ストッパードの傑作『アルカディア』日本初演に挑む 井上芳雄&浦井健治にインタビュー!

インタビュー
舞台
2016.2.9
浦井健治・井上芳雄 撮影=加藤 孝

浦井健治・井上芳雄 撮影=加藤 孝

出演の井上芳雄×浦井健治にインタビュー

「ミュージカル界のプリンス」二人の顔合わせでストレートプレイという意外性に、想像力をかきたてられる。二人が共演するのは、英国の劇作家トム・ストッパードの代表作にして傑作の誉れも高い『アルカディア』。栗山民也演出のもと、堤真一、寺島しのぶといった華と実力を兼ね備えたキャストの中で、それぞれどんな新境地を拓いてくれるのだろうか。

──お互いのストレートプレイでの印象は?

井上芳雄・浦井健治 撮影=加藤 孝

井上芳雄・浦井健治 撮影=加藤 孝

浦井 芳雄さんはミュージカル界でプリンス街道を切り開いていく中で……

井上 街道をひた走り……(笑)

浦井 様々な苦労もされていると思いますけど、イタの上ではそう感じさせないところが、さすがだなと。エンターテインメントとして成立させているというか。

井上 ありがとうございます。でも、ストレートプレイは浦井君の方がたくさん出てるよね。普段の浦井君はかなりの天然ボケですけど、役をまとうと、ものすごく骨太に感じるんですよ。役を自分に寄せるのではなく、潔く役に飛び込んでいる気がする。だから色んな演出家さんに「何かやらせたら面白くなりそうだ」と思われるんじゃないかな。

浦井 そうありたいといつも思いますけど。

井上 最近思うのは、同じストレートプレイでも、作品や演出家によって求められる演技のスタイルって違うんだな、と。セリフの言い回しや音量、感情の出し方も、全てに通用するセオリーはないから、「今回はこういう文体で生きよう」ってことが発見できると、すごく楽しくなるんですよね。

浦井 本数をこなさないと、芳雄さんが言った「文体」って体感もわからないと思うんですよ。そういう会話が通じる人と同時代に生きていることが幸せだし、刺激になりますね。

──今回、お二人はどんな役どころですか。

浦井 19世紀と現代を行き来する物語で、イギリスのお屋敷が舞台なんです。僕はその屋敷の一族の末裔で、現代の人間。堤さんと寺島さんがその屋敷で詩人のバイロンを研究していて、僕もそれを手伝っているという設定で。

井上 僕は19世紀の人物で、屋敷のお嬢さんの家庭教師役。同じ屋敷を舞台に、二つの時代が入れ替わり立ち替わり、わかりやすく描かれるんです。浦井君と僕は生きる時代が違うけれど、同じ空間には存在していたり。戯曲の構成が本当に巧みで、トム・ストッパードはやっぱりすごいんだな、と。

浦井 僕は数理生物学専攻の大学院生で、相対性理論とか量子物理学とか、難しい単語や専門用語も多いのですが、僕だけではなく「言いたい!」というエネルギーが各人物の中にあるんです。「何かを伝えたい」「わかってもらいたい」という、人間を突き動かす根本的な欲求が見えた時に、お客様にも登場人物が魅力的に見えたり、喜劇的に感じられるんじゃないかな、と。漠然とですが。

──「漠然と」とはいえ、かなり戯曲を読み込まれてますね。

井上芳雄 撮影=加藤 孝

井上芳雄 撮影=加藤 孝

井上 すごいですよ、彼はもうセリフも入ってます。

浦井 入ってません!(笑)

井上 覚え始めてると思います。

浦井 セリフ覚えが悪いので。

井上 浦井君はスタートが早いんですよ。

浦井 芳雄さんは覚えるのが早いんです。

──覚えるのが早いのでギリギリになってからやる、と……

浦井健治 撮影=加藤 孝

浦井健治 撮影=加藤 孝

浦井 そんなことは言ってません!

井上 ハハハ、僕は本当にギリギリですよ。でもとにかく面白い台本で、イギリスらしい皮肉の効いた笑いもちりばめられていて魅力的ですね。結末に向かって物語の輪郭がどんどんハッキリしていくところもスリリングです。時代や立場が違う人たちが意外と似たようなことで言い争ったり、ものすごく哲学的なことを言いつつ、やたらと下半身の話をしたり(笑)。数学で性について表現したりするところもすごいなと。イヤラシイを通り越して、かぐわしい魅力がある(笑)。

──栗山さんの演出、共演の方々の顔ぶれも芝居好きの心をわしづかみです。

井上 僕も栗山さんとは久しぶりなので、ストッパードの世界をどう捉えようとされるのか、すごく楽しみなんです。

浦井 栗山さんの演出で、素敵な先輩ばかりで、しかも芳雄さんもいる。間違いなく自分にとってもかけがえのない時間になると思います。

井上 ついでにありがとうございます(笑)。

浦井 ついでじゃないですって!(笑) お客様と一緒に楽しい時間を過ごせるように、稽古場でたくさん学びたいですね。

井上 そうだよね。現代と200年前を交互に重ねながら、最後に何が見えて来るのか、楽しみに観ていただきたいです。

(取材・文/市川安紀)

公演情報
『アルカディア』

<公演日程・会場>
2016/4/6(水)~4/30(土) Bunkamura シアターコクーン (東京都)
2016/5/4(水・祝)~5/8(日) 森ノ宮ピロティホール (大阪府)

<スタッフ・キャスト>
作:トム・ストッパード
翻訳:小田島恒志
演出:栗山民也 
出演:堤真一 寺島しのぶ 井上芳雄 浦井健治 安西慎太郎 趣里 初音映莉子 山中崇 迫田孝也 塚本幸男 春海四方 神野三鈴

公式サイト:http://www.siscompany.com/arcadia/

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