クラシックベースに洋楽のカバーを、ビートルズとクラシックの融合を魅せる 1966カルテット

レポート
クラシック
2016.8.2
1966カルテット 撮影=福岡諒祠

1966カルテット 撮影=福岡諒祠

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1966カルテットがビートルズの名曲をクラシカルに甦らせる 第33回“サンデー・ブランチ・クラシック”7.3ライブレポート

カフェでゆったりとくつろぎながら、クラシック音楽を楽しむ日曜日の午後。“クラシック”と一口に言っても、そのジャンルは幅広い。この日の『サンデー・ブランチ・クラシック』に登場してくれた1966カルテットも、「洋楽のカバー」というアプローチから、クラシックの世界へ私たちを誘ってくれた。

1966カルテットは、クラシックのテクニックをベースに洋楽アーティストのカバーをするユニットで、2010年11月に『ノルウェーの森~ザ・ビートルズ・クラシックス』でCDデビュー。現在は、松浦梨沙(ヴァイオリン、リーダー)、花井悠希(ヴァイオリン)、林はるか(チェロ)、江頭美保(ピアノ)で構成されている女性カルテットだ。

グループ名にもなっている“1966”は、ビートルズが来日し、日本中が熱狂した年に由来している。2016年はビートルズ来日50周年、そして来日していた期間は6月29日から7月2日! この日の登場はまさにタイムリーだった。当時を知る人も知らない人も、彼女たちの演奏を通して“ビートルズ”の音楽に触れる絶好の機会となったのではないだろうか。

ジュエリーブランド『agete』の協力で美しいアクセサリーを身に付け、女子力高めで登場した4人が1曲目に演奏してくれたのは、ビートルズの日本デビュー曲となった「抱きしめたい」。印象的なイントロがクラシカルアレンジでよりドラマティックに響き、松浦と花井のヴァイオリンの音色が、ジョン・レノンとポール・マッカートニーの歌声のように絡み合った。

松浦梨沙(ヴァイオリン、リーダー) 撮影=福岡諒祠

松浦梨沙(ヴァイオリン、リーダー) 撮影=福岡諒祠

花井悠希(ヴァイオリン) 撮影=福岡諒祠

花井悠希(ヴァイオリン) 撮影=福岡諒祠

 

リーダーの松浦の「ビートルズ満載のプログラムでお送りしたいと思います!」という挨拶から、ビートルズの名曲が2曲続けて奏でられた。2曲目に演奏されたのは、「プリーズ・プリーズ・ミー」。こちらは、日本で2枚目に発売された曲だ。林のチェロと江頭のピアノが刻むリズムの上で、ヴァイオリンの二つの音色が伸び伸びと跳ねる。3曲目の「イン・マイ・ライフ」は、曲の持っているノスタルジックな雰囲気が強調され、より柔らかな印象に。4人の演奏は、ポップなメロディを目にも耳にも楽しく届けてくれる。

「3曲続けてビートルズの曲をお聴き頂きました。今日設けて頂いたこの場は『サンデー・ブランチ・クラシック』ということなので、私たちの原点でもあります、クラシックもお届けしたいと思います」と松浦が話す。

その言葉通り、クラシックの名曲の中からヴィヴァルディ作曲『四季』より「春」第一楽章、プッチーニ作曲『トゥーランドット』より「誰も寝てはならぬ」を聴かせてくれた。カバー曲の演奏とは、また少し表情を変えた確かな演奏力。現代音楽の礎を築いたビートルズの楽曲と、クラシックの名曲を交互に聞くことで、それぞれの良さが際立って聞こえた。

林はるか(チェロ) 撮影=福岡諒祠

林はるか(チェロ) 撮影=福岡諒祠


江頭美保(ピアノ) 撮影=福岡諒祠

江頭美保(ピアノ) 撮影=福岡諒祠

「さて、ここからはまたビートルズの楽曲をお届けしたいのですが、折角こういったアットホームな場なので……」と、ここである提案がなされた。「よろしければ、皆さんのリクエストにお応えしたいなと思うのですが。何かご希望はありますか?」

ビートルズの楽曲は200曲以上ある。客席から、本当に何の曲をリクエストしてもいいの……? という若干の戸惑いが感じられる中、「なかったら、それはそれでいいんですけど(笑)」と松浦が促すと、「……ハロー・グッバイ!」どこからか声が。それをきっかけに、「エイト・デイズ・ア・ウィーク!」、「エリナー・リグビー!」と次々とリクエストの声が上がった。

「ありがとうございます。どれもいいですね~、どれを演奏しようか困っちゃう」と言いつつ、「全部やりますか? そうしましょうか!」と、すべてのリクエストに応えてくれることに。「皆さんが聴きたいものをやるのが、私たちのポリシーですから」という松浦の言葉に、客席からは喜びの声が上がった。

演奏風景 撮影=福岡諒祠

演奏風景 撮影=福岡諒祠

すべての演奏が終わっても、まだまだ聴きたい! そんな客席の気持ちを代弁するような大きな拍手が沸き起こる。笑顔で再びステージに戻ってきてくれた4人は、「アンコールにお応えいたしまして」と、「キャント・バイ・ミー・ラヴ」で軽快に30分のライブを締めくくった。

途中のMCで「また全然違った曲を演奏しますよ」と宣言していた通り、第2部では「ノルウェーの森」、「ヘルプ!」、ショパン作曲ワルツ第1番変ホ長調「華麗なる大円舞曲」、リクエストで「フール・オン・ザ・ヒル」、「アイム・ダウン」、アンコールに「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド」などが演奏された。

サイン会の様子 撮影=福岡諒祠

サイン会の様子 撮影=福岡諒祠

終演後のインタビューでは、「もっとライブハウス的な感じなのかなと思っていたんですが、お客様が聴く姿勢を持ってくださっていたのがよくわかりました」と口々に語ってくれた4人。以前、妹の林そよかのステージにゲスト出演してくれたチェロの林は「演奏する側としても、心地よい空間でした」と、改めてカフェでの演奏を振り返ってくれた。

“ビートルズの日本での仕掛け人”としても知られる高嶋弘之の「いつかビートルズの楽曲をクラシックとしてやってみたい」という想いのもとに結成された1966カルテット。今年は、ビートルズ来日50周年ということもあり、まさにビートルズ一色な一年を過ごしている。活動の中で、ビートルズが武道館で行った来日公演のセットリストを再現できるようになったそう。さらに、「動画を観たりしながら、ジョン・レノン、ポール・マッカートニー、ジョージ・ハリスン、リンゴ・スター、それぞれの演奏の仕方などを個々に研究して、パフォーマンスする際に活かせるように取り組んだりもしています」とその裏側を明かしてくれた。

インタビューの模様 撮影=福岡諒祠

インタビューの模様 撮影=福岡諒祠

リクエストコーナーについては、「何の曲がリクエストされるか、いつもドキドキなんですよ(笑)」と言いながらも、「ビートルズを通して、世代を超えてコミュニケーションを取ることができるのでとても楽しい」と語っていた。この日のリクエストに完璧に応えてくれていたが、一体どれぐらいレパートリーがあるのか尋ねてみると、「まだまだ、全然足りてないんです。まだやれていないけれど、演奏したい曲がいっぱいあります!」と曲名が次々と飛び出した。

最後に4人を代表して、松浦が「ビートルズでもクラシックでも、きっかけはなんでもいいと思うんです。どんな形でも、楽器の奏でる音色の強さを届けられたらと思って、私たちは活動しています。この『サンデー・ブランチ・クラシック』は、音楽に触れるすごくいい場だと思うので、ぜひこれを足掛かりに、もっと音楽を身近に感じて楽器の音色に興味を持って頂けたら嬉しいです」とメッセージをくれた。洋楽が好きな人にも、クラシックが好きな人にも、新鮮な楽しさを届けてくれる彼女たちのこれからに、ますます期待したい。

1966カルテット 撮影=福岡諒祠

1966カルテット 撮影=福岡諒祠

『サンデー・ブランチ・クラシック』で、素敵な音楽との出会いを! 次回もお楽しみに。

プロフィール
1966カルテット
クラシックのテクニックをベースに洋楽アーティストのカバーをする女性カルテット。
日本中が熱狂したビートルズ来日の年「1966」をカルテット名に冠し、2010年11月、『ノルウェーの森 ~ザ・ビートルズ・クラシックス』で日本コロムビアよりCDデビュー。王子ホールでデビュー・リサイタルを開催。クイーンおよび、マイケル・ジャクソンのカバーアルバム(2011年および2012年)では、クラシックの上品なイメージを破る、ロック・スピリッツ溢れるパフォーマンスが高く評価された。ビートルズへと原点回帰した4作目のアルバム『HELP!』(2013年)では、生気溢れる鮮烈なプレイで、ユニットとしての更なる進化を聴かせた。2014年リリースの5作目のアルバム『アビイ・ロード・ソナタ』は、英国ロンドンのアビイ・ロード・スタジオでの録音。リヴァプールのキャヴァーン・クラブでのライヴも好評を博した。2015年には初のベスト盤『BEST OF 1966 QUARTET』をリリース。全国各地でのコンサート活動を精力的に繰り広げる一方で、国際交流基金主催の「村上春樹を『聴く』コンサート」(ジャカルタ、ソウル)に出演するなど、活躍の場を国内外へと広げている。2016年、最新アルバム『1966カルテット Best of Best 抱きしめたい』を発売。
 
松浦梨沙(Matsuura Risa) ヴァイオリン/リーダー
5歳よりヴァイオリンを始める。第6回大阪国際音楽コンクール第3位など、数々のコンクールに入賞。京都市立芸術大学音楽学部卒業。確かな技術に裏付けられた鮮やかな表現力でユニットをリードし、キレとメリハリのある音楽性を創出する。ロックの魂をヴァイオリンに託す稀代の名手として、ポピュラー音楽のクラシカル・カヴァーの最前線を切り開く。
 
花井悠希(Hanai Yuki) ヴァイオリン
3歳よりヴァイオリンを始める。東京音楽大学卒業、同大学院音楽研究科科目等履修生を修了。2010年に日本コロムビアよりCD2枚同時リリースでデビュー。最新アルバムは、『譚詩曲 ~11 stories on Violin』。テレビ、ラジオ等にも積極的に出演するなど幅広く活動中。抒情的な歌い口で聴き手を魅了しつつ、アンサンブルの要としてサウンドの充実を担う。
 
林はるか(Hayashi Haruka) チェロ
11歳よりチェロを始める。第3回大阪国際音楽コンクール、第15回日本クラシック音楽コンクール等、数々のコンクールで入賞。東京藝術大学音楽学部卒業。同大学院修士課程修了。妹の林そよかとのデュオ『アウラ・ヴェーリス』でもCDリリースなど活動中。安定感のあるアンサンブルのベースを担う一方、激しいシャウトから穏やかなメロディーまで印象的なソロも魅力。
 
江頭美保(Egashira Miho) ピアノ
4歳よりピアノを始める。第6回ブルクハルト国際音楽コンクール、第12回長江杯国際音楽コンクール等、多数のコンクールで入賞。武蔵野音楽大学卒業、同大学特修科(二年)修了。2012年より1966カルテットのメンバー。ロックからクラシックまで変幻自在のグルーヴでカルテットを支えつつ、ソロの場面では大らかで豊かな歌で聴き手に感動をもたらす。

 

サンデーブランチクラシック情報
7月31日(日)
岩崎洵奈(ピアノ)
第1部 13:00~13:30 / 第2部 15:00~15:30
MUSIC CHARGE: 500円
 
8月7日(日)
松田理奈(ヴァイオリン)
第1部 13:00~13:30 / 第2部 15:00~15:30
MUSIC CHARGE: 500円
 
9月8日(日)
仲田みずほ(ピアノ)& ロー磨秀(ピアノ)
13:00~13:30
MUSIC CHARGE: 500円
 
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