ダレン・ジョンストン『ZERO POINT』(世界初演) 東洋の思想と先鋭的テクノロジーが生み出す新しいアート
『ZERO POINT』 (C)Peter Langman
国際的なビッグ・プロジェクトが6月末、高知で世界初演を迎える。高知県立美術館(日本)×バービカンセンター(イギリス)×パース国際芸術祭(オーストラリア)による日英豪国際共同製作『ZERO POINT』は「ダンス/音楽/美術/テクノロジーが融解する瞑想の舞台空間」をキャッチフレーズにつくり上げられる話題作だ。
『ZERO POINT(零点)』とは量子力学の概念。振付・演出を手がけるイギリス人のダレン・ジョンストンはビジュアルアーティストでもあり、これまでジャンル横断型のマルチメディア・パフォーマンス作品を発表してきた。東洋的な思想とプロジェクションマッピングやモーショントラッキングなどのテクノロジーとの融合を図る本作の構想の始まりは、以前滞在したベルリンでミニマルアートに感化されたことだという。そして2013年、高知県立美術館レジデント・アーティストとして過ごした高知での体験がベースになっている。
「お遍路の旅で88ヵ所をめぐった後に生まれ変われるということに興味を抱きました。輪廻転生や儀式といった東洋のコンセプトをデジタルな世界に翻訳していきました」
高知でのリサーチ&ショーイングの後、14年にバービカンセンターでショーイングを実施。このたび出演者を一新しクリエイションを行う。キャストは日本を代表するバレリーナの酒井はな、世界的舞踊団であるザ・フォーサイス・カンパニーで活躍した島地保武、それにオーディションで選ばれた俊英9人。ジョンストンは「ネオクラシック・バレエが生み出す線の美しさや純粋さ」を重視し「光の彫刻のようにダンサーをイメージした」という。酒井は抱負をこう語る。
「デジタルの世界感は初めてなので楽しみです。イギリス人のアイディアの中の日本を私たち日本人が演じることに意義があると思います」
島地も意気込みを語る。
「ゼロというタイトルについてずっと考えています。思考と肉体が重なりあっていくアプローチが楽しみですし、最終的に目指したいのは無我夢中です」
音楽をカナダのアンビエント・ミュージシャンであるティム・ヘッカーが担当するのも見逃せない。ジョンストンはヘッカーの音楽を初めて聴いた時「音が身体性を持っているような感じを受けた」と語り「ダンサーにとっても音がエネルギーの源になる」と全幅の信頼を寄せる。
東洋の思想と先鋭的なテクノロジーを融合させた未知なる舞台が誕生するに違いない。
文:高橋森彦
(ぶらあぼ + Danza inside 2016年6月号から)
左より酒井はな、ダレン・ジョンストン、島地保武 (Photo:J.Otsuka/Tokyo MDE)
6/25(土)19:00、6/26(日)15:00
高知県立美術館ホール
問合せ:高知県立美術館 088-866-8000
http://kochi-bunkazaidan.or.jp/~museum