春奈るなインタビュー「アニメが私を変えてくれた」
春奈るな 撮影=原地達浩
アニソンシンガー春奈るな、赤坂BLITZでのスタンディングワンマン『春奈るな LIVE 2016 "Ripple Effect"』を控えている彼女に今回話を伺った。音楽、アニメ、ファッション。そしてファンとの繋がりについて聞いてきた。アニメが大好きな少女がシンガーとして立つとき、彼女は何を考えるのか?独占インタビュー。
――赤坂BLITZでのワンマンライブは、今までのスタンディングワンマンのなかで一番大規模ですね。そこについて、まず一言いただけますか?
もともと、私の好きなバンドのライブで赤坂BLITZはけっこう行っていた会場なんですよ。だから、個人的な憧れというか、すごく思い入れのある会場だったんです。そこにわたしが立てるとは当時思ってなかったので、決まった時はすごく嬉しかったですね。
――ちなみに、その好きなバンドとは?
「A9」さんです。わたし、ヴィジュアル系バンドが好きで、色んなところに行ってました。赤坂BLITZは、4、5回は行きましたかね。
――ヴィジュアル系は赤坂BLITZでけっこうやりますものね。
わたし、高校生の時はすごいバンギャで。
――バンギャだったんですか!
本当にバンギャしてたんですよ。色んなライブ会場に行って、ファン同士で交流を深めたりとか、そういうこともやってましたね。
――その頃から音楽が好きだったんですね、何か春奈さんは、ファッションと音楽、両方ともエッジが立っているイメージがあります。
ありがとうございます!
――音楽が好きになったルーツもバンドなんですか?
音楽はバンドではなく、アニソンだったんですよ。音楽にどっぷりハマったというか、歌手になりたいと思ったきっかけもアニソンなんです。ルーツって話になるとアニソンにあると思いますね。
――最近は『おそ松さん』が好きなイメージが(笑)。
はい!ほんとに沼にズブズブで。抜け出せなくて困ってるんですけど(笑)。
――その頃、「歌を歌いたい」って思ったきっかけになった、ハマったアニメ、アニソンはどの作品なんですか?
歌手を目指そうと思ったきっかけの曲は、『美少女戦士セーラームーンR』の「乙女のポリシー」っていう曲なんです。5歳でその曲を聴いた時に、幼いながらに「すごいパワーを持ってるな」って感じたんですね。アニメのシーンもすごく鮮明に思い出して、そこで自分が勇気というか、パワーをすごくもらった気がしたんです。それで将来は誰かの力になれるような歌を歌いたいなって思うようになって、それがきっかけかなぁ。
――『セーラームーン』は春奈さんより上の世代ですよね。
わたしは『美少女戦士セーラームーンSuperS』とかといっしょだと思いますね。
――そのあたりからアニメにハマっていった?
はい。小さい頃からアニメは観ていて、ほんとにオタクとして爆発したのが、小学六年生の時かな、当時「りぼん」で連載していた『神風怪盗ジャンヌ』という作品があって……
――実は僕も『神風怪盗ジャンヌ』好きなんです。
うそー!本当ですか!?
――せっかくだから『神風怪盗ジャンヌ』の魅力を語っていただければ。
撮影=原地達浩
『神風怪盗ジャンヌ』は世界観が好きだったんですけど。なんだか、読むたびにデジャヴュを感じてたんですよ。なんだか懐かしい感じがして……当時、「自分はジャンヌ・ダルクの生まれ変わりなんじゃないか」ってすごい思っていて。
――そこまで思い込むくらい好きになったんですね。
すごく雰囲気が好きな作品だったんですよ。なので、小学六年生の歴史を調べる授業で、フランス革命とか百年戦争をひたすら調べていて。それくらい自分とマッチしてる作品だって思いが強くて。で、初めてキャラクターに恋をしたのも『神風怪盗ジャンヌ』でした。あの、秋田刑事ってわかりますか?
――わかりますよ。アニメのオリジナルキャラですね。
あの人がすごい……好きで……(笑)。宮田幸季さんが声をやってらっしゃって。そこから詳しく声優さんとかを調べるようになって、イラスト集も買うようになって、どっぷりオタクになっていったんです。
――『神風怪盗ジャンヌ』があって、ジャンヌ・ダルクがあって、そこからフランス革命やフランスのことを調べて。その流れに今のファッションが繋がっていくような気がしたんですが。
西洋の格好とかはその当時からすごく憧れがあったんですけど、ファッションに目覚めたのは『D.Gray-man』という作品がいちばん大きかったですね。ロード・キャメロットちゃんっていうキャラがいて、その子がゴスロリっぽい格好で。その子になりたいって思ったのがきっかけで服装のことを調べて、原宿に行ったりとか。そのままロリータファッションとかするようになりました。
――やっぱり、今の春奈るなを形成している全ての根っこにはアニメがあるんですね。
全部にアニメが関わってます!
撮影=原地達浩
――コミケとかも行かれるんですよね?
めっちゃ行きます!(笑)。
――今でも行かれるんですか?
はい。でも実はオンリーイベントとかのほうが好きで。そっちに行くことが多いです。
――お忙しい中でも行かれるんですか?
そういうのは絶対死守して行きますね!
――マネージャーさんが笑ってらっしゃいます(笑)。最近だと、どんなオンリーに行かれたんですか?
最近だと、乙女ゲーのオンリーに行きましたね。『ボーイフレンド(仮)』がすごい好きで。
――はいはい。
乙女ゲーを全部まとめたオンリーイベントがあったんですけど。東京流通センターですかね? 行ってきました。
――もう、流通センターに立ってる姿が浮かびますね(笑)。春奈さんは腐女子と夢女子ならどっちですか?
わたしは一応どっちもイケるんですけど、ベースは夢女子です。
――うちで、以前「オタク女子座談会」っていうのをやりまして。オタク女子が匿名でひたすら言いたいことを言いまくるっていう企画なんですけど。
面白い!
――そこでも、夢女子と腐女子の間には、一部で大きな溝がやっぱりあると、「でも、世間的に見たら全部腐女子でしょ?」っていうのが、夢女子は気に食わない。っていう話になって。
そうですね、やっぱり、ひとくくりにされちゃうことが多いので。「オタクは腐女子」みたいなくくりは、やっぱり違うんじゃないかな、とわたしも思っていて。でも、男の子同士が仲良くしてるのを見るのはめちゃくちゃ好きなんですよ。ちなみに、小学生の時は、わたしは完全に腐女子で、高校から夢女子に切り替わりました。
――切り替わるきっかけがあったんですか?
たぶん「ファイナル・ファンタジー」かな? 『FINAL FANTASY VII アドベントチルドレン』っていう映像作品の……
――ああ、クラウドとかザックスとかですかね……。
いえ、カダージュっていうキャラがいるんですけど。
――カダージュ!マニアックな(笑)。
銀髪のおかっぱの男の子で。その子がちょっとリアルすぎて、CGだから肌感とかもすごいリアルじゃないですか。そこで本当に恋に落ちてしまって。そこから完全に夢(女子)に切り替わりましたね。
――すごいですね。『アドベントチルドレン』で夢に切り替わるってなかなかいらっしゃらないと思うんですけど。
あはははは(笑)。なかなかないですよね。
――そんな春奈さんが、今はアニソンを歌っているという。これは、ここまでお話をうかがってもすごいことなんじゃないかと思うんですけど。今のご自身をとりまく環境に関してはどう思われます?
はい、本当に楽しく仕事させて頂いています。でもやっぱりその中でもプレッシャーっていうものがあって。自分もアニメのファンだからこそ、「自分の歌で作品を壊してしまうんじゃないか」とか、「作品のファンに受け入れてもらえなかったらどうしよう」とか、そういう不安は常にありますね。アニメに関してとか、ファンの方ってデリケートじゃないですか。わたしも含めですが。
撮影=原地達浩
――そうですね。
だから、そういうところはすごい気をつけますし。キャラクターの名前は絶対に間違えない、とか。そういうことは徹底してますね。
――それは、ご自身がアニメが好きだから、「他の人にそういうのをやられたらイヤだな」っていう想いが強いんでしょうね。
そうですね。そういうところが一番あるんだと思います。自分がされたらイヤなことは絶対にしたくないと思っていて。
――歌う時に気をつけていることとか、気にされてることはありますか?
わたしは一番に歌詞を気にして歌うんですけど。音程とかピッチとかとは別に、やっぱり一番届くものは歌詞だと思っているので。そこを重点的に、集中して歌っています。歌詞を自分の言葉として発信できるようになるまで朗読したりとか、自分のなかに落とし込んでから、毎回レコーディングするようにはしていますね。
――ライヴっていうのは、春奈さんにとってどういうものなんですか?
やっぱり、絆をより深める空間でもあると思っているし、曲が初めて完成する場所とも思っています。みんなとの心をつなげる場所ですよね。
――さて、赤坂BLITZについてうかがいたいんですが。あと2ヶ月ちょっとあるんですけど、「こんなことやりたい」とか、「こんなことやってやろう」という願望などあれば教えていただければ。
個人的には、花道をおいて、花道の先のところでバラードコーナーをやってみたいんですよ。
――これは決定事項ではなくて?
私のなかでいつかやってみたいことなんですけど。今までバラードコーナーとかをライヴであまりやったことがなくて。
――そうですね。あまり、コーナーとしては拝見したことがないかもしれないですね。
なので、今までの楽曲をもうちょっとバラードアレンジして、特別感を出せたらなぁと。やっぱり、バラードにすることで届く歌詞ってすごくあると思うんですよ。そういった部分では、お客さんと近い場所で、大切に歌を届けたいな、っていう思いが強いですね。
――じゃあそれはそっと、これからマネージャーさんにご相談?(笑)。
キレイに流れてって欲しいですね(笑)。
――せっかくなんで、モデルとしてのお話もうかがいたいんですが。どういうきっかけで『KERA』の読者モデルになられたんですか?
先ほどお話しした『D.Gray-man』がきっかけだったんですけど。そのゴスロリファッションで表参道を歩いていたときに、原宿のGAP前で『KERA』のスナップ隊の方に声をかけていただいて。もともと、唯一読んでるファッション雑誌が『KERA』だったんです。「どうやったら『KERA』に載れるのか」ってすごい調べていた矢先に声をかけていただいたので、めちゃくちゃ嬉しかったです。
――ご自身のファッションに対するこだわりみたいなものをお聞かせいただけますか?
最近は服を選ぶ時も意外とアニメとかを意識しちゃうというか。今日は違うんですけど、普段はけっこう紫のものを身に着けたりとか、好きなキャラクターのイメージカラーを取り入れたりとか、キャラクターの私服を真似てみたりとか、そういう服選びはしてますね。
――今ので推し松が分かった気がしますけど(笑)。
そうですね。一松ですね(笑)。
撮影=原地達浩
――ライヴの衣装なんかも春奈ワールドというか、そういうものが出ていると思うんですけど。そのあたりもこだわりがあるんですか?
絵が下手なりにデザイン画を描いたりします。ライヴ衣装には今まで叶えられなかった憧れみたいなものを凝縮させた衣装が多いかも。前に渋谷公会堂のライヴの時に、セーラー服を元にしたワンピースを作ってもらって。わたし、もともと高校の時からセーラー服にすごい憧れがあったので、それを叶えてもらいました。
――今回の赤坂BLITZの衣装はどうですか?
今回は動きやすい服がいいかなって思っていて。(笑)久々のスタンディングなので、お客さんと同じテンションでもっと楽しめるように、軽量化を考えた衣装ができればいいな。
――そういう意味では、バラードコーナーはやりたいけど、アクティブなライヴにしたい、と。
そこのメリハリはつけたライヴにしたいな、と思いますね。たぶん、みんなアガる楽曲を待ってると思うんですよ。そこはみんなと一緒に楽しみたいです。
――最後にファンとの関わり方についてうかがいたいんですけど。ファンの方からどういうものをもらっているか? そして、春奈るなとして、どういうものをファンに返していきたいか?をお聞きしたいです。
そうですね……わたし自身、ファンの方には自信をもらってると思うんですよ。イベントでもそうなんですけど、本当に笑顔をみるだけで、「もっと頑張ろう」って気持ちにもなれるし。毎回、感謝しかないというか、すごいファンのみなさんが大好きなんですよ。イベントとか音楽を通じて、もっともっと、ファンとアーティストとしてじゃなくて、人間同士の絆っていうものをもっと近い距離で深めていけたらな、って思ってますね。
――アーティスト、アニソンシンガー春奈るなと、プライベートのご自身がいらっしゃるわけじゃないですか。アーティストではない素の自分との違いはあるんですか?
わたしはプライベートの自分と一緒ですね。でも、歌を歌う時は世界観に浸りながら歌ったりとか、その曲の主人公を演じる気持ちで歌ってるので違うかもしれません。そういう部分では〝春奈るな″になって音楽を届けてるんですけど、MCの部分だったりとか、ファンの方と接する握手会だったり、トークイベントの時とかは素のままです。
――そういう意味では、今度の赤坂BLITZもスタンディングだったり、ファンとの距離感が近いので、ダイレクトに曲を伝えていくっていうのが出来そうな気がしますね。
はい、最近は指定席が多かったので、お客さんもゆっくり観てもらっていたのですが、今回はもっと距離を詰めて、みんなと音楽を楽しみたいです!
――最後にこれを見ている方に一言お願いします。
来て下さった方に後悔をさせない、本当に楽しかったっていうようなライヴにしたいと思っているので、夢の世界に飛び込むような気持ちで遊びに来てくれたら嬉しいです!
撮影=原地達浩 インタビュー・文=加東岳史
撮影=原地達浩