熊本の水前寺公園で能の会 ~金春松融会・春の会開催

レポート
舞台
2016.3.28
去年の春の会の様子

去年の春の会の様子


熊本市のほぼ中心に位置する名勝水前寺成趣園(通称水前寺公園)で、来る4月3日(日)、金春松融会による例会のひとつ“春の会”が行われる。
水前寺成就園は、桃山式回遊庭園で、築山や浮石、芝生、松などの植木で東海道五十三次の景勝を模している。

水前寺成趣園(撮影:u1729)

水前寺成趣園(撮影:u1729)

細川家の庭園として代々の殿様の心を和ませてきたが、明治になって園内にある出水(いずみ)神社の社地として払い下げられた。
園内には豊かな阿蘇の伏流水がこんこんと湧き、市東部に広がる江津湖へと流れ込んでいる。そこから出水神社と名付けられたが、細川家を祀っており、社紋は細川氏の家紋と同じ細川九曜紋である。
さて、その水前寺成就園の園中には、立派な能楽堂がある。夏祭で奉納される薪能は日本で5番目に古いとされるほど伝統のある舞台であり、金春流松融会の春の会はこの能楽堂で行われている。

水前寺成趣園能楽堂(撮影:u1729)

水前寺成趣園能楽堂(撮影:u1729)

熊本市は城下町であり、侍文化が栄えた場所だ。
熊本城を築いた加藤清正が“せいしょこさん”と市民に親しまれ愛されているが、実は江戸期の細川家の影響も相当色濃く残っている。
肥後細川家は文武両道に秀で、特に能に関しては代々重きを置いて当主自らもたしなみ、発展に寄与して来た。
各時代に愛用された数多くの能面、装束、関係資料等は、今も永青文庫に残されている。
金春流は能の流派の中でも最も古い大和猿楽四座のひとつで、太閤豊臣秀吉に愛されたと言われる。
その金春流が加藤清正の時代に熊本に伝承され、細川家の庇護もあって、現在では喜多流と共に藤崎八幡宮の神事能を任されている。
肥後に庇護された一座なのである。

金春流金春松融会は、熊本県能楽協議会理事でもある築地(ついじ)豊治氏らの指導の下、藤崎宮を始め、出水神社、北岡神社などの例大祭で演能するだけでなく、春・夏・秋の季節に定例会を行っている。
今回の春の会はそのうちのひとつである。
児童の出演も含めると、数十人規模の大きな会で、相当数の演目が行われる予定である。

稽古の様子(撮影:u1729)

稽古の様子(撮影:u1729)

開催日の4月3日は桜の満開も予想されており、一年で一番良い季節である。
ちょうど一週間前に当たる今日、ぶらりと寄ってみた。
5分咲きの桜の下では、大勢の花見客が酒を酌み交わし、手製の料理に舌鼓を打っている、
来週になれば一面の桜となり、さらに見応えが増すだろう

水前寺成趣園の桜(撮影:u1729)

水前寺成趣園の桜(撮影:u1729)

池の方に回ってみると、観光客は多いが、もはや聞こえるのは北京語・広東語・韓国語だけ。
雑事を忘れて考えに没頭するにも丁度いい。
筆者はここで手乗り鳩遊びをするのが好きである。
人に慣れた地付きの鳩は、餌を持った手に自ら飛び乗り、夢中でついばむ。
中国人の少女が感嘆の声を上げるのを聞いてニンマリする。
本当は、誰にでも出来ることだが。

手乗り鳩(撮影:u1729)

手乗り鳩(撮影:u1729)

と言う訳で、近隣の方は来週3日(日)、花見や鳩の餌やりもかねて、ぶらりと寄ってみられたらいかがだろう。
400年の文化や歴史の薫りに酔う春の日も、趣があって記念になるのではないだろうか?


金春松融会春の会
演目:清経/船弁慶/桜川/熊野/蝉丸 その他

■日時:4月3日(日) 11:00~

■会場:水前寺成趣園能楽堂
熊本市中央区水前寺公園8-1
http://www.suizenji.or.jp/map/3-4.html

■観覧無料

シェア / 保存先を選択