器的な扱いもあります。2曲を並べて、違いを感じてもらえるとうれしいですね。ともに書かれたのは第二次世界大戦中で、そういう時代に書かれた 音楽の中にあるメッセージを感じていただければと思います」
最後に抱負をきいた。
「プロコフィエフのソナタ2曲を続けて弾くのは挑戦ですし、そこでベートーヴェンをどう響かせるかも新たな挑戦です。私なりの挑戦を楽しみしていただければうれしいですね」
取材・文=山田治生
公演情報
[日程]2025年11月15日(土) 14:00 開演
[会場]ザ・シンフォニーホール
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ 第8番 ハ短調 op.13「悲愴」
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ 第14番 嬰ハ短調 op.27-2「月光」
プロコフィエフ:ピアノ・ソナタ 第6番 イ長調 op.82「戦争ソナタ」
プロコフィエフ:ピアノ・ソナタ 第7番 変ロ長調 op.83「戦争ソナタ」
※未就学のお子さまのご入場はお断りさせていただきます。