シアターコクーン『ビニールの城』の演出、金守珍に

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2016.5.26
金守珍氏(日本タレント名鑑)

金守珍氏(日本タレント名鑑)

蜷川幸雄演出により上演が予定されていたBunkamura シアターコクーン8月公演『ビニールの城』(出演:森田 剛、宮沢りえ、荒川良々ら)は、蜷川氏の死去に伴い、演出を金守珍氏がおこなうこととなった。金守珍氏は、劇団・新宿梁山泊を主宰する演出家で、もともとこの公演の出演者としてもクレジットされていた。この公演は“芸術監督 蜷川幸雄・追悼公演”と銘打たれ、『ビニールの城』(作:唐十郎 演出:金守珍 監修:蜷川幸雄)として改めて上演概要が発表された。


以下、主催の東急文化村からのリリース。

2016年8月 Bunkamura シアターコクーン『ビニールの城』 公演
蜷川幸雄芸術監督のご逝去にともなう、演出家決定のお知らせ

Bunkamura シアターコクーンの蜷川幸雄芸術監督(80歳)は、昨年12月半ばに軽い肺炎を起し、入院後、現場に復帰しようという強い意志のもと治療・リハビリをしておりましたが、2016年5月12日、肺炎による多臓器不全の為、午後1時25分に永眠いたしました。20年間の永きにわたり当劇場の芸術監督に就いて頂き、共に製作した舞台は、実に49作品を数えます。改めて深い謝意をお伝えすると共に、故人のご冥福をお祈りいたします。
 
蜷川幸雄演出により上演を予定しておりましたBunkamura シアターコクーン8月公演を、芸術監督 蜷川幸雄・追悼公演とし、下記の通り上演をすることが決定いたしました。

作:唐十郎 演出:金守珍 監修:蜷川幸雄
『ビニールの城』
2016年8月6日(土)~29日(月)Bunkamura シアターコクーン公演
 
<作品概要>

 80年代を圧倒した劇団第七病棟に唐十郎が書き下ろした「ビニールの城」。廃館となっていた浅草の映画館・常盤座を劇場に選定(85年初演)。演出も務めた石橋蓮司、緑魔子らの熱演に加え本水を使用したスペクタクルな演出は大きな話題を呼び、まさに、アンダーグラウンド演劇最高峰の【伝説的作品】となりました。
 蜷川芸術監督は、近年「下谷万年町物語」(2012年)、「盲導犬」、「唐版 滝の白糸」(13年)と傑作唐戯曲を立て続けに上演。スター俳優たちの魅力を注ぎ込み、戯曲のもつ普遍的な詩情とエネルギーを描き出すことで“出会えなかった観客たち”を熱狂させてきました。自身初演出となる「ビニールの城」への意欲も強く、これ以上はない強力なキャスティングを実現させ、手応えを感じていました―。
 この度、演出を務めることになった金守珍は、劇団・新宿梁山泊主宰。まさに唐十郎、蜷川幸雄、両虎を師とし、アンダーグラウンド演劇に真正面から取り組んできた演劇人です。得難い個性を持つ俳優として蜷川がキャスティングすることも多く、寺山修司作「血は立ったまま眠っている」(10年)で森田剛と、「下谷万年町物語」「盲導犬」で宮沢りえと、それぞれ共演をしています。
古いアパートの地下部分を、自分たちの手で大改造。息をのむような迫力ある演出が可能な唯一無二の劇場空間【芝居砦・満天星】を生み出し、また、テントでも、数々のアンダーグラウンド作品を上演し続けている、その情熱は計り知れません。
 蜷川幸雄からの信頼も篤い、現代演劇界を牽引する強力なキャスト、スタッフが集結しました。
 蜷川幸雄が敬愛の念を隠さなかった唐十郎の、美しく哀しい“へだたり”愛の物語を、情熱をもって上演致します。ご期待ください!!
 
<演出:金守珍(キム・スジン)略歴>

演出家・蜷川幸雄に師事し、蜷川スタジオに所属。『近松心中物語』等に出演し、演劇の基礎を学んだ。78 年より唐十郎の状況劇場に参加し、独自の表現スタイルであるテント演劇のノウハウを獲得し、その後、87 年に新宿梁山泊を創立。89 年には小劇場として初めて韓国三都市公演を行う。第17 回『テアトロ演劇賞』を受賞。その後も、ドイツ、中国、韓国などに招聘され、高い評価を受けた。叙情的ノスタルジアを呼び起こす濃密な舞台空間を創造する手腕。エネルギッシュ且つ強烈なビジュアルを印象付ける演出力に高い評価が集まっている。また演劇公演以外にもロックコンサート、韓国伝統音楽会各種イベント、デザイン博覧会などの演出をはじめとして様々な芸術活動を行っている。
 
<追悼・蜷川幸雄>

 演劇を志した若い頃、初めて蜷川さんが演出する『オイディプス王』を見て、これほどダイナミックな表現をする日本人がいるのかと激しい衝撃を受けた。そこで私は「蜷川教室第一期生募集」の告知を見つけた時、迷わず応募した。
 教室で蜷川さんはしきりに「おまえら、唐十郎の状況劇場を見て来たか!」と檄を飛ばし、エチュードでは『盲導犬』が使われる。その台詞に感動を覚え、状況劇場の『ユニコーン物語』を見に行くと、意味はよくわからないがなぜか体がカッと燃え上がった。その後も大きな舞台に立たせてもらったが、熱気をはらんだテント芝居が忘れられない。そこで蜷川さんに「しばらく状況劇場で修行し、成長して帰ってきます」と宣言した。1979 年夏のことだ。
 私は演出家としても、役者としても、若い日に蜷川さんから教わったふたつの言葉を自分の座右の銘としてきた。そのひとつが「幕開き3 分勝負」。日常を背負って劇場に来た観客を、3分以内に日常から引き離さなくてはいけない。もうひとつが、「役者は一生自分の言葉を持つな。そこに悲惨と栄光がある」。役者は自分の生理で台詞を変えてはいけない。
 蜷川さんはもともとアングラ演劇から出発し、商業演劇で「世界のNINAGAWA」となった。だが常に、アングラ演劇への強い思いを持ち続けていた。テントという子宮の中に咲く闇の花は、大きな劇場の光の元でも決してその魅力を失わない。そのことをダイナミックかつ繊細な演出で、私たちに見せてくれた。
 晩年はもう一度アングラと向き合い直したいという思いから、唐十郎や寺山修司の作品をたてつづけに演出した。そんな蜷川さんがどうしても手掛けたかったのが、唐十郎の『ビニールの城』だ。それだけ思いの深い作品だった。その願いがかなう前に逝ってしまったことは、本当に悔やまれてならない。そして今回、演出を依頼されたからには、蜷川さんはこうしたかったであろうとイメージし、そこに向かって全力で進むしかない。
 蜷川さんの死によって、アングラ1世代は確実に終わろうとしている。アングラ芝居は一種の風俗として始まり、世界に誇る日本の演劇文化として育っていった。この文化をしっかり定着させ、次代につなげていけるかどうかは、私たち2 世代目、3世代目にかかっている。演出家・蜷川幸雄が最後まで抱き続けた、劇作家・唐十郎への敬愛の念を、なんとか形にしていきたい。この2 人のエッセンスを後世につなげていくことが、私の使命だと思っている。
 
2016 年5 月16 日 新宿梁山泊代表 金 守珍
 
<『ビニールの城』物語>

あたしは ビニールの城で待っている 真昼に春を売る店のその向こうにひるがえる スカートのような お城でと ― モモ

腹話術師の【朝顔(森田剛)】は、8ヵ月前に別れた相棒の人形:夕顔を探し続けている。神谷バーでデンキブランをひっかけていると、かつて朝顔と夕顔の暮すアパートの隣室に住んでいた、と話す女【モモ(宮沢りえ)】と出会う。人形など忘れて、自分の想いを受け止めて欲しいと迫るが、生身の人間と向き合うことができない朝顔はつれない反応。モモへの愛故に旦那を演じる【夕一(荒川良々)】は、もはや人形である夕顔と自身を混同させている。そこで吐露される女の秘密―。モモは“ビニールの中の女”、アパートの一室に捨て置かれていた“ビニ本”を飾るヌードモデルだったのだ!!そこに、朝顔の叔父と名乗る河合、捉えどころのない不気味な引田という奇妙な男たち、モモの妹、リカが絡む。水に沈められた人形を救出しようと巨大な水槽に潜る朝顔。しかし、探し続ける夕顔は、モモにおぶられていたのだ―。明らかになっていく女の過去。混乱を重ねる朝顔に、モモは必死に訴える。「助けて、ビニールの中で苦しいあたしを!」水の中からビニールの城が浮かび上がる。その中にいるのは、はたして…。
 
公演情報
『ビニールの城』
■作 唐 十郎
演出 金 守珍
監修 蜷川幸雄
出演 森田 剛、宮沢りえ、荒川良々、
江口のりこ、大石継太、鳥山昌克、柳 憂怜、石井愃一、金 守珍、六平直政 ほか
スタッフ 美術:中越 司、照明:勝柴次朗、音響:井上正弘、音楽:大貫 誉、衣裳:宮本宣子、
ヘアメイク:鎌田直樹
腹話術指導:いっこく堂
振付・演出助手:大川妙子、
殺陣:佐藤正行
舞台監督:足立充章
主催/企画・製作 Bunkamura
公演日程 2016 年8 月6 日(土)~29 日(月)
会場 Bunkamura シアターコクーン
料金(全席指定・税込):S 席11,500 円、A 席9,000 円、コクーンシート6,000 円
一般発売日:2016 年6 月19 日(日)10:00~
に関する問合せ Bunkamura センター 03-3477-9999(10:00~17:30)
公演に関する問合せ Bunkamura 03-3477-3244(10:00~19:00) http://www.bunkamura.co.jp/
旧チラシ

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