歴史ファンも必見の”新しい戦国時代像”を描き出す 『戦国時代展』記者発表会レポート

レポート
アート
2016.5.17
『戦国時代展 -A CENTURY OF DREAMS-』記者発表会

『戦国時代展 -A CENTURY OF DREAMS-』記者発表会

画像を全て表示(10件)

あなたの思う「戦国時代」とは、どんなイメージだろうか。「群雄割拠」「戦乱の世」…そういった言葉から連想される"秩序の乱れたまとまりのない時代"という印象を持っている人は少なくないだろう。

ところが、そんなイメージを180度覆すような展覧会が今年から来年にかけて全国で開催される。『戦国時代展 -A CENTURY OF DREAMS-』は戦国時代の美術品・工芸品・武具などを通じて、”まとまりのあった戦国時代”という新たな戦国時代像を提示する、いままでにない展覧会だ。今月10日(火)に行われた記者発表にて、その全貌が明らかとなった。

 

戦国時代を総覧 歴史ファン必見の展覧会

戦国時代は、一般に1467年の京都で勃発した「応仁の乱」をきっかけとして始まったとされている。この時代には、ドラマや映画、漫画などでもおなじみの織田信長、上杉謙信、武田信玄、毛利元就などが各地で戦を繰り広げていた。『戦国時代展』では、まずこの戦というものを肌で感じられる戦道具や美術品が紹介される。これらを通じて、その時代がもっていた空気感を私たちにリアルに伝えてくれるのだ。

特に見物なのは、戦国一の大激戦と言われる川中島の合戦を描いた《米沢本 川中島合戦図屏風》だ。この屏風は、上杉軍・武田軍の攻防を迫力をもって映し出している作品。上杉謙信と武田信玄が一騎打ちをしている様子を描いた左隻中央部は、特に見逃せないポイントだ。戦国時代きっての2大ライバルと呼ばれた両氏の、白熱した戦いを感じられる部分となっている。

《米沢本 川中島合戦図屏風》

《米沢本 川中島合戦図屏風》

《米沢本 川中島合戦図屏風》にて描かれている、上杉謙信と武田信玄の一騎打ち

《米沢本 川中島合戦図屏風》にて描かれている、上杉謙信と武田信玄の一騎打ち

江戸東京博物館学芸員の齋藤慎一さんは、注目の1点に《豊川市指定文化財 唐草螺鈿鞍》を挙げた。この鞍には、戦国時代に関東周辺を治めていた二代北条氏綱の銘が施されている。戦国大名の銘のある鞍は大変貴重なものであるとのこと。

《豊川市指定文化財団 唐草螺鈿鞍》

《豊川市指定文化財団 唐草螺鈿鞍》

また、昨今人気を博しているゲーム『刀剣乱舞』でもキャラクターモチーフとして登場する《短刀 銘 吉光 号五虎退》も出品される。(※東京・京都会場にて展示)

画面下《短刀 銘 吉光 号五虎退》

画面下《短刀 銘 吉光 号五虎退》

 

洛中洛外図屏風がもつ"緊張感"を味わう

戦国乱世においても、列島各地には様々な文化が生まれた。その代表例ともいえるのが、狩野派の絵師たちによる華やかな絵画群だ。なかでも注目は、狩野永徳筆の《国宝 上杉本 洛中洛外図屏風》である。(※京都会場にて展示)

《国宝 上杉本 洛中洛外図屏風》

《国宝 上杉本 洛中洛外図屏風》

全国に170点ほどある洛中洛外図屏風のなかでも、突出して優れていると評されている本作品。当時の京都の街並みを豪華絢爛に描いた作品として知られているが、京都府京都文化博物館学芸員の西山剛さんは「この作品には”緊張感”が伴っている」と語る。というのも、この作品には室町幕府とそれを支える細川家の邸宅や薬師寺と同じ場面に、三好長慶や松永久秀の邸宅も描かれているのだ。実は、この三好長慶・松永久秀こそが、足利義輝を殺害して”戦国時代の幕開け”を告げる人物たちなのである。華やかな中にもこうした争いのタネともいえる要素が描きこまれているという点で、非常に味わい深い一品となっている。

室町幕府軍・細川家と三好家・松永家が同時に描かれた《国宝 上杉本 洛中洛外図屏風》の一部

室町幕府軍・細川家と三好家・松永家が同時に描かれた《国宝 上杉本 洛中洛外図屏風》の一部

 

花開いた文化が戦乱の列島を結ぶ

京都の中だけではなく、列島の内外で文化が行き来していた豊かな戦国時代の姿も映しだされる。清水寺参詣をするために集まった全国各地の村人、商人、町人などの様子が描かれた《京都府指定文化財 清水寺参詣曼荼羅》では、戦国時代ごろから始まった「旅」の姿がいきいきとあらわれている。(※東京・山形会場で展示)

《京都府指定文化財 清水寺参詣曼荼羅》

《京都府指定文化財 清水寺参詣曼荼羅》

また、国内の旅を支えた交通技術は、そのまま国外との交易にも生かされていく。《華南三彩五耳壺》に代表されるように、アジア各国との文化交流があったことを証明する品々も多数展示される。

《華南三彩五耳壺》

《華南三彩五耳壺》

 

本展が提示するのは、国内外を往来する文化を通じて、一種のまとまりを持っていた全く新しい戦国時代像だ。戦による緊張と文化による緩和が同居しているという二面性が、戦国時代がいまなお私たちを魅了する理由の一つといえるのだろう。『戦国時代展 -A CENTURY OF DREAMS-』は、東京では東京都江戸東京博物館にて2016年11月23日(水)より開幕する。京都では、2017年2月25日より、山形では2017年4月29日より開催。

 

イベント情報
戦国時代展 -A CENTURY OF DREAMS-

会期/会場:
2016年11月23日(水・祝)~2017年1月29日(日)/東京都江戸東京博物館 
2017年2月25日(土)~4月16日(日)/京都府京都文化博物館 
2017年4月29日(土・祝)~6月18日(日)/山形県米沢市上杉博物館 
シェア / 保存先を選択