少年社中×東映 舞台プロジェクト『パラノイア★サーカス』 脚本・演出・毛利亘宏が今 、やりたいことのすべて

インタビュー
舞台
2016.2.5
少年社中主催、毛利亘宏 撮影=坂井美碧織

少年社中主催、毛利亘宏 撮影=坂井美碧織

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少年社中×東映による舞台プロジェクト『パラノイア★サーカス』が、2月26日~3月6日、サンシャイン劇場で開幕する。「小澤亮太×井俣太良」「松田凌」に続き、脚本・演出の毛利亘宏へのインタビュー第3弾! 独自のファンタジー世界を花開かせた「少年社中」の主宰であり、ミュージカル『薄桜鬼』『黒執事』の演出、『仮面ライダー』や『スーパー戦隊』シリーズでの脚本を手がけるなど、外部でも活躍めざましい毛利。その彼が、「今の自分が観たい舞台」を詰め込んだという。彼が思う、演劇ならではの表現、劇団の魅力、そしてヒーローのカタチとは。彼の頭のなかのビジョンに迫った。

――まず、今回の上演が決まったきっかけを教えてください。

2年半ほど前、『仮面ライダー鎧武/ガイム』ファイナルステージのショーの演出・脚本を担当したんですが、そのときのイベントプロデューサーと、『何か面白いことをやろう!』と話していたんです。地方で飲みながら、のノリでしたけどね(笑)。それがついに、『そろそろ本当にやろうか』となり、トントン拍子に決まったんです。

――そうだったんですね。この取材時点では、まだ台本ができあがっていないのですが、脚本・演出のおおもとのコンセプトは?

前提として、“ワクワクできるエンタメ”であること。そこに、少年社中お得意のファンタジックな世界観をのせていきます。最近、外部で仕事する機会も増えましたが、少年社中というホームグラウンドに帰ってきたので、”今の自分が本当にやりたいこと”、”面白いと思うこと”、”観たい舞台”を詰め込みますよ!

――江戸川乱歩の作品群が登場するそうですが、その設定は、どこから?

ファンタジー=洋モノだと当たり前なので、和にしたいなと思っていたんですが。ちょうど昨年、江戸川乱歩の没後50年のタイミングということで、乱歩を思いついて。もともと作家モチーフや、ミステリー作家の思考そのものが好きなので、面白いなと直感したんです。ポップな大正ロマン、スタイリッシュなアングラを見せたいですね。

――”スタイリッシュなアングラ”って、すごく観てみたいです。また、「東映とのコラボレーション」というところで、意識している点はありますか?

ヒーロー出身のキャストが多数出演すること、また僕自身が『仮面ライダー』などの脚本を書いていることで、それぞれのエッセンスが出せたらいいなと。『東映のヒーロー作品とは何なのか?』をより深く掘り下げて、切り込めたらいいな、とも思っていますね。

――その「東映作品のエッセンス」とは、なんでしょうか? その部分は、毛利さんが『仮面ライダー』や『スーパー戦隊』シリーズの脚本を書くうえで、どういうところを大切にしているのかにも、つながってきそうですが。

ひと言では語れませんが……痛快なエンタメであると同時に、一義的な正義の味方にはしたくないと、常に思って書いているんです。堅苦しくはしないけど、人の良心を裏切らない、道徳的なラインは、絶対守りたい。ただでさえ仮面ライダーは、戦っている、いってしまえば暴力をふるっているわけですから。誰かを守るために仕方なく戦うけれど、戦うことがベストとは思っていない、絶対的に正しいわけじゃなく、戦うことに苦悩し続ける存在として、描きたいんです。孤高を背負い、自己批判できるからこその、ヒーローなんだと。

――そういう部分もきちんと描くことで、観ている子どもたちにも、戦うカッコよさだけじゃない、大切なことが伝えられますね。

スーパー戦隊シリーズは小さい子ども向けでわかりやすいので、これは『仮面ライダー』の話になりますけど。子どもに見せられるものでありつつ、大人が見ても考えさせられる作品にしたいなと思います。仮面ライダーに通じる苦悩を、今回の舞台にも織り込んでいきたいですね。

――東映ヒーロー好きには、さらに楽しめそうな舞台になりそうですね。キャスト陣の見どころは?

小澤(亮太)さんと、吉井(怜)さんははじめましてですが、ほかの方は別の舞台で何度もご一緒しています。小澤さんは、『海賊戦隊ゴーカイジャー』で大好きになって。いい意味で、奥底の知れない魅力がある俳優さんだと思いますね。楽天的で、物事をポジティブにとらえる印象もあって、大好きなんです。今回の役は、全体の流れのなかでどんどん変わっていき、悩みを深くしていくので、いろいろな表情が見られるのではないでしょうか。

――SPICEでは前回、小澤さんと井俣さんの対談をUPしています。井俣さんは、少年社中で長年やってきた同志ですね。

もう25年の付き合いになります。彼は……天然ですね(笑)。昔は、華がありましたけど(笑)

――昔「は」!?(笑)

昔からですね(笑)。『仮面ライダードライブ』に1年出演して、月並みですけど、芝居に磨きがかかったのを感じます。『ドライブ』後、初めての劇団作品ということで、どう成長したのかが楽しみです。

――その井俣さんに、名探偵・明智コゴロウを当てたわけですが。

だって、『仮面ライダードライブ』の追田現八郎の抜けた役どころは、ほぼ彼の“素”ですからね。観ながら、「まんまじゃん」って思ってました。ああいう小五郎がいたら、面白いなと。誰も書いたことのない、抜けてて推理のできない明智コゴロウをやってもらいます(笑)

――その明智コゴロウを支えるコバヤシ少年を、松田凌さんが演じます。

彼の初舞台『ミュージカル「薄桜鬼」斎藤一篇』の演出をやったのが僕だったんです。みるみる成長して、みるみる売れて(笑)。僕が脚本に携わった『仮面ライダー鎧武/ガイム』にも、彼が出演しているし、ずっとご縁があるんですよね。出会って5年で、ようやくうちの劇団に出演してもらえて、うれしいです。

――毛利さんから見た松田さんは、どんな役者さんですか?

芯が強く、信念を持っている。そして、精神的にも肉体的にもタフですね。今回の役は、おバカなコゴロウをしっかり支えつつ、ストーリーを回す役どころ。どう演じてくれるのか、期待しています。

毛利亘宏 撮影=坂井美碧織

毛利亘宏 撮影=坂井美碧織

――キャスト陣の演技にも注目ですね。ストーリーや演出についても、注目ポイントを教えてください。

どんどん転がって、誰も考え付かないようなところに着地できれば、と考えています。演出面では、サーカスのモチーフをちゃんと使いたいですね。サーカス小屋を、舞台にどーんと作るとか。テンポよく、奇抜なキャラがバンバン出てくる、カオスな舞台が頭にあります(笑)

――刺激的な舞台になりそうですね。ところで、先ほどおっしゃったように、劇団以外でのお仕事が増えていますよね。そんな毛利さんから、小劇団を取り巻く現状はどう見えていますか?

そもそも劇団自体が少なくなりましたよね。プロデュース公演が主体の時代。でも、劇団公演でしか生まれない、新しい表現もあるんです。だから僕も、劇団での表現にこだわりながら、「劇団って魅力あるんだよ」「作ったら面白いんだよ!」ということを発信できたらいいですね。その意味でも、今回の東映さんとのコラボ企画は、またとないチャンス。プロデュース化せずとも、劇団が続けていけるような道筋を作れたら、という気持ちがありますね。

――特に「小劇団」というと、なんとなく観に行きづらいイメージがあるのも、理由なのかなと思うのですが。

僕らの頃は、小劇場ブームがあり、もっと気軽に観られた時代でした。でも今は、小屋に行くのに、気力が要るんだろうなと。たとえば、出演者やゲストのファンだけで席を埋めず、当日券を必ず置いておくなど、芝居に触れたことのない人が観に来られる環境を、少しでも作れたらと思っています。

――『パラノイア★サーカス』が、芝居を観たことのない人が足を運ぶきっかけにもなったらいいですね。“エポックメイキング”的な作品になればと、期待しています。

そうなってほしいですね。ただ、今回の舞台も、これまで地道に階段をのぼってきた結果なので。先のビジョンは決め過ぎず、その時々で面白いと思ったものをやろう、というスタンスは守りたいです。カタチにこだわらず、演劇への情熱の赴くままに、自然に身をまかせ、作っていきたいです。

毛利亘宏 撮影=坂井美碧織

毛利亘宏 撮影=坂井美碧織

 
インタビュー・文=荒川陽子

 
イベント情報

少年社中×東映 舞台プロジェクト 「パラノイア★サーカス」

 日時:16/2/26(金)~16/3/6(日)
 会場:サンシャイン劇場
 出演者:  江戸川乱歩...小澤亮太 編集者...掘池直毅 明智コゴロウ...井俣太良 

      コバヤシ少年...松田 凌 パノラマ...山川ありそ 黒トカゲ...吉井 怜 

      シズ子/イン獣...加藤良子 K☆ケイ...廿浦裕介 芋ムシ中尉...岩田有民 

      芋ムシ夫人...内山智絵 屋根ウラ...白又 敦 イス職人...長谷川太郎

      ウチュウ飛行士...松田 岳 ジゴクの道化師...杉山未央 

      ユウレイ時計...竹内尚文 押し絵とタビする男...川本裕之 

      ナミコシ警部...唐橋 充 ナカムラ刑事...松本寛也

      アルセーヌ・ルパン...鈴木勝吾


 
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